過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~共同作業と記憶収集~

武術大会

イリアス季節表では4月、10月、16月、22月に開催される

<a href="//23149.mitemin.net/i272029/" target="_blank"><img src="//23149.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i272029/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>

基本的にルールはテンプレ通りだ
武器の使用も、魔法の使用も認められている
回復アイテムなどの道具の使用だけは認められていない
相手を殺せない仕様にはなっているが限度はある
勝敗は降参するか戦闘不能と判断された場合に決する

8月に武術大会予選参加資格を得る為の地域予選が行われた
俺、サーシャ、セリーヌ、ハリー、アイサはこれに参加し、
全員武術大会予選に参加する資格を得た

もちろんアオイも参加するだけの力は十分あるのだが、基本的に魔術士はイリアスでは珍しい存在なので俺が出場を諦めさせた
魔術大会とは違い悪目立ちしすぎるからだ
アオイは俺の為に演奏できるならどこでもいい、と言ってすんなり諦めてくれた
アオイ、可愛いすぎるんだが!?たくさんなでてあげた

前回4月の覇者は剣聖を下したセリーヌだ
俺やサーシャ、セリーヌは当たり前だが、ハリーやアイサも今やかなりの腕前だ
ぶっちゃけSランク程度なら余裕のレベルになっている
もはやうちの家族だけで武術大会を蹂躙できそうだ

□□□□

『居住区』ユウジ邸

今、家族+エステル会議が開催されている

なぜエステルが含まれているのか、それは・・・
エステルはもはや自宅であるかのように毎日うちに訪れている
初めは嫉妬心丸出しだったエステルも落ち着き、
今では家族の一員かのように皆から扱われている
正直夏休みの間はうちに住んでもいいんじゃないか?
とさえ思っている。部屋はたくさんあるしな

(てか、そうして欲しい!お風呂上がりのエステルとか・・・。げへへ、たまらんなぁ~。ぜひ提案してみよう!毎日家まで来るのも大変だろうし、俺とずっと一緒にいたくもあるだろう!エステルを気遣った上での配慮だ!)

おっと。話が脱線してしまった
そう、今は会議が開かれているのである。事の発端は詩乃だった

{みんな出場できるんだし、トレードマーク!トレードマークを作らない?一目見て家族だと判るやつ!}
う~ん。家族の反応はいいみたいだな。まぁいいかな?

「例えばどんなのだよ?」

[ユウ様!セリーヌに名案がありますの!以前セリーヌが使用した仮面をみんなで被ればいいんですの!]

「〔{・・・}〕」

(ご、ごめん、セリーヌ。あれはさすがにないわ。俺だけじゃなく、サーシャや詩乃まで無言になってるしな。ここは俺が言うしかないか)

「き、却下で!」
[ユウ様!?]
かわいそうだからいっぱいもふもふしてあげるな!

{こほん、やはり既存の物よりも手作りがいいと思うのよ}
「それはそうだろうが、何か考えがあるのか?」
{それをみんなで考えるのが家族会議でしょ!}
お、お前!ふざけんなよ!?単なる丸投げじゃねぇか!

バカ詩乃の提案を考える為に意見が欲しい。皆、気軽に言ってくれ」

〔私は可愛いやつがいいですね〕
か、可愛いやつか・・・。あの、俺も一緒のやつなんだよ?

[セリーヌは実用的なやつがいいですの]
どうせ作るなら実用的なほうがいいよな~

{バカって何よ!デザインならちゃんと案があるのよ}
デザインだけかよ!まぁこの案も詩乃からだったが・・・

【ユウジ義兄さん。お姉ちゃんの時もそうだったけど、何かしら姿・形を隠せるようにしたほうがいいと思うよ?】
あぁ、確かにそれはあるかもな。目をつけられるのを防ぐためか

『お師匠様!妾もみなと同じやつがほしいのじゃ!大会には出ぬがほしいのじゃ!』
大丈夫だって!家族みんなの分作るから!除け者にしないよ!

エステルもアオイ同様の理由で参加はやめさせた
エステルの場合は槍が使えるがメインは魔法だ
それに観客席のアオイや詩乃も誰かが護らないといけない
アオイは物理系が苦手だから、やはり誰かがいたほうがいい
だろう
そういう意味でもエステルは最適だ。エステルなら安心して任せられる

(それにしてもみんなの要望を極力叶えられるやつがいいよな。俺が着ても違和感ない可愛くて実用的で姿形を隠せるようなもの・・・。う~ん)

おねだりしてくる可愛いエステルを眺めながら考える
家族達もなにやら意見を言い合っているようだ

(にしてもエステルは白衣が似合うな。もう少しくたびれた感じでダボダボ感があるといいんだがなぁ~。・・・白衣?)

「・・・マント、マントとかどうだろうか?俺もふぇんりるマントはあるが、家族お揃いならやはりファンタジーならではのマントがいいんじゃないか!?詩乃!それに可愛い・・・かはわからんが実用的で姿形も隠そうと思えば隠せる」

家族の厳選なる会議の結果、みんなでお揃いのマントを作ろうということになった
生地についてはミーからの提案でアマリリスの糸を使うことになる。なんでも軽くて丈夫らしいのだ
この提案には俺も大賛成だ。アマリリスとみんなが接するいい機会だからである
ミーの思いやりを垣間見た瞬間だ。もしかしたら裁縫をしたかっただけかもしれないが・・・。いや!きっと思いやりだ!

作る物や生地については決まった
最後はデザインだが詩乃には案があるらしい

「それで?どんなデザインなんだ?詩乃が考えてるのは」
{うさぎよ、うさぎ!あたし達はハクトの、白兎の家族なんだからうさぎをモチーフにしたほうがいいと思うのよ!}

(うさぎか・・・。まぁいいかな?サーシャの可愛いの条件に入るだろうし、何よりヘイネが喜びそうだ)

{ハクトは知ってると思うけど、日本には有名なうさぎのブランドがあるじゃない?黒いうさぎのマークでプレイボー・・・}
「はい、詩乃アウトー!」

危うく詩乃が言いかけた言葉をチョップで封じる
お前丸パクリするつもりか!?色々問題が出るだろ!

「詩乃はいい加減にしろよ?うさぎはこっちイリアスのを使えばいいだろ」
〔あ!それならラブリーファントなんていかがですか?ラブリーファントは魔物ではありますが、ペットとして人気が高いんですよ!〕

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『ラブリーファント』 魔物
魔山を始めとする魔境に棲息する魔物
非常に臆病な性格で滅多に会えない
日本で言うところのうさぎにそっくりな魔物である
耳と尻尾がハート型に見えるところからペットとしても大人気
素材として残るファント肉は非常に美味で高値で売れる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「え?別に普通のうさぎでも良くないか?」
【違うよ、ユウジ義兄さん!ラブリーファントがいいんだよ!】
〔さすが我が義妹アオイちゃんです!よくわかってますね!〕
『確かにうさぎならラブリーファントなのじゃ!お師匠様!』

(な、なんだ!?イリアス組が一斉にラブリーファントを推してきたぞ!?そんなにラブリーファントがいいのか?てかこいつらは単純にラブリーファントを飼いたいだけじゃないのか?)

結局イリアス組の強い要望でデザインはラブリーファントに決まることとなった
実際どのようなマントにしようか話し合われた際には、

〔ラブリーファントの絵柄はマントにでかでかとあしらえてみてはいかがですか?〕
「マ、マントの裾とかにワンポイントとして付けるのがいいんじゃないかな?あまり目立ってもしょうがないしさ・・・」

(俺も着るので勘弁してください!背中にでかでかとラブリーファントがあしらえてあったら恥ずかしいだろ!)

[マントは全体的に桜色がいいと思うんですの!]
「お、俺も着るからさ。ちょっと桜色は・・・。水色とかどうだ!?夏だし涼しい印象あるだろ!」

(セリーヌが好きな色だから桜色にしたいのはわかるが、さすがに俺が恥ずかしいよ!俺が着ることも忘れないで!)

【リボンとか付けてみたら可愛いと思うんだ!】
「リボン!?あ、あれだ、あれ!ファーとかの方がマントっぽくないか!?ちょっと高級感でるしさ!」

(リボンはさすがにきつい!ごめんよ、アオイ・・・。)

{日本では無理だったワイヤー入りのマントにしようよ!魔法でなんとかなると思うんだよね!}
「ワイヤー入り!?何言ってるんだ、詩乃は!?シンプルなのでいいだろ!simple is the best!」

(詩乃はたまによくわからんことを言ってくるから恐すぎるわ!詩乃の黒歴史は深すぎる。深淵だ。深淵を覗こうとすると深淵もこちらを覗いてくるからな。そっとしておこう)

『お師匠様も大変なのじゃな。妾はみなと同じ物が着れればなんでもよいのじゃ』
苦労をわかってくれるか、エステル!大変なんだよ、意外と!

(それはそれでどうなんだ?いちお公爵令嬢なんだし、身嗜みは気にした方がいいような気もするが・・・。まぁ俺があげた白衣着てるぐらいだしファッションにそこまでは興味ないんだろうな)

結局マントは大体俺の意見を取り入れられることになった
みんなそれなりに妥協はしてくれたみたいだ

マントは以下のような特徴となる
・膝丈まであるロングコートに近い長さのシンプルなマント
・全体的に薄水色で首周りや裾の部分にファーがある
・裾の端に大きめ(これは家族に押し切られた)のラブリーファントのワンポイントが刺繍してある
・ラブリーファントのワンポイントはお互いが向かい合い、出会おうとする為に走りだしているような絵柄だ

<a href="//23149.mitemin.net/i272892/" target="_blank"><img src="//23149.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i272892/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>

マントの概要が決まれば早速作成に取り掛かる

マントを縫い合わせていくのはミーを筆頭に、サーシャ、セリーヌ、サリー、サラ、詩乃、アオイ、そしてガーベラに、アマリリスだ

出来上がったマントを染色していくのはスイ、レン、それにアヤメだ

ファーの部分の素材は、ハリーとアイサが迷宮で回収してくるホワイトウルフの毛皮を使うみたいだ

最後にラブリーファントのワンポイントを刺繍するのが、ミー、サーシャ、詩乃、アオイ、アマリリスの裁縫ベテラン組となる

アヤメ達も含めた初めての家族総出での共同作業だ
みんなで一丸となって何かを作るっていいよね!
俺は楽しそうにマント作成をしている家族達を眺めながら、感慨深い物を感じていた

そう、共同作業をしている家族を眺めているのだ

や、やることないんだが!?
家族の共同作業だぞ!?一家の大黒柱だぞ!?

俺は不器用だ。自覚はある
魔力操作で繊細な技術が必要な時もあるが、それはもはや慣れでなんとでもある
しかし自分の手自らで何かを作るのは非常に苦手だ
裁縫とか無理無理!針の穴に糸を通すだけで疲れるわ~
魔法で生み出すのとは勝手がちがうんだよな・・・

なのでマントの縫い合わせは手伝えない
染色は余裕じゃね?と思っていたらかなりめんどくさいらしい
ファーの素材集めは訓練も兼ねてるし二人で十分だと断られた
最後の刺繍なんて絶対無理!そんな技術はない!

や、やることがない・・・
エステルは正確にはまだ・・家族ではないので百歩譲っていいとしよう。さすがに俺はまずいだろ!
・・・うっ!なんかぼっち時代の記憶がフラッシュバックしてくる・・・

(な、なにかないか!?みんなが喜びそうなやつ!なんかやってましたよ、をアピールできるものだ!・・・そうだ!魔山に行こう!ラブリーファントを捕まえてくるんだ!サーシャ達が飼いたそうにしてたもんな!)

「エステル。暇ならラブリーファントを一緒に捕まえにいかないか?この前のファントレーダーを試すいい時期だと思うんだ」
暇だし、エステルと魔山デートと洒落込むか!

『ラブリーファント!?飼うつもりなんじゃな!?』
やはりエステルも好きなのか。さっきもいい反応してたもんな

「そのつもりだよ。ほら、今やる事ないからさ」
『・・・お師匠様』
やめて!そんな可哀相な人を見る目で見ないで!

エステルに同情された俺はそのままエステルと魔山に向かうことにした
いちお家族には伝えたが、家族が聞いていたかは定かじゃない

□□□□

魔山50合目

エステルとともに魔山にきた俺は早速ファントレーダーを使ってみた

ファントレーダーとはラブリーファントを効率よく狩る為に作りだしたマジックアイテムだ
ラブリーファントの固体保有魔素と俺の気配察知スキルを組み込んだこのレーダーはどこにラブリーファントがいるのかを正確に割り出すことができる

「今、魔山にいるラブリーファントは52体みたいだな。結構いるもんなんだな。普段は20体前後だから半分以上は放置してたのか・・・もったいない」
『そんなにおるのか?さすが魔境の山なのじゃ』

とりあえず近場のラブリーファントを片っ端から捕獲するが、抵抗されるのでファント肉に変えていく
てか魔物を飼育するってそもそもできるのか?
アヤメ達みたいに知能がある一定以上あるなら可能だろうが、ラブリーファントにはないように思える

「これ無理じゃないか?ペットとして大人気ってサーシャは言ってたがどうやってるんだ?」
『魔物使いの隷属スキルなんじゃろうな。昔、武闘場でそういうイベントを見たことがあるのじゃ』

(そういう事は早く言ってくれよ!しかし魔物使いか・・・。さすがに魔物使いは過去の勇者時代にもいなかったから知らないなぁ。記憶さえあればスキル創れるんだがなぁ・・・。過去のエステルの記憶さえ貰えるか複製さえできれば創れそうなのに・・・いや?待てよ?)

「なぁ、エステル。俺の仲間にさ、相手に触れることで相手の記憶を貰ってスキルを創るやついたんだけどさ、それってもしかして・・・」

(確かマリーがショーマリーに来たときにやってたような?それでショーマリーの言語とステータスを得たとか言ってた気がする)

『凄いことする仲間がおるんじゃな。それも恐らくは錬成の抽出の力なのじゃ。ただ・・・相手の記憶を覗くんじゃから下手すると相手の脳に障害や記憶欠損が起こる可能性はあるじゃろうな。抽出の中でも恐らくは最高クラスの力じゃ。もしかしたらその者は相手の記憶の入れ替えさえできたのではないか?抽出ができるのじゃから入れ替えもできるのは道理なのじゃ。催眠や洗脳のように思わせるのとは違い、なかった出来事をさも経験したと記憶に刷り込ませるのじゃから、まさに魔法の領域を越えておるのじゃ』

(な、なるほど。想像以上にやばい力だな・・・。確かにマリーみたいな他人に絶対無関心なぐらいの胆力がないとおいそれと使える魔法じゃないよな。うまく使えば、エステルの記憶の中を俺だけに染め上げることもできるみたいだ・・・いやいやいや!そんな操り人形みたいなことしなくてもエステルは必ず手に入れてみせる!・・・ただこの魔法はとても有能ではある。できることなら手に入れたい。俺が更に強くなる為にも!あとはエステルがこの魔法についてどう感じてるかだよな?)

「もし俺がその魔法を創りあげたらエステルはどう思う?そしてそれをエステルに使いたいと言ったら使わせてくれるか?」
『お師匠様なら問題ないはずなのじゃ。だから構わぬのじゃ!』
軽くね!?その根拠はなんだ!?

「いや~さすがに。その訳のわからない根拠はなんだ?」
『力の大きさを知ったから、創るかまたは創った後の事を悩んで妾に聞いてきたのではないのか?ならお師匠様はちゃんとその力の強さを理解しておるのじゃ。きっとお師匠様はその力を悪用しないはずじゃ。だから問題ないのじゃ!またお師匠様はこっそり力を使うこともできたはずなのに、わざわざ使ってきていいか確認してきたのじゃ。相手を気遣う優しさがあるなら、脳への障害や記憶欠損等のリスクについてもお師匠様ならちゃんと考えて対策するはずなのじゃ。対策してくれるなら心配などないのじゃ。たがら構わぬのじゃ!』

(ふ~む。エステルからの絶大な信頼を感じるな・・・。エステルは俺の事を好きで好きでたまらないはずなんだがなぁ。なぜこれほどの信頼があっても愛情スキルが付かないのか本当に謎すぎる・・・。まだアピールし足りないのだろうか?足りないアピールか・・・)

「ありがとう、エステル。早速どんなふうに創ったらいいか相談に乗ってくれ!」
『任せるのじゃ!』

それから俺とエステルは新魔法について話し合った
魔法を創るだけならすぐできる
俺には記憶創造があるから。しかし今回は使わない
ネックとなっているのはやはり脳へのリスクだ
俺の手持ちスキルから必要そうなスキルをエステルが選んでいく

『まずは抽出するための大元である、抽出スキルなのじゃ。この『魔力極操』の中にある、抽出スキルとオート操術スキルがよいのじゃ』
オート操術?なんでいるんだ?

話を聞くと記憶を入れ替えた際にこちらの意のままに操れるようにする為らしい
あくまで保険らしい。ほ、保険は大事だよな・・・
おいそれとは使わないからな!?

『次は身体強化のスキル『マテリアル』から、パーフェクトフォースを抽出するのじゃ。このパーフェクトフォースは記憶中枢に付与し記憶収集をしている間、脳が堪えられるよう強化する為なのじゃ』
魔力負担によって脳が収集に堪えられないかもしれないしな

脳にどれだけの負担がかかるかわからない以上は必要だろう
最悪ぐちゃりとかありそうだもんなぁ
そう考えると使う前には必ず許可を得た方がいいよな
まぁ敵から記憶を奪う際は許可はいらないか
これは任意で発動できるようにしよう

『これはあくまで保険じゃな。エクストラオートヒールからエクストラヒーリングを抽出して、記憶中枢に付与するのじゃ。パーフェクトフォースの補助的な役割じゃ。あくまで保険、万が一がないように、なのじゃ』

へぇ~。ちゃんと考えてるんだな
あらゆる不安要素を考慮しての万全の策か
さすがエステルだ!頼りがいがある

『その次は『アプソリュート』から絶対加護のスキルを抽出するのじゃ。お師匠様の魔力はバカ高いから脳を壊しかけないのじゃ。まずは脳を絶対加護で守ってからパーフェクトフォースをかけるのがよいのじゃ。脳を絶対加護で脳の外からを、パーフェクトフォースで脳の中からを守る二段構えじゃ!』

ごふっ。・・・魔力がバカ高くて悪かったな!
にしても万全も万全な対策だな
それだけ注意が必要というわけか
危ない魔法だもんなぁ~

『最後は『無限書庫』から書庫のスキルを抽出するのじゃ。これも記憶中枢に付与じゃな。記憶を入れ替えるときに使えばよいのじゃ。お師匠様は知識がないからのぅ。知識は妾がおらぬと本当ダメなのじゃ!』

俺は苦笑した。確かにそうだな。俺は無知だ
だからエステルに側にいてもらいたいんだ
いつまでも俺の側で知恵を貸してほしい
そのためにもエステルは絶対に手に入れないとな!

「分かった!今から早速創るよ。少し待っててくれ」
『分かったのじゃ!』

(よし、創るか!まずは魔力極操でそれぞれのスキルから、必要なスキルを抽出だ。『魔力極操』からは抽出とオート操術。『マテリアル』からはパーフェクトフォース。『エクストラオートヒール』からはエクストラヒーリング。『アプソリュート』からは絶対加護。『無限書庫』からは書庫。・・・魔力極操・抽出!)

よし、とりあえずそれぞれのスキルは抽出完了だ
今度はこれらをスキル管制で合成していくか
スキルの発動順番も指定しないとな

(まずは脳を破壊しないよう、絶対加護からの発動だ。その次に記憶収集に脳が堪えられるよう強化するため、パーフェクトフォースの発動。そのあと万が一の保険用でエクストラヒーリングを発動。これらは任意で発動可能に設定っと。敵にまで慈悲はいらないもんな。記憶だけ奪って脳を破壊すればそのまま倒せるし。その次は記憶を収集するため、抽出を発動。書庫とオート操術も任意で発動可能に設定だ。・・・スキル管制・合成!最後は合成したスキルを魔法に創造して完了だ!・・・世界創造!)

【創造魔法『記憶収集』を習得 ランク:不明】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
創造魔法『記憶収集』 ランク:不明
エステルが考案しユウジが創造せし魔法
『抽出』+『オート操術』+『パーフェクトフォース』+『エクストラヒーリング』+『絶対加護』+『書庫』を合成した複合魔法 (上記のスキルは任意で発動可能)
相手に触れることで相手の記憶を収集・入替が可能
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「よし!できたぞ!かなりチート臭い魔法が!」
『おめでとうなのじゃ!お師匠様は既にチート臭い存在だから問題ないのじゃ!』
・・・ほほぅ。言うねぇ~。そうですか、チート臭いですか

「早速エステルに使いたいんだが、いいか?」
『もちろんなのじゃ。魔物使いの隷属スキルを創るつもりなのじゃろ?』
今許可したな?ちゃんと許可したよな?俺は聞いたぞ?

「その通りだ。それでな、一つ問題があるんだよ。余りにも強力な魔法の為、特別な制約があるみたいなんだ。相手に触れないといけない訳だが、なにやらキスをするか、してもらわないといけないみたいなんだよ。場所はどこでもいいらしいが。制約は使用者の影響を強く受けるみたいでさ。それでエステル、どちらがキスする?」

『なっ!?』

まぁ嘘なんだけどね!
エステルが俺を好きなのは間違いない
そして俺もエステルが間違いなく好きだ
お互い想ってるのに愛情スキルが付かないのは、まだアピールし足りない証拠だ!
ならアピールする為にもキスは必要だろう!

「さっき使用許可くれたし今更なしはダメだぞ?」
『・・・必要だからキスをするのじゃな?』
・・・ん?確かに俺にはエステルが必要だが?

「そうだ!必要だからキスをしたい!どちらがする?」
『お、お師匠様からでお願いするのじゃ。でも唇は嫌なのじゃ・・・』
唇は嫌か・・・。いや、急で恥ずかしいだけだな、きっと!

「分かった。じゃあ頬にするな?」
『・・・』
無言で頷くエステル

う~ん?嬉しそうではあるんだがなんか違和感あるな?
いちおエステルは必要・・・・・・・だと言葉にしたはずなんだがな
サーシャなら喜びそうなものだが、エステルは喜ぶポイントが違うのだろうか?

違和感を感じつつもエステルを抱き寄せる
エステルの体が強張るのを感じた
あ、初めてだもんな!違和感は緊張のせいか!

「大丈夫だから」
『・・・』

相変わらず体が強張っているが拒否はされない
俺はそのままエステルの柔らかそうな頬へとキスをする

(・・・記憶収集!)

エステルの記憶から必要な記憶を収集していく
その間もずっとエステルにキスしたままだ
微かに震えているようだ、かなり緊張しているのだろう

エステルの記憶を収集し終えた俺は名残惜しみながらも、エステルの頬から顔をどけた
唇にしたかったなぁ・・・いや、まだ機会はあるはずだ!
これからもアピールし続けないとな!

「ありがとう、エステル。とてもおいしかったです!」
『~~~!そ、そういう感想はいらないのじゃ!』

(照れちゃって可愛いやつだな。さて、確認するか。・・・神眼!・・・う~ん。愛情スキルはつかないかぁ。やはり唇と唇のキスじゃないとダメか?まぁキスする手段は増えたし今後に期待だな!)

『そ、それでどうなのじゃ?上手くいったのか?妾は特に問題はないようなのじゃ』
「あぁ、上手くいったよ。エステルのおかげだ、ありがとう」

(エステルの記憶から・・・記憶創造!)

【スキル『魔物調教』を取得 ランク:SS】

「調教みたいだな。これでラブリーファントを捕まえられるはずだ!早速捕まえよう!」

新たなスキルを得た俺はエステルとともにラブリーファントを捕まえ始めた
調教スキルはレベル依存らしくあっという間にラブリーファントを捕まえることはできた。拍子抜けである

『お師匠様!可愛いのじゃ!名前!名前はなんにするのじゃ?』
随分嬉しそうだなぁ。俺まで嬉しくなるよ!

「ラブリーファントはどうか知らないが、うさぎと言えば人参だよな。・・・キャロット、長いな。キャロでいいんじゃないか?」
『安易じゃのぅ。でも可愛い名前なのじゃ!』

ラブリーファントのキャロを胸に抱くエステルは年相応に見える
やはりエステルは可愛いな
俺はキャロではなく喜びはしゃぐエステルをただひたすら眺めていた

(あれ?ミーとキャロは同族嫌悪とかしないよな?猫はするんだっけ?まぁ大丈夫かな)

新たな家族のキャロとともに帰宅すると、キャロは大人気であった

ミーが少し膨れていたので、たっぷりもふもふしてあげた
ミーもキャロに負けないぐらい可愛いんだがなぁ

家族の共同作業の結晶『ラブリーマント』は間もなく完成だ

晩夏の10月25日、武術大会がいよいよ始まろうとしていた

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品