過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

武術大会本選 ~ユウジ vs 月光仮面~

武術大会予選日 ~アンジェリーヌ戦後~

俺はアンジェリーヌを下した後、観客席にいるエステル達の元へ移動した
エステルがなでなで不足で欲求不満になっているからだ
エステルの場合はご褒美としてなでなでをしているので、何かにつけては頼ることにしている
サーシャに聞けばわかりそうなことでもだ
じゃないとエステルにご褒美をあげられないからな!

「にしても、なんで今回はこんなにSランクが多くいるんだ?前回は1人だけだったぞ?」
俺は二人の傑物の戦いに目をやりながらエステルに尋ねる

今は月光仮面とシェスティン=ルリエの戦いが繰り広げられている最中だ
一進一退の戦いが繰り広げられているが、若干月光仮面が押しているように見える
ただこの戦いはある意味注目度が高い。特に男からの注目度だが。

『シェスティン=ルリエ』 18歳 ♀ 人間族 聖職者
Sランク冒険者『蒼天の宝玉』と呼ばれる、冒険者の中でもアイドル的存在らしい
身長は少し高めで170あるかどうか、モデル体型だ
紫の目に、通り名になるほどの美しい蒼天色の髪
髪型はナチュラルミディアムヘアーだ
職業が聖職者と言うもこともあってシスターの格好をしている
こんな子がSランクになれるのか?と思っていたら、血を見ると性格が一変するらしい
何でも残虐で好戦的になるとか。しかも武器はモーニングスターだ

(物騒すぎだろ!美しいものには刺がある、の例えかよ!)

対する月光仮面はなぜか情報が未公開だ
さすがのエステルも月光仮面については知らないらしい

しかしそんなことはどうでもいい!
この二人の戦いがなぜ男性から熱い注目度を浴びているのか?
それはもちろんシェスティン効果もあるだろう
だがそれだけではない!みんな目が釘付けなのだ!
二人のある一部分に!

シェスティンはかなりデカい。ヘイネ以上かもしれない
そして月光仮面もかなりデカい。ヘイネと同等かもしれない

そう!巨乳vs爆乳!こんなの注目するに決まってるだろ!!
更には一進一退だから揺れる、揺れる・・・
俺にとっての武術大会が地獄から天国へと変わった瞬間である

□□□□

話が逸れた、戻そう
またしてもSランク冒険者だ。
アンジェリーヌもSランクだったぞ?

『アンジェリーヌとシェスティンだけではないのじゃ。トルステン=ゲルハルトもステファン=ベーンもSランク冒険者なのじゃ』
「は?なんでそんなにいんの?いすぎじゃないか?」
なんで急にSランクほいほい化しちゃったの!?

『お師匠様が原因らしいのじゃ。聞いたところ、ロビンはSランク冒険者の中でもそれなりに腕の立つ冒険者だったみたいなのじゃ。そんなロビンを瞬殺したお師匠様が武術大会にでると噂になれば、お師匠様を一目見ようと思うんじゃないかのぅ?』
「いやいやいや!地域予選は?俺がSランクになったのは10月頭だぞ?地域予選終了してるぞ?参加資格ないよな?」

噂?なんで噂なんかに・・・?
それよりも地域予選は8月にあったから時期的に無理だろ!

『簡単なことじゃ。Sランク冒険者の特権を使ったのじゃろう。Sランク冒険者は地域予選は免除だからのぅ』
「はああああ!?なんだそりゃ!Sランク優遇されすぎだろ!」

え?じゃあなに?俺目的にSランクが集まっちゃったの?
だから旦那の仇~!とか言ってたアンジェリーヌがいたのか・・・
野郎冒険者はどうでもいいが、そうなるとシェスティンちゃんも俺目的?あの爆乳ちゃんが!?げへへ、たまらんな・・・

情報をくれた目の前の巨乳エステルの頭を何度もなでてあげる

それからしばらくして、巨乳月光仮面爆乳シェスティン巨乳月光仮面の勝利で幕を閉じた。爆乳シェスティンちゃん残念だったね!
胸の大きさは爆乳シェスティンちゃんが上だったが、戦闘はどうやら巨乳月光仮面ちゃんが上だったみたいだ。胸の優劣で勝敗が決まる訳ではないらしい

その後のベスト8戦は順当にアイサ、セリーヌ、サーシャとSランク冒険者達が勝ち進んだ

予想通りと言えば予想通りだが、ベスト8に残った8人中5人が俺の家族という異例の状態となった
まさに武術大会を俺の家族達が席巻した瞬間だった


□□□□

武術大会本選

武術大会最終日だ
俺は初戦ではあるが不戦勝となった
対戦相手であるハリーが大会運営に事前に棄権する旨を伝えていたからだ。俺はなんなくベスト4へと駒を進めた

今は月光仮面とアイサが衝突している
月光仮面の昨日の戦いぶりからアイサの余裕勝ちだろうと判断していたのだが・・・

「おいおい。どうなってる?アイサ自慢の防御力が全く役に立ってないじゃないか」
『おかしいのじゃ。月光仮面の動きが昨日と全然違うのじゃ。いかにも昨日は手加減してました、と言わんばかりなのじゃ』

本来アイサの戦い方は相手の攻撃を盾で防いでランスで突くというものだ。
後の後ともいうべきスタンスを貫いている。だからアイサから攻撃を仕掛けることは全くない
だが今はアイサから攻撃を仕掛けている。そうせざるを得ない状況だからだ
後の後の戦い方は基本絶対的な防御力があってこその戦い方だ
そう、必ず相手の攻撃を防がなければ意味がないのだ

だが月光仮面は盾で守られていない部分を的確に攻撃したり、アイサが盾の中で見を固めれば強引に盾を弾き飛ばして攻撃を与えている
月光仮面は力とスピードにおいてはアイサとは別次元にいるようだ
これでは後の後の戦い方ができない、ともすれば戦い方を変えなければいけないのだが・・・

「う~ん。月光仮面の方が一枚も二枚も上手だな。残念だがアイサは勝てないだろう。相手が強すぎる」
アイサの動きがぎこちなさすぎる。もはや勝負にすらならないな

『そうじゃな。アイサやハリーでは敵わぬのじゃ。もちろんお師匠様達の敵ではないがのぅ。妾やアオイでも余裕なのじゃ!月光仮面の昨日の戦いぶりから察すると今日の力が本気とみていいかもしれないのじゃ』

(考え方が楽観的すぎるような気もするな。月光仮面は実際昨日はシェスティンに合わせた力で戦っていた。そして今日はアイサに合わせた力にしている。相手に合わせた力で戦うのは実際相当難しいぞ?本当の力はまだまだ隠していると考えた方がいいだろう。なんでわざわざ相手に合わせて本当の力を隠すような変な戦い方をしてるのかはわからないが。・・・まぁそれでも確かに俺の敵ではないだろうな)

月光仮面とアイサの戦いはしばらく続いたが、やはり俺とエステルの目算通り月光仮面の圧勝で終わることになる
俺達が見れば圧勝なのだろうが、周りの観客からすれば惜敗に見えたかもしれない
それぐらい月光仮面の戦いぶりは相手に上手く合わせていたからだ

俺の準決勝の対戦相手は月光仮面に決まった

その後のベスト4戦に関しては、セリーヌとサーシャが順当にSランク冒険者をそれぞれ下した

ここに遂に4強が出揃った
俺に、月光仮面に、セリーヌに、サーシャ

武術大会もいよいよ大詰めだ!


□□□□

武術大会本選 ~昼休み~

俺達家族は昨日同様サーシャとサラのお弁当に舌鼓を打っていた
お弁当のスパイスとなったのはやはり準々決勝の話だ

「アイサは残念だったな。相手が強すぎた。でもいい経験になっただろ?これからも「ねちねち」と精進するように!」

たゆまぬ努力が力になるのだよ、アイサ君!
今後の課題も見えたであろう、弱点を克服するのだ!

[ね、ねちねちは言わないでいいであります!確かに月光仮面殿には全く敵わなかったでありますな。ユウジ殿達以外にもあんなに強い方がいるとは・・・。いい勉強になったであります!]
昨日からだが、ねちねち言うと異常反応するから面白いんだよな

「セリーヌもサーシャも準々決勝はお疲れ?まぁ妥当な結果だよなぁ。二人に勝てる存在がこのイリアスにいるのかさえ疑問だしな」
もはやトーナメント組む必要すらないよな

[やっとサーシャと戦えますの!全力でいきますの!]
〔私だって負けませんよ!今日こそ師匠越えしてみせますから!〕

うんうん、美しきかな師弟愛。美しきかな姉妹愛
で、でもあまり無茶しないでね?会場なくなるから・・・

[ユウ様も頑張ってですの!月光仮面は強敵ですの!]
「ん?セリーヌが言うほどとは思わないんだが?確かに強くはあるがそれでも俺達の敵ではないだろ?」
なんだ?セリーヌにはなにかビビッとくるなにかがあったのか?

[以前セリーヌが使ってた仮面を被ってますの!侮れない兵ですの!]
「『〔[・・・]〕』」

(だ、誰も敢えて触れないようにしていた話題をまさか持ちだしてくるとは・・・)

そう、月光仮面が被っている仮面は以前セリーヌが覆面少女セラの時に使用していた仮面なのだ
屋台で販売されている変てこな仮面で、妙に子供達に人気がある不思議な仮面だ
なぜあの仮面で月光仮面と名乗っているのかは謎すぎるし、考えたくもない

[それにユウ様達は知らないんですの?]
「な、なにをだ?」
セリーヌは一体なにを言い出すつもりだ!?

[あの仮面は内にある更なる野性を呼び醒ますらしいですの! [お嬢ちゃんいいか?人は言うチャンピオンが仮面なのか仮面がチャンピオンなのか・・・それは現代では説明できないんだぜ!お嬢ちゃん、 この仮面を被ったらパンチ力が増すんだぜ!]と屋台のおじさんが言ってましたの!]

ほぅほぅあの仮面にはそんな秘密があるんですか
それはとても興味深いですな・・・

「んな訳あるかああああ!なにその暑苦しいセリフは!?そのおじさんはグラ○ドラインにでも航海してきちゃったの!?ひとつ○ぎの財宝でも目指してるの!?セリーヌ、騙されてるから!チャンピオンが仮面でちゃんと説明できるから!仮面被ってもパンチ力は変わらないから!」

そこにちゃぶ台があったらまさにひっくり返す勢いでセリーヌに迫った
その屋台のおじさんは危険だ!俺の可愛い純真な心のセリーヌになんてことを吹き込みやがる!
セリーヌが買い物をする時は必ずお供をつけさせないと・・・

改めて純真すぎるセリーヌに不安を抱いた昼休みだった

□□□□

武術大会本選 ~ユウジ  vs  月光仮面~

昼休みも終わりいよいよ準決勝だ
武舞台上には既に月光仮面がいた

月光仮面を改めてよく見ると線が細く見えるのに、体つきはなんというかムチッとしている
しっかり出るとこは出ている・・・というか存在を主張している
一言で言うならエロいな。醸し出す雰囲気がエロスだ
全体的に白をベースとした装備だからか、清楚そうなのに実は!みたいに、余計そう感じさせるのかもしれない
それ故に仮面をしているのが残念でならない

余りにもジッと見ていた為か月光仮面に気付かれる
おっと!気付かれてしまったか!
文句を言われるかと思ったが月光仮面にペコリッとお辞儀をされてしまった
う、う~ん。なんか調子狂うな・・・

決まりだからだろうか、毎回審判から試合の注意点を説明される
もちろん俺は聞かない、既に耳ダコだ
しかし月光仮面は、うんうんと頷いている。真面目だなぁ

そして遂に試合開始の合図だ!

合図とともに月光仮面がペコリッとまたしてもお辞儀をしてきた
いや、お辞儀というよりは礼か?

(礼儀正しいやつだな・・・。試合開始の礼なんて武術大会では初めて見たぞ?イリアスにもそんな文化があるのだろうか?)

月光仮面が少し腰を落とし構える
これまでの戦いもそうだったが体術がメインらしい

「えっと。いちお聞くが降参する気はない?あまり女の子とは戦いたくないんだよね」
《私を女の子扱いしてくれるんだね。でも降参はしないよ》

(いや女の子扱いしてくれる、って当たり前だろ。そんなたわわなもん実らせてたら嫌でも女の子扱いするわ!・・・それにしてもなんだこの声?掠れてる?女の子の声ではあるのだが・・・?まぁとりあえず・・・神眼!)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 
%£¢・★@仝◎ レベル:■0〒

種族:ヰ♀$
職業:+⊥≫

体力:Å≡∃⌒⊥∠
魔力:〒⊂⊇∧ー∥
筋力:※▲←◎■〓
敏捷:♪ゑヱ◯‰∬
器用:ΜΘゐ∵∝†¬
幸運:⊿Ⅳ

加護:¥#☆
称号:≧∞%
技能:■→⇒

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(な、、、んだと!?神眼が効かない!?ユニークアイテム持ちか!?ここまで完璧な偽装ができるユニークアイテムなんて初めて見たぞ!?くっそ羨ましいな!女の子じゃなかったら奪ってたのに!!・・・もしかしたら声もユニークアイテムの効力か?)

とりあえずいつものように・・・・・・・力の差を見せつけるか
もしかしたら降参するかもしれないしな
体術がお得意なら体術で打ちのめす!
相手の得意なもので打ちのめすのが一番効果的だからな

「そうか、なら仕方ない。力の差を見せつけるまでだ・・・テレポート!」

俺はいつも・・・そうしているように、月光仮面の背後にテレポートして手刀を浴びせようとした

(まぁ月光仮面ほどの実力があれば手刀では落ちないだろうな。だが訳がわからない内に攻撃されたと分かれば実力の差を思い知るだろう)

月光仮面の首筋にまさに俺の手刀が当たろうとした瞬間にそれは起きた

「ごふっ・・・」
俺の腹に強烈な激痛が走る。思わず膝を着いてしまった

そんな俺達の戦いに会場は大盛り上がりだ。割れんばかりの歓声が鳴り響く
視認できないほどの一瞬のやり取りにハイレベルな戦いだと判断したのだろう

でも俺はそんなことを気にしていられないほど深手を負ってしまった
恐らくみぞおちに、月光仮面の攻撃が偶然・・入ってしまったのかもしれない
激痛と呼吸困難でかなり苦しい。
一旦月光仮面から離れたいが集中力が散漫してテレポートが使えない

「ハァハァ。ちょっ!?ま、待て!?タンマ!!」
や、やばい!早く離れないと!畳み込まれる!!

苦しんでいる状態の俺に月光仮面から更なる攻撃が続く
月光仮面から繰り出されたのはシンプルな右回し蹴りだ
ただその回し蹴りから繰り出される風切り音が尋常じゃない
ゴオオオォォォ!!と轟音を鳴らして迫ってくる

(なんて音出してたんだよ!お前セリーヌかよ!この体勢からじゃ避けられない!ガードするしか!!)

月光仮面から繰り出された右回し蹴りを左手でガードしてなんとか防ぐ・・・ことが出来ずに吹き飛ばされた

(はああああ!?なんちゅうバカ力だよ!?これは尋常じゃない相手だぞ!?俺やセリーヌ、サーシャ以外にまだこんなやつがイリアスにいたのか!?こいつ何者だよ!?とりあえず回復しないと!思った以上にダメージがでかい・・・神眼!・・・おいおいおいおい。状態だろ?体力が3分の1も削らされたぞ・・・。)

回復に努める間も月光仮面の追撃を警戒する
腹のダメージは回復した。まだ左手は痺れているがこれならなんとか反撃できる
静かに月光仮面の動向を見守る

(・・・?追撃してこない?そのへんのやつならチャンスだとばかりに追撃してきそうなものなのに?これは・・・。腹に与えたダメージと言い、回し蹴りの力と言い、この冷静な判断と言い・・・。認識を改めよう。月光仮面は強敵だ。本気でいかないとやられるぞ)

俺が月光仮面の認識を改めていたその時に月光仮面が口を開いた

《ねぇ、一つ聞いていい?戦いにおいて重要なものは『戦う力』となんだと思う?》
いきなりなんだ?戦いの最中だぞ?

「・・・重要なものは『情報』だな。知っているのと知らないのでは戦い方に大きな差が出る。命のやりとりをするような強敵との戦いにおいては『情報』の有無で明暗が分かれるからな」

《そうだよね!・・・じゃあ、いくよ!》
ん?分かっていたのか?ならなんで聞いてきた?

月光仮面がそう言うと目にも止まらぬ速さで迫ってきた
くっ!この速さは・・・!

俺は月光仮面から繰り出される突きを左手で払い、月光仮面に右の拳を繰り出す
俺が繰り出した右拳を月光仮面がキチンと見えているとばかりに華麗に躱す
体勢を崩した俺に月光仮面から右のフックが飛んでくる。もちろん俺もしっかり見えているのでそれを頭を下げて躱す
お返しとばかりに月光仮面のお腹に突きを繰り出す。その突きもやはり躱されてしまう。恐ろしく回避能力が高い
俺と月光仮面はしばらく打ち合う形となった

しばらくすると体力の差だろうか徐々に均衡が崩れてきている
明らかに月光仮面の手数が減ってきているのだ

これ幸いと月光仮面の利き手であろう右腕を背中にねじあげて降参を促した時にそれは起こった
月光仮面が力を抜いて素早く回転し俺の正面を向いたのだ
そして正面を向いたかと思えば足を踏み付けられ、あごに掌底を叩き付けられた
俺の目から星が飛び散った瞬間だった

また別のシーンでは抵抗できないよう後ろから羽交い締めにもした
羽交い締めにも月光仮面の対応は実に見事だった
俺の手首を掴んだかと思ったら手前に引き、同時に肘で脇腹をついてこようとした。
これは間一髪避けることができた

「ハァハァ」
《はぁはぁ》
まさかセリーヌ達以外で肩で息をつく日がくるとは思わなかった

(かなり強い・・・。徐々に均衡が崩れてきて優位に立ったのはいいが、護身術らしきものが邪魔すぎる!)

《はぁはぁ、肩で息をついてるね。本気だったのかな?》
「ハァハァ。ま、まだまだ本気じゃないさ」
《そうなの?汗すごいよ?》
「・・・。はぁ、どうせ汗かくならベッドの上でかきたいもんだよ。戦いじゃなくてさ。・・・どう?一緒にかいてみないか?」
《くすっ。機会があったらね?・・・ほん・・・ね》

(え!?機会あったらいいの?マジで!?なんか最後のほうはよくきこえなかったが・・・。冗談はさておきどうするか・・・。力は俺が上みたいだが、敏捷は同じぐらいだな。このまま体術でいっても決着がつくかどうか・・・)

俺がどうしようか思い悩んでいたら月光仮面から切り出してきた

《体術だと私のほうが分が悪いみたいだね。魔法で勝負してみてもいい?》

月光仮面は現状をキチンと理解しているみたいだな
俺としても体術で力の差を見せつけるには至らなかったので助かる

「あぁ、構わないぞ?言っておくが俺は神級も使える」
《そう、それは楽しみ。いくよ?》

もはや月光仮面に手加減は必要ない
手加減なんかしてたらこちらがやられる
神級魔法で一気に片をつけるつもりだ。月光仮面なら死にはしないだろう!

「こちらもいくぞ?神級火炎魔法・地獄怨嗟インフェルノ!」

俺が生み出したる火炎魔法は神級魔法と呼ばれる伝説魔法だ
いちおイリアスに存在する魔法だがあくまで伝承レベルの代物だ
地獄のマグマたるこの火炎は相手を燃やし尽くすまでは消えないとかなんとか、そんなことが書かれてた気がする

(殺す気はないんだけど多分大丈夫だよな?自ら魔法勝負を挑んできたんだから自信あるはず。・・・大丈夫だよな?)

俺のインフェルノが月光仮面に襲い掛かる
月光仮面は両手を広げた状態のままだ
なにをするつもりだ?興味深げに月光仮面を注視する

しばらくすると月光仮面の掌より一匹の鳥が現れた
炎に燃え盛る一匹の鳥は大空を優雅に舞飛び、そのまま大きく口を開け俺のインフェルノを飲み込んでしまった
その姿たるやまさに不死鳥。
不死鳥はインフェルノなどまるでなかったかのように俺に飛来してくる。少し不安ではあったがなんとか全力のアプソリュートで対応することができた

(な、なんだ今の魔法!?見たことも聞いたこともないぞ!?イリアスにない魔法を創り出したのか?それとも俺が知らないだけか?とりあえず確かめないと・・・)

「つ、次だ。神級迅雷魔法・雷火轟蕾ライジングバースト!」

俺が次に生み出したる迅雷魔法はこれまた神級魔法だ
轟音を轟かすこの迅雷は、雷の蕾を多数撒き散らし無数のいかずちを降らす、とそんなふうに書かれてた気がする

(今まで使ったことないからどんな魔法かわからないんだよなぁ。こんな魔法なんだな。広範囲系魔法か、これなら一気に殲滅はできないだろう)

さて月光仮面はどうでる?正直俺はワクワクしている
ここまで全力で戦える相手だとは思ってもいなかった
月光仮面の繰り出す技の一つ一つに心が躍る
もはや大会のことなんかどうでもいいぐらい月光仮面に夢中だった

俺の雷火轟蕾に対して月光仮面がとった手は同じ迅雷魔法だ
ますます俺好みの戦い方だ。真っ正面から力の限りぶつかってくる
無茶でもない、無謀でもない。勝算あってのことだろう
そしてさっきから気になっているのは月光仮面のポーズだ
両手を広げることに意味があるのだろうか?
そして月光仮面が使ってきた迅雷魔法はやはり見たことがない魔法だった。雷神?姿を形容するならまさにそれだ

(どれだけ魔法を生み出してるんだ!?面白すぎるだろ!月光仮面!エステルの錬成を見たときのような高揚感が沸いて来る!・・・とりあえずあの雷神は危険だ。アプソリュートで防げるかどうか?無難に雷火轟蕾を錬成で増幅するか)

俺は可能なかぎり雷火轟蕾を錬成で増幅する
雷神が俺に届くギリギリまでだ!
念の為アプソリュートも強化しておく。保険だ、保険!

増幅された雷火轟蕾と雷神はほぼ互角みたいだ
上空で凄まじい轟音と雷が鳴り響く。まるで雷の花火が舞い上がっているようだ

《今のはどうやって防いだの?同じ魔法みたいだったけど?》

雷神を防がれて驚いてる様子の月光仮面が尋ねてきた
仮面被ってるから表情が窺い知れん。多分驚いていたのかも?
凄まじい魔法の使い手だが、やはり錬成は知らないらしい

「教えてもいいけど俺にも聞きたいことがある。それを話してくれたら、だな」
《なんだろう?内容によるかな?》
あれ?話してくれそう?秘密主義って訳ではないのか?

「魔法を放つ前にしているポーズと見たこともない魔法。なにか関連性あるんだろ?」

《・・・知らないこともあるんだね。いいよ、教えてあげる!私が使ってるのは融合魔法。複合とは違うよ?今までのは神級と精霊級を融合した魔法だよ。もちろん神級と神級も融合できる。ただ神級と神級だと少し時間かかるから即興で使える神級と精霊級を融合してるんだよ。ポーズはなんとなくカッコイイかな?ってそれだけ。これでいいかな?私にもどうやって融合魔法を防いだか教えてね?》

(融合魔法・・・。つまり雷火轟蕾と雷火轟蕾を組み合わせて全く別の魔法を生み出すという訳か。発想は微妙に錬成の増幅に近いな。雷神も雷火轟蕾の増幅と互角だったしな。しかも時間さえかければ雷神の上さえ出せるのか・・・。俺も時間さえかければ更なる増幅ができるが魔法の才能は月光仮面のほうが上とみるべきだな。そしてポーズの件は気にしないでスルーしよう。凄いやつなんだがよくわからんな)

「教えてくれてありがとう。でも俺は教えない」
《ええええ!?ずるいよ!?私が話したら教えてくれるって言ったよね!?》
言ったよ?確かに言ったさ!でも約束はしてないんだよなぁ

「相手に秘密を話すバカがどこにいるんだよ?あっ・・・目の前にいたな。とりあえず俺は話さないぞ?そうだな、降参してくれたら話してやってもいいな」
《それって普通、《俺に勝ったら話してやる》って言うところじゃないの?》
それはテンプレだな。俺はテンプレは踏まない主義なんだよ

「俺が負ける訳ないだろ?俺は負けないんだからそんな条件つけたら一生話せないだろ。だから降参したら話してやるんだよ。・・・というわけで魔法では分が悪いから体術でいかせてもらう」

こうしてまた俺と月光仮面の間で果てしない体術の応酬とたまに魔法の駆け引きが行われることになった
魔法では分が悪いが、やはり体術だと体力面での差が徐々にでき始めてきていた

時間さえかければもはや勝利は目前まで迫ってきていた

(本当よくここまでもったもんだよな。こんなにワクワクしたのはヘイネ以来だよ。ありがとう月光仮面)

「ハァハァ・・・ふぅ~。もう降参したらどうだ?それだけの実力があるんだ。このまま続けても俺に勝てないのは分かってるだろ?」

《はぁはぁ、そう、、だね。ちょっと、、きついかな。はぁはぁ。・・・分かった、降参するよ?約束する。でもその前に私のとっておきを最後に使わさせてもらってもいい?》

(ほほぉ~、とっておきか。凄く気になるな。正直怖くもあるが見てみたい!降参してくれるみたいだし、最後ぐらいいか)

俺は月光仮面に向かって首を縦に振る
月光仮面のとっておきは恐らく魔法だろう
見たこともない魔法を次々に生み出す恐ろしいまでの才能
正直普通にぶつかっては勝ち目がないかもしれない

だから俺は『切り札』を使うつもりだ!


ユウジと月光仮面の最終局面

『ユウジの切り札』と『月光仮面のとっておき』が今まさにぶつかろうとしていた

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