過去と現在を結ぶ異世界ストーリー

なつきいろ

~新米冒険者④と制裁会議~エステル攻略戦⑥

商都リブループ・ユウジ別荘 ~家族会議~

さて、家族会議も大詰めを迎えてきた
本日最後の課題は詩乃が危惧していた報復の件だ

まぁバレやしないと思うが対策はしていたほうがいいだろう

テレサ達はダークエルフに羊人、銀狼に梟人とみな希少価値がかなり高い種族ばかりだ
もしかしたら貴族も血眼になって探してくるかもしれない
いや探すだろう、こういうのはテンプレだしな
だったらこちらから先に貴族を潰したほうがいい

「──という訳で貴族を潰そうと思う。異論あるやつはいるか?」
ふむ。特にいなさそうだな。なら・・・

周りを確認したら異論を唱えるやつがいなさそうだったので、俺は手段の話に移ろうとしたその時に・・・

【お、お兄さん。僕達の為に危ないことしちゃダメだよ?】
あ、あのそういう役所やくどころはできればテレサかフアナがいいんだが・・

(スハイツもジーンも、こうもうちょっと考えて欲しいんだよなぁ。男をやる気にさせるような言葉をなんで男が言っちゃうかな?はぁ・・・本当に男の娘枠とかいらないんで勘弁してください!)

スハイツとジーンの空気の読めなさにゲンナリしつつも、新米君達の不安を取り除く

「・・・まぁお前達の為でもあるが、それ以前に俺の家族の為でもある。大体こういう報復系にはお約束がある。俺本人に直接報復するか俺の周りの親しい人にちょっかい出すかのどちらかだな。だからこれはお前達だけじゃなくて家族を護る為である。だから気にする必要はない」

多少は納得してくれたみたいだがまだ不安は残るようだ
こればっかりは仕方ないな
そもそも新米君達は俺の実力を知らないのだししょうがない

一方俺の家族は全く心配はしていないみたいだ
むしろやれやれといった感じだろうか・・・酷い!?
俺の扱いが結構ぞんざいな気がするのは気のせいだろうか・・・

□□□□

さて貴族を潰すという目的が決まったら、次は手段だ

{手段って、実際どうするのじゃ?}
はい、いい~質問ですね~!エステルが気にするのもわかる

手段において一番重要なのは情報だ
情報の有無が手段の合否を決めると言っても過言ではない
エステルが気にしたのも恐らくこの部分なはずだ

そこで、俺はまずは情報収集から始めることにした

「まずは貴族の情報を知りたい。フアナ、協力してくれるか?」
【わ、私でしゅか?】
あっ。噛んだ。いや~マジ、フアナは癒されるわ~

そして俺はフアナを優しく抱きしめ、ふわふわな毛を堪能もとい記憶を覗かせてもらった

(記憶収集!・・・ほうほう。貴族の住所はそこで、位は伯爵。名前はシュバインね。確か豚って意味だったっけ?見た目通りのお似合いな名前じゃねぇか!まぁ名前と住所さえ分かれば十分・・・ん?・・・ほ、ほぉ~)

そう、俺が取った手段は『記憶収集』を使った情報収集だ
まずは『記憶収集』で貴族の名前や所在地などを確認した
これこそが『記憶収集』の正しい活用方法だろう

最近は洗脳系目的ばっかりだったからな~

そんな感じで『記憶収集』について改めて使用目的を確認していたら、エステルから爆弾が投下された

{お師匠様。なんでフアナなのじゃ?お師匠様じゃからスハイツやジーンは有り得ないとしても、記憶を覗くなら年上のテレサのほうが普通はよくないかの?}
ふぁ!?今それ聞くの!?てか細かい所気がつくな!?

エステルにしてみればそれはきっと単純な疑問だったのだろう
しかし俺からしてみれば明確な理由があった。それは・・・

(単純に俺がフアナを気に入ってるからなんだけど・・・テレサも可愛いよ?可愛いけど、フアナの愛くるしさは一段も二段も上なんだよなぁ~。例えるなら、ミーやサリーを見たときのような電流が体を走ったというか・・・しかし言えやしない。言えやしないよ、この状況。本心を語ればきっと鬼が出てくるよ・・・)

俺はどう答えようか脳内で必死に答えを探していた
脳内では今まさに101人の俺が総勢で緊急会議を開いているところだ

しかし現実とは非情なもので・・・

〔・・・ユウジ様?〕
{・・・お師匠様?}
 [・・・あにさま?]
 [・・・ユウジ殿?]
 [・・・ゴ主人?]

(ちょ!?増えてる!?増えてるよ!!サーシャにサリーはまだしもエステルやアイサにアマリリスまで!?なんだこれ!?てかなんで分かったの!?・・・勘か!?女の子の勘ってやつか!?)

以前から棲み着いているサーシャ般若サリー小悪魔エステル・・・
そしてそこに新たにドラゴンアイサ蜘蛛アマリリスが加わったみたいだ・・・
あ、あのまだそれに加えて天狗リア閻魔様マリーも加わる予定とか・・・

・・・。

どうやらうちには古今東西の化け物が集まったみたいだ

(はぁ~。これヘイネやセリーヌは大丈夫だとして、今この場にいないあかりは大丈夫だよな?狸になったりしないよな?こんなことになるんだったらSランク集会に行っとけばよかったよ・・・とほほ)

□□□□

俺は化け物騒動をなんとか鎮めて会議を再開した

とりあえず事前情報は手に入れた
後は必要な情報を収集するだけだ

{必要な情報?どうやって調べるのじゃ?}

「必要なのは貴族の屋敷に今現在何人の奴隷がいるかだな。結局助けるハメになるしな。そして調べるならやつの出番だな。ゆけっ!ピカチ○ウ君!」

{パンツを覗くしか能のないエロねずみなのでは!?}
「酷い!?」

もはや家族のパンツを覗くしか仕事のないピカチ○ウ君に汚名返上のチャンスが到来した訳だ!

まぁぶっちゃけ、あかりのハ○太郎君のほうが優秀なのだがあかりは今この場にいない
更に言うなら、俺のポ○ポ君のほうが少しマシなのだが娯楽大国ハルバートのダンジョン調査に向かわせている

つまり消去法でピカチ○ウ君に大役が回ってきた訳だ!
ピカチ○ウ君ならこの大役きっとやり遂げてくれるだろう

さて、ピカチュウ君が必要な情報を集めてくるまでは待つしかないのだが、一つ問題がある・・・

〔ユウジ様。奴隷を助けるのは構わないんですが一つ疑問が。助けた奴隷達はどうされるおつもりなのですか?全員家族にされるんですか?〕

先程まで静かに会議を聞いていたサーシャが口を開いた
サーシャはやっぱりそこは気になるよな~
奴隷のひいては家族を取り仕切っているのはサーシャだ
正直現状でも大変なのではないかと思っている

サーシャでもさすがにきついだろうな。それに・・・

「いや、家族にする予定はない。多分成人男性の奴隷とかもきっといるだろう。子供なら百歩・・・いや、万歩譲っていいとしよう。でも成人の男は絶対ダメだ!家族に万が一があったら敵わん!揉め事の種は最初から拾うつもりはない!う~ん・・・男の奴隷だけ殺っちゃうか?」

〔[{〈ええええ!?〉}]〕
     [[[[[ええええ!?]]]]]
【【【【ええええ!?】】】】

家族全員から驚きとも、呆れとも、侮蔑とも取れる声がなり響いた
さすがの俺でも家族全員からの反対ともなると考え直さないといけないだろう

というか、このままだと家族から白い目で見られる!マズい!

「じょ、冗談だからな?」
〔ユウジ様の場合冗談に聞こえないんですよね〕
[セリーヌはユウ様の決断に従うのみですの!]
{まちがいなくお師匠様は本気だったのじゃ!}
〈あんたの場合は本気でやりかねないじゃない〉

ほ、ほほ~。セリーヌ以外みんなそんなことを?
あれかな?夫の言うことは信じられないとでも?

「・・・」
〔!わ、私は実は冗談じゃないかと思ってました!〕
[サーシャ姉、何を慌ててるんですね?]
{!わ、妾もサーシャと同じじゃ!本当なのじゃ!}
〈ないない。ハクトは注意しなきゃ絶対やってたわよ〉

────プチっ

よし、詩乃はお仕置き確定だな
あとで目にもの見せてやるからな!覚悟しろ!

詩乃のお仕置きはあとだ!今はとりあえず・・・

「なにかいい案はないか?エステル」
{解放してしまえばよいのではないか?お師匠様ならお金に困っておらぬじゃろ?}

困った時のエステル頼みということで尋ねてみた結果は解放だった
解放ねぇ~。まぁ金で済むなら安いもんか。ただ・・・

「解放って具体的にどうすればいいんだ?」

正直そのへんはよくわからん
確か奴隷は、奴隷契約を結んだ主人とは一年間一緒じゃないといけないのはサーシャから聞いていた気がするな

{・・・}

・・・?なんだ?エステルにしては珍しいな?
知らないのか?それとも言いづらいのか?
エステルの表情を伺うと困惑しているようだった

・・・。

しばらく待っていたら、エステルがその重い口を開いた

{・・・主人が死んだ状態なら奴隷商でお金さえ出せば解放できるのじゃ}

あぁ・・・なるほど。そういうことか
これは俺の無知が招いた配慮不足だ
何でも知ってるからって残酷なこと聞いてしまったか

「嫌なことを喋らせちゃったな。すまん。俺が無知なせいでエステルに嫌な思いをさせた。今後もこんなことが何度もあるかもしれん。その時は無理しなくていいからな?エステルに嫌な思いをさせるぐらいならわからないままのほうがずっといい」

俺は膝上にいるエステルを優しく抱きしめ、労るようになでなでしてあげた

罪ある人や罪ある生き物なら、エステルもそれを殺すことに関しては特に何も感じはしないのだろう
しかし今回の貴族に関しては、奴隷の扱いが酷いだけで果たしてそれが罪となり得るかは定かではない
いや、むしろならない可能性が高い

ただ俺がエステルに対して求めたのは奴隷の解放方法だ

一番いいのは貴族が奴隷の扱いを変えることだ
しかしバカな貴族が素直に奴隷の扱いを変える訳がない
そうなると解放方法は絞られる訳だ。貴族の殺害という方法に

そんな残酷な事を俺はエステルの口から言わせてしまった・・・
きっとあの躊躇いは良心の呵責があったからに違いない

俺はこの愛しい小さな賢妻を優しく優しく抱きしめた
愛情と感謝と謝罪と快感の想い、全てを込めて・・・

そしてそんなエステルから返ってきた返事は────。

{お師匠様は心配しすぎなのじゃ。妾はお師匠様の頭脳なのじゃ。お師匠様がわからぬことは全部妾が答えるのじゃ。だからどんどん頼りにしてくれて構わぬ。妾もそのほうが嬉しいのじゃ!嫌な思いをするよりも、お師匠様に頼りにされないほうが辛いものじゃぞ?だからお師匠様は遠慮なぞしなくてよいのじゃ!}

なんとも嬉しくて頼りなる言葉想いだった

「ありがとう、エステル・・・しかしなるべくエステルに嫌な思いをさせないよう気をつけるよ。傷付くエステルを俺は見たくないからな」

これは俺の嘘偽りのない本心だ
しかしエステルは不満そう。なんで!?Mなの!?

{ぐぬぬ。お師匠様らしくないのじゃ!ならこうするまでじゃ!}
「んむぅ!?」
エステルはそう言うや否や突然俺と唇を重ねてきた

エステルの柔らかい唇で幸せな気分になる

(・・・じゃなくて!突然どうしたんだ!?エステルからキスだと!?お願いなしでの自発的なキスはこれが初めてじゃないか!?ついに、ついにきたのか!?期待しちゃっていいのか?)

俺はエステルからの初のキスに有頂天になっていた
抱いてほしいと言われたらその場で抱ける自信があった
みんなの目なんて気にならないぐらい舞い上がっていた

そして俺はエステルの次の言葉をドキドキしながら待った

{『約束』したのじゃ、お師匠様。お師匠様はどんなことでも妾に遠慮なく尋ねること!『約束』したからの!もし『約束』を破ったらお師匠様のことをきらい・・・にはなれぬから、その代わりに妾はすごく怒るのじゃ!少しの間お師匠様とは口も効かないのじゃ!それが嫌ならちゃんと『約束』を守るのじゃぞ?}

────ぶっ!

(思わず鼻血が出そうになった・・・くっそ可愛いすぎんだろ!エステル!なんだこの愛くるしさ!フアナよりも愛くるしいとかどんだけだよ!?・・・あぁもうダメだ。エステルの可愛さに理性崩壊しそうだ。少し残念だが・・・色魔、色魔。告白じゃなくて残念ではあったが、これはこれでいいものだった。最高のキスありがとうございます!)

「あぁ。確かに『約束』した。必ず守るよ。そしてありがとう、エステル!頼りにしているぞ」
{もちろんなのじゃ!}

そして俺とエステルは『約束』とはまた違うキスを交わした


こうして家族会議と、俺のエステル攻略戦は『エステルからの一歩あゆみより』により幕を閉じた


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