ラスボス転生!?~明日からラスボスやめます~
紅い夜の日です!!
空に浮かぶ紅い月が、地上を紅く染めている。何もないはずの場所が、怖く見えてしまうのはそのせいだ。
さっきまで誰も居なかった場所に誰かが立っているように見えるのも......気のせいだろう。
少し遠くの木の陰からチラチラと私達を見ているように見えるのも気のせいだろう。
そんな感じで私が現実逃避していると、ローエンが、その誰かの方へと歩いて行ってしまった。
このゲームの中で、得体の知れない何かに近付くのは危なすぎる。確実に何かが起こるのだ。
少しの焦りと、恐怖からローエンを呼び止めようとする。
「ローエン、ちょっと待って。危ないから―――」
そう言ってみたが、ローエンは振り返りニコッと笑ってそのまま歩いて行ってしまった。
木の影に隠れている誰かの元へとその足を進める。
もし、何かに襲われてもローエンなら、問題なく倒せるだろう。ローエンの強さは、私もよく知っている。
だけど......
「セツナ、ごめん。手を離すよ」
セツナの手を優しくほどき、ローエンの元へと私は走り出す。
雰囲気が怖いとか、オバケが怖いとか.........そんな事言ってる場合じゃない!!
私は何よりも、ローエンをこの場で失うことの方が何倍も、何十倍も怖い。今、身近にいる大切な誰かが居なくなったら、私はこの場面を一生後悔する。
そんなのは絶対に嫌だ!!
歩みを進めるローエンの前へ音速で割り込み、木の影に居る存在を睨み付ける。
すると、隠れている誰かはビクッと体を大きく跳ねさせる。
「ひぃ!! 止めてくれ、カナ!! 俺、何もしてないじゃないか!!」
大柄な男がズルズルと後退りしながら、懇願してくる。
その様子は周りから見れば、父親を叱り付ける子供のようにしか写らなかっただろう。それほどまでにマナとその男の体の大きさには差があった。
だが、その男はマナを止めるに足る言葉を言った。
「なんで、お前がカナさんの事を知ってるんだ?」
私の中で思い付く可能性は三つ。一つは、カナさんの友人だということ。二つ目は、この男が一方的にカナさんを知っていること。
そして、一番可能性が高いと思う三つ目は―――カナさんの敵、『勇者』だということ。あの怯えからして、カナさんに挑んで負けた人だろう。
つまりは、カナさん。ラスボスまでたどり着くことができた『勇者』。ラスボスの周辺を守るリッカやセツナ、デリドラも倒し、カナさんのいる最後の部屋まで行く程の実力者。
そんな、危険人物を放っておける訳がない。
文字通り、音の速度を越えた私の拳が男に向かって放たれる。ラスボスのステータスで放たれるその一撃は、簡単に山を砕き、海を割る威力をもつ。
しかし、それはあっさりと無力化された。
「カナ、どうしたんだ? なんか随分と優しい攻撃だな。俺を油断させるための罠か?」
全力で放ったはずの一撃は、確実に男に命中した。だが、当たってもダメージが無かった。その動揺を振りきるようにもう一撃を放つが
「遅いぞ!!」
軽々と避けられ、拳を振り出しがら空きとなった私の胴に、鋭い蹴りが深々と刺さる。
「がはッ!!」
肺の中の空気を全て吐き出され、くの字に曲がったままオモチャのように吹き飛ばされる。大木を何本か通過し、その先の地面をゴロゴロと転がった所でやっと体が止まった。
「うぐっ......痛っ」
腹に受けたダメージは予想以上に大きく、お腹を押さえたまま丸くなるしか無かった。今にも意識が飛びそうな痛みに歯を食い縛りながら耐える。
しかし、災厄はまだ終わっていない。
「カナ、どうしたんだい。そんなに痛そうに演技して......カナなら、1秒で回復できるだろ? 何をやってるんだい?」
ゆっくりと姿を見せるその男は、どこか嬉しそうに嗤っていた。
その姿が、ミーニャと重なり本当に嫌な気分になる。痛みのせいか恐怖のせいか、冷や汗が止まらない。ラスボスのステータスでもダメージを受けるその力に何か秘密があるのは分かる。
スキルか能力を使ってダメージを与えているはず。だけど、そんな事を考えている余裕もなく、男の足が私に向かって飛んでくる。
無意識に出た腕がガードするも意味はなく、また吹き飛ばされる。同じように地面を転がり、綺麗な銀髪も泥で汚れている。
マナは、かろうじて意識は保てている。だが、もう動くことはできない。
カードした腕は変な方向に曲がっていてプラプラと皮だけでくっついているだけ。痛みはなぜが無く、さっきまで、頭が壊れそうなぐらい痛かったお腹も、今は何も感じない。
痛すぎて何も感じないのだろう。私の脳が、痛みを感じたら狂ってしまうと感じて痛覚をシャットダウンしたんだろう。
男はまた目の前に現れ
「カナ、お前。弱くなりすぎだろ、まずスキルも使ってない俺の蹴りが当たるのがおかしいし......最初に弱そうな雰囲気を出していたのに気付きもしないし」
私の意識はその言葉を最後に途切れて消えた。
マナが意識を失ってからすぐ後、マナの真後ろから、いや影から人形の何かが出てきた。
「エリック様。そこまでにしてもらえますかな?」
月の光を背に、白い髭を生やした執事服の男が現れる。もちろん、それはローエンだ。
「......ローエンか、お前の顔を見るのも久しぶりだな」
「ええ、そうですね『亡者エリック』」
そう呼ばれたエリックは少し眉を歪めるが、すぐに平常心を保った。
「......まぁいい。それで―――カナはどうしたんだ?」
ローエンは、少し言いにくそうに答える。
「カナ様は、亡くなりました。今ここに居るのは、貴方の知っているラスボスではありません」
「は!? あのカナが!? 誰に殺られたんだよ。カナより強い奴なんてこの世界に居なかっただろ!?」
「そうですねカナ様は、最強でした。そして貴方はカナ様の次に最強だった。しかし、貴方を越える最強を倒した方が、ここに居るのです」
エリックの視線が、倒れて動かなくなっているマナを見つめる。
「まさかとは思うが......そいつが?」
「ええ、貴方よりも弱いこの方がカナ様を倒し、この世界に来たのです」
「あぁ......この世界に来たってことは、そいつは『プレイヤー』だな。道理で弱い訳だ......だが、カナが負けた理由が分からんな」
「どうやら、あちらの世界ではこの世界がゲームとして認識されているそうで」
「なるほど、理解した......それで、俺は今すぐ『勇者』としての役割を果たしてもいいのか?」
つまりは、『勇者』が『ラスボス』を倒すという事で、それは最も正しく、やらなければいけないことだ。
しかし、ローエンは、一瞬悟ったように笑い、戦う意思を見せる。
「ローエン、お前はそいつを守るのか? 俺に勝てないと分かってるだろう。長い付き合いなんだ、俺の強さはお前がよく分かってるだろうに」
哀れんだ目を向けながら、エリックも戦う構えを作る。
「精々、時間稼ぎぐらいはしてあげますよ」
その言葉を最後に、ローエンの姿が変化する。月光を反射するように輝き、ローエンの本当の姿を見せる。
それに嬉しそうに声をあげながらエリックは戦い始める。
「なんだ、お前が本気なんて珍しいじゃないか」
両手を大きく広げ、挑発する勇者に、ローエンは吠える。
その声だけで、近くにいた弱い魔物達は怯え、その場所から離れようと必死に逃げていった。
「さぁ、いい勝負をしよう。伝説の魔獣、フェンリル。お前はこの『勇者エリック』が倒してやろう」
ローエンの姿は、伝説そのもので、10メートルの巨体。神さえ引きちぎり殺す牙。暗闇に潜むような灰色の毛。
何より強いのはその能力。影に潜みどこからでも現れ攻撃し、すぐに暗闇に溶ける。
ラスボスのステータスでも防げなかったエリックの攻撃も影に潜み当たらなければどうということはない。
エリックはまだ、余裕そうに両手を広げたまま動かない。真後ろの影から現れた巨大な狼がエリックの腕ごと噛みつく。
普通ならば、肩から先が無くなっているであろう攻撃。だが、勇者の腕は変わらずくっついたまま。それどころか傷一つ付いていない。
「おいおい、どうしたローエン。そんな甘噛みじゃ何年たっても俺を倒せないぞ」
エリックは、噛みついたままのローエンごと腕を持ち上げ、その勢いのまま地面に叩きつける。だが、今の時間は夜。影は、地上全てを覆っている。だから、ローエンは叩きつけられると同時に影へと潜りダメージを回避した。
しかし、その行動は最悪の結果を招き入れた。
ローエンが回避した影にエリックも入ってきていたのだ。咄嗟に回避に移ろうとするローエンだが、もうすでに間に合わなかった。
回避したローエンの後ろ足をガッチリとエリックが掴んだ。
「ぐっ...まずい」
その事にローエンは苦言を漏らす。
エリックは、ローエンの能力を知っている。そして、能力を知っていると言うことは、その弱点も知っているという事で......
「さぁ、ローエン。ピンチだぞ」
口を三日月の形に大きく歪ませたエリックは、そのままローエンを真上に投げた。
10メートルの巨体が、空高くまで飛んでいく。そして、何も障害物のない空の上。ローエンが潜むことができる影がない空。
「チェックメイトだ、ローエン」
そして、エリックの拳がローエンの体を貫いた.........かに思えたその状況は、新たに現れた人物によって止められた。
「ローエン、死ぬにはまだ早いな。君にはまだ、重要な役割があるのだから」
そう言って現れた人物に、誰よりも目を見開いて驚いていたのはエリックだった。
「なんで、お前が生きてる.........カナ!!」
彼女の銀髪が月の光を反射し、キラキラと輝く。その長い髪をふわりと揺らし、皮肉を込めた笑みを浮かべて言った。
「あぁ、お前を見るのも久しぶりだな。『弱虫エリック』」
さっきまで誰も居なかった場所に誰かが立っているように見えるのも......気のせいだろう。
少し遠くの木の陰からチラチラと私達を見ているように見えるのも気のせいだろう。
そんな感じで私が現実逃避していると、ローエンが、その誰かの方へと歩いて行ってしまった。
このゲームの中で、得体の知れない何かに近付くのは危なすぎる。確実に何かが起こるのだ。
少しの焦りと、恐怖からローエンを呼び止めようとする。
「ローエン、ちょっと待って。危ないから―――」
そう言ってみたが、ローエンは振り返りニコッと笑ってそのまま歩いて行ってしまった。
木の影に隠れている誰かの元へとその足を進める。
もし、何かに襲われてもローエンなら、問題なく倒せるだろう。ローエンの強さは、私もよく知っている。
だけど......
「セツナ、ごめん。手を離すよ」
セツナの手を優しくほどき、ローエンの元へと私は走り出す。
雰囲気が怖いとか、オバケが怖いとか.........そんな事言ってる場合じゃない!!
私は何よりも、ローエンをこの場で失うことの方が何倍も、何十倍も怖い。今、身近にいる大切な誰かが居なくなったら、私はこの場面を一生後悔する。
そんなのは絶対に嫌だ!!
歩みを進めるローエンの前へ音速で割り込み、木の影に居る存在を睨み付ける。
すると、隠れている誰かはビクッと体を大きく跳ねさせる。
「ひぃ!! 止めてくれ、カナ!! 俺、何もしてないじゃないか!!」
大柄な男がズルズルと後退りしながら、懇願してくる。
その様子は周りから見れば、父親を叱り付ける子供のようにしか写らなかっただろう。それほどまでにマナとその男の体の大きさには差があった。
だが、その男はマナを止めるに足る言葉を言った。
「なんで、お前がカナさんの事を知ってるんだ?」
私の中で思い付く可能性は三つ。一つは、カナさんの友人だということ。二つ目は、この男が一方的にカナさんを知っていること。
そして、一番可能性が高いと思う三つ目は―――カナさんの敵、『勇者』だということ。あの怯えからして、カナさんに挑んで負けた人だろう。
つまりは、カナさん。ラスボスまでたどり着くことができた『勇者』。ラスボスの周辺を守るリッカやセツナ、デリドラも倒し、カナさんのいる最後の部屋まで行く程の実力者。
そんな、危険人物を放っておける訳がない。
文字通り、音の速度を越えた私の拳が男に向かって放たれる。ラスボスのステータスで放たれるその一撃は、簡単に山を砕き、海を割る威力をもつ。
しかし、それはあっさりと無力化された。
「カナ、どうしたんだ? なんか随分と優しい攻撃だな。俺を油断させるための罠か?」
全力で放ったはずの一撃は、確実に男に命中した。だが、当たってもダメージが無かった。その動揺を振りきるようにもう一撃を放つが
「遅いぞ!!」
軽々と避けられ、拳を振り出しがら空きとなった私の胴に、鋭い蹴りが深々と刺さる。
「がはッ!!」
肺の中の空気を全て吐き出され、くの字に曲がったままオモチャのように吹き飛ばされる。大木を何本か通過し、その先の地面をゴロゴロと転がった所でやっと体が止まった。
「うぐっ......痛っ」
腹に受けたダメージは予想以上に大きく、お腹を押さえたまま丸くなるしか無かった。今にも意識が飛びそうな痛みに歯を食い縛りながら耐える。
しかし、災厄はまだ終わっていない。
「カナ、どうしたんだい。そんなに痛そうに演技して......カナなら、1秒で回復できるだろ? 何をやってるんだい?」
ゆっくりと姿を見せるその男は、どこか嬉しそうに嗤っていた。
その姿が、ミーニャと重なり本当に嫌な気分になる。痛みのせいか恐怖のせいか、冷や汗が止まらない。ラスボスのステータスでもダメージを受けるその力に何か秘密があるのは分かる。
スキルか能力を使ってダメージを与えているはず。だけど、そんな事を考えている余裕もなく、男の足が私に向かって飛んでくる。
無意識に出た腕がガードするも意味はなく、また吹き飛ばされる。同じように地面を転がり、綺麗な銀髪も泥で汚れている。
マナは、かろうじて意識は保てている。だが、もう動くことはできない。
カードした腕は変な方向に曲がっていてプラプラと皮だけでくっついているだけ。痛みはなぜが無く、さっきまで、頭が壊れそうなぐらい痛かったお腹も、今は何も感じない。
痛すぎて何も感じないのだろう。私の脳が、痛みを感じたら狂ってしまうと感じて痛覚をシャットダウンしたんだろう。
男はまた目の前に現れ
「カナ、お前。弱くなりすぎだろ、まずスキルも使ってない俺の蹴りが当たるのがおかしいし......最初に弱そうな雰囲気を出していたのに気付きもしないし」
私の意識はその言葉を最後に途切れて消えた。
マナが意識を失ってからすぐ後、マナの真後ろから、いや影から人形の何かが出てきた。
「エリック様。そこまでにしてもらえますかな?」
月の光を背に、白い髭を生やした執事服の男が現れる。もちろん、それはローエンだ。
「......ローエンか、お前の顔を見るのも久しぶりだな」
「ええ、そうですね『亡者エリック』」
そう呼ばれたエリックは少し眉を歪めるが、すぐに平常心を保った。
「......まぁいい。それで―――カナはどうしたんだ?」
ローエンは、少し言いにくそうに答える。
「カナ様は、亡くなりました。今ここに居るのは、貴方の知っているラスボスではありません」
「は!? あのカナが!? 誰に殺られたんだよ。カナより強い奴なんてこの世界に居なかっただろ!?」
「そうですねカナ様は、最強でした。そして貴方はカナ様の次に最強だった。しかし、貴方を越える最強を倒した方が、ここに居るのです」
エリックの視線が、倒れて動かなくなっているマナを見つめる。
「まさかとは思うが......そいつが?」
「ええ、貴方よりも弱いこの方がカナ様を倒し、この世界に来たのです」
「あぁ......この世界に来たってことは、そいつは『プレイヤー』だな。道理で弱い訳だ......だが、カナが負けた理由が分からんな」
「どうやら、あちらの世界ではこの世界がゲームとして認識されているそうで」
「なるほど、理解した......それで、俺は今すぐ『勇者』としての役割を果たしてもいいのか?」
つまりは、『勇者』が『ラスボス』を倒すという事で、それは最も正しく、やらなければいけないことだ。
しかし、ローエンは、一瞬悟ったように笑い、戦う意思を見せる。
「ローエン、お前はそいつを守るのか? 俺に勝てないと分かってるだろう。長い付き合いなんだ、俺の強さはお前がよく分かってるだろうに」
哀れんだ目を向けながら、エリックも戦う構えを作る。
「精々、時間稼ぎぐらいはしてあげますよ」
その言葉を最後に、ローエンの姿が変化する。月光を反射するように輝き、ローエンの本当の姿を見せる。
それに嬉しそうに声をあげながらエリックは戦い始める。
「なんだ、お前が本気なんて珍しいじゃないか」
両手を大きく広げ、挑発する勇者に、ローエンは吠える。
その声だけで、近くにいた弱い魔物達は怯え、その場所から離れようと必死に逃げていった。
「さぁ、いい勝負をしよう。伝説の魔獣、フェンリル。お前はこの『勇者エリック』が倒してやろう」
ローエンの姿は、伝説そのもので、10メートルの巨体。神さえ引きちぎり殺す牙。暗闇に潜むような灰色の毛。
何より強いのはその能力。影に潜みどこからでも現れ攻撃し、すぐに暗闇に溶ける。
ラスボスのステータスでも防げなかったエリックの攻撃も影に潜み当たらなければどうということはない。
エリックはまだ、余裕そうに両手を広げたまま動かない。真後ろの影から現れた巨大な狼がエリックの腕ごと噛みつく。
普通ならば、肩から先が無くなっているであろう攻撃。だが、勇者の腕は変わらずくっついたまま。それどころか傷一つ付いていない。
「おいおい、どうしたローエン。そんな甘噛みじゃ何年たっても俺を倒せないぞ」
エリックは、噛みついたままのローエンごと腕を持ち上げ、その勢いのまま地面に叩きつける。だが、今の時間は夜。影は、地上全てを覆っている。だから、ローエンは叩きつけられると同時に影へと潜りダメージを回避した。
しかし、その行動は最悪の結果を招き入れた。
ローエンが回避した影にエリックも入ってきていたのだ。咄嗟に回避に移ろうとするローエンだが、もうすでに間に合わなかった。
回避したローエンの後ろ足をガッチリとエリックが掴んだ。
「ぐっ...まずい」
その事にローエンは苦言を漏らす。
エリックは、ローエンの能力を知っている。そして、能力を知っていると言うことは、その弱点も知っているという事で......
「さぁ、ローエン。ピンチだぞ」
口を三日月の形に大きく歪ませたエリックは、そのままローエンを真上に投げた。
10メートルの巨体が、空高くまで飛んでいく。そして、何も障害物のない空の上。ローエンが潜むことができる影がない空。
「チェックメイトだ、ローエン」
そして、エリックの拳がローエンの体を貫いた.........かに思えたその状況は、新たに現れた人物によって止められた。
「ローエン、死ぬにはまだ早いな。君にはまだ、重要な役割があるのだから」
そう言って現れた人物に、誰よりも目を見開いて驚いていたのはエリックだった。
「なんで、お前が生きてる.........カナ!!」
彼女の銀髪が月の光を反射し、キラキラと輝く。その長い髪をふわりと揺らし、皮肉を込めた笑みを浮かべて言った。
「あぁ、お前を見るのも久しぶりだな。『弱虫エリック』」
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