そのゴーレム、元人間につき
角の領地
うん、今日は絶好の良い天気。
探索日和だな。
と言っても雨が降ったのはあのとき以降降ってないんだけどな。
今日からは森の東側を探索する。
狐人間が言うには、東側を統べているオーガの角と呼ばれている魔物は、血気盛ん、短気、頭悪いと言う3拍子でまず絶対に絡まれるそうだ。
もし向こうが攻撃的に出るならば、反撃は許容すると言われている。
早速向かいたいところだが、東側へと入るには、小さな川を渡らなければならない。
と言っても川の深さは俺の腰程しかないので問題はない。
俺は夜など暇なときに水切りをして遊んでいるんだが、その記録は素晴らしい。
なんと最高記録は3回だ。
我ながら下手すぎると思う。
だが、考えて見ると俺の手はそこらの石を持つのに適していない。
弾くように投げなければ飛んでもくれないのだ。
それと、水切りは丸くて平たい石が適していると言われているがそんなもの持ってしまえば割れる。
なので、このやり方で3回も出来るのは誉めても良いと思う。
いや、たった今記録を塗り替えた。
なんと最高記録は4回になったのだ。
話がだいぶ逸れている気がする。
まぁ、良いさっさと渡ろう。
ズブズブと水に入りゆっくりと進んでいく。
ふとここで、下らない事を思い付いてしまった。
俺がここで寝転がるとする。
すると川の水はほぼ塞き止められて下流に何があるかは分からないが、村等があればパニックになるだろう。
そう思うと少しやってみたくなる。
だがやめた。
俺は目立つ気はない。
そんな事をして退治されては笑い話にもならない。
さっさと渡ることにしよう。
暫く歩いただろうか。
妙に視線を感じるな。
と思えば木の影にどう見てもオーガが隠れている。
隠れるならもう少し工夫して欲しいところだ。
隠れる気あるのかコイツら。
まぁ、無視だ。
そして俺がとあるオーガの隠れている木を通りすぎたときのことだ。
事件は起きた。
オーガは俺に足をかけてきた。
だが、俺はバランスを崩さなかった。
そして少し立ち止まり、オーガの方を見ると、泣きっ面で足を押さえてました。
恐らく、俺を転ばせようとしたのだろう。
だが、俺が想像以上に重い上に踏み出している最中の足にかけたのだ。
ぶつかったら痛いだろう。
睨み付けられているんだが自業自得だろうに。
無視して進むことにしよう。
すると今度は俺の肩に手をかけて引っ張っているようだった。
無視だな。
「ちょ! 止まれよ! おい! 聞いてる!? ねぇ! 止まれって!」
誰か止まらない奴がいるのだろうか。
そして、喋っているところからして止まってくれないようだ。
俺にそんなことをとてもじゃないができそうにもない。
そんな奴がいるなら見てみたい。
すると俺の肩に掴まり引き摺られているオーガの数が5匹になった所で俺の前に一匹のオーガが立ち塞がった。
「おい、止まれ! 頼むから止まってくれ!」
両手を広げて止まって欲しいと懇願してきた。
仕方ない止まってやるか。
そして俺の肩に掴まっていたオーガ達は何がしたかったのだろうか。
あ、離れていった。
「ゴホンッ! おい! テメェ! ここになんのようだ!」
先程とは態度が一変顔睨みを効かせてこちらを見ている。
態度はでかく上から目線なのだが、俺を見上げているからか下から目線になっており、笑える。
「聞いてんのかゴラァ!! ここを誰の領地だと思ってんだ? あぁん!?」
おや、どうやら既に不法侵入しているらしい。
それは済まないことをした。
「ここはなぁ! 天下のオーガ族最強のお方、角様の領地だぁ!」
誇らしげに胸を張るオーガ。
いや、ごめん誰だそれは。
「はっ! ビビって声もでねぇようだなぁ!」
出ないんじゃない出せないんだ。
全く気にしてるんだぞこっちは。
失礼な奴等だ。
親の顔が見てみたい。
いや、やっぱりいい、興味が湧かない。
「ちっ、コイツが噂のゴーレムだろ? こんなやつのどこに気を付けろってんだよ。尻尾様も落ちたもんだ!」
尻尾? 誰それ知らない。
それより俺に気を付けろってなんだ?
もしや不法侵入者的なあれか。
まぁ、確かに侵入はしているが皆と仲良くなっているから大丈夫だろう。
「このままじゃ埒があかねぇ、おい、やるぞ。」
するとどうだろうか。
周りにいたオーガ達がじりじりと滲み寄っている。
顔は皆笑っている。
そんなに楽しいのだろうか。
恐らくあれは歓迎のダンスか。
俺には素晴らしさが分からないがそれを無下にするのも良くはない。
しっかりと見よう。
恐らくオーガ界隈では有名な踊りにちがいない。
するとオーガの男が掛け声をかける。
「おらぁ! 歓迎の挨拶だ!」
俺の周りにいたオーガは全員が俺を殴り付けている。
なるほど、オーガは頑丈な体つきをしているから殴っても痛くない。
それに鍛える意味も込めた挨拶がこれに行き着いたのだろう。
でも、俺はゴーレムで体は石でできている。
たとえオーガの拳でも痛いと思う。
悪いのは俺ではないが謎の罪悪感がある。
痛そうだなぁ、拳を押さえてるよ。
せっかくの挨拶が気まずいぞ。
仕方ない、ここは俺が明るくするために挨拶を返そう。
俺の右にいるオーガへとひとまず挨拶。
「ぶはっ!」
挨拶恒例の横っ飛びをしてきた。
そして茂みにダイブ。
この森の伝統なのだろうか。
俺にはとてもじゃないけど無理だ。
さて、続けよう。
「ばはっ!」
「びひっ!」
「ぶふっ!」
「べへっ!」
「ぼほっ!」
うん、綺麗に全員が飛んでいき漏れることなく茂みに消えた。
いい連携だと思う。
しかし、あの挨拶は話したい時はどうするのだろうか。
謎だ。
誰もいなくなったし、進もう。
本当に出てこないな。
ま、良いか。
<オーガ達>
ゴーレムが去った後、茂みにいたオーガ達は時間をかけて集まる。
「お、おれ、本気でオーガで良かったと思った」
「俺もだ」
「私も」
「角様へと報告しなければ」
「誰がすんだよ、全員動けねえっての」
文句を良いながらも、ゴーレムに喧嘩は売らないと誓った。
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