そのゴーレム、元人間につき
少しの反省と決意
「ねぇ、そろそろ今後について話そうかぁ?」
尻尾は苦笑いしながらそう話す。
今後のこと、それは主にゴーレムについての話だ。
味方につけることが出来れば絶対に森を守る戦力となる。
だが、同時に不安もある、長を含めて全ての魔物がゴーレム一人に負けたのだ、敵対すればまず生き残ることは絶望的だ。
故に問う。
ここからどうしたいのか、敵対し、最後まで戦い散るのか、それとも味方になることにかけて交渉を行い、不干渉若しくは共生していくのかを。
「我らグラスウルフはゴーレムへの敵対心はない。味方になるならばそちらを選ばせてもらおう」
「な!? おい、牙、奴はテメェらグラスウルフの仇だぞ。悔しくはねぇのか!」
「愚問ですな。己の私怨で動き一族を絶やす位ならばこの程度は受け入れる覚悟はとうにできている」
覚悟を決めた目で角を見つめる牙。
尻尾はなにも言わずに黙る。
決めたことに口出しするつもりはない上に尻尾も自分は既に敵対どころか友好関係を結ぼうとしているのだ。
「私ら妖狐も既にゴーレムとは敵対するつもりはないよぉ、むしろ友好的に行きたいねぇ」
「尻尾、お前もか! だが、奴は余所者だぞ!」
「いや? 彼は余所者ではないよ? 寧ろ余所者とは僕達だよぉ」
「……は? どう言うことだ尻尾」
「それは我らも初耳、聞いてもよいか?」
「私はこっそりと彼に接触していたんだがねぇ、君たちは分かるかな?この森の北にある祠のことを」
角達はそれぞれ思い浮かべる。
角はそんなものがあったな程度に牙は、噂くらいならと。
そして、尻尾がゴーレムと行動していたと聞いたのを思い出す。
そもそもなぜ長であるものが直接接触するのかが分からなかったのだ。
「おい! 俺等に黙ってなにやってんだ!」
「そうですぞ! もし何か有れば妖狐の面々が悲しむ事だ!」
「まぁまぁ、結局無事なんだか良いじゃないかぁ、話は戻すけど彼はその祠に埋まっていたらしくてね。おそらく私たちよりも長いよ。つまり、ゴーレムが余所者ではないと言うことは証明された訳だよぉ」
へらへらと薄い笑いを浮かべる尻尾。
尻尾達、魔物が森に住み着き始める頃からあの祠は存在していたのだ。
と言うよりも、その何代も前からその祠はあり、謎は放置され続けていた。
それは一重に、魔物が祠に入ることができないからだ。
「だが! やつが俺等を襲わない保証はどこにある! 気まぐれで癇癪でも起こされたら俺らは全滅だぞ!」
「おやぁ? 然り気無く敗けを認めちゃってるねぇ。そこもちゃんと大丈夫さ君たちはゴーレムが自ら襲ってきた事があったかい? 私は彼に角に絡まれるようなことが有れば反撃は許したが彼はオーガ達が何かをしたあとに動いたんだよ?」
「うぐっ! だが! これから襲わないとは限らないだろう!」
「君はどれだけゴーレムを嫌っているんだいぃ、そのために私たちが交渉をするんでしょう」
「ですが、奴は我らの言葉を理解するのですか? ゴーレムは自我がないと聞きます」
ちっちっち、と舌をならし指を振ると得意気な顔をした尻尾は角と牙を見たあと笑う。
「問題ないよぉ、肩に乗せてくれって言ったり案内してくれと言ったら快く受け入れてくれたからねぇ。と言うかさ、私達は疑いすぎだよぉ、こっちが信じないなら向こうも信じてくれないよぉ?」
「それも一理ありますな。我らとしては結局ゴーレムとの共生を望むのですがね」
「そうそう、あとは角だけなんだよぉ」
「だ、だがなぁ、Bランクである俺が頭を下げるのは納得いかん!」
頑なに意地を張る角。
すでに瓦解しているその根拠は他のオーガをして呆れさせるものだった。
すると、不意に真剣な表情を作った尻尾が告げる。
「えーと、角、いや皆聞いてほしいねぇ」
「どうした? 急に改まって」
「うん、これは私達がさらに高みへ行けるかはこれを乗り越えた後にどうするかなんだけどねぇ」
「まどろっこしいな、なんの話だ!」
含むように躊躇うように喋る尻尾。
それを見た短期である角は思わず切れてしまう、周りに抑えられたが。
「うん、私達のランクの話さ。角、君はオーガをBランクと言ったね?」
「あぁ、それがどうした」
「君は以前、私が人里へ降りたのを覚えているかい?」
「ん? あー、50年くらい前か、それがどうした」
「実はねぇ、その時点からなんだけどねぇ、私達妖狐、グラスウルフ、オーガのランクは改編されているんだよ」
「なに!? つまり俺はAランクってことか!」
「そんな訳あるか!このバカ!」
「まぁまぁ、それで、そうではないとすると降格と言うことですか?」
思わず怒鳴る尻尾。
若干ランクが上がっていたのに期待していた牙は尻尾も耳も垂れ下がっていた。
「そう、黙っていたのは済まないと思うけど、角に知られると暴れだすと思ったからなんだ」
尻尾は、人里に降りた時の事を話す、2段階下げられたランク、それぞれの魔物への印象の低下。
そして、それを知って角が激昂した場合始末しようと考えていたことを話す。
その場は静寂に包まれた。
みんなが暗い顔をしている。
「そうか、俺ぁてっきり人間がビビってこの森に来ねぇんだと思ってたぜ。まさか、相手にされてもいなかったとはな」
「我の代で知れてよかった。先代には聞かせられないな」
「黙っててごめんよぉ」
「気にする事ぁねぇよ、弱いんだったらこっから強くなるしかねぇだろ」
激昂するかと思われた角は意外と自らの弱さを受け止めてくれたようだった。
その事に尻尾も牙も驚きを隠せない。
「俺がキレるだけだと思ったか? 確かにショックだ、だがな、ゴーレムに負けたせいで少しだけ俺は強さを疑ったんだ。その答えを知れて良かったぜ、頭悪いからな、考えずにすんだ」
「一安心だよぉ、君が暴れだすと思ったから色んな場所に罠を仕掛けたのに無駄だったねぇ」
「おい! てめぇ! そんな仕込みしてやがったのか」
「だが、尻尾殿のお陰で我らはまだまだ高みへと上れそうだ、平和ボケをしていたからだろう。ゴーレムのお陰で緊張感を取り戻せた気がしますな」
「よし、決めたぜ、俺も奴をこっち側にすることに賛成する。あいつには俺の訓練相手になってもらうとするぜ。おい、お前ら! お前らも俺と共にもっと上にいくぞ!」
「どこまでも、着いていきましょう! ただ、バカなことをするようならボコボコにしますからね!」
「やってみやがれ!」
和気藹々とした雰囲気が生まれ、尻尾は肩の力を抜いた。
とりあえず全員の賛同はもらえたが、問題はゴーレムだった。
どこに移動しているか分からないからだ。
だが、この辺りを彷徨いているのは確かで、角がやられて今まででもう2日は経っている。
おそらく見るものはもうない筈だ。
「恐らく彼は暫くは祠にいそうだねぇ、よし、角、牙、明日早速話にいくよ」
(さて、あのゴーレムは吉と出るか凶とでるか)
尻尾は苦笑いしながらそう話す。
今後のこと、それは主にゴーレムについての話だ。
味方につけることが出来れば絶対に森を守る戦力となる。
だが、同時に不安もある、長を含めて全ての魔物がゴーレム一人に負けたのだ、敵対すればまず生き残ることは絶望的だ。
故に問う。
ここからどうしたいのか、敵対し、最後まで戦い散るのか、それとも味方になることにかけて交渉を行い、不干渉若しくは共生していくのかを。
「我らグラスウルフはゴーレムへの敵対心はない。味方になるならばそちらを選ばせてもらおう」
「な!? おい、牙、奴はテメェらグラスウルフの仇だぞ。悔しくはねぇのか!」
「愚問ですな。己の私怨で動き一族を絶やす位ならばこの程度は受け入れる覚悟はとうにできている」
覚悟を決めた目で角を見つめる牙。
尻尾はなにも言わずに黙る。
決めたことに口出しするつもりはない上に尻尾も自分は既に敵対どころか友好関係を結ぼうとしているのだ。
「私ら妖狐も既にゴーレムとは敵対するつもりはないよぉ、むしろ友好的に行きたいねぇ」
「尻尾、お前もか! だが、奴は余所者だぞ!」
「いや? 彼は余所者ではないよ? 寧ろ余所者とは僕達だよぉ」
「……は? どう言うことだ尻尾」
「それは我らも初耳、聞いてもよいか?」
「私はこっそりと彼に接触していたんだがねぇ、君たちは分かるかな?この森の北にある祠のことを」
角達はそれぞれ思い浮かべる。
角はそんなものがあったな程度に牙は、噂くらいならと。
そして、尻尾がゴーレムと行動していたと聞いたのを思い出す。
そもそもなぜ長であるものが直接接触するのかが分からなかったのだ。
「おい! 俺等に黙ってなにやってんだ!」
「そうですぞ! もし何か有れば妖狐の面々が悲しむ事だ!」
「まぁまぁ、結局無事なんだか良いじゃないかぁ、話は戻すけど彼はその祠に埋まっていたらしくてね。おそらく私たちよりも長いよ。つまり、ゴーレムが余所者ではないと言うことは証明された訳だよぉ」
へらへらと薄い笑いを浮かべる尻尾。
尻尾達、魔物が森に住み着き始める頃からあの祠は存在していたのだ。
と言うよりも、その何代も前からその祠はあり、謎は放置され続けていた。
それは一重に、魔物が祠に入ることができないからだ。
「だが! やつが俺等を襲わない保証はどこにある! 気まぐれで癇癪でも起こされたら俺らは全滅だぞ!」
「おやぁ? 然り気無く敗けを認めちゃってるねぇ。そこもちゃんと大丈夫さ君たちはゴーレムが自ら襲ってきた事があったかい? 私は彼に角に絡まれるようなことが有れば反撃は許したが彼はオーガ達が何かをしたあとに動いたんだよ?」
「うぐっ! だが! これから襲わないとは限らないだろう!」
「君はどれだけゴーレムを嫌っているんだいぃ、そのために私たちが交渉をするんでしょう」
「ですが、奴は我らの言葉を理解するのですか? ゴーレムは自我がないと聞きます」
ちっちっち、と舌をならし指を振ると得意気な顔をした尻尾は角と牙を見たあと笑う。
「問題ないよぉ、肩に乗せてくれって言ったり案内してくれと言ったら快く受け入れてくれたからねぇ。と言うかさ、私達は疑いすぎだよぉ、こっちが信じないなら向こうも信じてくれないよぉ?」
「それも一理ありますな。我らとしては結局ゴーレムとの共生を望むのですがね」
「そうそう、あとは角だけなんだよぉ」
「だ、だがなぁ、Bランクである俺が頭を下げるのは納得いかん!」
頑なに意地を張る角。
すでに瓦解しているその根拠は他のオーガをして呆れさせるものだった。
すると、不意に真剣な表情を作った尻尾が告げる。
「えーと、角、いや皆聞いてほしいねぇ」
「どうした? 急に改まって」
「うん、これは私達がさらに高みへ行けるかはこれを乗り越えた後にどうするかなんだけどねぇ」
「まどろっこしいな、なんの話だ!」
含むように躊躇うように喋る尻尾。
それを見た短期である角は思わず切れてしまう、周りに抑えられたが。
「うん、私達のランクの話さ。角、君はオーガをBランクと言ったね?」
「あぁ、それがどうした」
「君は以前、私が人里へ降りたのを覚えているかい?」
「ん? あー、50年くらい前か、それがどうした」
「実はねぇ、その時点からなんだけどねぇ、私達妖狐、グラスウルフ、オーガのランクは改編されているんだよ」
「なに!? つまり俺はAランクってことか!」
「そんな訳あるか!このバカ!」
「まぁまぁ、それで、そうではないとすると降格と言うことですか?」
思わず怒鳴る尻尾。
若干ランクが上がっていたのに期待していた牙は尻尾も耳も垂れ下がっていた。
「そう、黙っていたのは済まないと思うけど、角に知られると暴れだすと思ったからなんだ」
尻尾は、人里に降りた時の事を話す、2段階下げられたランク、それぞれの魔物への印象の低下。
そして、それを知って角が激昂した場合始末しようと考えていたことを話す。
その場は静寂に包まれた。
みんなが暗い顔をしている。
「そうか、俺ぁてっきり人間がビビってこの森に来ねぇんだと思ってたぜ。まさか、相手にされてもいなかったとはな」
「我の代で知れてよかった。先代には聞かせられないな」
「黙っててごめんよぉ」
「気にする事ぁねぇよ、弱いんだったらこっから強くなるしかねぇだろ」
激昂するかと思われた角は意外と自らの弱さを受け止めてくれたようだった。
その事に尻尾も牙も驚きを隠せない。
「俺がキレるだけだと思ったか? 確かにショックだ、だがな、ゴーレムに負けたせいで少しだけ俺は強さを疑ったんだ。その答えを知れて良かったぜ、頭悪いからな、考えずにすんだ」
「一安心だよぉ、君が暴れだすと思ったから色んな場所に罠を仕掛けたのに無駄だったねぇ」
「おい! てめぇ! そんな仕込みしてやがったのか」
「だが、尻尾殿のお陰で我らはまだまだ高みへと上れそうだ、平和ボケをしていたからだろう。ゴーレムのお陰で緊張感を取り戻せた気がしますな」
「よし、決めたぜ、俺も奴をこっち側にすることに賛成する。あいつには俺の訓練相手になってもらうとするぜ。おい、お前ら! お前らも俺と共にもっと上にいくぞ!」
「どこまでも、着いていきましょう! ただ、バカなことをするようならボコボコにしますからね!」
「やってみやがれ!」
和気藹々とした雰囲気が生まれ、尻尾は肩の力を抜いた。
とりあえず全員の賛同はもらえたが、問題はゴーレムだった。
どこに移動しているか分からないからだ。
だが、この辺りを彷徨いているのは確かで、角がやられて今まででもう2日は経っている。
おそらく見るものはもうない筈だ。
「恐らく彼は暫くは祠にいそうだねぇ、よし、角、牙、明日早速話にいくよ」
(さて、あのゴーレムは吉と出るか凶とでるか)
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