そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

スキル検証

 何だ、あのスキルの一覧は。
 おかしいだろう、俺はただのゴーレム、あんなにスキルは無い筈だ。
 見間違い、そう見間違いなのだ。
 最近すっかり休んでないからな、こんなところで疲れが出るとはな……もう1回だけ見てみよう。

 Lv35
スキル
 『付与』[攻撃小up][防御小up][速度小up][回転][硬化][軟化][攻撃小down][防御小down][速度小down][ステータス小up][ステータス小down][音][属性耐性][付与効果範囲向上]

 『物質操作』[石][土][砂]

 全然見間違いじゃないな。
 はっきりと出ているな。
 はっはっは……なんだこれ。
 ダメだな全くわからない。  
 あと俺目覚めて3、4ヵ月しか経っていない訳だ。
 レベルとか意味わからんがこのレベルは無いんじゃないだろうか。
 そもそもどう使うんだ。

 ……付与と物質操作か、念じるだけで良いのか?
 ステータスの開き方も念じる訳だしそれで良いのか?

 「あの、ゴーレムさん? ステータスを見れたんですか?」

 肯定する。
 すると、女冒険者は意外そうな顔をする。
 お前が無いのかと聞いたんだろう。

 「いや、まさか本当に魔物さんも見れるとは思いませんよ」

 何? 女冒険者曰く、人間がスキルを持っていることは知っているが魔物が持っているのかはわからなかったそうな。
 俺で試すなよ。

 どうやら女冒険者もスキル事態は持っているらしいな。
 教えてくれなかったけど、まぁ、自分の手の内を晒すほどバカではないか、仮にも冒険者だろうし。

 「それで、どんなスキルなんですか!?」

 自分のは教えないのに聞いてきやがった……だと!?
 どういう神経してるんだこのアホは。

 「え~? ダメなんですか~?」

 無視だ無視。
 取り敢えず、使ってみるとしよう。
 なんか知らんがステータスを開いた時点で使い方がわかる。
 思い出した、と言う感じだろうか。
 初めて見たステータスだが、既視感がある不思議な感覚だ。

 何故か、[回転]に目が行くが、他にも気になるものがある。
 それは、[音]だ、音の付与ってなんだよ、なんかこっちの都合で覚えてる気がするがまぁ、良い。
 つまり、[音]を自分自身に付与すれば喋れるのでは? と思った訳だ、さっそく付与

 「ア、アァ、ウン、マダ、ウマクハ、シャベレナイカ」
 「!? 大変です! 何処からか声が! 祠の中の棺桶からでしょうか!?」

 女冒険者がそんなことを言う。
 明らかに隣から聞こえているだろうが、しかし、喋る感覚はわかって何よりだ。
 ちょっと体の空洞中に響くような反響してる声だが、問題はないか。そのうち何とかなる。

 「ソコジャナイ、アホカ、ココダ」 
 「え? ゴーレムさん!? 喋れたんですか!?」
 「スキル、ダロウナ、マダ、レンシュウガ、ヒツヨウダ」
 「ほぉー、てっきり喋れるのに喋れないふりをしてると思ってましたよ」

 俺の事をどう思ってんだこいつ。
 おっと、長く喋ってないから馴れないな。
 ま、いずれ何とかなるだろう。

 「一応スキルなんですね、どんなスキルなんですか?」
 「ジブンノハ、イワナイノニ、オレニ、キクノカ?」
 「むぅ、良いじゃないですか、ケチ」
 「オレハ、ベツニ、シラナクテモ、モンダイナイ」
 「言います! 言いますよ! 私のスキルは隠密、暗殺者見たいでカッコいいですよね! はい、次はゴーレムさんです!」
 「オマエガイッタラ、イウナンテ、ヒトコトモ、イッテイナイゾ?」 
 「なんですかそれ! 卑怯者!」

 約束はしてないからな、ちゃんと話を聞かないやつが悪い。はっはっは、
 卑怯者は聞き捨てならない、そう言うのは狐人間にこそ相応しい。

 さて、今日はもう暇だし、能力の確認をすることにした。
 すると女冒険者もやる気になっていたな、お前は絶対関係ないだろう。

 やっぱり最初に気になったのは、[回転]だ。
 なぜ気になったのかと言われれば答えられない、目に留まったんだから仕方ない。
 少し女冒険者には離れてもらって、俺は自分に[回転]を付与する。
 すると俺の体の回転が始まり、どんどん速度がまし、それはもはや絶対に止まることのないサイクロンだったようで

 「オ? オオオオオオオオオオオ!?」
 「うひゃー! 竜巻じゃないですか! ちょ! 止めてください、飛んじゃいますから!」

 なんか風の音がうるさいな、女冒険者が叫んでいたがなにも聞こえない。
 取り敢えず止めて見たが、先ほど女冒険者がいた筈の場所にはいなかった。

 「ここですよぉ! 助けてください!」

 なんか木に引っ掛かってるし、何やってんだアイツは……
 人が一生懸命練習してるのに1人で遊ぶとはな。
 取り敢えず助けてやるか。
 引っ掛かっている女冒険者を救助し、地面に下ろすと怒られた。

 「何してくれてんですか! 殺す気ですか!」

 はて、何を言ってるのやら、自分で登ったと言うのに人のせいにするのはどうかと思うな。

 さて、もう1度やるとするか、今度は逆回転だな。

 「ちょっとちょっとちょっと! 何をしようとしてるんですか!?」
 「カイテン……」
 「ダメに決まってるじゃないですか! 回らないで下さい!」

 ふぅ、ワガママな奴だ。
 つまり、自分が回りたいと言うことだな?
 最初からそういえば良い。
 [回転]を女冒険者へと付与すると、回り始めた。
 ふむ、なかなか強い風だな。

 「うひゃー! ちょ、ま、 と、め! テェェェェェェェ!!!」

 はっはっは、楽しそうで何よりだ。
 [回転]は面白いな、気に入った。
 さて、感想が聞きたい、楽しんでるところすまないが止めるぞ。

 すると地面にぐったりと倒れた。
 そんなに楽しかったのか、またやってやろう。

 「もう、2度と私を回さないでくださ……うっぷ」

 暫くして立ち上がった女冒険者に刃物を突きつけられた。
 へし折ってやったら怒られた。

 解せぬ。

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