そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

助けたその後

 「……それより、俺達はどうしてこんなところに?」
 「俺がわざわざ戻って来て助けたんだ感謝しろ、そして忘れるな」
 「はぁ? あんたが私達を? Fランクなのにできるわけないじゃない!」

 そりゃそうだ、俺Fランクだわ。
 しかもゴリラがやったことを俺の手柄にしようとしてるわ。
 でも、ゴリラがやりましたの方が信じられないわけで。

 「とても希少な魔道具を使ったんだどうしてくれるんだボケぇ!」

 取り敢えずキレてみたぞ、そもそもそんな魔道具あるんだろうか。

 「ま、まさか『泡沫の走り』!? そんな希少な物を!?」

 有るのかよ、後なんだよその名前。
 適当に行ったんだけどな、……勘違いしてくれるなら良いか。

 「そんなところだ」
 「そんな希少な物をなんでアンタが持ってるのよ!」
 「……教える必要があるか? 言っておくがあくまで出来たのは離脱だ、ゴリラを倒した訳じゃない」
 「それならさっさと戻ろう! このまま放っておくわけにはいかない!」

 直情にも程があるな、何も出来ずに負けたのを忘れたのか。

 「自分達のやられっぷりが分からなかったか? 死んだら元も子もないだろ」
 「うぐ、ならどうしろと言うんだ!」
 「1度戻るぞ、そんなボロボロの状態で行けば死ぬからな、命あってこそだ」

 意地でも帰そう、これで行くなら今度はゴリラを止めることはしないとしよう。
 寧ろこっちが始末したいくらいだ。
 よし、協力して始末しよう、そうしよう。

 「確かに、俺らの実力じゃ厳しいかもしれない、それに希少な魔道具まで使わせてしまったのな戻ると言うのはランドに申し訳ない」
 「ちょっと! それじゃあカウントゴリラはどうするの?」
 「1度ダガシカシさんに意見を貰おう、カウントゴリラは滅多なことでは場所を移さないからまだ時間はあるはずだ」

 まともなこと言えるんだな。

 冒険者達は渋々だったり、さっさと離れたい様子で野営に使っていた道具を片付けていた。




 「よし、戻るぞ、夜は危険だが、一刻も早く戻ろう!」
 「それなら安心しろ真っ直ぐ来たが1度も魔物に遭遇しなかった。今はどうか知らないがな」
 「その情報でもありがたいよ、さぁ、行こう」
 「おっと、俺は少しやることがあるから先に行ってくれ」
 「ここは危険だぞ? なにをするんだ?」
 「……ゴブリン狩りだ」

 そう言えばまだ依頼を終わらせていないのを思い出した。
 ……仕方ないよね、忘れてたんだし、罰金嫌だし。

 「気を付けてくれよ?」
 「こっちの台詞だな、油断してゴブリンごときに殺られそうだからな」
 「耳が痛い話だよ、どうやら今回の件で相当評価が下がったらしいね」

 苦笑いで申し訳なさそうにするリーダー。
 周りの冒険者も俯いてしまった、まあ自分達の不注意 で生んだ結果だ、受け止めれば何とかなるだろう。
 ……Fランクの俺が言うことじゃないな。

 冒険者達を見送って俺はゴリラの元へと向かうことにした。
 まぁすぐ近くに居たんだけどさ。

 「行ったウホか」
 「あぁ、俺も戻るさ……ゴブリン狩ってからな」
 「それは大変ウホね、俺がここにきたせいで大体のゴブリンは逃げてったウホから」
 「マジかよ、何してくれてんだよ」

 もう少し遠くに行かなきゃならなくなったな。
 後3時間程で夜が明けるな。
 少し急ぐか。

 「じゃあ、行くわ、数日後には向かえに行くからな」
 「分かったウホ」

 こうしてゴブリン探しの旅が始まった。



 ……まぁ次の森で見つかった訳だが、どうだったか? 一瞬だよ。


 探した苦労を返して欲しい。
 文句を行っても仕方ないか、さっさと戻ろう。
 冒険者達は着いただろうか。

 辺りも明るくなってきたし、走れば間に合うだろう。
 急いでもないんだけどな。


 走って1時間程だ、街が見えてきた。
 その前に冒険者達が歩いているのが分かる。

 ……無視だな。
 これ以上心配してやる必要はないだろう。

 流石にこの速度で通過すると何か言われるかもしれないからな、普通の小走りで良いだろう。

 「あ、ランドじゃないか、随分早いな」
 「そうだな、それじゃ」

 すれ違い様に挨拶だけして通過する事にした。
 ……なんで着いてくるんだよ、来るなよ。

 「お前が走ってるってことは何か急ぎの用があるんだろ?」

 そんなもんないんだが……
 ただお前らに構いたくないだけなんだが。

 よし、もう少し早く行こう。
 どんどん距離が離れていく。
 ……俺はゴリラ戦で体力が有り余ってるだけだよ、決して体力が尽きない訳じゃないよ?


 嘘だ、体力は尽きない。


 「おや、ランドさん、お疲れ様です」


 門番が話しかけながらも手続きをして街へと入りギルドへと向かう。

 ギルドにはハゲと女冒険者が何かを話していた。

 「ハゲ、女冒険者、何の話をしている?」
 「あ、ランドさんお帰りなさい そろそろ街を出る話をしていたんですよ」
 「寂しくなるぜランドよ」
 「別に親しくしてた訳じゃないだろ気持ち悪い」
 「相変わらず辛辣な奴だな、それで、お前は夜どこに行っていたんだ?」
 「ん? あぁ、ゴブリン狩りだな」
 「ゴブリンの為に夜出るなんて変わってるな」
 「ただの暇潰しだ気にするな」

 そのまま受付嬢の元へと向かい、討伐報酬を貰ってどうするかを考える。

 するとギルドの外から慌ただしく冒険者の一団が入ってきた。

 「ダガシカシさん! 居ますか!」

 あれは、リーダーだな。
 汗だくだ、あんなに荷物をもって走るからだ。

 どうやらハゲに今回の事を報告した後に今後の対策と討伐する人員の選択等を相談するつもりなのだろう。

 正直全部解決するんだけどな、ゴリラ連れていくし、逆にこっちの森の方が危険度が増す気がするするけど多分狐人間達はスキルを理解したからもっと凶悪になってる可能性もある。

 ……50年以上前に人々を恐怖に陥れた森の再興になりそうだが、滅多なことでは人はこないらしいし、問題ないだろう……多分。

 そもそもあの森の奴等はどれ程の規模で陥れたかは知らんな、女冒険者がその辺を調べてくれているだろうか。
 後で聞いてみよう。

 「あ! ランドじゃないか! なんで置いていくんだよ!」
 「ん? なんだランド、ソボロ達と知り合いか?」
 「……さっぱり分からんな」

 これ以上は面倒だな、ギルド併設の酒場で座っておこう。
 ……だから何故俺の周りに集まるんだよ、座るなよ。

 「……それで、どういう関係だ?」

 リーダーは俺との遭遇とゴリラの討伐の失敗、それに俺に希少な魔道具を使ってもらい助けられた事を話した。

 「なるほどな、ランド、助けてくれて助かった」
 「目の前で死なれるのは困るからな、助けた後なのにもう一度突っ込む様なら放置して帰る予定だったからな」
 「……本当に帰ることを選択してよかった」

 他のものもリーダーの言葉に頷いた。
 すると女冒険者が俺に耳打ちをする。

 「ランドさんってそんな魔道具持ってました?」
 「有るわけ無いだろ、領主の話を聞いて初めて知ったんだから」
 「じゃあなんで誤魔化したんですか」
 「Fランク冒険者の俺の実力なんて言っても信じないだろ、それに目立つ気はない」 
 「そう言えばそうでしたねー」

 話を聞いたハゲがふと疑問に思ったようで考え込む。
 嫌な予感がするんだよな。

 「ランドの実力からして助けて貰えたのは分かるが何故討伐が出来なかったんだ? ランドなら出来ただろ?」
 「ダガシカシさん、何言ってるんですか、ランドはFランクですよ? 俺等より弱いに決まってるじゃないですか」
 「そうか、お前らはコイツがやって来たことを知らなかったな、コイツはな、試験で俺をボコボコにした挙げ句、街に接近したアラブルベアを単独で討伐したんだぞ?」
 「ははは、ダガシカシさんも冗談が上手くなりましたね、Fランクが? 無理に決まってますよ」

 そんなことはあり得ないと言い張るリーダー。
 なんか腹立つな、でも正直そうなるのは当然だな。

 「なら、ランドの実力を見ると良い、ランドも良いな?」

 全員が俺の方を見ている。
 こっちもイラついたからな。

 「断る」

「そのゴーレム、元人間につき」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く