そのゴーレム、元人間につき
戦況<ランド>
──ブォォン!
空気を切り裂く音がそこら中から聞こえ、時々周りの木にぶつかり乾いた音が森の中に響く。
──スパァァン!
また乾いた音がなる。
その正体は目の前のトレントの親玉から伸びる蔦の鞭だ。
満遍なく、間断なく襲い掛かる蔦をしゃがんで回避するとその蔦は俺の近くの木に当たり、またしても乾いた音をならすのだ。
「痛っ!」
その蔦がずっとぶつかっているのは俺を囲んでいる他のトレントであり、自らの親玉に攻撃を受けており全く連携も糞も無いわけだ。
この森に突撃して直ぐにオークやトレントの親玉と出会ったのだが、俺の周りの木は大体がトレントだった訳であっさりと囲まれた。
四方八方から蔦が来るんだけど、普通なら逃げ場は無いわけだよ、でもコイツら全く連携がとれないでやんの、蔦同士がぶつかったり絡まったり、お互いを間違えて殴って喧嘩になったりと……色々起こっておりこっちは気軽に回避する事が出来るわけだ。
「あんた達! 私の邪魔しないでよ!」
「そう言うボスはアイツに一撃も当てられてないじゃない!」
「何よ! 生意気よ!」
「喧嘩は他所でやれよ……」
呆れ以外なにもでないぞ。
全く連携できてないからな、オークが誰一人として突撃出来てない訳だ。
これならその辺のゴブリンの方がまだましである。
あれも酷いっちゃ酷いが一応はお互いの邪魔はしてないからな、こっちは自己主張が激しい。
よく今までやっていけたな、こんなのが尻尾達と実力が同じだったと言うのは信じられん。
「先ずは目の前の敵からどうにかしろ! 喧嘩は後だ!」
「何よ! 私に指図するわけ!?」
「違う! 今そんなことをしても無駄なだけだ、見ろアイツを、お前達が攻撃をしないから棒立ちだぞ、舐められてるんだ!」
「生意気ね! あんた達! アイツからやっておしまいな!」
オークの注意によってトレント達はちゃんとした動きを再開する。
今度はなかなか面倒だ、お互いの邪魔をする様子もなく攻撃を仕掛けてくる。
……正直、この蔦当たっても問題はないと思うんだけど、何となく回避の練習になるかなと思って避けている。
だって攻撃だけだし、捕縛とか考えられた攻撃じゃないから捌くだけで良いだろう。
捕まったら捕まったで出来ることあるしな。
「くっ! この人間速いわね、攻撃が当たらないわよ!」
「攻撃ばかりに囚われるな! 動けなくすれば良い!」
「その手があったわね!」
オークの指示が結構的確だな、一応は親玉だからか。
しかし、トレントの方はおかしいな、本来トレントは頭が良い筈だ、それなのに戦闘経験が無いのかそこまで頭が回っていなさそうだ。
それでも捕まるつもりは更々無い。
捕縛しようとする蔦と攻撃の蔦、違いは全く分からんが全部避けてしまえば問題はない。
正直に言えば全部の回避なんてのは無理なんだけどな。
今は偶々攻撃用の蔦を打ち落とせているから捕まってないだけだ。
そろそろ捕まるんじゃ無いだろうか。
そんなことを考えていたら俺の右足に蔦が絡まっていた。
「ほほほ! やったわ! 皆、もっと絡み付くのよ!」
親玉どうにかしろ!の命令で他のトレントも動き始め、俺の身体中に蔦が絡まっている。
顔にも絡まっているのでもう視界は真っ暗だ、何にも見えない。
「でかした! 今だ! 槍で突け!」
「「おぉ!」」
恐らく待機していたオーク達か? 堂々と足音を立てながら接近してくる。
──ガキンッ!
おっとこれは脇腹に槍が当たったな、貫くには至ってないと言うことはそこまでの威力じゃないな。
む、今度は心臓の所か? 当たってるだけじゃ傷もダメージも入らないから問題はない。
そうして次々と槍が突かれていく。
四方八方に、刺さった槍は記憶に存在する樽に入った髭の男の様になっているだろう。
あの髭の男は回りに剣が刺さっているのになぜ笑っているのか不思議だ。
いずれ話を聞いてみたい所だ。
「親分! こいつ硬ぇ!!」
「どうなってやがる! まさか服の下にも鎧でも着けてんのか!? それであの早さとはこんな人間見たことねぇ!」
親玉オークも驚きが隠せないようだ。
鎧とか持ってないし、ただの石だし、石って意外と硬いんだよな、良かったゴーレムで痛いのなんて勘弁だからな。
さて、敵が周囲に集まってくれたお陰で同時に攻撃出来るわけだ。
では行ってみよう『付与』[回転]により何がおこるのか!
──ヒュン
「おい、なんだ? 動いている?」
これ若干回り辛いな、でも止められる訳じゃないし続行だな。
……自分で止められるものでも無いけどな。
──ブォン!
勢いが乗ってきたな、もう一息だ。
「こいつ、ヤベェ!? おいお前ら今すぐ離れ──」
残念。
もう遅い。
──ゴォォォォォォ!!!!
「……! なんっ……!」
相変わらずすごい勢いで回してくれる[回転]により周囲は多分巻き込まれて大惨事だろう。
止まるまで結果は分からない。
「ぎゃっ! 止め……!」
「うわっ! たおれ……!」
なんか聞こえる気がする。
まぁ敵だしな、手加減する必要も無いだろう。
それから数分して俺の回転が止まる。
体に巻き付いていた蔦はなく、綺麗にサッパリしていた。
どこにも不備はない、問題ないな、うん。
さてお次は俺の周りの様子だ。
……荒れてるな、まるで竜巻が通ったかの様な有り様だ。
俺の回転に巻き込まれた蔦を張ったトレント達は蔦を引きちぎられていたりしており、完全に怯えた目をしている。
それだけならまぁ良いだろう。
問題は、引きちぎられず、そのまま回転に持っていかれたトレントは地面から飛び出して倒れていたりしている。
トレントって地面から出たら死ぬのだろうか。
まぁどうでも良いな、俺には関係ない。
そしてオーク達だが、槍を離せず、さらに蔦に絡まり俺から離脱すること叶わずに回されて地面に這いつくばっていたり、飛ばされたり、トレントにぶら下がったりなと様々だ。
……これでは誰が親玉だか分かりゃしないな。
えーと、尻尾に頼まれていたのは降参するか戦うか聞いてから拒否されればボコれだったよな。
あれ? 順番逆になってるな、でもこれは、コイツらが先にやって来た事だし俺関係ないな。
「お、いたいた」
ちょっと探したら居たわ、親玉オーク。
目ぇ回してるな、寝かすつもりは無いぞ起きろ。
チョップを何度かやると痛みで起きたようだ。
「ってぇな! ってうおっ! や、止めろ!
俺はもう戦う気はねぇ!」
「そうはいかんな、こっちはストレス貯まってるんだ、ちょっとサンドバッグになれや」
「ひぃ!」
余りにも及び腰なのでついつい苛めたくなるよな。
おっとそんなことしてる暇はない。
「半分冗談だ」
「半分かよ!」
「あ?」
「何でも無いですっ!」
「まぁ良いや、ちゃんと森の外でて降伏するって言ってこい、あ、トレントも一緒にな」
「わ、わかった、おい、起きろ!」
親玉オークは親玉トレントを叩き売り起こして話し合っている。
トレントの方も敵意は無いようだ、むしろ震えているかもしれない。
地面から引っこ抜いたからな、というかこれくらいで降伏しないでほしかった。
つまらないな。
「では、今から宣言してくる」
「この森から出るのに時間が掛かるだろ、俺が何とかする」
「それはどういう……」
ご存知の通り、『物質操作』による大砲である。
ここで死ぬようなら貴様らに未来はない、フハハハハ!
「逝ってこい」
「「ギャァァァア!!」」
……後は尻尾とかが何とかするだろう。
俺もカエルとしようかな。
「ん?」
気のせいかも知れんが視線を感じるような。
周りをキョロキョロすると視線を向けていた者の正体がわかった。
ゴブリンだ。
ゴブリンが木の影から此方を見ている。
……何故にゴブリン?
空気を切り裂く音がそこら中から聞こえ、時々周りの木にぶつかり乾いた音が森の中に響く。
──スパァァン!
また乾いた音がなる。
その正体は目の前のトレントの親玉から伸びる蔦の鞭だ。
満遍なく、間断なく襲い掛かる蔦をしゃがんで回避するとその蔦は俺の近くの木に当たり、またしても乾いた音をならすのだ。
「痛っ!」
その蔦がずっとぶつかっているのは俺を囲んでいる他のトレントであり、自らの親玉に攻撃を受けており全く連携も糞も無いわけだ。
この森に突撃して直ぐにオークやトレントの親玉と出会ったのだが、俺の周りの木は大体がトレントだった訳であっさりと囲まれた。
四方八方から蔦が来るんだけど、普通なら逃げ場は無いわけだよ、でもコイツら全く連携がとれないでやんの、蔦同士がぶつかったり絡まったり、お互いを間違えて殴って喧嘩になったりと……色々起こっておりこっちは気軽に回避する事が出来るわけだ。
「あんた達! 私の邪魔しないでよ!」
「そう言うボスはアイツに一撃も当てられてないじゃない!」
「何よ! 生意気よ!」
「喧嘩は他所でやれよ……」
呆れ以外なにもでないぞ。
全く連携できてないからな、オークが誰一人として突撃出来てない訳だ。
これならその辺のゴブリンの方がまだましである。
あれも酷いっちゃ酷いが一応はお互いの邪魔はしてないからな、こっちは自己主張が激しい。
よく今までやっていけたな、こんなのが尻尾達と実力が同じだったと言うのは信じられん。
「先ずは目の前の敵からどうにかしろ! 喧嘩は後だ!」
「何よ! 私に指図するわけ!?」
「違う! 今そんなことをしても無駄なだけだ、見ろアイツを、お前達が攻撃をしないから棒立ちだぞ、舐められてるんだ!」
「生意気ね! あんた達! アイツからやっておしまいな!」
オークの注意によってトレント達はちゃんとした動きを再開する。
今度はなかなか面倒だ、お互いの邪魔をする様子もなく攻撃を仕掛けてくる。
……正直、この蔦当たっても問題はないと思うんだけど、何となく回避の練習になるかなと思って避けている。
だって攻撃だけだし、捕縛とか考えられた攻撃じゃないから捌くだけで良いだろう。
捕まったら捕まったで出来ることあるしな。
「くっ! この人間速いわね、攻撃が当たらないわよ!」
「攻撃ばかりに囚われるな! 動けなくすれば良い!」
「その手があったわね!」
オークの指示が結構的確だな、一応は親玉だからか。
しかし、トレントの方はおかしいな、本来トレントは頭が良い筈だ、それなのに戦闘経験が無いのかそこまで頭が回っていなさそうだ。
それでも捕まるつもりは更々無い。
捕縛しようとする蔦と攻撃の蔦、違いは全く分からんが全部避けてしまえば問題はない。
正直に言えば全部の回避なんてのは無理なんだけどな。
今は偶々攻撃用の蔦を打ち落とせているから捕まってないだけだ。
そろそろ捕まるんじゃ無いだろうか。
そんなことを考えていたら俺の右足に蔦が絡まっていた。
「ほほほ! やったわ! 皆、もっと絡み付くのよ!」
親玉どうにかしろ!の命令で他のトレントも動き始め、俺の身体中に蔦が絡まっている。
顔にも絡まっているのでもう視界は真っ暗だ、何にも見えない。
「でかした! 今だ! 槍で突け!」
「「おぉ!」」
恐らく待機していたオーク達か? 堂々と足音を立てながら接近してくる。
──ガキンッ!
おっとこれは脇腹に槍が当たったな、貫くには至ってないと言うことはそこまでの威力じゃないな。
む、今度は心臓の所か? 当たってるだけじゃ傷もダメージも入らないから問題はない。
そうして次々と槍が突かれていく。
四方八方に、刺さった槍は記憶に存在する樽に入った髭の男の様になっているだろう。
あの髭の男は回りに剣が刺さっているのになぜ笑っているのか不思議だ。
いずれ話を聞いてみたい所だ。
「親分! こいつ硬ぇ!!」
「どうなってやがる! まさか服の下にも鎧でも着けてんのか!? それであの早さとはこんな人間見たことねぇ!」
親玉オークも驚きが隠せないようだ。
鎧とか持ってないし、ただの石だし、石って意外と硬いんだよな、良かったゴーレムで痛いのなんて勘弁だからな。
さて、敵が周囲に集まってくれたお陰で同時に攻撃出来るわけだ。
では行ってみよう『付与』[回転]により何がおこるのか!
──ヒュン
「おい、なんだ? 動いている?」
これ若干回り辛いな、でも止められる訳じゃないし続行だな。
……自分で止められるものでも無いけどな。
──ブォン!
勢いが乗ってきたな、もう一息だ。
「こいつ、ヤベェ!? おいお前ら今すぐ離れ──」
残念。
もう遅い。
──ゴォォォォォォ!!!!
「……! なんっ……!」
相変わらずすごい勢いで回してくれる[回転]により周囲は多分巻き込まれて大惨事だろう。
止まるまで結果は分からない。
「ぎゃっ! 止め……!」
「うわっ! たおれ……!」
なんか聞こえる気がする。
まぁ敵だしな、手加減する必要も無いだろう。
それから数分して俺の回転が止まる。
体に巻き付いていた蔦はなく、綺麗にサッパリしていた。
どこにも不備はない、問題ないな、うん。
さてお次は俺の周りの様子だ。
……荒れてるな、まるで竜巻が通ったかの様な有り様だ。
俺の回転に巻き込まれた蔦を張ったトレント達は蔦を引きちぎられていたりしており、完全に怯えた目をしている。
それだけならまぁ良いだろう。
問題は、引きちぎられず、そのまま回転に持っていかれたトレントは地面から飛び出して倒れていたりしている。
トレントって地面から出たら死ぬのだろうか。
まぁどうでも良いな、俺には関係ない。
そしてオーク達だが、槍を離せず、さらに蔦に絡まり俺から離脱すること叶わずに回されて地面に這いつくばっていたり、飛ばされたり、トレントにぶら下がったりなと様々だ。
……これでは誰が親玉だか分かりゃしないな。
えーと、尻尾に頼まれていたのは降参するか戦うか聞いてから拒否されればボコれだったよな。
あれ? 順番逆になってるな、でもこれは、コイツらが先にやって来た事だし俺関係ないな。
「お、いたいた」
ちょっと探したら居たわ、親玉オーク。
目ぇ回してるな、寝かすつもりは無いぞ起きろ。
チョップを何度かやると痛みで起きたようだ。
「ってぇな! ってうおっ! や、止めろ!
俺はもう戦う気はねぇ!」
「そうはいかんな、こっちはストレス貯まってるんだ、ちょっとサンドバッグになれや」
「ひぃ!」
余りにも及び腰なのでついつい苛めたくなるよな。
おっとそんなことしてる暇はない。
「半分冗談だ」
「半分かよ!」
「あ?」
「何でも無いですっ!」
「まぁ良いや、ちゃんと森の外でて降伏するって言ってこい、あ、トレントも一緒にな」
「わ、わかった、おい、起きろ!」
親玉オークは親玉トレントを叩き売り起こして話し合っている。
トレントの方も敵意は無いようだ、むしろ震えているかもしれない。
地面から引っこ抜いたからな、というかこれくらいで降伏しないでほしかった。
つまらないな。
「では、今から宣言してくる」
「この森から出るのに時間が掛かるだろ、俺が何とかする」
「それはどういう……」
ご存知の通り、『物質操作』による大砲である。
ここで死ぬようなら貴様らに未来はない、フハハハハ!
「逝ってこい」
「「ギャァァァア!!」」
……後は尻尾とかが何とかするだろう。
俺もカエルとしようかな。
「ん?」
気のせいかも知れんが視線を感じるような。
周りをキョロキョロすると視線を向けていた者の正体がわかった。
ゴブリンだ。
ゴブリンが木の影から此方を見ている。
……何故にゴブリン?
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