そのゴーレム、元人間につき
辺境、再び
戦争が終わり数週間が経ち、俺は今現在何もない平原を歩いている最中だ。
隣の森とも合併が終わり、森の規模は目に見えて広がり活性化している。
新たな仲間である棍棒、槍、鞭共々仲良くしており、何十年も前からやってる争いが嘘のようである。
そして尻尾によりスキルについても教え、各々が研鑽に励んでいる様子で、槍等は角と共に鍛えていた。
角よりも頭は回るが少し脳みそを使う脳筋という解釈が正しそうだ。
鞭は尻尾と協力して植物や果実の栽培に力を入れ始めた。
森の食料の水準がより高くなってもっと良い物が出来るとほくほくしていた。
……そのできた奴俺は食べられないんだよな。
仕方ない、嫌がらせに街で売り払ってくれるわ。
あ、忘れてた生意気なゴブリン野郎、棍棒についてだが、アイツは度々祠に訪れては何故かエマに絡んでいる。
そして一蹴されるの繰り返しだ。
それを俺はただボーッとしながら眺めているだけだ、他所でやれや。
たまに俺にも向かってくるがそこは[回転]の素晴らしさを楽しんでもらう。
『付与』便利。
住んでる区画としては祠を中心として北は断崖絶壁の崖が上にそびえ、東側に角、南に尻尾、西に牙、その地域を覆うように槍、鞭、棍棒がそれぞれ住みついている。
今のところ喧嘩はないし、安全だし良いのでは無いだろうか。
ガケトカゲとゴリラはそれぞれ牙や角の所に住み着いている感じだ。
幸い、俺に厄介事は回ってきていないので気楽に生きれていると思う。
「ランドさん、そろそろ現実逃避から戻ってくださいよ」
エマが俺の体を揺すっているのが分かる。
そして此方を覗き込んでいるのも。
あー、そうでした、平原を歩いているんだった。
なんで、こんなだだっ広いだけの面白味も糞もない平原を歩いているかと言えば、いつぶりかの辺境、ファンに遊びに行くところなのだ。
「あのー、早く私達おぶって走ってくれませんか? 日が暮れますよ」
「そうそう、ランド君。果実が腐ってしまう前にさ」
うん、エマは分かるよ、いつも付いてくるからね。
しかし、尻尾よ、貴様がいることだけは分からん。
「……なんで尻尾がいるんだ?」
「あれ? 忘れちゃったの? 個人的に調べたいこともあるから付いてくるって言ったじゃないか」
うーん、どうやら完全に現実逃避していたせいで忘れていた様だ。
尻尾は姿形は変わってないがそのまま来ても大丈夫なのだろうか。
「あー、私ね、正直妖狐って絶滅種扱いだからさ、多分狐の獣人で通せるんじゃないかと思ってね」
「確かに! 尻尾さん、人として見ると可愛い感じですもんね!」
「そう? やっぱり? 見る目あるよねぇ」
腰をくねくねとして小躍りする尻尾、エマは体を左右に揺らしながら手拍子をしている。
可愛いらしいじゃない、コイツ、雄だからな。
まぁ、人間や獣人として見るなら美形なのでは無いだろうか、ゴーレムの俺にはその感性は良く分からん。
「さて、茶番はこの辺にしてと、さぁ早く行こうよランド君」
「ちっ、わかった、乗れ」
エマは当然のようにお姫様抱っこをして、尻尾は肩車である。
いや、良く見れば子供にしか見えないし、普通に乗るな。
そう言えば俺が巨大だったときも肩に乗っていただろうか。
取り敢えず今は辺境ファンに急ぐとしよう。
誰かさんのせいで遅れてしまったからな。
「……あっ! ランドさんじゃないですか、お久しぶりです!」
門番の物腰柔らかな青年兵士が俺に話しかけてくる。
良く覚えていたものだな。
「俺なんかを良く覚えていたな」
「そりゃそうですよ、ランドさんは有名人ですからね! アラブルベアの時から!」
キラキラした目と興奮した様子で話す門番、そこまで目だった覚えはないんだがな。
「ささっ! 皆さんきっと驚きますよ! 僕なんかに構ってないで挨拶してきてください!」
「お、おう」
そうやってギルドカードを渡しつつ、街に入っていくと、門番が首を傾げる。
「あれ? ランドさん、こんな子供いました?」
子供……尻尾の事だろうか。
うん、尻尾だ。
「そいつはそこの平原でバッタリ有ってなつかれた」
「ははぁ、確かに初対面の子供が肩車なんてされませんもんね」
そう、この野郎ずっと俺の肩に乗っていて、どうやら降りるつもりは更々無いらしい。
叩き落とすことも考えたがこの性格の狐だ、絶対面倒な事をしてくるに決まっている。
なので放置だ。
尻尾、エマを引き連れて街の中に入る。
「いやぁ、ここも対して代わり映えがないよねぇ」
「そうか、この辺の人里はここしかないから来たことがあるんだな」
「そうそう、昔変な冒険者にあってねぇ名前は忘れちゃったけど生意気だったねぇ」
お前の昔話なんて知らんがな。
適当に聞き流す事にしよう、50年も前の人間がこの辺に易々と居るわけないしな。
ギルドへ着いて中に入ると前よりも賑やかになっているのか、人が多い、そんな気がする。
朝から飲んでいたのか机に俯せになっているものや、陽気に酒の入った容器を高らかに上げて騒いでるもの、それを煩わしくみて料理を食べているもの等がいる。
そんな中でも一際目立つハゲ頭がいた。
どこかで見たような見てないような……思い出せないので考えるのは放棄した。
なぜギルドに来たかと言うと、ある程度は情報が得られるのではないかとエマが提案したからだ、あと俺が情報集めの最中は暇なので面白い依頼はないかと探しに来た。
「あ、ランドさん、久しぶり」
俺に話しかけてくるのはギルドカウンターで書類作業をしている受付嬢だ、相変わらず何を考えているのか分からん顔をしている。
「門番もだが、よく俺の事を覚えているもんだな」
「ランドさんは一応あの後から結構有名」
「特にこれと言って何かした覚えは無いんだが?」
本当に心当たりは無いな、覚えててくれているなら別に良いか……。
「よっ、無視しやがって。久しぶりじゃねぇか!」
俺の肩を叩いて高らかに笑い声を上げてくるハゲ頭の筋肉の塊……魔物だろうか、なんの魔物だ? 筋肉ダルマ?
「なぜ魔物がこんな街中に……」
「誰が魔物だ! 俺だ! ダガシカシだ! お前の冒険者試験の試験官を勤めただろうが!」
あー、そんな奴もいたな。
ハゲしか頭に入ってなかったから顔までは覚えてなかったわ。
「覚えてなかった」
「ハッキリとそんなこと言うもんじゃねぇよ……」
頭をかくりと下げ、残念そうにするハゲ……ダガシカシ。
変わった名前だよな、親の顔が見てみたい。
「ま、ずいぶんと久しぶりじゃねぇか! エマちゃんも元気そうで何よりだぜ!」
「はい! お久しぶりです!」
ダガシカシに元気よく笑顔で対応するエマ。
心なしか嬉しそうだな。
そりゃ毎日魔物に囲まれてるんだ、ストレスも溜まるだろう、それならここに移住すれば良いと思うんだがそこは拒否される。
「……しっかし、ランドよ、そのお前の上にいる子供はなんだ?」
「そうだな、紹介しよう。俺とエマの息子だ」
「「ぶっ!?」」
ダガシカシとエマが吹き出す。
どうやら最高のギャグだったらしいな。
耳元で尻尾が「ククク、さ、最高ッ」とか呟いていた。
気に入ったのなら何よりだ。
「ちょ! ちょっと何言い出してるんですかランドさん! 違いますからね!」
「なるほどな、エマちゃんがランドにべったりだったのも頷けるわ」
「ランドさん! どうしてくれるんですかアホぉ!」
ギルド中に響きわたる音をならす程、エマの拳は鋭く抜群の威力だった。
このあと、エマは必死に説明をして誤解が解けた頃には、俺はその場から離れて依頼書を見て、それが見つかり何故かダガシカシと共に床に座らされる羽目になった。
隣の森とも合併が終わり、森の規模は目に見えて広がり活性化している。
新たな仲間である棍棒、槍、鞭共々仲良くしており、何十年も前からやってる争いが嘘のようである。
そして尻尾によりスキルについても教え、各々が研鑽に励んでいる様子で、槍等は角と共に鍛えていた。
角よりも頭は回るが少し脳みそを使う脳筋という解釈が正しそうだ。
鞭は尻尾と協力して植物や果実の栽培に力を入れ始めた。
森の食料の水準がより高くなってもっと良い物が出来るとほくほくしていた。
……そのできた奴俺は食べられないんだよな。
仕方ない、嫌がらせに街で売り払ってくれるわ。
あ、忘れてた生意気なゴブリン野郎、棍棒についてだが、アイツは度々祠に訪れては何故かエマに絡んでいる。
そして一蹴されるの繰り返しだ。
それを俺はただボーッとしながら眺めているだけだ、他所でやれや。
たまに俺にも向かってくるがそこは[回転]の素晴らしさを楽しんでもらう。
『付与』便利。
住んでる区画としては祠を中心として北は断崖絶壁の崖が上にそびえ、東側に角、南に尻尾、西に牙、その地域を覆うように槍、鞭、棍棒がそれぞれ住みついている。
今のところ喧嘩はないし、安全だし良いのでは無いだろうか。
ガケトカゲとゴリラはそれぞれ牙や角の所に住み着いている感じだ。
幸い、俺に厄介事は回ってきていないので気楽に生きれていると思う。
「ランドさん、そろそろ現実逃避から戻ってくださいよ」
エマが俺の体を揺すっているのが分かる。
そして此方を覗き込んでいるのも。
あー、そうでした、平原を歩いているんだった。
なんで、こんなだだっ広いだけの面白味も糞もない平原を歩いているかと言えば、いつぶりかの辺境、ファンに遊びに行くところなのだ。
「あのー、早く私達おぶって走ってくれませんか? 日が暮れますよ」
「そうそう、ランド君。果実が腐ってしまう前にさ」
うん、エマは分かるよ、いつも付いてくるからね。
しかし、尻尾よ、貴様がいることだけは分からん。
「……なんで尻尾がいるんだ?」
「あれ? 忘れちゃったの? 個人的に調べたいこともあるから付いてくるって言ったじゃないか」
うーん、どうやら完全に現実逃避していたせいで忘れていた様だ。
尻尾は姿形は変わってないがそのまま来ても大丈夫なのだろうか。
「あー、私ね、正直妖狐って絶滅種扱いだからさ、多分狐の獣人で通せるんじゃないかと思ってね」
「確かに! 尻尾さん、人として見ると可愛い感じですもんね!」
「そう? やっぱり? 見る目あるよねぇ」
腰をくねくねとして小躍りする尻尾、エマは体を左右に揺らしながら手拍子をしている。
可愛いらしいじゃない、コイツ、雄だからな。
まぁ、人間や獣人として見るなら美形なのでは無いだろうか、ゴーレムの俺にはその感性は良く分からん。
「さて、茶番はこの辺にしてと、さぁ早く行こうよランド君」
「ちっ、わかった、乗れ」
エマは当然のようにお姫様抱っこをして、尻尾は肩車である。
いや、良く見れば子供にしか見えないし、普通に乗るな。
そう言えば俺が巨大だったときも肩に乗っていただろうか。
取り敢えず今は辺境ファンに急ぐとしよう。
誰かさんのせいで遅れてしまったからな。
「……あっ! ランドさんじゃないですか、お久しぶりです!」
門番の物腰柔らかな青年兵士が俺に話しかけてくる。
良く覚えていたものだな。
「俺なんかを良く覚えていたな」
「そりゃそうですよ、ランドさんは有名人ですからね! アラブルベアの時から!」
キラキラした目と興奮した様子で話す門番、そこまで目だった覚えはないんだがな。
「ささっ! 皆さんきっと驚きますよ! 僕なんかに構ってないで挨拶してきてください!」
「お、おう」
そうやってギルドカードを渡しつつ、街に入っていくと、門番が首を傾げる。
「あれ? ランドさん、こんな子供いました?」
子供……尻尾の事だろうか。
うん、尻尾だ。
「そいつはそこの平原でバッタリ有ってなつかれた」
「ははぁ、確かに初対面の子供が肩車なんてされませんもんね」
そう、この野郎ずっと俺の肩に乗っていて、どうやら降りるつもりは更々無いらしい。
叩き落とすことも考えたがこの性格の狐だ、絶対面倒な事をしてくるに決まっている。
なので放置だ。
尻尾、エマを引き連れて街の中に入る。
「いやぁ、ここも対して代わり映えがないよねぇ」
「そうか、この辺の人里はここしかないから来たことがあるんだな」
「そうそう、昔変な冒険者にあってねぇ名前は忘れちゃったけど生意気だったねぇ」
お前の昔話なんて知らんがな。
適当に聞き流す事にしよう、50年も前の人間がこの辺に易々と居るわけないしな。
ギルドへ着いて中に入ると前よりも賑やかになっているのか、人が多い、そんな気がする。
朝から飲んでいたのか机に俯せになっているものや、陽気に酒の入った容器を高らかに上げて騒いでるもの、それを煩わしくみて料理を食べているもの等がいる。
そんな中でも一際目立つハゲ頭がいた。
どこかで見たような見てないような……思い出せないので考えるのは放棄した。
なぜギルドに来たかと言うと、ある程度は情報が得られるのではないかとエマが提案したからだ、あと俺が情報集めの最中は暇なので面白い依頼はないかと探しに来た。
「あ、ランドさん、久しぶり」
俺に話しかけてくるのはギルドカウンターで書類作業をしている受付嬢だ、相変わらず何を考えているのか分からん顔をしている。
「門番もだが、よく俺の事を覚えているもんだな」
「ランドさんは一応あの後から結構有名」
「特にこれと言って何かした覚えは無いんだが?」
本当に心当たりは無いな、覚えててくれているなら別に良いか……。
「よっ、無視しやがって。久しぶりじゃねぇか!」
俺の肩を叩いて高らかに笑い声を上げてくるハゲ頭の筋肉の塊……魔物だろうか、なんの魔物だ? 筋肉ダルマ?
「なぜ魔物がこんな街中に……」
「誰が魔物だ! 俺だ! ダガシカシだ! お前の冒険者試験の試験官を勤めただろうが!」
あー、そんな奴もいたな。
ハゲしか頭に入ってなかったから顔までは覚えてなかったわ。
「覚えてなかった」
「ハッキリとそんなこと言うもんじゃねぇよ……」
頭をかくりと下げ、残念そうにするハゲ……ダガシカシ。
変わった名前だよな、親の顔が見てみたい。
「ま、ずいぶんと久しぶりじゃねぇか! エマちゃんも元気そうで何よりだぜ!」
「はい! お久しぶりです!」
ダガシカシに元気よく笑顔で対応するエマ。
心なしか嬉しそうだな。
そりゃ毎日魔物に囲まれてるんだ、ストレスも溜まるだろう、それならここに移住すれば良いと思うんだがそこは拒否される。
「……しっかし、ランドよ、そのお前の上にいる子供はなんだ?」
「そうだな、紹介しよう。俺とエマの息子だ」
「「ぶっ!?」」
ダガシカシとエマが吹き出す。
どうやら最高のギャグだったらしいな。
耳元で尻尾が「ククク、さ、最高ッ」とか呟いていた。
気に入ったのなら何よりだ。
「ちょ! ちょっと何言い出してるんですかランドさん! 違いますからね!」
「なるほどな、エマちゃんがランドにべったりだったのも頷けるわ」
「ランドさん! どうしてくれるんですかアホぉ!」
ギルド中に響きわたる音をならす程、エマの拳は鋭く抜群の威力だった。
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