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そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

貴族、再び

 「どちら様で?」

 突然現れた気持ち悪い七三分けの男。その顔はニヤニヤとしており、本当に気持ちが悪い。
 あ、もしかしてロリコン? ロリコンなのかな?

 「私だ! ブンシャ家の当主のシン・ブンシャ様だ!」
 「あー、何か身分を証明出来るものは有るかな? 要るんだよな最近、貴族の真似事をするこそ泥が」

 ブンシャと言っている自称貴族様、そんな名前は知らん。証明書だせや。

 「私を見れば分かるだろうが!」
 「はいはい、そう言うのいいから。ほら、早く出して」

 手を差し出しながら自称貴族に催促する。俺の後ろでは子供達がじっとやり取りをみている。

 「師匠はこう……度胸が恐ろしいな」
 「きっと心臓に毛でも生えてるのよ」

 心外な発言はこの際無視してこの不審者をどうにかしなければ、子供の教育に悪い。

 「ほらほら、例えば家紋が入った何かとか自分が貴族と証明できる紙とか持ってるでしょ、出しなさい」
 「ちっ、冒険者風情が生意気すぎますよ。ホラ、私のブンシャ家の家紋入りの短剣です、これで良いですかね?」
 「ちょいと拝借」

 ふむふむ、なるほど。馬車といい短剣といい、相変わらず趣味とセンスが伴っていないゴテゴテの装飾だらけだな。
 家紋はと……これか、ふーん。

 「ごめん。分かんねぇや、帰ってくれる?」

 よく考えたら貴族の家紋とか知らん。情報に疎いゴーレム程度に分かる分けないよな。て言うか家紋とか有ったんだ、へぇー。

 「な!?」

 俺の発言のどこに驚いたのか知らないが言葉を失っている貴族……ブンシャ? 七三で良いや。

 我に帰った七三は、俺に言われた事を思い出して激怒してくる。どこに怒ったかは全く分からない。

 「さんざん舐めた口を聞いた上でその態度を貴族である私にするとは、よっぽど死にたいらしいなぁ!」

 何度も地面を踏みつける七三。小者臭がする。するとその声を聞き付けた院長が裏手からやってくる。

 「何してるの!? ちっ、今日も来たか……」
 「院長さん、すみませんねぇ。気が変わりましたよ、最初は金で買い取ろうと思ってましたが我慢の限界だ! この孤児院は強制的に潰します!」

 額に血管を浮かべ、院長へと叫ぶ七三。……面倒な事になったな、一体誰がこんなことまで発展させたんだか。

 「見なさいフィル、師匠はきっと自分が仕出かした事に気づいてないわ」
 「なんかボーッとしてるなと思ったらそう言うことか」
 「師匠のそう言うところは尊敬できるな。俺には出来ない」
 「貴方まであぁなってしまえばパーティーは全滅ですよ、スティーブ。」

 子供達もどうやら今起きてることに大して驚きもしていない様だった。
 スティーブやリズ辺りならこうなることは予想してそうだからな。ただ予想しているだけで解決手段は持ってなさそうだけど。スティーブ、リズ、恐ろしい子っ!

 「旦那、具体的にはどうやって潰すか聞いても良いですかね?」
 「貴様は良くもぬけぬけとそんな事が聞けるな! まぁ良いだろう、こんなこともあろうかと私の精鋭をお前を見せしめに披露してやる! こい!」

 そうやって後ろを振り向く七三。その場は静寂に包まれ、吹くのは少し肌寒くなってきた風だけだ。肌寒いとか分からないけど。

 「あれ、おかしいな? どうした、早く来い!」

 その後、何度も呼び掛けるが誰一人現れない。七三だけでなく院長、子供達ですら首を傾げている。

 「何が来るの?」
 「ちょ、ちょっと待て!」

 何か慌てている七三は孤児院の裏手に向かって歩く。
 暇だし着いていくことにしよう。子供達も俺に倣って着いてくる。

 七三が角を曲がろうとすると、その影からエマが出てきた。

 「ぬぉっ!? なんだ貴様!」
 「おや、七三貴族さんじゃないですか。あ、ランドさん、院長、門の前に不審者が居たので仕留めましたよ、どうしましょうか?」

 そう言ってエマは角から何かを引っ張る。そこには何やら顔面がボコボコにされている男が引き摺られていた。

 「流石だな、気絶したゴリゴリの男を引き摺るとは、エマはもう立派なゴリラ……」
 「え? 何か言いました?」
 「イイエ、ナニモ」

 きょとんと首を傾げながらも手首のスナップだけで七三貴族の顔を掠めながら俺の顔面にナイフを投合してくるエマ。
 そこはちゃんとキャッチして被害を最小限に抑えて事なきを得た。

 危ないな、俺じゃなかったら死ぬぞ。て言うかそんな技術まであったの? 一体どこに隠してたんだよ。

 「それで、この人何なんですか?」
 「俺にも分からないが状況から察するに七三の精鋭(笑)だと思うぞ、いやぁ溜めに溜めてこのオチは笑えないな、はっはっは」
 「笑ってるじゃないですか」

 そう言えば七三はと言うと、エマが引き摺って来た男を見たまま固まっている。どうやら彼は現実が見えていない様なのです。

 「旦那様、ここは一度撤退なされた方が良いのでは……」
 「う、うむ、そうだな、やい! お前達! 今日は命拾いしたな! 今日のところは大人しく帰ってやる! 覚えてやがれ!」

 七三貴族は気絶している男を放置してその場を後にする。こうなったら何も出来ないと思うしな、それにしても。

 「あの貴族、ノリが良いなぁ。エンターテイナーだぜ」
 「それが何なのか分かりませんが、この状況で変な芝居入れるランドさんの方がピッタリだと思います……」

 適当に撤退とか言ったら乗ってくれて助かったよ、こっちはおふざけだったんだけど向こうがマジで取り上げたから驚いたな。

 「師匠はやっぱり面白い!」
 「ふ、普通あんなこと出来ない……」

 ユンにピータが褒めてくれているぞ、よし後で撫でてやろう。

 「呆れた、あんな真似やる人なんていないわよ。仮にも貴族に」
 「師匠を普通と形容するのは止めましょう。アルカ」
 「流石師匠……俺もあんな男になるぜ!」
 「止めろフィル……俺の苦悩が天井知らずになる」

 この年長共は俺を馬鹿にすることしか考えてないのだろうか、エマが4人増えた気分だ……違うな、フィルは方向が違う。

 「院長、一先ず難を逃れたが、今後はどうしようか」
 「まさかアンタの口車に向こうが乗るとは思わなかったよ、最悪、孤児院が壊されるかと思ってたが幸運だった、ありがとうね」
 「俺がここにいる間は可能な限りはそこそこまあまあ頑張るから安心してくれ」
 「それは安心出来るのかね……。まぁ、良いよ。私はもう一度領主様に相談してくるから子供達をお願いできるかい?」
 「わかった」

 その後、エマには約束通りの4倍訓練を、フィル達には武器の練習を言い渡し、俺は仕方なく他の子供達の世話をすることにした。

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