そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

貴族対策

 フィル達が年齢に似つかわしくない自己評価をして各々が特訓を始めてしまい、ボッチになった俺は暇潰しに何か依頼でも受けてやろうかと思い、孤児院をエマに丸投げして出てきた。

「おぅ、ランドじゃねぇか。子供達に武器は作ってやったのか?」

 ちっ、よりにもよってハゲが居やがったか。Bランクの癖に仕事しないのか、暇なのかBランクは。
 このまま引き返したい所だが帰ってもすることはない。おとなしくロリコンの相手でもしてやるとするか。

「………………………………あぁ、作った」
「間が長くないか?」
「考え事をしていてな」
「余り溜め込まない方が良いぜ、俺に話してみないか?」

 てめぇの事だよハゲが。なんて口が裂けても言えない訳じゃないが余計な事は面倒なので言わないでおこう。
 何を話そうか……あぁ、そうだ。

「実は知ってるかは知らんが今貴族と揉めていてだな」
「は? なんじゃそりゃ」

 知らなかったのか。俺も誰に話したかは覚えて無いんだけどな。まぁ、隠すことでもないし、領主が協力しているから話でもすれば何か協力でも得られて俺は何もしなくて良いんじゃないかな。

 そんな打算を組ながら、ダガシカシへと今まで起きたことを話した。話が進むにつれて呆れた顔をしていたのだがお前に呆れられるとは俺も落ちたものだよ。

「貴族に喧嘩なんて売るんじゃねぇよ!」
「売ってはいない。あっちが一方的に買っただけだぞ」
「貴族が来たらハイハイって流しとけば良いんだよ」
「話聞いてたか? 俺は無視してたんだぞ。向こうが勝手に穴に落ちただけだからな」
「仮にも貴族を無視しちゃいかんだろ……」
「ほう、ならばお前は孤児院が潰れるのを黙って見ておく訳か、Bランクも落ちたもんだな」
「痛いことを言う……それは俺も見過ごさねぇよ。今回はまぁ良いが次は気を付けろよな」
「善処する。それで、何か良い案はないか?」
「そうだな、完全に此方がやった様に見せたら睨まれるからな。俺も貴族との喧嘩は余りしたことがない。ギルドマスターに相談してみるか……」

 なんだ、結局ギルドマスターに丸投げか。案が無いなら無いと言えよ、特に責めたりはしないぞ。
 取り敢えず俺とダガシカシは受付嬢に頼んでギルドマスターの元へと足を運ぶ。

「失礼するぜじいさん」
「構わんよ、おや、ランド君が来たと言うことは相談かのう?」
「あれ? じいさん知ってたのか」

 そう言えば何故か知ってたよな。大方、領主からの情報だろうけど。この前は尻尾との茶番のせいで相談はしてなかったな。そのときはするつもりも無かったんだが。

「まぁのう。じゃが最近のは聞いとらんからの、改めて聞いてもよいかの?」
「別に良いぞ」

 俺はハゲにも教えていない孤児院にあるだろう宝の話とその噂が王都に広まり孤児院を排斥したい貴族の代表で七三が来たのだろうと一石二鳥な展開をしているらしいことを伝えておく。

「お前、なんでその事を俺には言わなかったんだよ」
「こんな面倒な事聞いたらお前は手を貸すのか? 俺はそこまでお前に期待をしていないんだ。言うわけがないだろう」

 当然だ、こいつは友人でもなければ俺が慕っている訳でもない。ただの赤の他人、信用なんてするわけがない。
 それに万が一魔物だってバレたら敵対だろ? その時に無駄な情なんか要らないからな。極力人の協力は得ないようにしたかった訳だ。

「お前はなんでもかんでもハッキリ言い過ぎだと思うぞ」
「俺は他人にどう思われようが知らん。仮にもこの街全部に嫌われてもどうでもいいからな」

 その時はまぁ、敵対した奴は潰すよね。魔物って自己中心的な塊だし、襲うときは保険を掛けてゴーレムの姿で街を壊滅させる所存です。衣食住と3第欲求ってのが必要ない俺にとってはどこでも生きられるからな。

「まぁそれは兎も角じゃ、ヘンリの奴はお主に協力するのじゃろ? ならワシらギルドとしても目を瞑る訳にはいかんの、面子に関わるからのぅ」
「おいおいじいさん、そんな1人の冒険者の為にギルド総出でやったら大変な事になるだろ? 王杜から睨まれるぞ?」
「ほっほっ、知らんのぅ。ワシャこう見えても顔が広いからのぅ、王都のひよっこどもはワシに頭も上がらんよ。寧ろ抑えちゃうわい」

 じいさん、アンタも立場ってのがあるだろうに……俺は兎も角ギルドマスターがそんなことして問題にならんのか。

「じゃが、面倒に変わりはないからの。ワシ等はこっそりと情報や偶々人員を派遣したらそうなった事にするぞい」
「アンタも狡猾だな」
「お主ほど大胆にできんだけじゃよ」

 じいさん、アンタとは気が合いそうだぜ。街を壊すにしてもアンタは生かそう。

「ふふふ」
「ほほほ」
「駄目だな、何言っても聞かないやつらが手を組んだ」

 真面目な常識人見たいに装っているハゲは頭を抱えているが秘密を知ったからには逃がしはせんぞ。地の果てまで追いかけるからな。

「はぁ、分かったよ俺も協力する。それじゃ作戦だがどうする?」
「そりゃ、ダガシカシ。お前さんが動くことになるのう」
「ほぅ、分かっては居たが確認するぜじいさん。なんで俺が動く?」
「お主たまにワシをバカにするのぅ。そりゃお主が貴族じゃからじゃよ」
「え? ハゲって貴族なの?」

 意外である。ただのハゲは貴族というキラキラした冠をつける所謂光るハゲだ。それはもうただのハゲじゃないぞ、光るんだから。

「いや、平民出身だがな。お前知らんのか? 冒険者はBランクを越えると強制的に爵位が与えられるんだよ。貴族関連の依頼も多くなるし、貴族相手じゃなきゃ駄々をこねる奴までいるからな。まぁ、それでも所詮は平民出身とか言ってこの制度も排除しようとしている奴もいるけど」
「何処にでも何にしても文句を言う奴はいるんだな」
「貴族は暇な奴が多いからのう……」
「そんで、続きだじいさん」

 顎でじいさんへと促す光るハゲ、ダガシカシ。

「お主は仮にも貴族、子爵じゃ。その子爵が孤児院を贔屓しているなら向こうも簡単には手を出せん」
「まぁ、確かにな。なら1度は孤児院に向かわねぇとな、向こうに話を通しておかねぇと話が拗れたら厄介だ」
「それが良いじゃろう」

 着々と話が進んでいく。ちくしょう、そういう制度を知って置けば最初からこのハゲを脅は……頼んでいたのになぁ。

「俺要らなくね?」
「そういう訳にも行かんよ。ダガシカシの貴族盾は抑制にしかならん。向こうの方が爵位は上じゃろうし、少し話が出来る時間が伸ばせるだけじゃ……こう言うことは言いたくないが最終手段で魔物に襲われて無くなった様に思わせることも出来るからのう」

 ほほう、魔物に襲われて無くなった様に見せる……か、その案良いな前向きに考えておこう。ふふふ、こっちにはその手段がいくらでも使えるからな。

「そうか、魔物に偶然襲われてしまってはしょうがないよな」
「しょうがないが、お前、凄いいやな顔してるぞ。悪巧みしているだろう」
「ふふは、楽しみだな」
「最終手段じゃぞ? 直ぐにやっちゃいかんよ? そもそもそんな伝があるのかの?」
「そこは俺に任せろ。誰にもバレずにぶっ殺すから」
「そんな堂々と殺害宣言をするなよ……」

 ふふん、最初からそうすれば良かったかもな。色々と考えておこう。

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