そのゴーレム、元人間につき
ブンシャ家、当主
くそっ! なんなのだあの下民どもは!
そう悪態を着きながら素晴らしい趣味をしている、私のこだわりの馬車に乗っているのは私、シン・ブンシャだ。爵位は伯爵の地位を祖父の代から続いている。
私が住んでいる王都にて、辺境ファンに何やら隠し財宝等があると言う噂が流れていた。誰が流したかは知らんがそれを真に受ける他の貴族も阿呆ばかりだ。だが、私の所属している貴族のグループはまんまとその噂を信じたらしく、私に確かめるように命令をしてきたのだ。
正直バカらしいとは思った。そんな財宝があったとしてもそれは辺境の領主であるヘンリ辺境伯の物だろうに、若しくは国が取り立てる。そんなこともわからないのかと声を大にして言いたかったが相手は私より爵位が高い。易々と断れば周りが敵になる、それだけは避けなければならん。
こんな事があり、私は部下や護衛を引き連れて辺境ファンにやって来たのだ。
「ふむ、なかなかのどかで良い街だ」
嫌いではないな、すこし田舎過ぎるとは思うが、辺境伯も変わった人だからな、平民相手にも物腰が柔らかいらしいではないか。私もあまり気にはしないのだが上がうるさいから従う他ない。
事前に入手した情報によると孤児院の地下にあるとか、これは私より上の貴族が押し付けてきた護衛からの情報だ。
ちっ、護衛とは名ばかりの監視ではないか。私は正直やる気は無かったのだ、適当に探したふりをして帰ろうと思ったのだがな……監視されては真剣にやらねばなるまい。最も監視など付けている時点であの人は財宝を自分の肥やしにする気だと言うのは丸わかりだ。
そうして孤児院へと赴いたのだが驚いた。
「な、なんだ……あの美女は!」
そう、孤児院の院長の女性に私は一目惚れと言う奴をしてしまったのだ、あんなに美しい人はいないぞ。ここに来て良かったとさえ思ってしまったではないか!
財宝などもうどうでも良いわ! アピールをするのだ、しかし私には問題点がある。女性の前に立つとどうも浮き足立つと言うか、偉そうな態度をとるらしい。
因みに頭に来ているときもこうなるらしく、この性質のせいで何人を敵に回したことやら……。
しかしこの性質のお陰である程度貴族として認められてることもしばしばあるのだが。
そんなことより嫁のいない私としてはこれがチャンスと言っても良いだろう。しっかりとアピールせねばならん。
正直、父などは反対するだろう。相手は平民だ、決して誉められたものではない……家の顔に泥を塗るわけだからな、だが知らん! 私はこのときのために生きてきたのだから! まぁ、何とかなるのではないか? あの美しい方は個人的に調べたところ元Bランク冒険者、立派な貴族だろう。
否定派もいるが私としては全然OK、力で自分の地位を示したのだ、称賛に値する。そんなものよりもただ血縁が偉業を成して貴族になって大した偉業を成してない私の様な者が一番ダメだと思うんだがな。
そしてアピールするためには、きっと彼女は孤児院を離れたくはないだろう。なら、私が彼女と共に経営していっても良いのではないだろうか。だからその旨を伝えたかったのだがこれがいけなかった。テンパった。
「私にこの孤児院を譲ってくれませんか? 値段は言い値で構いません」
おおおおい!? 何を言ってるんだ、第一印象最悪ではないか! ほら、院長殿嫌な顔してるし、これもう無理な奴ではないか!
まぁ当然断られた。しつこい男は嫌われるのでこの日はそれだけで退散した。次こそは……。
数週間が経過したが進展はない。というか寧ろ状況は悪化しているような気もする。
なにやら監視役の護衛どもが勝手なことをしているらしいではないか、目に見えて孤児院がボロボロになっている。これは……腐食? それに経営も悪くなっているようだ子供達か心なしか痩せている。おのれ、勝手な真似をしおって、恐らくあの貴族が勝手に仕出かしたな。ここは何としてでも所有権を譲ってもらい復興させたい所だが流石は美女、心まで強いとは、自ら復興させるとか何とか、ますます惚れた。
護衛の奴等には下らないことはよせと言いたいが確実にしらを切るに決まっている。それに雇ったのは私ではなく向こうだ。私の命令など聞きはしないだろう。
……よし、ここは割りきって相談しよう、麗しの美女。お名前はカマさんだったな。だが護衛が邪魔なんだが……どうしたら良いだろうか。
それから数日、ある進展が訪れた。残念ながら私と院長の間柄ではない。突然私達の隙間から1人、顔のわからない男が入って来たのだ。堂々と侵入とは不届き者め。私は男を止めるために肩を掴むものの引き摺られる。
いや、鍛えてはないので力に自信はないがここまで簡単に引き摺られるか!?
その後は床を踏み抜いて罵倒してしまったり、男が腹立たしくて護衛を仕向けたら返り討ちにあって逃げてしまったが次はそうはいかんぞ!
再び訪れたとき、まさか不審な男から私が不審者扱いを受けた。
これは流石に許容はできぬ!
少々荒いがこの手を使わせてもらうぞ!
「院長さん、すみませんねぇ。気が変わりましたよ、
最初は金で買い取ろうと(そして復興)しようとしましたが我慢の限界だ! この孤児院は強制的に潰します! (そして復興)」
そして勝手に着いてきた精鋭を呼び寄せるが一向に来ない。暫くして来たと思えば1人の女性にボロボロにされている始末。お前精鋭止めちまえ!
取り敢えず、力業解決は不可能となったので今回も逃げることにしよう。くそ、あの男のせいで余計に手が出せないではないか、宝とやらの情報すら分かってないのに……どうすれば。
今回こそ、今回こそは成功させて見せるぞ! 気に入らないが私は全護衛を連れて孤児院へと赴いた。こんな真似をすれば嫌われるだろうがまずはあの男を排除、そして孤児院を復興させた後で彼女にアピールをする! フラれたら復興は手伝って泣きながら帰る! 以上!
だがしかし、人が増えていた。その男の名前はダガシカシ。Bランク冒険者の貴族ではないか。くそぅ、厄介な。はっ! もしや彼も院長を狙って!? 許すまじ、貴殿の方が彼女に近しいと分かっていても私は諦めんぞ!
全護衛を仕向けたのだが、結論から言おう。ボロ負けだ、良いところなしな上に子供にまでやられているではないか。私も勝てはしないだろうがお前達は鍛えてるんだからもう少し頑張って欲しかった。
さて、貴族の後ろ楯が孤児院にはあると言うことで、今回は失敗だな、王都に戻るしかない。そう言えば何故か孤児院がかなり新しくなっていたな。子供の事を良く考えている。作った方は才能があるのだろうな。
悔しいが、ダガシカシ! 私はまた訪れるぞ、今度こそ院長にアピールを成功させるのだからな!
一応は脅しておかないと貴族の威厳に関わるし私の上にいるものは貴族至上主義だ、ただ逃げ帰る事だけは許されないので言いたくもない台詞を言って逃げ出す。
護衛? そんなもん知らん! 着いてこれる奴だけ着いてくるが良いさ。
直ぐには王都に戻ることは出来ない。護衛も回復するまで待たねばならないし……正直退屈するので、謝罪を含めて私1人で孤児院へと赴くとしよう。
ふむ、誰も居ないようだな。あの男もダガシカシどのも居ない、これなら二人きりで話すチャンスでは? 護衛の方は誰一人動けないので置いてきた。好都合だ、私は逃げ足だけには自信が有るからな。
新しくなっている扉をノックする。すると1人の子供が出てきた。この子は確か、護衛を倒していた子供だったか。
「っ、な、何の様だ! 孤児院は渡さないぞ!」
「いや、済まない。孤児院は諦めた、私は院長殿に話をしに来たのだ」
私の言葉に彼は固まった。意外だったのだろうか。
警戒しつつも院長殿を呼んでくれると院長殿は厳しい視線を私にぶつける。まぁ、乱暴だったからな、そうもなるだろう。だがその場で殴らずに部屋を案内してくれる。
「それで、何の様ですか?」
口調も厳しいな……既に泣きそうだ。
だが、悪い事をすれば謝る。これ大事。
私は座っていたソファーから立つと床へひざまずき、頭を下げる。
「この度は、申し訳ないことをしました。今回の件は命令ではあったものの、それを言い訳にはしません! 結局実行したのは私です、非常に乱暴な真似をして済みませんでしたぁ!」
「な!?」
これが今の私にできる最善の策、いや策などと言う汚い物ではない、心からの謝罪だ。
「この新しくなった孤児院にかかった修繕費、迷惑量及び支援金などはお支払します! そして私に出来ることなら何でも! 許してくれとは言いません、ですがこの頭下げさせてください!」
「え、ちょ、ちょっと! どういう事、命令とは?」
私は事情を全て話した後、もう一度頭を下げた。
「当初は乗り気では無かったのですが、とある個人的な事情がありまして、本当に申し訳ない」
「全部あなたが悪い訳では無いことは理解したよ、それで? 個人的な事情ってのは?」
これは、チャンスか? いや、そんな物ではない。謝罪だ。
「実は……お恥ずかしながら、貴女に一目惚れをしまして」
「……はい?」
「ですから、貴女を好きになったので! 卑劣ですが、孤児院を買いとり復興させ、貴女の負担を減らしてから婚約を申し込もうとしました! 本当に身勝手で済みません!」
テーブルに頭をぶつける程の勢いで頭を下げた。端から見ればかなりの身勝手だ、許されてたまるか。
私はすこし顔色を伺うように彼女をみる。その顔は赤くなっていた。あぁ、怒り浸透ですね。殴られるのは決定でしょう、元Bランクの拳だ、私は少なくとも数ヵ月は包帯男だろう。
「え、えと、その、何で私なんかに、体も大きいし、性別が分からないなんて言われるし荒いのだけど……」
「なにを言いますか、貴女ほど美しい方は見たことがないですよ? 逞しいですし、1人で孤児院を、支えるという立派な事をしている。これを美しいと言わずして何と言うのですか!」
ふふふ、語らせたら止まりませんよ? 語り合いますか?
「ここでこんなことを言うのもなんですが、私は貴女が好きです! ぜひ、考えて頂きたい! また来ますのでお返事はその頃に! では」
恥ずかしいいいい! 早足で私は孤児院を出る。早くベットの布団にくるまりたい。羞恥でしぬ!
孤児院の門の所であの男と連れている女性とすれ違ったが今はそんなのはどうだって良い! 早く帰る!
……受け止めてくれるだろうか、いや、私は諦めない。彼女しかいないのだ。
だが今回の件で失態を犯したのは事実だ、それなら私の立ち位置は悪くなるだろう。だが、彼女を迎え入れる為に今の派閥でもトップに立つ、いや、この派閥は孤児院排斥が多いからな、抜けて他の派閥で力をつけるか……、そうと決まれば早速動くとしよう。
待っていてください、院長……いや、カマさん。
そう悪態を着きながら素晴らしい趣味をしている、私のこだわりの馬車に乗っているのは私、シン・ブンシャだ。爵位は伯爵の地位を祖父の代から続いている。
私が住んでいる王都にて、辺境ファンに何やら隠し財宝等があると言う噂が流れていた。誰が流したかは知らんがそれを真に受ける他の貴族も阿呆ばかりだ。だが、私の所属している貴族のグループはまんまとその噂を信じたらしく、私に確かめるように命令をしてきたのだ。
正直バカらしいとは思った。そんな財宝があったとしてもそれは辺境の領主であるヘンリ辺境伯の物だろうに、若しくは国が取り立てる。そんなこともわからないのかと声を大にして言いたかったが相手は私より爵位が高い。易々と断れば周りが敵になる、それだけは避けなければならん。
こんな事があり、私は部下や護衛を引き連れて辺境ファンにやって来たのだ。
「ふむ、なかなかのどかで良い街だ」
嫌いではないな、すこし田舎過ぎるとは思うが、辺境伯も変わった人だからな、平民相手にも物腰が柔らかいらしいではないか。私もあまり気にはしないのだが上がうるさいから従う他ない。
事前に入手した情報によると孤児院の地下にあるとか、これは私より上の貴族が押し付けてきた護衛からの情報だ。
ちっ、護衛とは名ばかりの監視ではないか。私は正直やる気は無かったのだ、適当に探したふりをして帰ろうと思ったのだがな……監視されては真剣にやらねばなるまい。最も監視など付けている時点であの人は財宝を自分の肥やしにする気だと言うのは丸わかりだ。
そうして孤児院へと赴いたのだが驚いた。
「な、なんだ……あの美女は!」
そう、孤児院の院長の女性に私は一目惚れと言う奴をしてしまったのだ、あんなに美しい人はいないぞ。ここに来て良かったとさえ思ってしまったではないか!
財宝などもうどうでも良いわ! アピールをするのだ、しかし私には問題点がある。女性の前に立つとどうも浮き足立つと言うか、偉そうな態度をとるらしい。
因みに頭に来ているときもこうなるらしく、この性質のせいで何人を敵に回したことやら……。
しかしこの性質のお陰である程度貴族として認められてることもしばしばあるのだが。
そんなことより嫁のいない私としてはこれがチャンスと言っても良いだろう。しっかりとアピールせねばならん。
正直、父などは反対するだろう。相手は平民だ、決して誉められたものではない……家の顔に泥を塗るわけだからな、だが知らん! 私はこのときのために生きてきたのだから! まぁ、何とかなるのではないか? あの美しい方は個人的に調べたところ元Bランク冒険者、立派な貴族だろう。
否定派もいるが私としては全然OK、力で自分の地位を示したのだ、称賛に値する。そんなものよりもただ血縁が偉業を成して貴族になって大した偉業を成してない私の様な者が一番ダメだと思うんだがな。
そしてアピールするためには、きっと彼女は孤児院を離れたくはないだろう。なら、私が彼女と共に経営していっても良いのではないだろうか。だからその旨を伝えたかったのだがこれがいけなかった。テンパった。
「私にこの孤児院を譲ってくれませんか? 値段は言い値で構いません」
おおおおい!? 何を言ってるんだ、第一印象最悪ではないか! ほら、院長殿嫌な顔してるし、これもう無理な奴ではないか!
まぁ当然断られた。しつこい男は嫌われるのでこの日はそれだけで退散した。次こそは……。
数週間が経過したが進展はない。というか寧ろ状況は悪化しているような気もする。
なにやら監視役の護衛どもが勝手なことをしているらしいではないか、目に見えて孤児院がボロボロになっている。これは……腐食? それに経営も悪くなっているようだ子供達か心なしか痩せている。おのれ、勝手な真似をしおって、恐らくあの貴族が勝手に仕出かしたな。ここは何としてでも所有権を譲ってもらい復興させたい所だが流石は美女、心まで強いとは、自ら復興させるとか何とか、ますます惚れた。
護衛の奴等には下らないことはよせと言いたいが確実にしらを切るに決まっている。それに雇ったのは私ではなく向こうだ。私の命令など聞きはしないだろう。
……よし、ここは割りきって相談しよう、麗しの美女。お名前はカマさんだったな。だが護衛が邪魔なんだが……どうしたら良いだろうか。
それから数日、ある進展が訪れた。残念ながら私と院長の間柄ではない。突然私達の隙間から1人、顔のわからない男が入って来たのだ。堂々と侵入とは不届き者め。私は男を止めるために肩を掴むものの引き摺られる。
いや、鍛えてはないので力に自信はないがここまで簡単に引き摺られるか!?
その後は床を踏み抜いて罵倒してしまったり、男が腹立たしくて護衛を仕向けたら返り討ちにあって逃げてしまったが次はそうはいかんぞ!
再び訪れたとき、まさか不審な男から私が不審者扱いを受けた。
これは流石に許容はできぬ!
少々荒いがこの手を使わせてもらうぞ!
「院長さん、すみませんねぇ。気が変わりましたよ、
最初は金で買い取ろうと(そして復興)しようとしましたが我慢の限界だ! この孤児院は強制的に潰します! (そして復興)」
そして勝手に着いてきた精鋭を呼び寄せるが一向に来ない。暫くして来たと思えば1人の女性にボロボロにされている始末。お前精鋭止めちまえ!
取り敢えず、力業解決は不可能となったので今回も逃げることにしよう。くそ、あの男のせいで余計に手が出せないではないか、宝とやらの情報すら分かってないのに……どうすれば。
今回こそ、今回こそは成功させて見せるぞ! 気に入らないが私は全護衛を連れて孤児院へと赴いた。こんな真似をすれば嫌われるだろうがまずはあの男を排除、そして孤児院を復興させた後で彼女にアピールをする! フラれたら復興は手伝って泣きながら帰る! 以上!
だがしかし、人が増えていた。その男の名前はダガシカシ。Bランク冒険者の貴族ではないか。くそぅ、厄介な。はっ! もしや彼も院長を狙って!? 許すまじ、貴殿の方が彼女に近しいと分かっていても私は諦めんぞ!
全護衛を仕向けたのだが、結論から言おう。ボロ負けだ、良いところなしな上に子供にまでやられているではないか。私も勝てはしないだろうがお前達は鍛えてるんだからもう少し頑張って欲しかった。
さて、貴族の後ろ楯が孤児院にはあると言うことで、今回は失敗だな、王都に戻るしかない。そう言えば何故か孤児院がかなり新しくなっていたな。子供の事を良く考えている。作った方は才能があるのだろうな。
悔しいが、ダガシカシ! 私はまた訪れるぞ、今度こそ院長にアピールを成功させるのだからな!
一応は脅しておかないと貴族の威厳に関わるし私の上にいるものは貴族至上主義だ、ただ逃げ帰る事だけは許されないので言いたくもない台詞を言って逃げ出す。
護衛? そんなもん知らん! 着いてこれる奴だけ着いてくるが良いさ。
直ぐには王都に戻ることは出来ない。護衛も回復するまで待たねばならないし……正直退屈するので、謝罪を含めて私1人で孤児院へと赴くとしよう。
ふむ、誰も居ないようだな。あの男もダガシカシどのも居ない、これなら二人きりで話すチャンスでは? 護衛の方は誰一人動けないので置いてきた。好都合だ、私は逃げ足だけには自信が有るからな。
新しくなっている扉をノックする。すると1人の子供が出てきた。この子は確か、護衛を倒していた子供だったか。
「っ、な、何の様だ! 孤児院は渡さないぞ!」
「いや、済まない。孤児院は諦めた、私は院長殿に話をしに来たのだ」
私の言葉に彼は固まった。意外だったのだろうか。
警戒しつつも院長殿を呼んでくれると院長殿は厳しい視線を私にぶつける。まぁ、乱暴だったからな、そうもなるだろう。だがその場で殴らずに部屋を案内してくれる。
「それで、何の様ですか?」
口調も厳しいな……既に泣きそうだ。
だが、悪い事をすれば謝る。これ大事。
私は座っていたソファーから立つと床へひざまずき、頭を下げる。
「この度は、申し訳ないことをしました。今回の件は命令ではあったものの、それを言い訳にはしません! 結局実行したのは私です、非常に乱暴な真似をして済みませんでしたぁ!」
「な!?」
これが今の私にできる最善の策、いや策などと言う汚い物ではない、心からの謝罪だ。
「この新しくなった孤児院にかかった修繕費、迷惑量及び支援金などはお支払します! そして私に出来ることなら何でも! 許してくれとは言いません、ですがこの頭下げさせてください!」
「え、ちょ、ちょっと! どういう事、命令とは?」
私は事情を全て話した後、もう一度頭を下げた。
「当初は乗り気では無かったのですが、とある個人的な事情がありまして、本当に申し訳ない」
「全部あなたが悪い訳では無いことは理解したよ、それで? 個人的な事情ってのは?」
これは、チャンスか? いや、そんな物ではない。謝罪だ。
「実は……お恥ずかしながら、貴女に一目惚れをしまして」
「……はい?」
「ですから、貴女を好きになったので! 卑劣ですが、孤児院を買いとり復興させ、貴女の負担を減らしてから婚約を申し込もうとしました! 本当に身勝手で済みません!」
テーブルに頭をぶつける程の勢いで頭を下げた。端から見ればかなりの身勝手だ、許されてたまるか。
私はすこし顔色を伺うように彼女をみる。その顔は赤くなっていた。あぁ、怒り浸透ですね。殴られるのは決定でしょう、元Bランクの拳だ、私は少なくとも数ヵ月は包帯男だろう。
「え、えと、その、何で私なんかに、体も大きいし、性別が分からないなんて言われるし荒いのだけど……」
「なにを言いますか、貴女ほど美しい方は見たことがないですよ? 逞しいですし、1人で孤児院を、支えるという立派な事をしている。これを美しいと言わずして何と言うのですか!」
ふふふ、語らせたら止まりませんよ? 語り合いますか?
「ここでこんなことを言うのもなんですが、私は貴女が好きです! ぜひ、考えて頂きたい! また来ますのでお返事はその頃に! では」
恥ずかしいいいい! 早足で私は孤児院を出る。早くベットの布団にくるまりたい。羞恥でしぬ!
孤児院の門の所であの男と連れている女性とすれ違ったが今はそんなのはどうだって良い! 早く帰る!
……受け止めてくれるだろうか、いや、私は諦めない。彼女しかいないのだ。
だが今回の件で失態を犯したのは事実だ、それなら私の立ち位置は悪くなるだろう。だが、彼女を迎え入れる為に今の派閥でもトップに立つ、いや、この派閥は孤児院排斥が多いからな、抜けて他の派閥で力をつけるか……、そうと決まれば早速動くとしよう。
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