そのゴーレム、元人間につき
森にて
俺とエマ、そして尻尾が辺境ファンから懐かしの森へと帰ってきてから1ヶ月が過ぎようとしている。
思えば辺境ファンな滞在は長かったな。いや、正確には何週間も居た訳じゃないんだが、それほど長く居たように感じられる。
孤児院にいったと思えば院長に襲われ、孤児院の修復をしていると貴族に絡まれ、それをギルドマスターや領主に相談したりいつの間にやら弟子が出来ている始末だった。
平行してやらなきゃいけない事だらけだったので、濃く感じたのだろう。暫くは何のやる気も起きん。
「ランドさん、全く動く気無いですね」
「当然だ当分この場から動く気は一切無いぞ」
俺は祠の入り口前にてうつ伏せの状態でここ1週間は動いていない。
あー、最高だな。なにもしないでぐーたら過ごすと言うのは。
よく頑張った方だと思うぞ今回、それほど大きな問題は起こしてはいないのだから、だから俺が食事をとらなくても大丈夫な事をフル活用しても文句は無いはずだ。
あと最低でも2週間はこうしていたい。
そんな俺を見かねてか、俺達が辺境ファンから帰ってきた時に角やカウントゴリラ等が喧嘩を吹っ掛けてきていたのだが無視をした。
脳筋の戦闘凶どもを帰ってくる度に相手してたんじゃおちおち休憩も出来んからな。その辺で勝手にやっててくれ。
エマの奴もその辺を好きに歩いたら良いのだが何故か祠から出ようとはしない。
……あぁ、分かったぞ。道に迷うから迂闊に出歩けないんだな、フフ、普段は生意気な癖にそう言う可愛い所もあるのだろう。
そうそう、森も少しだけ変わった所もある。まず、隣の森の奴らの頑張り(主にトレントの鞭)のお陰か森の規模が広がった。ざっと5割増しと言ったところか。
ただでさえ広いのに良くもまぁそんな事をしてくれたもんだ。
森に住む奴が一気に増えたのだから仕方がないと言えば仕方がないのだがな。
それと、オーク達はオーガの協力の元、目立たない程度に畑を作っているらしい。まだ耕しの段階なのでまだまだ時間はかかるだろう。
何故作ったかと言えば食料事情だ、なまじ増えたせいでここの森の果実や魚じゃ足りなくなってくる。今はトレント達の頑張りで生態系が崩れる事は無いのだが限度があるからな。
因みに種等は尻尾がファンにてこっそり買っていたようだ。一体どこにそんな金があったのだろうかと思ったのだが俺の金を使っていたらしい。
いつの間に盗っていたのやら。いや、盗るのは構わんよ、金に執着はないからな、でも一言位言っておけよとは思った。
まぁ細かいことは別に良いだろう、それよりさっきから人を叩くのを止めてもらえないだろうか。
痛くはないのだが鬱陶しいことこの上ない。
「いい加減動きましょうよー、ピクリとも一ミリとも動かないランドさんを1週間観察してましたけど退屈で退屈でしょうがないんですよー」
「別に観察しなくても良いだろ、その辺をほっつき歩いて置けばよかったんじゃ無いのか?」
「ランドさん、辺境で結局予定潰されたの覚えて無いですか?」
予定……あー、機嫌取りに行った時だな、確かに少ししか回れてなかったか……それにしても覚えてやがったか。
「……忘れた」
「よっし! リベンジマッチと行きますか!」
するとエマの奴は腰に差している俺お手製の短剣で俺の脳天目掛けて短剣を振るう。
転がって避けた俺だが、そこに2撃目、3撃目と言う風にコンボを繰り出してくるエマ、ゴロゴロ転がりながらも回避していくが限界が来たので距離をとりつつ立て直した。
「いきなり酷いな。そんな子に育てた覚えは無いんだが」
「いつ育ててくれたんですか。放置しっぱなしじゃないですか」
「俺は放任主義なんだよ」
「育てるとは一体!?」
等と下らない会話をしつつもエマは攻撃の手を緩めてくれない。
おかしいな、今のは呆れて戦う気すら失せると思ってやったんだがな、なんで止めてくれないのだろうか。
「機嫌でも悪いのか」
「さて、どうでしょうね。取り敢えず短剣のえじきになってくれれば分かるかもしれませんよ?」
そんなものごめん被る。俺は素早く繰り広げられる短剣捌きを上手く交わしていく、エマも腕が上がっているな、フェイントが本物に見えてくるぞ。
一体いつそんな訓練を行っていたのか聞きたいところだが、聞かれたくは無いことかもしれないからな。、野暮って物だろう。
久しぶりに動くのも悪くはないか、そろそろサボってきた事もやらなきゃいけないからな。良い機会だ、ウォーミングアップといこう。
「そんなに相手してほしいならお望み通りボコボコにしてやる」
「え、ちょっとそれは……ボコボコ迄は望んでは……ってうわっ!?」
ちっ、避けたか。俺はエマが話している間に左ストレートを撃った。エマは仰け反るようにして避けて距離を置く。
「ちょ、本気じゃないですか!」
「訓練とはそんなもんだろう? 本気じゃなければ上には行けないぞ」
「何ですかその熱い感じ……」
そう喋りながらも攻撃を繰り出すがエマは悉く交わしていく、回避能力が高い、素早いタイプなのでなかなか面倒だな。
「当たらないな」
「ふふん、その程度の速さ、私にとってはハエが止まりますよっ」
「じゃあもう少し上げるぞ」
「へ? ひゃあっ! 鬼、人殺し!」
今さらである、お前と会った時点で既に人は殺しているじゃないか。攻撃は回転数を上げただけだ、これ以上は上がらないけどな。
これはきっと体の問題だろう、石で作られているこの体では通常と最大の幅が狭い。今のところはこれで問題ないが成長がなければ後々面倒なことになりかねないからな。
俺とエマの相性は悪いか。一撃入れることが出来ればそれで終わりだが回避に長けているエマにその希望は薄い。もっと改良が必要だろう。
あと攻撃が少々大雑把な所もあるか、それはそうか、武術の様な事を知っている人間に会った事もないからな。俺のスタイルは喧嘩っぽい野蛮な感じのものだな。
対してエマは対人戦が上手く、Fランク冒険者の割には足さばきが俺より上だ、身元とか聞いてないが冒険者になる前に何かやっていたのだろうか。だが弱点としては集団戦とかだろう、絶え間なく攻撃すれば自ずとスタミナ切れで詰みだろう。
などと考えながらも攻撃を続けていくとエマはついにスタミナ切れで動かなくなった。
「はぁっ、はぁっ、相変わらず容赦が無いです」
「伸び代が見えたな、おめでとう」
「私の言葉が無視される辺り、流石はランドさん」
エマはその言葉を最後にガクッと持ち上げていた頭を地面につけた。どうやら疲れたようで、完全に寝てしまった様だ。
この短時間ですぐに眠るとは、子供の様な奴だな。ファンに居た頃はフィル達が昼寝をしているときに院長も居たのだがこの年になると直ぐには寝られず疲労だけが溜まるとか言ってたな。
ん? 院長っていくつなんだろうか。性別不明の化け物だがそこまで歳は言ってない筈なんだけどな。
さて、この土の上でうつ伏せで寝ているエマは風邪を引かれると恐らく俺が看病しなくてはならないので祠の中に放り込んでおこう。
これで俺は手持ちぶさたになった訳だが……そうだな、前々からやりたいと思っていたし時間があるのにサボってやってこなかった体の改造でも施すとしよう。
思えば辺境ファンな滞在は長かったな。いや、正確には何週間も居た訳じゃないんだが、それほど長く居たように感じられる。
孤児院にいったと思えば院長に襲われ、孤児院の修復をしていると貴族に絡まれ、それをギルドマスターや領主に相談したりいつの間にやら弟子が出来ている始末だった。
平行してやらなきゃいけない事だらけだったので、濃く感じたのだろう。暫くは何のやる気も起きん。
「ランドさん、全く動く気無いですね」
「当然だ当分この場から動く気は一切無いぞ」
俺は祠の入り口前にてうつ伏せの状態でここ1週間は動いていない。
あー、最高だな。なにもしないでぐーたら過ごすと言うのは。
よく頑張った方だと思うぞ今回、それほど大きな問題は起こしてはいないのだから、だから俺が食事をとらなくても大丈夫な事をフル活用しても文句は無いはずだ。
あと最低でも2週間はこうしていたい。
そんな俺を見かねてか、俺達が辺境ファンから帰ってきた時に角やカウントゴリラ等が喧嘩を吹っ掛けてきていたのだが無視をした。
脳筋の戦闘凶どもを帰ってくる度に相手してたんじゃおちおち休憩も出来んからな。その辺で勝手にやっててくれ。
エマの奴もその辺を好きに歩いたら良いのだが何故か祠から出ようとはしない。
……あぁ、分かったぞ。道に迷うから迂闊に出歩けないんだな、フフ、普段は生意気な癖にそう言う可愛い所もあるのだろう。
そうそう、森も少しだけ変わった所もある。まず、隣の森の奴らの頑張り(主にトレントの鞭)のお陰か森の規模が広がった。ざっと5割増しと言ったところか。
ただでさえ広いのに良くもまぁそんな事をしてくれたもんだ。
森に住む奴が一気に増えたのだから仕方がないと言えば仕方がないのだがな。
それと、オーク達はオーガの協力の元、目立たない程度に畑を作っているらしい。まだ耕しの段階なのでまだまだ時間はかかるだろう。
何故作ったかと言えば食料事情だ、なまじ増えたせいでここの森の果実や魚じゃ足りなくなってくる。今はトレント達の頑張りで生態系が崩れる事は無いのだが限度があるからな。
因みに種等は尻尾がファンにてこっそり買っていたようだ。一体どこにそんな金があったのだろうかと思ったのだが俺の金を使っていたらしい。
いつの間に盗っていたのやら。いや、盗るのは構わんよ、金に執着はないからな、でも一言位言っておけよとは思った。
まぁ細かいことは別に良いだろう、それよりさっきから人を叩くのを止めてもらえないだろうか。
痛くはないのだが鬱陶しいことこの上ない。
「いい加減動きましょうよー、ピクリとも一ミリとも動かないランドさんを1週間観察してましたけど退屈で退屈でしょうがないんですよー」
「別に観察しなくても良いだろ、その辺をほっつき歩いて置けばよかったんじゃ無いのか?」
「ランドさん、辺境で結局予定潰されたの覚えて無いですか?」
予定……あー、機嫌取りに行った時だな、確かに少ししか回れてなかったか……それにしても覚えてやがったか。
「……忘れた」
「よっし! リベンジマッチと行きますか!」
するとエマの奴は腰に差している俺お手製の短剣で俺の脳天目掛けて短剣を振るう。
転がって避けた俺だが、そこに2撃目、3撃目と言う風にコンボを繰り出してくるエマ、ゴロゴロ転がりながらも回避していくが限界が来たので距離をとりつつ立て直した。
「いきなり酷いな。そんな子に育てた覚えは無いんだが」
「いつ育ててくれたんですか。放置しっぱなしじゃないですか」
「俺は放任主義なんだよ」
「育てるとは一体!?」
等と下らない会話をしつつもエマは攻撃の手を緩めてくれない。
おかしいな、今のは呆れて戦う気すら失せると思ってやったんだがな、なんで止めてくれないのだろうか。
「機嫌でも悪いのか」
「さて、どうでしょうね。取り敢えず短剣のえじきになってくれれば分かるかもしれませんよ?」
そんなものごめん被る。俺は素早く繰り広げられる短剣捌きを上手く交わしていく、エマも腕が上がっているな、フェイントが本物に見えてくるぞ。
一体いつそんな訓練を行っていたのか聞きたいところだが、聞かれたくは無いことかもしれないからな。、野暮って物だろう。
久しぶりに動くのも悪くはないか、そろそろサボってきた事もやらなきゃいけないからな。良い機会だ、ウォーミングアップといこう。
「そんなに相手してほしいならお望み通りボコボコにしてやる」
「え、ちょっとそれは……ボコボコ迄は望んでは……ってうわっ!?」
ちっ、避けたか。俺はエマが話している間に左ストレートを撃った。エマは仰け反るようにして避けて距離を置く。
「ちょ、本気じゃないですか!」
「訓練とはそんなもんだろう? 本気じゃなければ上には行けないぞ」
「何ですかその熱い感じ……」
そう喋りながらも攻撃を繰り出すがエマは悉く交わしていく、回避能力が高い、素早いタイプなのでなかなか面倒だな。
「当たらないな」
「ふふん、その程度の速さ、私にとってはハエが止まりますよっ」
「じゃあもう少し上げるぞ」
「へ? ひゃあっ! 鬼、人殺し!」
今さらである、お前と会った時点で既に人は殺しているじゃないか。攻撃は回転数を上げただけだ、これ以上は上がらないけどな。
これはきっと体の問題だろう、石で作られているこの体では通常と最大の幅が狭い。今のところはこれで問題ないが成長がなければ後々面倒なことになりかねないからな。
俺とエマの相性は悪いか。一撃入れることが出来ればそれで終わりだが回避に長けているエマにその希望は薄い。もっと改良が必要だろう。
あと攻撃が少々大雑把な所もあるか、それはそうか、武術の様な事を知っている人間に会った事もないからな。俺のスタイルは喧嘩っぽい野蛮な感じのものだな。
対してエマは対人戦が上手く、Fランク冒険者の割には足さばきが俺より上だ、身元とか聞いてないが冒険者になる前に何かやっていたのだろうか。だが弱点としては集団戦とかだろう、絶え間なく攻撃すれば自ずとスタミナ切れで詰みだろう。
などと考えながらも攻撃を続けていくとエマはついにスタミナ切れで動かなくなった。
「はぁっ、はぁっ、相変わらず容赦が無いです」
「伸び代が見えたな、おめでとう」
「私の言葉が無視される辺り、流石はランドさん」
エマはその言葉を最後にガクッと持ち上げていた頭を地面につけた。どうやら疲れたようで、完全に寝てしまった様だ。
この短時間ですぐに眠るとは、子供の様な奴だな。ファンに居た頃はフィル達が昼寝をしているときに院長も居たのだがこの年になると直ぐには寝られず疲労だけが溜まるとか言ってたな。
ん? 院長っていくつなんだろうか。性別不明の化け物だがそこまで歳は言ってない筈なんだけどな。
さて、この土の上でうつ伏せで寝ているエマは風邪を引かれると恐らく俺が看病しなくてはならないので祠の中に放り込んでおこう。
これで俺は手持ちぶさたになった訳だが……そうだな、前々からやりたいと思っていたし時間があるのにサボってやってこなかった体の改造でも施すとしよう。
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