幸せのプリン 〜プロポーズ編〜

まさかミケ猫

幸せのプリン 〜プロポーズ編〜

 あれは小学生の頃だったか。
 ‎良い感じの木の棒を見つけてご機嫌な学校帰り。秘密の近道をこっそり抜けたあたりで、神社の階段に座って泣いてる君を見つけた。
 ‎少し太っているのをみんなにイジられて、段々それがエスカレートしてるのを、隣のクラスの俺はぼんやりと知っていた。

「プリンやるから、泣き止めよ」

 こっそり持ち帰ってきた給食のプリン。
 ‎なんてことはない。当時憧れてた漫画の主人公が、傷ついたヒロインに飴玉をあげていたのを、ちょっと真似したくなっただけだ。
 ‎それからは給食にプリンが出ると、なんとなく神社で待ち合わせるようになった。

 中学生になると、君は綺麗になった。
 ‎俺は照れくさくて素っ気ない態度ばかり取っていたけど、君はニコニコと笑って俺のそばにいてくれた。
 ‎そして毎月、同じ日に同じプリンを分け合って食べた。初めて触れた君の唇は、甘い香りがしたのを今でも覚えている。

 君に教わって猛勉強。
 ‎なんとか同じ高校に滑り込んで、毎日同じ電車に乗った。あの頃は毎日が楽しくて、いつまでもこんな日常が続くんじゃないかと思っていた。
 ‎君の素肌に初めて触れた時には、俺があまりにも恐る恐る触るものだから随分と笑われた。プリンみたいに崩れたりしないから、もっと普通に触っていいんだよ、なんて言われたっけ。

 違う大学に通って、別々の就職先を見つけた。一緒にいられる時間も減って、たくさん喧嘩もした。君の鼻につく部分も知って、俺のダメな部分も知った。
 ‎それでも、プリンを食べながらあれこれ話し合うのが、俺たちの仲直り方法だった。

「これからもずっと、君とプリンを食べたい。結婚しよう」

 夜景を見ながら指輪と一緒にプリンを渡した。俺の手はプリンのようにプルプルと震えていたと思う。

 君は泣いた。
 ‎でもそれは、小学生の頃とは違う、嬉しそうな笑い泣きだった。


 プリンが繋いだ一つの恋。
 ‎幸せのそばにいつも、ミケ猫乳業の卵黄牛乳プリン。定価198円。お求めはコンビニで。
(CMソング〜♪)

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