るぅ

擬音

「こんにちは」
なんとも言えない瞳をした少女が
こちらをみて微笑んだ。
長い黒髪を耳にかけ、
「あら、コッチではこんばんは。だったかしら」
と、軽く会釈をし、私に紅い薔薇の花をわたした。
「招待状」
「是非来てね」
そう言って彼女は振り返りもせずに私とは逆の方へ消えていく。

ーーーー   ❁   ーーーー

「………」
冷たい風に目が覚めた。
どうやら寝てしまっていたらしい。
いつもの教室。変わらない景色。
特に違和感がある訳でなく、また、面白みのない日常。
つい、あくびがでて
こんなつまらない日々から目を背けてしまう。

それにしても今日の夢は何回目だろう。
ある空間に私がいて、またいつもの友達がいる。
それなのに友達の顔は全く思い出せない。
そしてまたその子は例の‘‘招待状’’をくれる。

…そう、丁度この教室の真ん中に置いてある
あの真っ赤な花のような、美しい招待状。
私は嬉しくて何度も行きたいと願ったけど一度たりとも
その子が望む所には行ったことがない。

またあくびが出て
再び眠りに着こうとした時、
いきなり大きな音がしてとっさに目が覚めた。
「え…?」
さっきまで一人でいたはずの教室に
机が埋まるくらいの多くの人達が姿勢よく座っていた。
その時2回目の大きな音がして
「起立」
とキビキビした声がし、その号令に操られるかのように
一斉にたちあがった。
私も無意識に立ち上がり自然に礼をしていた。
「着席」
ガタガタと席につき、先生らしき人が声をはりあげる。

「ようこそ。私はレモン教授である。
    分からないことがあれば、気分でこたえるので
    私の気分がいい時に質問に来るように。」

そう自己紹介したのは
白い髪の毛の背の高い女の人だ。
自信ありげな表情に微かに耳に掛けそびれた髪を
耳にかけなおした。

「皆さん。招待状はもってきたか?
    もし、まだ出して居ないものがいたら
    即刻だしにくるように。」

そうして金色の縁がついたメガネを凝らし
一周ぐるりと教室内をみわたした。

「アラ?お前、まだ出してないんじゃないのか?」

私の方をじっとみつめてくる。
私はとっさに目を逸らしてしまった

「ほら、早く出しなさい。」

もちろん。招待状なんて身に覚えがない。


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