のん気な男爵令嬢
聖獣とレイス
集落へもこの内容を教え、ヴァルッテリが神殿に向かって獄炎魔法を放った。
一瞬にして、出ていたレイスたちは消え去ったものの、再度神殿からレイスが出て来たのだ。
「なっ!?」
さすがにこれはまずい! 全員が同じことを思ったものの、どうしようもない。
他にやりようというものがないのだ。
「もっと面子が集まったら再度、獄炎魔法を放って、神殿への距離を縮めますか?」
神殿内部に入らないと無理なようである。
「それしかないか」
応援に駆け付けた冒険者に後ろを任せて、ヴァルッテリは再度獄炎魔法を放つ。消え去った一瞬を見逃すことなく、神殿との距離を縮めていく。
それを繰り返すこと数回。やっと神殿入り口までたどり着いた。内側から扉が開かないよう、数人がかりでまずは抑える。
ヴァルッテリがこくりと頷くと、アハトとウルヤナが扉を開けるために近づく。
獄炎魔法を放つ瞬間を見計らい、二人が扉を開けた。
これまでにない量の魔力を使った獄炎魔法が、神殿内部に放たれた。
罰当たりな、という声も聞こえたが、マイヤは、果たしてここからレイスが発生していたという証拠が残っていればいいが、と明後日のことを考えていた。
「お嬢様、それよりも中にいるかもしれないという、聖獣を心配してくださいませ」
そう言ったのはベレッカだ。
ヴァルッテリも聖獣の存在をすっかり忘れて魔法を放ったようで、ばつの悪そうな顔をしていた。
そこにいたのは、傷だらけの聖獣と、その聖獣を守ろうとするレイスだった。
ただ、その聖獣をマイヤは見たことがない。他国にある程度行っていたはずのヴァルッテリも知らない姿かたちだった。
「お聞きいたします。その方は海に住まうお方ですか?」
恭しく頭を下げ、マイヤは訊ねた。湧き出るレイスをヴァルッテリたちが潰している、その目の前で。
『如何にも』
レイスが答えた。
「レイスを出すのを止めていただけませんか」
『否』
「ここに人用とはいえ、ヒーリングポーションがありますので、聖獣様に使わせていただきたく」
きゅぽん、とマイヤがポーションを一瓶開けた。そして半分ほど飲む。つまりは、毒見である。
『効かぬ。呪い故』
聖獣を呪えるものなど、そうそういないはずである。マイヤたちは首を傾げた。
「問います。あなた様は聖獣様を守るためにレイスになられたのですか?」
「!!」
周囲の空気が凍りついたのが分かった。
『如何にも』
「その聖獣様を呪ったのはこの国の者ですか?」
『否』
「では、傷つけたのは」
『応。この国の者』
「海の神の怒りと関係はありますか?」
『応』
「傷をつけたのが、この国の者だからですか?」
『応』
「では、あなた方はどの国に属する方ですか?」
『この国が滅した、北にある国、バサロヴァ海国也』
バサロヴァ海国という名前を、マイヤは知らない。
「今はペトレンコ公国という名前になっているよ」
滅ぼしたというよりも、ペトレンコ公国になる手伝いをしたというのが正しいと、ヴァルッテリは言う。
『王族を弑逆した者の末裔が何をぬかすか!!』
減り始めていたレイスが一気に増えた。
レイスの言葉を、マイヤはひたすら考えていた。
今は亡き国、バサロヴァ海国。おそらくそこの聖獣だったのだろう。呪いをもたらしたのは誰か。いくつか考えれられるが、帝国の者が呪っていないということは、もしかするとペトレンコ公国の者なのか。……違う気がする、とマイヤは思った。
そして、いくら滅んだ国だからと、聖獣の姿かたちが残されていないのはおかしいのだ。
「お待ちくださいませ」
マイヤはレイスに近づき、再度頭を下げた。
「その呪い、解く手助けをわたくしにさせてくださいませ」
一瞬にして、出ていたレイスたちは消え去ったものの、再度神殿からレイスが出て来たのだ。
「なっ!?」
さすがにこれはまずい! 全員が同じことを思ったものの、どうしようもない。
他にやりようというものがないのだ。
「もっと面子が集まったら再度、獄炎魔法を放って、神殿への距離を縮めますか?」
神殿内部に入らないと無理なようである。
「それしかないか」
応援に駆け付けた冒険者に後ろを任せて、ヴァルッテリは再度獄炎魔法を放つ。消え去った一瞬を見逃すことなく、神殿との距離を縮めていく。
それを繰り返すこと数回。やっと神殿入り口までたどり着いた。内側から扉が開かないよう、数人がかりでまずは抑える。
ヴァルッテリがこくりと頷くと、アハトとウルヤナが扉を開けるために近づく。
獄炎魔法を放つ瞬間を見計らい、二人が扉を開けた。
これまでにない量の魔力を使った獄炎魔法が、神殿内部に放たれた。
罰当たりな、という声も聞こえたが、マイヤは、果たしてここからレイスが発生していたという証拠が残っていればいいが、と明後日のことを考えていた。
「お嬢様、それよりも中にいるかもしれないという、聖獣を心配してくださいませ」
そう言ったのはベレッカだ。
ヴァルッテリも聖獣の存在をすっかり忘れて魔法を放ったようで、ばつの悪そうな顔をしていた。
そこにいたのは、傷だらけの聖獣と、その聖獣を守ろうとするレイスだった。
ただ、その聖獣をマイヤは見たことがない。他国にある程度行っていたはずのヴァルッテリも知らない姿かたちだった。
「お聞きいたします。その方は海に住まうお方ですか?」
恭しく頭を下げ、マイヤは訊ねた。湧き出るレイスをヴァルッテリたちが潰している、その目の前で。
『如何にも』
レイスが答えた。
「レイスを出すのを止めていただけませんか」
『否』
「ここに人用とはいえ、ヒーリングポーションがありますので、聖獣様に使わせていただきたく」
きゅぽん、とマイヤがポーションを一瓶開けた。そして半分ほど飲む。つまりは、毒見である。
『効かぬ。呪い故』
聖獣を呪えるものなど、そうそういないはずである。マイヤたちは首を傾げた。
「問います。あなた様は聖獣様を守るためにレイスになられたのですか?」
「!!」
周囲の空気が凍りついたのが分かった。
『如何にも』
「その聖獣様を呪ったのはこの国の者ですか?」
『否』
「では、傷つけたのは」
『応。この国の者』
「海の神の怒りと関係はありますか?」
『応』
「傷をつけたのが、この国の者だからですか?」
『応』
「では、あなた方はどの国に属する方ですか?」
『この国が滅した、北にある国、バサロヴァ海国也』
バサロヴァ海国という名前を、マイヤは知らない。
「今はペトレンコ公国という名前になっているよ」
滅ぼしたというよりも、ペトレンコ公国になる手伝いをしたというのが正しいと、ヴァルッテリは言う。
『王族を弑逆した者の末裔が何をぬかすか!!』
減り始めていたレイスが一気に増えた。
レイスの言葉を、マイヤはひたすら考えていた。
今は亡き国、バサロヴァ海国。おそらくそこの聖獣だったのだろう。呪いをもたらしたのは誰か。いくつか考えれられるが、帝国の者が呪っていないということは、もしかするとペトレンコ公国の者なのか。……違う気がする、とマイヤは思った。
そして、いくら滅んだ国だからと、聖獣の姿かたちが残されていないのはおかしいのだ。
「お待ちくださいませ」
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「その呪い、解く手助けをわたくしにさせてくださいませ」
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