のん気な男爵令嬢
マイヤの非常識
店主と料理人、それから話の分かりそうな女性の三人を連れて、公爵邸へ向かう。
公爵が応接間の机に置いたのは、公爵邸の地図だ。
「人質になっていた者たちが入ると考えて、二百人前後。どこの集落に……」
「いきなり集落というのは難しいです。何せ、あの店が無ければ、どこにも居場所がない者も多いですし」
アヌ、と名乗った女性がすぐに反対してきた。年のころはヴァルッテリよりも、マイヤに近い。だが、マイヤよりも年上だ。
「どこの集落近くがいいかという話だよ。家を建てるための資材も必要だ」
衣食住が揃わなくては、と公爵は説明してきた。
「流石に……ね。マイヤがやろうとしていることの大きさを考えると」
「わたくしのせいですの? ヴァルッテリ様」
「半分くらいは。ヘイノさんにも言われた。ポーション量産体制が整うまでは、機密にしておいた方がいいだろうって」
「失敗したポーションを格安ポーションとして売り出すのは、私たちも賛成なのだよ。……ただ、我が領地にも密偵はいる。そ奴らがそのポーションに『毒が入っていた』と騒ぐと、今回の計画がすべて狂う」
さすが公爵。マイヤは感心するとともに、己の未熟さを恥じていた。
「あまり集落から近すぎると問題が生じてしまいますわね」
「だが、遠すぎると今度は交易という面で問題が生じる」
「繊維さえあれば、服ぐらい織って縫えるぜ」
「切れ端利用で袋も作れます」
料理人とアヌが口を揃えて言うが、ここで重要になるのは「塩」と「水」だ。
水は、飲料に適した水が湧くところを見つければいいが、塩を他領から交易している公爵領にとって、他の集落と交易しないというのは死活問題に関わってくる。
「この三角は何だ?」
「山だ」
「その向こうにも土地があるが、誰もいねぇのな」
「こっちの開拓は無理か?」
店主と料理人が言うものの、公爵夫人の顔色が冴えない。
「そちらも数代前までは集落がありましたわ。ただ、海の神の怒りに触れ、海沿いの集落が沈んだ後、近隣の集落にレイスが出るようになり、捨てましたの」
神の怒りとは恐ろしい。夫人も理由が分からなかったといい、結局はその怒りを解かねば無理だということだ。
「レイスの退治は無理ですの?」
「無理。神殿の管轄ということで、冒険者は手を出してはいけない決まりだ。当時あった神殿は真っ先に潰されたし、泊まるところがないという理由で、神殿関係者は一切来ないよ」
レイスは生きた人間が、死んだ後になると知っているマイヤは、当然それすらも有効活用しようと思った。
「だったら、護衛としてレイスを雇いましょう」
「流石に無理だからね!? 強さによっては神官を守るために部隊も結成されるくらいだから!」
「あら、退治できないのであれば、そうするしかないのではありませんの?」
「どうやったらそういう発想に行くわけ!?」
ヴァルッテリが怒鳴るが、マイヤはそ知らぬ顔だ。
「マイヤさん、こればかりはヴァルッテリの意見を聞いてくださいませんか。レイスは見境なしに、人を襲います」
公爵の説明に、マイヤは断念した。
公爵が応接間の机に置いたのは、公爵邸の地図だ。
「人質になっていた者たちが入ると考えて、二百人前後。どこの集落に……」
「いきなり集落というのは難しいです。何せ、あの店が無ければ、どこにも居場所がない者も多いですし」
アヌ、と名乗った女性がすぐに反対してきた。年のころはヴァルッテリよりも、マイヤに近い。だが、マイヤよりも年上だ。
「どこの集落近くがいいかという話だよ。家を建てるための資材も必要だ」
衣食住が揃わなくては、と公爵は説明してきた。
「流石に……ね。マイヤがやろうとしていることの大きさを考えると」
「わたくしのせいですの? ヴァルッテリ様」
「半分くらいは。ヘイノさんにも言われた。ポーション量産体制が整うまでは、機密にしておいた方がいいだろうって」
「失敗したポーションを格安ポーションとして売り出すのは、私たちも賛成なのだよ。……ただ、我が領地にも密偵はいる。そ奴らがそのポーションに『毒が入っていた』と騒ぐと、今回の計画がすべて狂う」
さすが公爵。マイヤは感心するとともに、己の未熟さを恥じていた。
「あまり集落から近すぎると問題が生じてしまいますわね」
「だが、遠すぎると今度は交易という面で問題が生じる」
「繊維さえあれば、服ぐらい織って縫えるぜ」
「切れ端利用で袋も作れます」
料理人とアヌが口を揃えて言うが、ここで重要になるのは「塩」と「水」だ。
水は、飲料に適した水が湧くところを見つければいいが、塩を他領から交易している公爵領にとって、他の集落と交易しないというのは死活問題に関わってくる。
「この三角は何だ?」
「山だ」
「その向こうにも土地があるが、誰もいねぇのな」
「こっちの開拓は無理か?」
店主と料理人が言うものの、公爵夫人の顔色が冴えない。
「そちらも数代前までは集落がありましたわ。ただ、海の神の怒りに触れ、海沿いの集落が沈んだ後、近隣の集落にレイスが出るようになり、捨てましたの」
神の怒りとは恐ろしい。夫人も理由が分からなかったといい、結局はその怒りを解かねば無理だということだ。
「レイスの退治は無理ですの?」
「無理。神殿の管轄ということで、冒険者は手を出してはいけない決まりだ。当時あった神殿は真っ先に潰されたし、泊まるところがないという理由で、神殿関係者は一切来ないよ」
レイスは生きた人間が、死んだ後になると知っているマイヤは、当然それすらも有効活用しようと思った。
「だったら、護衛としてレイスを雇いましょう」
「流石に無理だからね!? 強さによっては神官を守るために部隊も結成されるくらいだから!」
「あら、退治できないのであれば、そうするしかないのではありませんの?」
「どうやったらそういう発想に行くわけ!?」
ヴァルッテリが怒鳴るが、マイヤはそ知らぬ顔だ。
「マイヤさん、こればかりはヴァルッテリの意見を聞いてくださいませんか。レイスは見境なしに、人を襲います」
公爵の説明に、マイヤは断念した。
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