のん気な男爵令嬢
後悔羞恥プレイ
再度目が覚めると、見慣れた己の寝室だった。しかも、今度のぞき込んでいたのはヴァルッテリで。腕が動いたのなら、間違いなく引っ叩く案件だ。
「ヘイノにも来てもらっている。薬湯は効く?」
効かなかったらどうやって治すのだ。そして、何故にそこまでおろおろしている、と言いたい。
「お嬢様がこちらに戻ってきてから、三日ほど意識がなかったもので」
そう言ったのはゾルターン。アベスカ男爵領がこの大陸で一番の医療技術だ。
今回の一件で、マイヤは帝国上層部の阿呆加減に驚いた。よくぞあんな国王で、城下町が荒んでないものだと。
「王太后陛下のおかげだよ。あの方は前王の頃、政を担っていた」
アッピレを片手にヴァルッテリが言う。そして、もう片手には剣。
「ヴァルッテリ様?」
「アッピレを斬ろうと思ったんだけど、これが難しい」
「……何のために?」
「マイヤに食べてもらうために」
確かにアッピレは病人やけが人が食べやすい果物だ。ただ、きちんとした処理をした場合に限るが。
「ヴァルッテリ様、ナイフを持ってきてもらいましょう」
「ナイフ? 何に使うの?」
開いた口が塞がらない、とはまさにこのことである。呼び鈴を鳴らすよう、ヴァルッテリに頼んで、大人しくしてもらうことにした。
ベレッカと一緒に来たのは、レカとヘイノ、それからマルコだった。
「お嬢様が、無事なようで何よりですな。今回ばかりはヴァルッテリ様の法外な魔力に助けられましたぞ」
ほっほっほっ。笑うヘイノは何かしら企んでいる。
事実、ヴァルッテリの魔力が無ければ、重傷のマイヤをアベスカ男爵領へなど運べない。運べたとしても、相応の時間を要し、手遅れになる場合もある。
「ヴァルッテリ様、ありがとうございます。ベレッカ、悪いのだけれど、ヴァルッテリ様が持っているアッピレを受け取ってもらえないかしら」
「俺が斬ってマイヤに直接あげたいのに」
ぶつくさと言っているが、魔獣やら色んなものを切った剣でアッピレを切って欲しくないと思うのは間違いだろうか。
「丸ごとのアッピレを病床のお嬢様が食せるとでも?」
「いや、斬るよ」
「何で!?」
ベレッカの叫びに対し、レカがすぐさま頭を叩いていた。礼儀がなっていないということだろうが、今回ばかりはベレッカの意見に賛成である。
案の定、剣で切ろうとしていたのがばれ、ヴァルッテリはヘイノとマルコに説教を受けていた。
「衛生面からも賛同できませんよ!」
「それ以前の問題です!」
マルコの言葉に、さすがのレカも怒った。
アッピレはアベスカ家お抱えの料理師兼庭師によって、綺麗に皿に盛られた。消化よく栄養をつけさせようとい心遣いのもと、ナナバ、シューラぺも一緒だ。
その皿を横からヴァルッテリが掻っ攫い、マイヤの傍に来る。
「……ヴァルッテリ様?」
「はい。マイヤ」
アッピレをフォークに刺し、口元まで持って来た。いわゆる「あーん」というやつである。
……ご免こうむりたい。そう思ったのは許してほしいところである。
「マイヤ、手も使えないんだから、俺に甘えて」
この甘い言葉に鳥肌の立ったマイヤは、慌ててベレッカとレカに助けを求めるが、首を振られた。
つまり、あ・き・ら・め・ろ。ということだ。
「……くっ」
何この羞恥プレイ。仕方なく、マイヤは大人しく「あーん」とすることにした。
ベレッカたちの生暖かい視線が痛い。
これで分かったのは、物凄く恥ずかしいと、好物であるアッピレの味も分からなくなる、ということだけだった。
「ヘイノにも来てもらっている。薬湯は効く?」
効かなかったらどうやって治すのだ。そして、何故にそこまでおろおろしている、と言いたい。
「お嬢様がこちらに戻ってきてから、三日ほど意識がなかったもので」
そう言ったのはゾルターン。アベスカ男爵領がこの大陸で一番の医療技術だ。
今回の一件で、マイヤは帝国上層部の阿呆加減に驚いた。よくぞあんな国王で、城下町が荒んでないものだと。
「王太后陛下のおかげだよ。あの方は前王の頃、政を担っていた」
アッピレを片手にヴァルッテリが言う。そして、もう片手には剣。
「ヴァルッテリ様?」
「アッピレを斬ろうと思ったんだけど、これが難しい」
「……何のために?」
「マイヤに食べてもらうために」
確かにアッピレは病人やけが人が食べやすい果物だ。ただ、きちんとした処理をした場合に限るが。
「ヴァルッテリ様、ナイフを持ってきてもらいましょう」
「ナイフ? 何に使うの?」
開いた口が塞がらない、とはまさにこのことである。呼び鈴を鳴らすよう、ヴァルッテリに頼んで、大人しくしてもらうことにした。
ベレッカと一緒に来たのは、レカとヘイノ、それからマルコだった。
「お嬢様が、無事なようで何よりですな。今回ばかりはヴァルッテリ様の法外な魔力に助けられましたぞ」
ほっほっほっ。笑うヘイノは何かしら企んでいる。
事実、ヴァルッテリの魔力が無ければ、重傷のマイヤをアベスカ男爵領へなど運べない。運べたとしても、相応の時間を要し、手遅れになる場合もある。
「ヴァルッテリ様、ありがとうございます。ベレッカ、悪いのだけれど、ヴァルッテリ様が持っているアッピレを受け取ってもらえないかしら」
「俺が斬ってマイヤに直接あげたいのに」
ぶつくさと言っているが、魔獣やら色んなものを切った剣でアッピレを切って欲しくないと思うのは間違いだろうか。
「丸ごとのアッピレを病床のお嬢様が食せるとでも?」
「いや、斬るよ」
「何で!?」
ベレッカの叫びに対し、レカがすぐさま頭を叩いていた。礼儀がなっていないということだろうが、今回ばかりはベレッカの意見に賛成である。
案の定、剣で切ろうとしていたのがばれ、ヴァルッテリはヘイノとマルコに説教を受けていた。
「衛生面からも賛同できませんよ!」
「それ以前の問題です!」
マルコの言葉に、さすがのレカも怒った。
アッピレはアベスカ家お抱えの料理師兼庭師によって、綺麗に皿に盛られた。消化よく栄養をつけさせようとい心遣いのもと、ナナバ、シューラぺも一緒だ。
その皿を横からヴァルッテリが掻っ攫い、マイヤの傍に来る。
「……ヴァルッテリ様?」
「はい。マイヤ」
アッピレをフォークに刺し、口元まで持って来た。いわゆる「あーん」というやつである。
……ご免こうむりたい。そう思ったのは許してほしいところである。
「マイヤ、手も使えないんだから、俺に甘えて」
この甘い言葉に鳥肌の立ったマイヤは、慌ててベレッカとレカに助けを求めるが、首を振られた。
つまり、あ・き・ら・め・ろ。ということだ。
「……くっ」
何この羞恥プレイ。仕方なく、マイヤは大人しく「あーん」とすることにした。
ベレッカたちの生暖かい視線が痛い。
これで分かったのは、物凄く恥ずかしいと、好物であるアッピレの味も分からなくなる、ということだけだった。
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