のん気な男爵令嬢

神無乃愛

これが本当の「怪我の功名」?

 王太后だと紹介された女性は、ため息をついていた。
「王族ならば、白亜色の髪に関してもっと詳しいと思っていたのですがね」
 謝罪のあと、王太后が呆れたように言った。
「まぁ、それなりに優秀だったとしても、あのように腑抜けては終わりなのでは?」
「ほほほ。伴侶の良し悪しが見事に出ましたわねぇ」
 マイヤ一人、意味が分からず放っておかれた。
「あなたの魔力なし、直接魔法が効かないというのは、白亜色の髪を持つものに時折現れるものなのですよ」
 王太后がマイヤにも分かるようにと、説明を始めた。
ヴァルッテリのように魔力過多はよくある症状で、魔力なし、直接魔法が効かないというのも、どちらかならたまに現れると。
「拷問して自白させようと必死だったのでしょうね。すぐさま裁判にかけ、処刑したかったようですし」
 王太后も公爵夫人も後ろがどす黒くなっていた。

 マイヤの意識がないのも「勝手に寝た」ことにしようと、宰相閣下自らが治癒を施そうとした……らしい。だが、マイヤの怪我は一向に治らず、慌てて帝国お抱えの魔術師を呼びに行った。それを「運悪く」王太后が見かけ、オヤヤルヴィ公爵へと伝えた。
 そのあとは王太后の独壇場だったのよ、と誇らしげに微笑む公爵夫人。嫌だわ、あのくらいで恥ずかしいわ、と恥ずかしがる王太后。ある意味カオスである。
 なのだが、その場で横になっているマイヤは「あら、それは見たかったです」で済ませてしまったため、誰も突っ込む者はいない。

 ここに公爵親子がいたら「女って怖い」と言うこと間違いなかっただろう。それくらいおどろおどろした空気だった。
 ちなみに、王太后の専属侍女は「また始まったよ、この嫁姑」と己の気配を消してそ知らぬふりをしていた。

「完治するまでこちらのいて欲しいところではありますが、マイヤさんに迷惑がかかると悪いわね。ヴァルの移転術を使って公爵邸へ戻りなさい。
 わたくしも時折見舞いに行っていいかしら?」
 あ、これ駄目って言えないやつだ。それを瞬時に悟ったマイヤは、快く、、承諾した。

 そのあと、またしても眠ってしまったマイヤは「白亜色の髪が何故神聖視されたのか」というのを聞き忘れたのだった。

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