のん気な男爵令嬢

神無乃愛

拷問

 その日の午後に呼び出されるあたり、それくらい緊急な話なのか、それとも相手が暇なのか。
「間違いなく、後者だよ」
 ヴァルッテリが呆れていた。今までも「転生者疑い」があった者は、貴族だろうが平民だろうがあったと。平民の場合はその場で牢屋行き、貴族の場合は特別裁判にかけるのだと。
「あらまぁ」
 不平等な気もするが、アベスカ男爵領が異常だっただけだと切り替えた。

 夫人のお下がりだというドレスを着て、城へと向かう。

 城に近づけば近づくほど、邸宅も悪趣味なほど贅を凝らした造りになっていた。
「ヴァルッテリ様」
「なんだい?」
「あの彫像、この国の聖獣、ジャイアントマカイロですわよね」
「当たりだよ。あの家は不敬罪に問われない。何せ、現王妃を輩出した家だ。あちらは、宰相の邸宅」
「初めてですわ。聖獣を彫像にしているのを見るのは」
 呆れて言葉にもならない、というのが正しい。何せ、聖獣は国の節目節目にしか現れない。
「ここ十数年、見ていないよ。だからこそ、威厳を保つために必要だそうだ」
 馬鹿馬鹿しい。王国はスレイプホッグという、ぽっちゃりした馬に似た聖獣である。もちろん、彫像になどしないし、男爵領の森に時々遊びに来ている。
 スレイプホッグがいると、魔獣が半径数キロにわたりいないため、採取をメインとする冒険者にはありがたがられる。討伐メインは泣くらしいが。

 王宮に入るなり、マイヤは拘束され、ヴァルッテリと引き離された。

 そしてすぐ、拷問が行われた。

 鞭など可愛いものだ。卑下た笑みを浮かべた粗暴な男たち。これが、王宮の拷問官だとは笑わせる。
「お前は転生者だろう!?」
 入って来た男は、確か宰相だったはず。これが帝国式拷問らしい。

「違う」と言えば、鞭を振るい、焼き鏝を押す。あとで治療できる範囲でやっている、わざとらしく宰相が言った。

 その瞬間、マイヤは「勝った」と思った。

 証言せぬまま、一日。「白状すれば傷を治す」と言われ続け、拷問を受けた。

 意識が遠のきかけた時、誰かが入って来た。

 気が付けば、天蓋のあるベッドでマイヤは寝ていた。
「わたくし用の部屋を、王太后様が取っていてくださって助かったわ」
 看病していたのは、公爵夫人ともう一人見慣れぬ女性だった。


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