自衛官志望だったミリオタ高校生が、異世界の兵学校で主席を目指してみた件

高雄摩耶

第十五話 私たち、家族なんだよね?

「それはどういうことですか!」

    庁舎二階教頭室に、宇垣の罵声とも言える怒鳴り声が響く。ただ誰も止めようとはしない。

「そのままの通りだ。我々教官は干渉しない。それは紛れもなく規則であろう」
「しかし、現に私たちは被害にあったんですよ。それを見過ごせと言うんですか!」

    これが紀田校長だったら少しはマシだったかもしれない。しかしあいにく今日校長は留守で、代わりに教頭のところへ来たわけだ。
     ではなぜ教頭のところまで来たのか。それはもちろん今朝の演習のことだ。
    今朝行われた第二回の演習。そこで俺たちは全くの見物客と成り果てていた。
    機銃の一部が破損し、使い物にならなくなっていたからだ。そして、その犯人は間違いなく油缶を盗んだのと同じだ。
    宇垣たちはもはや生徒だけの解決は望めないとして、こうやって教頭のところまで来たわけだ。

「これは嫌がらせを超えて今や妨害行為になっています!直ちに学校をあげて調査を・・・」
「黙れ!」

    今まで冷静に聞いていた教頭が、突然態度を変え始めた。

「砲術科や通信科のような優等生はともかく、なぜ私が貴様らのような劣等組の相手をしなければならんのだ!妨害行為だ?それがどうした!貴様らがどんな扱いをされようと、私には関係ないことだ!いますが出ていけ!」

    教頭に逆ギレされた挙句に部屋を追い出され、結局なにも進展しなかった。

「何なのよ!あの教頭。私たちをそこまでコケにしたいの!」
「お、落ち着いてよ直美。私たちが出来損ないっていう考えがなくなったわけじゃないんだから」
「それにしても酷すぎると思わないの?腐っても私たちは生徒なのよ」

    教頭の前で話しているのもほかの教官に怒られそうなのでとりあえず移動することに。
    というか今は昼なのでとりあえず食堂まで行かなければならない。昼一番に教頭に会いに来たからだ。

「これからどうするの?このままじゃいつまでたっても収まらないんじゃ」
「そんなことを、分かってるに決まってるでしょ」

    しかし宇垣の言葉にもはや力はない。

「宇垣さん。訓練は・・・その、続けるんですか?」
「・・・」
「訓練は続けよう。ここで屈したら奴らの思う壺だよ」
「響・・・」

    逆らう理由はなかった。ここで止めるような決心ではない。

「とりあえず、いつもと同じように集まって。本格的な対抗策を考えるわ」



    来るのが遅かったこともあり、食堂にいる生徒はまばらだ。逆に言えばどこの席でも座れるのだが、五人はいつもの場所だ。やはりここが一番いい。

「演習、私たち一発も打てなかったんだよね。だとしたら評価0なのかな」
「そんなことないわ。あれだけ動きがよなったんだもの、その分点は入るから0はないはずよ」

    とは言うものの、ただでさえ低い評価がガタ落ちなのには変わりない。

「仕方がないよ。どんな結果になろうとウチらはできることはしたんだ」
「でも、やっぱり悔しいのよ。私たちがもっと真剣に考えていれば、こんな事にならなかったんじゃないかって」
「それは・・・」

    一発も撃てずに、ただただやられるだけというのは悔しくて当たり前だ。しかもそれが、自分たちではなく誰かもわからない他人のせいだとすればなおさらだ。

「他の教官にも相談したら?考えてくれる人がいるかもしれないし」
「残念だけど、演習の管理をしてるのは校長と教頭よ。今日と明日は校長不在だから演習の評価に関われるのは教頭だけね」

    それを聞いて、俺は何か引っかかる部分がある事に気づいた

「あんた、さっきから黙ってるけどあんたはどう思うのよ」
「どうして今日なんだ?」
「はぁ?」
「校長が不在なんだろう。いないのは2日だけなのに何で今日演習をする?」
「そんなこと知らないわよ。だいたいこういう事は必ず校長を通してるんだから」
「そう、だよな・・・」

    しかし何か引っかかる。もともとこの演習は紀田校長が取り入れたもののはず。それなのに本人が不在の中やるものだろうか?

「そんなに気になるなら、校長が戻ってきたら聞けばいいじゃない」
「いや、そこまでしなくても」

    まあこんな事気にしていてもしょうがない。それよりも今やるべき事は他にある。

「どうする?」
「ウチにしてみれば、訓練を一度中止したほうがいいと思う」
「そんな!」
「仕方がないよ、このまま訓練を続けだとしてももっと被害が出る。だから・・・」
「だからやめるの?犯人に屈して」
「ウチは屈するなんて・・・」
「だってそういう事じゃない。私たちは元からその覚悟で続けてきたんでしょ。なら最後までやり通すべきよ」
「じゃあ、直美はまた何か事が起きてもいいって言うの?」
「だからその前に捕まえるのよ!こんなチマチマしたこと、さっさと終わらせればいいのよ!」

    たしかに理屈は通っている。犯人さえ捕まえてしまえば終わること。

「あのね、私思ったんだけど。犯人はやっぱり、私たちの中の誰かじゃないのかって」
「どうゆうことよ」
「最初の保管庫の件。鍵を持ってるのが直美と寮監だけだとすれば、やっぱり開けたのは・・・」
「私か寮監だって言うの?」
「ち、違う!私はそんなこと・・・」
「そういうことじゃない。いつでも鍵を使えるのは二人だけ。犯人はこの二人しかありえない。知恵が言ってるのはそういうことなんでしょ」
「だから違うって!」
「どこが違うのよ!疑ってるのは明らかじゃない!」
「お、おい宇垣」

    流石にこれ以上はまずい。そう思い止めようとする。

「別に俺たちはお前が犯人だなんて思ってもいないし疑ってもいない。そんなこと・・・」
「もういい。私は私なりに調べるから」

    そう言うと、宇垣は立ち上がりスタスタと行ってしまった。俺たちの間に沈黙が訪れる。

「ねえ、裕二君。直美と私たちって、家族、なんだよね・・・」

    智恵のその言葉が、唯一の声だった。



    
「ということは、たしかに部屋にいたのね」
「もちろんだよ」

    午後、グラウンドでは宇垣がクラス全員に聴取をしていた。

「昨日の夜は何かおかしなことはなかった?どんな些細なことでもいいから」
「変わったことは特に・・・」

    今の所手がかりは何もない。わかっているのは犯行時刻が午前2時から朝にかけてだということだけだ。

「わかったわ、ありがとう」

    その頃、俺は何をしているかといえば、もちろん明日の試験のための練習だ。場所は射撃訓練場。

「だーめだ。当たらない」

    さっきから何十発と撃っているのだが命中率が悪すぎる。隣で一緒に撃っている知恵などすでに的交換3回目だ。

「反動をうまく吸収しないと。裕二君それ以外はできてるんだから」
「そんなこと言われても・・・」

    言葉にするのと実際やるのは違うものだ。俺は運動神経のない自分を後悔した。

「それで、石井はさっきから何やってるんだよ」
「何って、素振りだよ」

    それは見ればわかる。彼女はさっきから木の棒を振り回しているのだ。俺が聞きたがったのはなぜそんなことしてるのか。

「暇だからしてるだけ」
「教えてくれるんじゃないのかよ・・・」
「麻里と智恵がいれば大丈夫でしょ」
「んで、さっきから棒を振り回してるって」
「棒なんかじゃない!」

    そう言うと石井はその“棒”を天高く振りかざした。よく見ると棒は微妙に湾曲しているようだ。

「これは私が丹精込めて削り出した宝刀、神無月だ。そこらの棒とはわけが違う」
「ああ、木刀か」

    たしかに、言われてみれば木刀に見える。削り跡が見え手作り感満載だ。

「私のばあちゃんは有名な剣術家なんだ。私も小さい頃から家の裏山で一緒に稽古してたから腕を落とさないようにしてるんだよ」
「へえー。強いのか?」
「私はまだまだ。一度もばあちゃんに勝ったことないから」
「おばあちゃん強い・・・」

    どちらかといえば体育会系だとは思っていたが、予想以上にすごいやつなのではないか。

「まあ、おかげで射撃の腕は下手だけどねー」
「いや、あんまり言わないでよ・・・」
「そうなのか?」
「響は今の裕二君並みに下手だよ」

    それでよく試験に合格できたな。俺並みということは当てる数は数えるほどってことだ。

「だから裕二君もなんとかなるよ」
「まあ、そうか・・・」

    だからといって疎かにはできない。石井がこのレベルで合格したのも“余裕で”というわけではないはずだ。
    それにしても、さすがは石井。小さい頃からやってるおかげか木刀を振り回すその様にはキレがある。

「ちなみにウチは本物も持ってるぞ」
「本物って、日本刀?」
「そう。伊代月って言うんだ」

    なんと石井は自前で日本刀を、しかも学校に持ち込んでいるのだという。そんなことして大丈夫なのかと思ったが、特別に許されているらしい。実際、生徒は短剣は持っているが刀を持っているのは石井だけなのだと言う。まあ、俺はどちらも持っていないが。

「伊代月はばあちゃんからもらったものなんだ。ずっと欲しい欲しい言ってたけど、私が認めるまでは渡さない!って言われて」
「へぇー。でも今持ってるってことは認められたってことだろ?」
「違うんだよ。もらったんじなくてなんて言うのかな・・・もらうための試験中ってこと」
「試験中?」
「ウチがここを出るまでに認められれば、ウチに譲ってくれるって」
「なかなか厳しいな」

    さすがにその辺の事は厳しいのだろう。

「ところで、その木刀は本当に自分で削ったのか?」
「もちろんだよ。ほら」

    石井はひょいと渡してきたが持ってみると予想以上に重い。聞くと樫の木なのだとか。

「よくこんなものを振り回せるなぁ」

    刀の長さに合わせているので当然長い。だから振り下ろすだけでもなかなか難しい。

「でも、これ振り回せるくらい力があるのに銃は苦手なんだ?」
「じっと構えてるのが苦手なんだよ。反動を吸収する勢いで銃身が変な方向を向くみたいで」
「響はずっとそうだもんね。初めて銃を撃った時から」
「なんとかならないかな・・・」
「一緒に撃ってみたら?ちょうどいい機会なんだし」
「え、い、いいけど・・・」

    智恵から銃を借り、立ちの姿勢で構え、的に照準を合わせる。その姿はどこか力強さを感じる。

「パン!」

    銃から飛び出した弾丸は的の左側にずれて着弾した。

「やっぱりダメだ」
「そんな事ないよ。初めての時に比べたら全然良くなってるよ」
「そうかな・・・」

    外しはしたが、彼女の撃った弾はあと少し右に調節すれば当たるというレベルだ。
    
「自信持てよ。少なくとも俺よりは上手いんだ」
「あんまり励ましになってないような・・・」

    智恵は苦笑いしながらそう言った。




「それでね、佐藤のやつどうも私とウマが合わなくてさ。もう辞めにしたいって思ったよ」
「そんな事ないよ。庵と佐藤さんはいいコンビだと思うけどなぁ」
「いやいやそれはないよ。あいつときたら私のすること言うことなんでも文句つけてくるんだがら」

    東藤姉妹の末っ子、東藤貴美子は友人の小園庵の愚痴を聞きながら寮への道を歩いていた。貴美本人がどう思っているのかは知らないが、とても熱心に聞き入っている様子ではない。むしろ聞き流していると言ったほうがいい。まあ愚痴など聞いても仕方ないのだが。

「貴美は佐藤のことどう思ってるのよ」
「私は別にどうとは思ってないよ。言うなればまあ普通?」

    智恵に似たのかその辺りに関してはかなりマイペースらしい。
    寮の前まで来たところで二人は何かを見つけた。

「あ、鏑木先輩だ。何してるんだろう?」
「もう一人いるね」

    寮の前にいたのは三号生の鏑木だ。もう一人の三号生と何やら口論している。
    鏑木といえばあの問題児三人組の一人ではあるものの、三人の中では一番気弱でいつもおどおどしている印象を持つ。
    貴美と庵は口論する2人の横を通る。

「・・・は決定したのです」
「で、でも、今のままじゃ見つかっちゃいますって」
「なら見つからないように自分で・・・」

    横を通りながらチラッと顔を見る。
    話の相手はやはり知らない先輩だ。三号生であるには違いないが少なくとも航海科の人間ではない。

「何話してるんだろう。なんかすごく深刻なことみたい」
「うん、まあでも私たちがどうこうできるわけじゃないし・・・」

    彼女たちはそのまま寮に入った。
    そして、鏑木の相手の視線がずっと二人に向けられていたことに、気づくことはなかった。




「こら、寝るな!」
「うお!す、すまない・・・」

    木刀片手に怒鳴られて起きない奴はいない。

「もう11時過ぎだぞ・・・」
「ダメだ。智恵の出した問題を全て解き終わるまでは寝ることは許されない」
「どうかご勘弁をぉ・・・」

    石井がなぜ神無月片手に鬼軍曹とかしているのかといえば、俺が何か怒らずようなことをしたからではない。彼女はいわゆる深夜テンションという状態なのだ。

「頑張って裕二君」

    松原からの猛特訓の末、俺はなんとか試験に通るレベルになった・・・らしい。
    だがこれで満足するわけにはいかない。試験は実技だけではないのだ。

「ほら、あと少しだよ」
「いやまだ50問以上あるように見えるのだが」

    筆記試験の勉強は実技より長くやっているだけまだマシだと思っていた。しかし、智恵の「まだ足りない」という一言により、こうして俺深夜まで勉強しているわけだ。

「ほらほら、早く解かんか!」
「今解いてるよぉ・・・」

    石井はいつもはこんな性格じゃあないのに、夜になった途端これだ。

「ところで、宇垣はどうした?」
「直美ならさっき自分の部屋に入っていくのを見たよ」
「やっぱり少し言い過ぎたかな」

    自分としては何も宇垣が犯人などと思ったことは一度もない。決して同情などではなく、そもそも宇垣には犯行が不可能だ。もし、宇垣が犯人ならさすがに俺が気づく。

「直美なら大丈夫だよ。あの子ならちゃんと分かってくれる」
「だといいが」
「でも、そうなると保管庫の鍵はどうなるの?直美と寮監以外で開けられるとしたら」
「他にも鍵がある可能性は?」
「それは無いと思う。鍵の数は規則で決まってるし、もしあったとしても生徒が勝手に使えるようなものじゃないはず」

    今わかっていることはこれしか無い。もはや万事休すか。

「直美だったらこんな時どうするのかな」
「やっぱり、ウチらは直美がいてこそこれまでやってこれたみたいなものだから・・・」
「私が何よ?」

    突然声がしたと思うと。目の下に大きなクマを作った宇垣がいた。

「直美!まだ起きてたの?」
「寝ようにも眠れないのよ」

    不機嫌そうな口調で答えているのは眠れないイライラからくるものだけでは無いようだ。

「どうしてここに・・・」
「来ちゃ悪かった?ここは共有の場のはずだけど」
「た、たしかに」
 
    昼間のこともあるので、言葉遣いも自然と気を使ってしまう。

「えっと、それじゃあ・・・」
「昼間は、その、怒鳴ったりしてわるかったわね」
「・・・え?」

    不機嫌な口調が一変して落ち着いた口調に戻ったかと思うといきなりこの一言。俺たちは一瞬の沈黙に包まれた。

「悪かったわよ、私が。さあ、わかったらこの話はおしまい」
「ちょ、ちょっと待ってよ。急にどうしたのさ、直美がそんなこと言うなんて今までなかったじゃないか」

    当然の反応だ。
    今まで宇垣がそんなことを言い出すなど無かったからだ。

「私がバカだったってだけよ。あなたたちが私を犯人だなんて思ってないことくらいすぐ気付くべきだったのよ」
「そんな!私たちが直美を不必要に疑ったのが悪いんだから・・・」

    再び沈黙が流れる。
    お互い悪気があったわけではない。そのことからなのか余計に喋りにくい。
    しかし、宇垣は本当に気にしていないようだ。

「今はこんなことやってる場合じゃないのよね。何としてでも事件を解決することが、私たちが優先すべきことなんだから」
「宇垣・・・」
「あんたも同じよ。私たちのことを家族って言ったのはあんたでしょ。家族は協力し合うもの、ならこんなくだらないことやめて、やるべき事をやるわよ」
「・・・ああ、そう、だな」

    宇垣の言葉には不思議と頼もしさを感じた。おれが初めて感じた、リーダーとしての言葉なのだろうか。

「てことは、直美と私たちはもう仲直りってことだよね?」
「まあ、そんなところね」
「よかったぁ〜」

    智恵から安堵の言葉が漏れる。よほど宇垣との関係を心配していた様子だ。

「なら早速、私も直美の手伝いを・・・」
「もう、智恵ったら。あなたが今やるべきことは、そこに座ってるアホの教育でしょ?」
「誰がアホやねん」

    なぜか関西弁で答えてしまった。
    しかし俺としても宇垣とのいざこざが無くなっただけでも、精神的にも楽になった気がする。

「まあ、勉強できないって言う事なら事実だけどねー」
「そうだけどさぁ・・・」
「なら、裕二君は今は勉強勉強!」

    智恵に急かされ、再び机に向き合おうとした時、後ろから聞き覚えのある声がした。

「お姉ちゃん。起きてたんだ」
「あれ?貴美しゃない。どうしたの?」

    智恵の妹、五号生の貴美だ。
    
「お姉ちゃんたちって。その、何か悪いことに巻き込まれてたり、するの?」
「えっ」

    唐突の質問に智恵も含めその場にいた全員が戸惑った。

「今日、寮の外で聞いたの。鏑木先輩が他の科の人と何か話してたのを」
「鏑木さんが?」

    貴美はそこで聞いた二人の会話のことを話した。内容は謎だがいい話ではなさそうだ。

「一体何者なんだ?鏑木と話していた相手って」
「さあ、せめてどこの科かわかればいいんだけれど。顔は見たの?」
「はい、一応」
「やっぱり、この事件はあの三人が関わってると考えられるわね」
「あの、事件て・・・」

    貴美がそう言うのも無理はない、航海科の上級生には事情を話しているが、貴美たちには話していないのだ。

「直美」
「まあ、貴美ちゃんには話してもいいかもね」

    宇垣はこれまでの経緯を全て話した。貴美はそんなことがあったのかと驚いた様子だ。

「そんなことが・・・」
「そう、だから私たちは今この事件を終わらせようとしているの」
「あの、私でよければお手伝いさせてください。宇垣先輩にはお姉ちゃんがお世話になっていますし」
「ありがとう。お姉ちゃんと違ってしっかりしてるわね」
「私だってしっかりしてるわよー」
「てことで智恵、もう夜も遅いから貴美ちゃんを送ってあげて」

    プーッと頬を膨らませて不満を見せる智恵だが、ここは姉らしくちゃんと五号生の寮まで送り届けた。
    五号生の寮と航海科の寮は比較的近いのでどうやら抜け出してきたようだ。

「鏑木と他科の人間が密会か。これは調査の必要があるわね」
「でも、どうするんだ?鏑木を尋問にでもかけるか?」
「そうね、それが手っ取り早いわね」
「いや、冗談だって」

    尋問はさておき、話していた相手の方も気になる。

「その相手が特定できれば・・・」
「それよ、その相手を特定するわ」
「どうやって・・・あっ」

    そんなこともわからないのかというような呆れた表情で宇垣が答えた。

「貴美ちゃんよ。あの子はその相手の顔を見ているわ」

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