TS転生は強制的に

lime

十八話~ボクと色恋沙汰とやばい奴~

 
 翌日、ボクが目を覚ますと、巨乳が目の前に広がっていた。
 理由は簡単な事で、ボクを放置して置いておくと何をするのか分からない、特にマイク君の貞操が危ないと言う事でナタリーの部屋に寝させられたからだ。
 まあ、別に巨乳美少女と一緒に寝ると言う行為はやぶさかではないのだが、女としての自我が強い今となっては、何処とは言わないが、劣等感を感じる。そして嫉妬、憎悪といった悪感情までも生まれかけていた。 
 
「ぐぬぬぬ、この巨乳をもいでやろうか」

 しかし、この巨乳美少女ナタリーに向けてそんな風な罵倒を投げても、ナタリーは熟睡している為何も反応が無かった。
 反応が無いと、逆に悲しくなってしまうよ、ボクの心がボクの胸の様に小さいと言われてるように思っちゃうもん。本気でこの胸はもいだ方がいいんじゃないのかなぁ?

「ぴゃっ!?」

 そんな男だった時ではあり得ない、貧乳の歪んだ思考をしていると、急に眠っているナタリーに抱きつかれてしまった。
 抱きつかれた時に、更にナタリーの胸の感触が強くなり、巨乳への憎しみよりも元男の劣情のほうが強くなってしまい、現在進行形で興奮してしまっている。

「な、ナタリー、離して」
「……zzz」

 勿論、熟睡しているナタリーにはボクの懇願の声が聞こえる訳がなく、しかも不幸な事に、ボクの足をナタリーが絡めてきて完全に身動きが取れなくなってしまった。
 ……ボクは小さいけど、抱き枕よりは普通に大きい筈だからね、どういうサイズなのかは分からないけど、ボクを抱き枕扱いしないで貰いたい。

「おい、全然来ねぇと思ったら何してんだ」
「ま、マイク君、良いところに来てくれた。ナタリーの手とか足とかを外してもらえると嬉しいんだけど」

 奇跡的に来てくれたマイク君により救出された。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 あれから数時間後、ご飯を食べたりしながらゆっくりと準備しギルドに向かって歩いていた。

 「ふう、そういえば今日って勇者が来るらしいよね、未だに奇跡的にこの町が残っててよかったよ」 
「そうだな、勇者ってどういうやつなんだ?」 
 
 今日はギルドの人が言っていたことが本当なのなら、勇者は今日来るはずだ。
 しかしながらボクとマイク君の勇者のイメージは殆ど同じだろう。……理由はラノベとかアニメとかのせいなんだけどね。
 
「でも、ライムはまずいんじゃないか? 悪魔とか呼ばれてるし」 
「あはは、流石に大丈夫でしょ、ここで信頼を得ている勇者サマとやらは一般的な少女にそんな事はしないでしょ」 
「お前の様な痴女のどこが一般的なんだよ、真逆だろ」 
 
 しかし、相変わらずボク達は、勇者がこの町に来るという一大イベントと、この町がオークに現在進行形で襲われているにもかかわらず、馬鹿みたいな会話をしていた。 
 まあ、以前と違う所と言えば、時々ナタリーに睨まれると言う事だ。
 まあ、昨日あんな事が有ったし、今日の朝もボクに抱きつくという事件があったせいで睨むのは仕方が無いのかもしれないけど……本当に怖いよ。 
 
「まあ、別に大丈夫だろ、勇者位殺せるだろうし」 
「いやいや、まあ、殺せるのかもしれないのかもしれないけど、それは危ないでしょ」 
 
 そんな危険発言をしているマイク君はどうでもいいような表情をしていたが、この世界の勇者の扱いがどういうものなのかは知らないけれど、神の使い的な扱いだった場合は、即刻死刑とかありうるから、本当にやめてもらいたい。 
 まあ、ボクを守ってくれるって事だろうけどね。 
 
「ねえ、もしかしてだけど、貴方達って付き合ってるの?」 
「……」 
 
 しかし、ボク達のお互いを心配し合うような会話に、今まで黙りながら睨み続けるという状態だったナタリーが急に質問をしてきた。
 まあ、先程の会話を聞いていたらそう思うのも仕方が無いとは思うけど……喜劇か何かしらなのかと思っちゃうよ。 
 
「何言ってんのさ、ボクがマイク君みたいなやつと付き合うとでも思ってんの?」 
「……それなのに、裸を見せようとしたって事?」 
「……」 
 
 しかし、やはりと言うべきなのか、ナタリーの質問は鋭いところに来てしまった。 
 まあ、別にボクがマイク君の事を恋愛的感情の好きと言う事は感じたことがない。元々、カズトだし。でも友愛的感情の好きなら感じたことがあるから、難しい。 
 付き合う気はさらさらないんだけどね。 
 
「馬鹿話してる場合じゃないよ! 早くギルドに行こう!」 
「……はあ、まあ、ライムの脳内には色恋とか色気とか、そう言う物は一切ないのかもしれないけど、警戒心がなさすぎるわよ。いつかマイクに襲われるよ」 
「……」 
 
 ボクが会話を途切り、逃げようとすると、本当に悪意を持って発しているようにしか思えない台詞を言ってきた。 
 ただ、これに反応してしまうと、会話を切ってしまった意味がなくなってしまうので、無視をするしかない。ただ、巨乳に色気とか言われてしまうと、軽く殺意が沸いてしまうね。 
 
「ナタリー、悪口を言うのはやめておけ、運命と言う物には逆らえないんだ」 
「古の――」 
「まあまあ、落ち着け! ただの冗談だからな? 別に胸なんて愛情の前には意味をなさなんだから」 
 
 ただ、何故か関係のないマイク君に遠回しに馬鹿にされて。少しだけ威圧することにした。別に本気で慰めようとしているのなら行けれど、この気持ちを知らない巨乳好きの糞野郎に、にやけながら軽々しくそんな事を言わないでもらいたいね。 
 
「ライムのそういう事は結構聞いた事が有るけど、実際の所マイクはどう思ってるの?」 
「っ……」 
 
 ボクが、威圧した結果、ボクの気持ちを知ろうとする会話は完全に終わったらしく、今度は、マイク君がボクの事をどう思っているのかの話に変わった。 
 実際、この朴念仁キャラを心掛けているマイク君は、誰が好き、と言うのを明確に発言したことは一度もないはずだ。巨乳好きと言う事は、地球での嗜好や言動などで分かっているが。 
 
「マイク君ってナタリーみたいな巨乳美少女が好きなんじゃないの?」 
「別に俺は巨乳が貧乳よりはましだと思って行ってるだけだからな?」 
 
 しかし、予想とは違ったようで、別に巨乳が好きと言う訳ではないみたいだ。もしかしたら本当に、胸のサイズなど愛の前には無にも等しいという人間なのかもしれないが、それは流石にあり得ないだろう。 
 聖職者じゃないんだから。 
 
「……本当に?」 
「何を疑ってるんだ。俺は顔やスタイルよりも、ある程度の性格を重視するんだ。だから変に追っかけてくる女子よりも、気楽にいられるお前の方が好感度的には高いぞ」 
 
 ……推定聖職者レベルの感性を持っていると言う事で解決させておくべきか、もしくはこれ以上踏み込んで、マイク君の性癖を完全に暴露するまで尋問するか、まあ、ナタリーに怒られるから後者は確実にしないけどね。 
 
「おじいちゃんなの?」 
「いや、枯れてねえから」 
 
 そんな風に、最終的に馬鹿話に戻ってしまった。

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