TS転生は強制的に

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閑話、アル&イスラコンビの話


「アルテナ様、例の娘の記憶の結界が破られそうになっています」
「……誰に破られそうになってるの?」

 何時もの様にやることがなく、地球と言うカガクと言う物が発達した星で生まれた、娯楽の一つであるゲームと言う物をやっていた。確か名前は……覚えてないや。
 しかし、そのゲームをやっていた途中に、護衛と言う名の私の子守をイスラフィールが私にそのことを報告してきた。

「どうやら、白虎と言う第三世代種が破ろうとしているらしいですが、完全に破るには数日かかる予定です」
「そうなの、ならば結界の力を強めればいいだけじゃないの?」

 これまでにも、あの娘の記憶領域を外部から覗けないようにしている結界を、破ろうとしかけていた人間はいたけれど、強度を上げた結果、破ろうとしていた者は諦めた。
 だから今回もそれでやればいいじゃないか。と言う風に思ってしまった。と言うか私はゲームをしていたいんだ。

「いえ、それが、以前の力とは圧倒的に違い、あの娘の精神にまで影響を及ぼしています。このままだと、表層意識である結界が自己破壊をおこし、本来の人格が表に出てしまいます。今すぐに対処しなければ不味い事になってしまいます」
「……そう、第三世代種ならば直接私の声が聞こえるだろうから、私が止めるよ」

 ちなみに第三世代種と言う物は、この星が生成され三世代目の種族、生物と言う事だ。その種族はあとの方の世代になっていくと、神である私からどんどんと離れていく。
 第一世代種は、天使、悪魔、龍族で、第二世代種が、魔族、妖精、精霊、竜族、と言う風にどんどんとある、人間は第百五十世代種だ。

「しかし、大丈夫でしょうか、第三世代種とはいえ神に叛意を持っている可能性もあります、下手したらあの娘に被害が及ぶ可能性も……」
「大丈夫だよ、神命を使用するから」

 たしかに、叛意を持っている種族はあるかもしれない。それは別に問題はないのだが、ライムに被害があったとなると本当に面倒な事になってしまう。
 この世界の問題だったのに、この星のしょうもない事でいなくなってしまうのは非常に困る。

「(白虎よ、主神アルテナより命ず、個体名ライムの記憶の詮索、暴行を今日を持ち禁ずる、そして貴様の任務は個体名ライムの護衛だ、絶対に死守しろ。以上だ。拒否権、および返答はない)」

 本当に、神命を使用するときは疲れる。
 別にこんなに仰々しい言葉遣いをする必要はないのだが、なんにでも支配者と言う物は威厳と言う物が大切だと言う風に、イスラフィールは言っているが、面倒くさいにも程がある。

「アルテナ様、この際なので序に魔族の支配者にも連絡を取っておきましょう、悪魔と龍族は信用できませんし、妖精なんてもってのほかです。精霊は信用できますがあまり力がありません」
「えぇ、面倒くさいよ、別に良くない?」

 思わず言ってしまった台詞に、イスラフィールのきれいな顔が、瞬時にして鬼の様な、もしくは般若のお面の様な表情になっていた。
 やっぱりイスラフィールは私に威厳と言う物を求めているようだが、そもそも私の容姿自体から威厳がないのだから、それほどの問題ではないと思うんだけど。

「ただでさえその容姿なのだから、せめて口調だけは威厳を保ってください! お願いします!」
「……さりげなく私の事を貶してるよね?」

 私が少し睨みを強め、そんな事を言うと、流石に無礼と言う事は分かったようで慌てふためきながらも、居心地の悪そうな表情で突っ立っていた。
 普通に首が吹っ飛ぶレベルで失礼なんだけど? ああ、職場からって言う事ではなく物理的な意味で。

「いえいえ! とんでもございませんよ! アルテナ様の誰が見ても蕩けてしまいそうなその可憐な姿を貶すなど、絶対にありません、そんなものが居たらそれは生物ではありません!」
「お、おう、そうだったんだ」

 そして、滅茶苦茶鼻息を荒くしながら私に向かって、私の姿がどれだけ可憐で、見る者をどれだけ惑わすか、と言う謎の講義を受ける羽目になってしまった。
 ただ、それだけ可憐、可憐、と言われ続けていたが、可憐と言う事は威厳がないも同然じゃないか。美しいならまだわかるけど。

「でも、そんなに可愛さを見せたいのならよっぽど、ため口の方が良いんじゃないの?」
「はぁ? 馬鹿なんですか? 可愛らしいのに、威厳のある話方をして、それが、背伸びをしているような可愛さがあるんですよ! アルテナ様は全く理解していない」

 ……無礼千万にもほどがあるよね。
 もう怒っていいかな? もう首にしても良いかな? もうこの世から消滅させてもいいのかな? 創造主としての権限で魂ごと消し去ってやろうか。
 と言うか普通に引くんだけど。

「アルテナ様? なぜ逃げているのですか?」
「何でもない、だから近づかないで」
「またまたぁ、ツンデレなんですからぁ」

 そんな風な事を繰り返し、二人はこんなことを十三時間ほど繰り返していたらしい。


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