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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

空中降下、からのプロポーズ

「クソ、奴隷の分際で調子に乗るな!」


敵の兵士の武器を奪い剣を手に入れたが、それでも多勢に無勢。ほかの奴隷のところにいた兵士たちも徐々にこちらの騒ぎに気がついて集まってきている。
このままでは前に列を成している兵士を片付けられないうちに完全に包囲されてしまう。そうなる前になんとかここを突破しなくては。
私は何が何でもあの村に帰らなくてはいけないのだから。そのためなら腕の一本や二本いくらでもくれてやる。


「おい!他の奴らも早くかき集めてこい!ここでこいつを逃がしたりでもしたら俺たちが今度はこのクソみたいなゲームに参加させられるぞ!!」


その言葉を聞いた瞬間ほかの兵士たちの表情が変わる。自分が他の奴隷たちと同じ目に合う事を想像したらしい。
どうやら今まで散々見下して蔑んできた分自身がされる側に回るのは尚更嫌なようだ。
なにはともあれ急いでここを抜けなくてはいけないことに変わりはない。そう考えて再度剣を構え直した時、"大きな何か"の影が私と兵士たちを覆った。


「な、なんなんだあれは!?」


先程まで私に集中していた視線は今はこちらを見向きもしない。どよめき、慌てふためき始める兵士たちの視線を追ってちょうど私の真後ろ上空に居るであろう影の主を確認する。


「な、に、あれ…」


島が、というか巨大な土の塊が空に浮いていた。
岩なんて大きさじゃない。
それこそ金持ちの屋敷の敷地そのままの地面を抉ったような大きさの土塊。
そこから何かが降ってくる。
徐々に近づくに連れ、その何かが人影であることがわかった。
そこまで見えた時には最早着地までほとんど時間はなく、一気に降下して私の目の前の地面に地響きと土煙を立てながら衝突した。
兵士たちも私もありえない出来事と、突然湧いて出てきた新たな危険にお互い動けずにいる。
ちょうど私と兵士たちの間に土煙が舞っており、向こう側は時折垣間見える程度だ。
その土煙が晴れ出すと、中からローブをはためかせる男が姿を現した。


「大丈夫かい?助けに来たよ」


あまりに急な出来事に剣を構えたままの姿で固まってしまった。思考がうまくまとまらない。
"助けに来た"?
男はいきなり現れて信じられないことを口にする。
というか私に視界にはもっと信じられない光景が映っている。
私としてはそっちが余りにも衝撃的すぎて「助けに来た」という言葉の意味を脳が理解するのに数秒のタイムラグが生じた。


「た、助けにきた?わ、私を?」
「そうだよ。その代わり俺の言うことをなんでも聞いてもら――あ違う。今の嘘」


なんだこの胡散臭い男は。
男というか、歳は私と大して変わらないんじゃないだろうか。
見た目は十六歳くらいのように見える。


「そ、その――」
「俺が来たからにはもう大丈夫だよ。いや、ちょっと臭すぎるかな。俺に任せておけ。もちょっと何か違う感じがする……」
「い、嫌だから――」

何かよく分からないことに迷っているようだがそんな場合ではないはずだ。
まさか気がついていなのだろうか。そんな馬鹿な。


「とりあえず向こうの連中片付けてくるからそこで待ってて欲しいんだけど」
「ちょ、ちょっとまって!」
「どうかしたの?緊急じゃないならすぐ帰ってくるから後に――」
「あなた足首すごい方向に曲がってるけど大丈夫なの…?」





金髪の少女に言われて足元を確認する。
左足は地面にめり込み、右足は人体が曲がってはいけない方向に90度折れ曲がっていた。
もし折れ曲がった足の先に鉛筆でも刺そうものならさながらコンパスだ。
カッコつけようとして降下時の風の勢いを増したせいで予想以上に身体に影響が出てしまったらしい。
どうやら俺は格好の付け方だけでなく魔術と体の使い方も鈍っているみたいだ。
まぁ、記憶の中でこんな正義の味方みたいなあからさまな行為をした覚えは人生の中で一度もないのでしょうがない。
初めてに失敗はつきものだ。


「よいしょっと」


軽く荷物を持ち上げるような掛け声とともに折れ曲がった右足が通常通りの角度に修復される。その時足から「ペキョッ」という間抜けな音が聞こえたがたぶん大丈夫だ。
痛覚を切っているせいで怪我をしても気が付けない。
今までは引きこもっていた上に塔の中でもろくに動かなかったから不便はなかった。しかし、これからは少なからずあちこちに動き回ることも増えてくるだろう。それなら少しチクリとする程度には戻しておいたほうがいいかもしれない。
ミチミチッ!と音を立てて完全に足を元に戻した俺を見て、少女と兵士が青い顔をする。兵士の中には俺を見て「ば、化物だ!」と悲鳴をあげている者もいるようだ。


「失敬だな。俺はこれでもまともな人間――だよ。うん。そうだよ」
「今の間はなんだったのかしら…」


少し呆れたような声色で少女が言う。
よくよく考えるとこの娘の前であの少しえげつない再生の仕方をしたのはまずかったかもしれない。
今目の前にいる兵士達はきっともう会うこともないだろうしどう思われようが別にいいが、この娘は違う。俺のお嫁さん候補だ。
よくよく考えると女の子には少し刺激が強すぎる光景だったような気もする。
あまり刺激の強い光景は今後の新婚生活に支障をきたす可能性もあるだろう。そういったことにはもう少し気を使うことにしよう。
うん、うん。


「な、なに一人で頷いてるの?」
「あ、いや、こっちの話」


というかよく考えたら―――


「君を連れてそのまま逃げちゃうのが一番手っ取り早んじゃないかこれ」
「は?え、ちょ、ちょっと!?何これぇー!!?」


自分と少女を風にのせて空中庭園まで飛んでいく。
下では兵士たちが何やら騒いでいるようだが、そんなことよりこの後のことのほうが大事だ。
この娘にプロポーズをしてうまいことお嫁さんになってもらわなければ。
何かいろいろ大事なものをすっとばしている気もするが、今の俺にはきっと理解できなものばかりだろう。
そういったものも彼女との生活の中で感情を解きほぐしていけば経験出来るはずだ。
―――たぶん。





芝生の上に優しく少女を下ろす。
自分自身も、先程のような失態を犯すわけにはいかないのでゆっくりと着地した。
すると即座に彼女は立ち上がり、俺に向けて剣を構える。


「ここはなんなの?あなたは誰?何のために私を連れてきたの?もしかして私を奴隷にするため?私には行かなきゃいけない場所があるの!それに私を助けに来たってどういう意味よ!」
「そんな一気に質問しないでくれ。ここは――えっと、俺の家だよ。君を連れてきた理由、そこが俺にとっても君にとっても一番重要な部分だ」


重要、というとどんな回答が来るのかと少女が生唾をゴクリと飲む。
まずは深呼吸。
全然心臓バクバクしてないけど。
そして彼女を見据えてこう言った。


「俺のお嫁さんになってください」




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