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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

魔道教

作業場の中からせっせと採寸をする作業音が聞こえる中、俺は初老の店員と談笑と言う名の情報収集をしていた。


「ところで、最近何か変わった噂はないかな?」
「噂、でございますか」
「ああ、なにか採寸が終わるまでの暇つぶしになる程度でいいんだけれど」
「そうでございますね……お客様にお話しできるほどの者と言いますと。ああ、一つ先日街中を駆け巡った大きな噂、と言うよりは情報ならばありましたな」
「情報?それはいったいどういった類の?」
「はい。彼の大魔導師様が賢者の塔からお姿を消したとか」


少し予想外に価値のある情報にさらに深く耳を傾ける。


「大魔導師が姿を消したのはいつ頃かはわかっているのかな?」
「詳細な日時は確証のある情報は聞き及んではおりませんが、何でも先月か先々月あたりだとか」


どうやら俺が塔からいなくなってから、そう日にちがたたないうちにこの国の使者が来たようだ。そうでなければこの距離でのこの情報の伝達の速さはおかしい。
どうあがいても遅かれ早かれ他の国にも伝わることだ。
塔には人間だけでなくその他の種族も数多く訪れていた。それらが急に目的の重要人物を失うのだ。
その情報が本国に急ぎで伝えられないわけがない。
もし戦争をしている敵国に俺が渡ったりなどした日にはその戦争では自軍の敗北は決定づけられたも当然だ。
これは俺のおごりや慢心などではなく単純な事実。揺るがぬ真実なのだ。
事実一度だけ昔戦争に介入したことがあった。その国家は余裕で敵国に圧勝。知識や戦略面では最前線に俺が赴き、戦力としても魔術や魔法を行使した大規模な超遠距離からの殲滅を行った。これらに耐えうる軍隊などこの世界には俺の知りうる限りでは存在しない。


「それにその賢者の塔も次に日には姿を消したとか」
「…そ、それはずいぶんと面妖な話だね」
「わたくしは実物を見たことはないのですが、全長3000メートルはくだらないと聞き及んでいました。そんなものを一晩で――」


んぅん??
ピクリと耳が震える。
何か聞き捨てならない事を今この耳が探知し、脳に伝達した気がしたのだが。


「ちょっと待とうか。流石にそこまで大きくはないんじゃないかな」
「さようでございますかな?」
「そうだとも。流石に3000メートルの塔って言うのはいささか尾ひれと言うかもう背びれも腹びれもついてしまっているんじゃないか?」
「伝え聞くお話では雲を貫き太陽の輝きをも遮る巨塔と……」
「いや、それはいくら何でも言いすぎだよ。せいぜいあって7メートルくらいだと思う」


そう俺が口にした瞬間ゴツンという音とが店内に響く。
音のした方へと視線を向けると、どうやら衣服になる材料が入っていたであろう箱がに落とされており、恐らくそれを抱えていたであろう女性店員がこちらを見ながら目を見開いていた。
すると見る見るうちに表情が曇り、怒りのような蔑みのような目線を向けてくる。
その表情のままつかつかと俺の前まで早歩きで移動してくると、俺の顔の真下あたりから嫌悪感をむき出しにした恐ろしい上目遣いをしてきた。


「お客様は彼の高貴なお方の住まわれる塔を侮辱されるおつもりですか?」
「いきなりどうしたんだ。侮辱も何も事実だろう。特別魔術で補強もされていないただの石造りの塔なんだからそんな高さまで積み上げたら当然崩れるのが当たり前だ」


俺がそういうと、彼女は更に額に青筋を浮かべながら俺の胸倉を今にもつかみかかろうかという勢いでにらみつける。


「あのお方のお力ならばそのようなことにはなりません!」
「こっ、コラ!お客様に対してなんという態度を―――」


この明らかなまでの執着と言うか妄信。もしかして―――。


「もしかして君は魔道教の信者か?」


魔道教。
それは魔術を極め、魔法に至り、この世のありとあらゆる知恵と技術を持つといわれている大魔導師を御神体として祭り上げ、他宗教で言う所の神に近い存在として崇める宗教だ。
この集団には大きな特徴がいくつかあり、そのほとんどが魔術やそれにかかわる職業、またそれらの家族や友人で構成されているという事や、彼らは他の宗教とは違い、教会で祈りをささげるのではなく賢者の塔に向かって毎朝の日の出と毎夜の日の入りに祈りをささげるなどがある。
彼ら特有の厳しい修行などは特に存在しないが、一応信者の魔術師は、「自分は大魔導師に助言をもらえるほどの技術や努力を積み重ねたものである」と本人を前にして胸を張って言えるようになるのが目標と言うか共有されている夢らしい。
胸を張りながら尊敬している相手に「これわからないんですけどどうしたらいいですか!?」と聞くことに対して誰も突っ込まないのだろうかとは思うが、当人たちが幸せなら特に言う事もあるまい。
そしてその御神体として奉られているのが誰かと言うのはこの話を聞けば誰であろうと一発でわかる。





そう、俺だ。



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