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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

大魔導師の一仕事

数秒間の沈黙の後、アフィルが口を開く。


「もしかして慰めようとしてくれてるの?優しいのね、ありがとう。でも、そんなに無理しなくていいわ。私はこれから先何年かかろうと私は構わないのよ。でも、もしシグレが嫌なら、無理に、付き合う、必要は……」


徐々に言葉がしりすぼみになっていく。
どうやらエフィルは俺が大魔導師を探すなどと言い出したから妙な冗談でも行って気を紛らわせようとしたと勘違いしているらしい。
もしそうだとしたらどれだけ俺は女の子の慰め方が下手くそなんだ。
まじめにやろうと思えば流石にそこまでひどくはないはずだ。たぶん。…たぶん。
いや、かなりまじめにやったはずだったんだが。


「やっぱり言葉で言うだけだと信じてもらえそうにないな。少しここで見ていてくれ」


エフィルを支える体勢からゆっくりと彼女を立たせ、その場で待機するように指示を出す。
エフィルが現在立っている先ほどまで俺たちがいた地点から十数歩分廃墟と化したエルフの村の建物たちに近寄る。


「こんな大規模な魔術行使は久しぶりだな。気合入れて行かないと」


なんたって俺の嫁が見てるんだから。
あまり恰好の悪いところは見せられない。


「シグレ、何する気なの?」
「エフィルはそこで見ててくれ。俺がさっき言ったことは本当だって今から証明するから」


今回は魔術と言うより少し魔法に近いところまで魔力の出力を上げる。なら装備もそれなりのものを用意して万全な状態で臨んだ方がいいだろう。
俺は通常の衣服は空中庭園などこの世界に保管しているが、魔術や魔法に関わる装備品はそのほとんどを『空間魔法』と呼ばれる術で異空間に保管している。
『空間魔法』とは文字の通り空間を操る魔法だ。
俺たちが存在し、普段生活しているこの空間、さらにはそれ以外の空間に干渉、または空間そのものを創造する魔法のことを指す。
今回はその『空間魔法』を使用して異空間の中から必要な装備を取り出さなくてはいけない。


「『空間魔法』起動。換装開始」


自分自身の口から紡がれた詠唱に呼応するように足元に魔方陣が出現する。
陣がゆっくりと回りながら青白く発光し始めた。


「な、なんなのこの魔力!?し、シグレ!何をするつもりなの!?無茶しないで!!」


エフィルが後ろから叫ぶ。
エルフは魔力に精通しており、特に風系統の魔術を得意としている。
それ故に俺の周囲の魔力が異常なほど急上昇したことに少し驚いたのかもしれない。


「大丈夫だよ。この程度、呼吸と大差ないさ」


陣がより一層光り輝く。
自分の来ている衣服が変わり、右手に慣れ親しんだ心地よい重みを感じた。
衣服は先程までの軽装とは打って変わって重装備になっていた。
重装備と言ってももちろん近接戦闘を得意とする騎士や戦士のそれとは違う。
全体的に黒を基調としたフード付きの足首程まである丈の長いローブだ。所々金や赤の刺繍が施されていおり、それらはすべて魔力を効率よく循環させ、術式の行使の効率を上げるために計算しつくされたものだ。
右手には長さ1メートル40センチほどの杖が握られている。
こちらも全体的に黒を基調としており、特殊な金属で出来ている。
それ以外の装飾は主に金が使用されているが、最も目を引くのは先端に取り付けられた半透明な白い水晶だ。
暗闇の中でもうっすらと光るこの石は超高純度の魔石でできている。


「この格好になるのもずいぶんと久しぶりな気がするな」


この装備は以前一度だけ参加した戦争でも使用したものだ。
以来しばらく放置されていたが、これが普段着を抜かせば一番長い付き合いになる。
後ろを振り向くとエフィルが突然何が起こったのかわからないような顔をしていた。


「すぐに済むからもう少しだけ待っていてくれ。今日は帰ったら晩ごはんはエフィルが好きなものを作るよ」


返事は待たずに再度瓦礫群に目を向ける。
右手に持つ杖を軽く一振りすると「ヒュフォン」と少し不思議だが聞きなれた心地良い音が鳴る。
すると瓦礫の小さな破片がカタカタと震えだし、その振動は瞬く間に瓦礫全体に伝染した。
全てにの瓦礫が振動を始めたと同時に瓦礫たちがひとりでに動き始める。
それらはまるで意思を持っているかのように動き、浮かび始める。
その反応が始まってから5分もかからずにすべてが静止し、もとあったであろう家屋の形に収まった。
それを確認して周囲を見回す。どうやらもう残っている瓦礫はなさそうだ。
仕事を完遂したといったように体を伸ばし、息を吐き出す。
エフィルの方へと振り向く。
何が起きているのかいまだに理解できていないまま地面にへたり込んでいる彼女のもとへと歩みより声をかけた。



「さぁ、俺たちの家へ帰ろうか」





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