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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

老婆と大魔導師

村の付近まで気配をできるだけ殺して近づいていく。
あたりは虫の鳴き声が聞こえるだけで、それ以外は完全に無音だ。
まさに寝静まっているという表現が正しいだろう。
村人たちが出歩いていない真夜中に黒っぽい服装で気配を殺して一番お金持ちの家に忍び込む人物。


「あれ、これ俺さてはコソ泥と大差ないのでは?」


まさに怪しい奴としか言いようがない。


「なんだか悪いことをしている気分になるな……。早いとこ用事を済ませて家に帰ろう」


まだ一緒に住み始めて数日だがエフィルの体温で暖められた布団が恋しいと感じ始めている自分がいる。
これはやはりエフィルと一緒に住んでいることで俺の感情的な部分や感性と言うものがいい刺激を受けているのだと思う。


「って、今はそんなことを考えている場合じゃなかったな」


早く村長宅に向かわなくては。
向こうも俺のことを首を長くして待っているはずだ。
そう思い、村長宅へと向かう足を速めた。





村の一番奥、最も大きい家。


「ここで間違いないかな」


その扉の前へと到着した。
ゆっくりと古びた木の扉へ向けて三回ノックをする。
すると数秒の間の後に中から「どうぞ」というしわがれた声が聞こえて来た。
その了承の声を聞き、扉を開く。
中に入ると、小さなろうそくの明かりに照らされているしわがれたエルフの老婆が正面のテーブルの椅子に腰かけてこちらを見ていた。


「夜分遅くに失礼する。この村の村長殿で間違いないだろうか」
「ええ、その通りでございます。」


その表情は微動だにしない。
いきなり現れた俺に正体も聞かずにただそこに佇んでいる。
その細められた目の奥の感情は表面上の情報からはまったく読み取れない。
まあ、真顔で何を考えているかわからないという点は俺も人のことを言えたものではないのだけれど。


「貴方様はあの者たちとは違う」


俺が何かを発する前に老婆が言う。


「それはどういう意味かお尋ねしても?」
「貴方は向こうの村を襲ったならず者共とは違う方でしょう?」
「それはそうだけれど……。なぜそう思うんだ?」
「単純なことです。先程貴方の魔力がこの村へと迫ってきた時、私はあなたの魔力に優しさや大切な何かを思う温かさを感じました。」
「優しさや温かさ?」
「その通りです」


今だに彼が何を考えているかわからない。
魔力に優しさだと?
わからない。
生きてきた年数は遥かに俺の方が上のはずだ。
さてはこれが塔に引きこもってボッチ生活を送ってきた俺と村人に慕われて生きてきた村長との差だというのだろうか。
いやいや、そんな馬鹿な。


「それはともかく、俺の元で襲われた村のエルフの娘を保護しているんだ。彼女を助けるためにもできるだけ詳しい現状を教えていただきたい」
「承知いたしました」


そういいながら村長はゆっくりとうなずく。
薄暗くこの部屋を照らす小さなろうそくが隙間風で揺らめき、彼女の影が一瞬左右に揺れ動く。
村長の纏う雰囲気が重苦しく変わった。
そしてその口をゆっくりと開き始めた。





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