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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

悪夢の足音

大きな屋敷の中、その一室で、タン、タン、タン、タンと広い部屋に床を足先で踏みつける音だけが静かに響く。


「クソ!クソ!クソォ!あのゴミエルフ共がぁ!!!」

誰もいない部屋の隅に設置された椅子に腰かけながら大男が一人溜まった鬱憤をぶちまけていた。


「思い出すだけで忌々しい。ちょこまかと動き回り、小手先のしょぼい風の魔術なんぞで体のあちこちをチクチクチクチクチクチクとしつこくしつこくしつこくつついて回りやがる。俺の剣が少しでも当たればあっという間にひしゃげるような貧弱な奴らのくせにこの俺の体中に傷をつけやがった!!!!」


おもむろに立ち上がるとそのストレスをぶつけるように今まで自分が座っていたイスとテーブルを思い切り蹴り飛ばす。強い力で蹴り飛ばされた椅子とテーブルは大して補強もされていなかったため、衝撃で砕けてバラバラに飛んで行った。


「はぁ、はぁ、はぁ」


木材が砕ける音の少し後に細身の長身の男が部屋に入ってくる。
今だ興奮状態から戻らぬ大男を見て大きなため息をつき、声をかけた。


「おいおい、またなのかグドラジェ。何度言ったらわかるんだ。椅子も机もただじゃないんだぞ?」
「あぁん!!?るせぇぞネトーラ!てめえがどんくせえから俺にあのクソエルフ共の魔術が当たるんだろうが!!」
「何を言ってるんだ。お前が避けないからだろう」
「ああ!?てめえのその盾はじゃあなんのためにあるんだ!!?魔術を吸収して俺に当たらないようにするためだろうが!!」
「なんで俺がお前を守ってやらなきゃならん。今回のことで同じ依頼人に仕事を受けてたまたま同じ仕事をこなした。ただそれだけだろう。まあ、その仕事もアレだけ苦労したというのにあまり良い結果ではなかったがな。あの硬い座り心地の悪い馬車での長距離移動はもうたくさんだ。あと、お前のその大きな声もな。近くで聞いていると耳が痛くなる」


そこまで聞いたところでグドラジェのこめかみの血管が音を立てて膨らむ。


「んだとてめえ!!!今すぐミンチにしてやろうか!!?」


そういいながらグドラジェは壁に立てかけてあった大剣を振りかぶる。


「そういうすぐに頭に血が上るのは本当に感心しないぞ?怒りっぽいのは健康によくないとよく言うだろう。だが、それも今ここで俺に丸焼きにされるならば関係ないがな」


そういいながらネトーラも左手につけた盾と背中に背負っていた杖を右手に持つ。
今にも一触即発、と言った雰囲気にあたりは包まれている。
数秒間にらみ合いが続き、今にもどちらかが動き出す、そう思われたとき。


コツン――コツン――コツン――コツン――。


遠くから何かが地面を軽く突く音が屋敷に響いていることに気が付いた。


「まて、これは何の音だ」
「俺が知るわけがないだろう。この屋敷にはお前が結界を張ってたんじゃねえのかよ」
「ああ、あれを破るどころか全くの反応もさせずに侵入するなど不可能なはずだ。となればどこかの設備の破損か?」


そう言いながらネトーラはグドラジェを睨む。
すぐにその意図に気が付いたグドラジェはネトーラに対して反論を返した。


「ちげえよ。俺じゃあねえ。確かにここの椅子と机は何度かぶっ壊したが、さすがに依頼主の家の物をそう何でもかんでもぶっ壊したりはしねえ。それに重要な設備だったならここでしばらく生活をする俺自身の首を絞めることになるだろうが」
「その頭をそこで最早木片となった椅子と机にも向けてやれなかったのか」
「はっ!俺は別に無差別にぶっ壊すわけじゃねえが腹が立ったらこれを壊すことに決めたとなればその対象については別にどうなろうがいいんだよ!!」
「あっそ。それで、ならこの音は何なんだ?まだ徐々に近づいてきてるぞ」


いまだに先程から鳴り続ける音はやむ気配はない。
それどころか少しずつ、少しずつだがこちらに近づいてきているようにも感じられた。


「仕方がない。確認しに行くしかないか」


そう言ってネトーラは元来た部屋の外の廊下へと歩いていく。
グドラジェは特に興味も湧かないというようにその背中を見ていた。
ネトーラも「"きっと"大した問題ではない。"どうせ"鼠か何かが走り回ってでもいるのだろう」と楽観的に考えていた。




それが―――数分後に起こる悪夢の足音とも知らずに。




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