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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

エルフ達の救出

「よし、これで二人とも片付いたな」


バタン、と木造りの扉を閉める。その扉は閉まると同時に瞬時に光の粒となって空中に霧散していった。
あの後魔術師の方を相手している間にこっち側に扉を作っておいたら頭の悪い大柄な男の方もまんまと入ってきてくれて助かった。
もしかしたらと思った程度だったが予想以上にうまくいくものだ。


「さてと、こんなところで油を売っている場合ではないな。早くエフィルの妹を助け出さないと」


先程この屋敷に入ってくるときに見つけた階段から地下へと降りていく。
中は先程までの薄暗いというレベルの暗闇ではなく、完全に光は届かなくなっていた。
俺自身は魔術でどうにでもできているが何の補正も入っていない状態で長時間放置すれば恐怖でおかしくなってしまっても不思議ではない。早く見つけてあげた方がよさそうだ。
地下へと続く階段を最後まで降りきり、周囲を見渡す。
地下は一直線に廊下のように伸びており、壁側には一定の間隔でろうそくが、反対側には牢が並んでいるようだ。
杖で地面を軽くつき、かかっているすべてのろうそくに火をともす。
すると牢の中から一斉に視線が集まった。
閉じ込められているのは全員エルフのようだ。上の様子からも普段からこの屋敷を使用しているような痕跡は少なかったし今捕まっているのはみんな今回の襲撃事件の被害者たちなのだろう。
杖を軽く一振りし、牢屋の鍵を解く。
全ての牢屋の錠がひとりでに動き、ガシャン!と音を立てて地面に落下した。
最早牢はその役割を果たしておらず、中から本人たちが出ようと思えば簡単に脱出できるような状態になった。
これで物理的な問題はなくなった。後は精神面だな。


「エルフの村長からの依頼で君たちを助けに来た者だ!皆これより自由となった!村へ帰りたいものは檻から出て俺のところへ集まってくれ!」


と言ってもそう簡単に出てくるわけがないか。人間に痛めつけられてここまで連れてこられたのだから無理もない。犯人は集団だったと聞いている。なら痛めつけた個人ではなく人間と言う種族そのものを恨んでしまっているのも無理ないだろう。他の種族とかかわりを持ちたがらない閉鎖的な空間で普段生活しているエルフたちだというのもよくない方向へとこじらせてしまった一因かもな。
ならばもう一押し必要なはずだ。


「この中にエフィルの妹はいるか!少し話がしたい!」


すると呼びかけが響いてから数秒の間の後にゆっくりと影の中からこちらをうかがうように一人の少女が出てくる。


「あっ、あの…おねえちゃんのこと…しってるんですか?」


そう言ったのは、本来エフィルより少し短いであろう金髪を両サイドでおさげのように緩く結んだ少女だった。
その髪は以前のエフィルのようにくすみ、輝きが失われている。
そしてその髪を束ねている物もずいぶん汚れてしまっているように見えた。


「君がエフィルの妹か」
「は、はい。セフィラと申します」


エフィルと比べると身長はやや小さいが、エフィルの面影がどことなく感じられる顔立ちとそのボロボロの身なりを見ると初めてエフィルと会った時のことが思い起される。
今思うとあの時は随分と衝動的なことをしたものだと自分でも少しあきれてしまう。それでも後悔などは微塵もしていないが。


「そ、それで…おねえちゃんは無事なんでしょうか」
「もちろんだよ。我が家でしっかりと休養を取らせた。もうすっかり元気だとも」
「ほっ、ほんとですかぁ!?よ、よかったぁ…」


姉であるエフィルのことを気遣って本気で安心している。今の今まで辛かったのは自分のはずなのにだ。
随分と姉思いの妹だな。


「君は本当にエフィルのことが好きなんだね」
「ええ!?きゅ、急になんのことですか!?ま、まあおねえちゃんのことは本当に大好きです。いつもどんくさい私ができないことを馬鹿にしたりしないで私ができるまでずっと一緒にいてくれるんです。すごくすごく優しくて、尊敬もしていて、自慢のおねえちゃんです!で、でも…あの日はおねえちゃんがどこかにいっちゃって、そのあとすごく怖い人たちが来て…それで…」


セフィラはそこまで口にすると目に涙をためて今にも泣きだしそうになってしまう。おそらく村が襲われたときのことを思い出したのだろう。あまり後々の人生に傷後を残したくはないな。


「セフィラ」
「うぅ…えっ?」


そっと頭を撫でながら子供を諭すように語り掛ける。


「もう大丈夫だ。どんなに強い奴が来ても、どんなに怖い奴が来ても、俺が守ってあげるから。もう安心していいんだ」
「ほ、ほん、とに?ほんとに、もう、だいじょっ、ぶ?」
「ああ、今すぐにでもエフィルと会わせてあげることもできる」
「うっ、うぅぅぅ…。よかっ、たぁ。よかぁったよぉぉ…」


今までの緊張の糸が解けたのか、一気に大粒の涙が瞳からこぼれだす。水滴が頬を伝い、地面へとこぼれ落ちていく。
そのセフィラの様子を見ていたほかのエルフたちも、つられてか徐々に涙を流す者や牢の外に出て座り込む者が出てきた。
どうやら少しは俺に対する警戒が薄れてきたようだな。よかった。
それからセフィラが泣き止むまで彼女の頭をひとしきり撫で、泣き終わってから彼女は少し恥ずかしそうに自分から少し離れた。


「そ、それで…どうやって私たちを村まで運んでいただけるのでしょうか…。外に馬車でもあるのですか?でもこれだけの人数を収容することができる馬車なんて…」
「その点は問題ないよ。全員で飛ぶからね」
「と、とぶ?」


地面を魔力を込めて杖で突くと、カツン――と響く音を立てて地面に魔方陣が展開される。
一瞬周囲にどよめきが起きるが、移動も一瞬なのでいちいち気に留めている必要もない。


「『トランジョン』」


俺がその言葉を口から吐くと同時に一瞬の浮遊感が襲う。
そして景色は一瞬にして変わる。
そこは屋敷に来る前までいた森の中だった。
どうやらセフィラをはじめとするエルフたちはまだこの状況がつかめていないらしい。
目の前には村長の家がある。しっかりと目的地の村まで飛ぶことができたようだ。


まあ、何にせよこれで―――――


「お仕事終完了、かな」






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