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大魔導師になったので空中庭園に隠居してお嫁さん探しに出ます。

ノベルバユーザー160980

再会

「ふあぁぁ…」


自分の体温で温まった布団の中でゆっくりと体を伸ばす。
全身にくまなく力が入っていき、脳がだんだんと覚醒していく。
肉体、脳ともに深いところから徐々に水面へとのぼってきた。
完全に体すべての稼働準備が終わる一歩手前、エフィルはこのところいつも感じていた感覚が自身のそばに無いことに気が付く。


「…シグレ?」


この家に来てからいつもシグレと一緒に寝ていたため、すぐにその異変に気が付く。


「いない…」


いつもは自分の隣にあるはずの人の形のふくらみが掛け布団の上から見て見当たらない。
それになんだかいつもより布団の中がすこし肌寒い気がする。
ゆっくりと起き上がり、布団の外に出る。
長い金髪がサラサラと流れた。
本来ならこのまま徐々に意識を目覚めさせるところだが、そのまま足にぐっと力を入れて立ち上がると、その足で寝癖も直さず部屋を出た。




「おかしいわね。家中どこを探してもいないなんて」


一緒に暮らしてエフィルにはシグレについて分かったことがいくつかあった。
そのうちの一つは、「睡眠時間についてかなりルーズ」という事だ。だがこれは決していつまでも寝ているという意味でルーズと言っているわけではない。
一緒に寝ている時はエフィルが起きるまで起きなかったが、本人曰く「別に一年間一睡もしなくても問題はいない」という事なのではたから見るとものすごく不健康と言う意味でのルーズだ。
別にそこまで長い間一緒にいたわけではないではないかといてしまえばそれまでだが、彼女にとっては少ないながら今までの経験から言えば異常事態に他ならなかった。


「もしかして昨日のこと……気にしてくれたのかしら」


シグレが「自分がどんなことをしても助ける」と言ってくれた時、こころの中に何か温かくて優しいものが流れ込んでくるような感覚があった。
泣き止むまでずっと自分のそばにいてくれて、頭を撫で続けてくれた。
今思えばあの時の感覚は私を落ち着かせるために気を聞かせて何か精神を安定させる魔術でも使ってくれていたのかもしれない。
今だって本当はセフィラやお父さんお母さん、村の仲間達のことが心配で心配でたまらないはずなのに、そのことを考えて不安になった次の瞬間には「シグレが任せてくれと言ったのだから大丈夫」と言うような安心する感情が湧き上がってくる。
彼自身がこれから探そうとしていた大魔導士であったことにはとても驚いたが、それを知ったとき今までの疑問という鍵穴にしっかりと答えがはまった気がした。
大きくておかしな空飛ぶ島や、瞬間移動のような高等魔術。これらの行動もあの伝説の大魔導士と言うのならばすべて合点がいく。
それぐらい伝説上の大魔導士と言う人物の法外ぶりは他を寄せ付けないすさまじさがあるものばかりだった。それはもはや常識や自然の法則などを無視しているといってもいいレベルだ。


自分の夫について考え込むのもいいが、今はその本人を探しに行く方が先決だ。
そう思い玄関の扉に手をかける。
扉を開けるために力を入れようとすると、扉の方が勝手に開いた。そのせいでエフィルは前のめりによろけてしまう。
どうやら向こう側から誰かが扉を先にあけたらしい。


「おねえちゃん!!」


よろけたせいで視線は下を向いていたが、その声と共にすぐに真っ暗になった。

一体何が…?

あまりにも急な展開に頭が付いていかないが、どうやら誰かに抱きしめられたらしい。
そして耳に残るその声と自分のことを呼んだその呼び方が目の前にいる人物を特定した。


「セ、フィラ?」
「うんっ…!うんっ…!!よかった、本当に無事で…よかった……」


その声を聴き、ゆっくりと顔を上げる。
そこには、顔を涙で濡らしながらも笑顔を作る私の最愛の妹がいた。






エフィルとセフィラが抱きしめ合いながらお互いの無事を喜びあっている。
あの後セフィラは俺にエフィルの元まで連れて行ってほしいと頼んできた。
特に拒否する理由もないのでわかったと答えると、その了承を得てすぐに両親の元へと走っていった。
どうやら先程村長に両親がいる家は確認済みだったようで、家から出てきたまだ寝ぼけている両親に抱き着き、自分の無事を報告した。普通ならそこでお互い涙を流す今目の前で起こっている光景が怒るはずなのだが、両親が両手を広げた時には「それじゃあ、行ってきます!!」と言ってこちらに走って戻ってきた。あまりに急な出来事にセフィラの両親は両手を広げた状態のまましばらく固まっていたが、セフィラが大丈夫だというのでこちらに連れてきたのだ。


「それにしても今回の黒幕の目的は何だったんだろう」


結局のところ今回の黒幕にはいきつくことはできなかった。
屋敷で見つけた二人組だってただの雇われの傭兵だった。情報も最低限しか与えられていなかったようだ。
しかし、それでも無理やり納得させて彼らを動かすことができるだけの財力はあったらしい。
これからもエルフには注意を呼び掛けるべきか、あるいは……。


「でもとりあえず今は…」



二人の姉妹が泣き笑いながら抱きしめ合う美しい光景を眺めていたいと思った。




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