クズで捻くれの自己中心的な青春日記

柏崎 聖

先輩は嫌いだ

 

 俺は先輩が嫌いだ。
 絶対的権力を持ち、後輩に対して命令する。
 ただ、生まれた年が少し早いだけなのに格差が出来るのだ。
 極端な話、誕生日が1日違うだけでも先輩、後輩の関係ができてしまう。
 俺はそれに納得が行かない。

 例え、社会的地位で上に立ったとしても先輩、後輩という事実は帰ることが出来ない。
 どんなに、醜い人であってもその人を敬い続けなければいけない。
 先輩と後輩という関係は、人は皆平等であるという俺の理論に反するもの。
 だから俺は先輩が嫌いだ。
 因みに後輩は嫌いではない。
 生意気な奴は別だが……。



 初めて野球部の体験入部に来た時のこと。
 俺は、チームの主将と話した。
 その最初に言われた言葉がこれだ。


「彼女いる?」


 まぁ、現時点では居ないので答えはNO。
 俺はそう答えた。
 すると、


「俺もいない。野球部は彼女を作ったら駄目だからな!」


 と冗談交じりに言ってきた。
 いや、主将に彼女が居ないからって野球部全体を禁止にするのはどうかなぁって思うけど……。
 まぁ、高校で恋愛はする気ないから良いけどね。


 別にこういう先輩が嫌いな訳では無い。
 嫌いなのは、先輩という地位を使って後輩を支配するような人だ。

 中学時代にその例があった。

 ある時、試合に負けた。
 その原因は、試合に出た俺。
 優しい先輩であれば、励ますのが普通だろう。
 けどその人の場合は寧ろ逆だ。

 俺の酷いありさまを、嘲笑っていた。
 そしてあまりいた他の先輩も一緒に嘲笑っていた。
 それが今でも心の奥底に苦い記憶として残っている。

 他には、自分は出来もしないことを俺に要求したりする先輩がいた。
 少し難しい打球をエラーした俺に、大声で言う。


「おい!取れるだろ!」


 そう言われて腹が立たないわけが無い。
 もし、その人がイチローなどの凄い選手だったらまだ分からなくはない。
 イチローのような人には、その打球が簡単な打球だと映るのだから。

 でも、その先輩は違った。
 実力があるかと言われれば、無い方。
 自分では上手いと勘違いしているが、俺の同級生が言うには上手くない。
 俺の目にもそう映っていた。

 そういう嫌な先輩が過去にいたため、俺は次第に先輩が嫌いになっていった。



 高校では、そういうのはないと確信していた。
 でも、現実は甘くない。
 俺の嫌いなタイプの先輩が1人いた。
 その人は、中学時代クラブチーム所属でかなり上手い。
 そのため、実力のことを言われてしまえば反論は出てこないのだが、他の点に問題があった。


「おい、1年!早く動けよ」


 その台詞は、まぁよく聞くものだ。
 先輩と後輩であれば、あってもおかしくない。

 でも、その先輩はひたすら怠けている。
 他人のことに口を出す割に、自分は手を抜くという行為をその人はしていた。
 だから、後輩の俺たちに対する命令は全てイライラする言葉だった。

 先輩に抗えばいいのだが、それが出来れば苦労しない。
 抗えないようになっているのが、先輩と後輩の関係というものなのだ。

 俺はそういう気分の悪くなるような言葉を何度も受け、次第にイライラが募っていった。
 そして徐々に、野球部を辞めたいと思うようになった。



 俺は……。


『先輩は嫌いだ』


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