話題のラノベや投稿小説を無料で読むならノベルバ

子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第31話 メタい話

「収納できるものはあらかた収納したし、これで準備はいいだろう。
 便利だなーコレ」

 みるみる文字と数値に変わっていくアイテムたちを見て思わずつぶやいてしまう。
 あっちの世界でも書類やら様々なものをこうやって管理できればどれだけ楽か……

「考えたくないけど、VR世界の中で仕事したほうが捗るんじゃないのか……?」

 今だって外の時間を圧縮して経験してるらしいし、コンソールがあればどんな資料の検索も一発だし、やろうと思えば睡眠欲も食欲もコントロールできてしまうだろうし……

「この考えは危険だな……というか、上にこの可能性を提示された時の言い訳を考えておかないとなぁ」

 VRを使った人間の今までの限界を容易に越える利用方法……
 少し考えただけでも背筋が寒くなる。
 いやいやいや、そもそも那由多の性能を考えれば多くの人間が行っていた仕事が那由多が変わって行うことが出来る。
 その分人間が負担する労働は減るはずだ。
 いずれは人間が要らなくなるかもしれない。
 そういったときに仮想現実としてのこの世界は違った意味合いを持つかもしれない。
 現実の世界で、何もすることがなくなった人間の暇つぶしとしての人生……

「それは、悲しいな……」

 仕事をそこまで愛しているわけでもないが、全くやらなくていいと言われたら少しさみしかった。
 仕事があって、それを終わらせた隙間にやるからゲームや余暇は楽しいんだと、オレは思っていたんだなぁ……

「いずれはAIや機械化が進んで、人間は余暇を過ごすアイデアを必死に探すのかねぇ。
 想像もつかないね……そんな世界……」

 そんな未来に手を貸している自分自身は、必死に目の前の仕事をこなしているんだけどね。
 何の因果かこんな状態になってしまっているけど、別に仕事だとしても嫌じゃなかった。
 サラとあんなことになったのは予想外だったけども……

 そんなことをつらつらと考えながら合流場所にたどり着くと既にサラとナユタは準備を終えて待っていた。

「パパ、珍しく時間に間に合いましたね。しかも15分も前。僕は感動してます」

「あれ? オレ遅刻するキャラだっけ?」

「こっちに来てから気がつけばいろんなものに興味を持ってフラフラするからですよー」

「リョウ! こっちはちゃんと終わったよ! 褒めて褒めて!」

 腕を取ってしがみついてくるサラ、明らかに距離が近いし、なかなかの感触は心地よいので頭をナデナデしておいてあげよう。サラも嬉しそうだし、いいんだよね?

「でっか! なんか文化レベル違いません!?」

「失われた古代文明〈便利な言葉)ですから」

「どうせサラの作る話だ、この古代文明絡みのことも山ほどあるんだろ?」

「もちろん! 10年は楽しめるテキスト量がお待ちしておりますよ!」

「どんだけだよ!! オレそれやってたら死んじゃうよ!」

「そんな!? 入魂のストーリーになってるのに……」

「向こう帰れたら頑張ります……」

「うん! 絶対だよ!」

「……パパ、ママの特殊能力とも言える速読で10年だよ?」

「なっ!!?」

 ……終わった。
 元の世界に戻っても、オレはテキストの海に放り込まれることが確定した。

 閑話休題。
 船の内部は文字通り豪華客船、よく1年位かけて地球一周するクルーザーなんかの広告を見たことがあるが、それだね。
 移動をスキップしてもしなくてもこれは心ゆくまで楽しめる作りになっている。
 宿泊設備は一流ホテル並、食事も24時間専属のレストラン、バーに時間は限られているが専門店もある。
 メインホールでは常にイベントが開催されており、スポーツ施設も大量に利用可能。
 さらに、カジノがありやがる。
 ざわざわ……
 背中がひりついちまうぜ……

「ここらへん、実際にゲームにする時大変そうだね」

「ああ、カジノ? そうだよねー……」

「課題は山積みだよな」

「なんとかなるよ、私とリョウなら」

「それに、ナユタもいるからな」

「お手伝いしますよ!」

 それから、移動の間、俺達は本当に酷かった。
 酷いのはオレとサラだけども、目が覚めたら食事をしてショーを楽しみ気が向いたら二人でいちゃついき……
 あまりの酷さにナユタにバトルシュミレーターに放り込まれた程だ……

 反省。

 いやね、こんなにダラダラした時間を過ごせたことなんて生まれてこの方なかったんですよ旦那ー、と命乞いをしてやっと許してもらえました。
 時間が経過したことでナユタの権限も使用可能になった。
 まずは索敵。敵の場所の把握。
 これは非常に簡単だった。

「明らかにデータ量が飛び抜けた場所が5箇所。
 世界の中枢、それと魔王達4体でしょう。
 各国にきれいに分散していますね。
 あの一瞬でここまでバランスの取った場所に飛ばすなんてさすが僕です」

「これから行く場所にも……」

「いますね。具体的にはここに」

 ナユタが精巧な世界地図をまるでプリンターの様に質の良くない紙へと描いていく。

「現在位置がこの辺りになります。これがこれから向かうポセトニア諸国、魔王がいると思われるのはこの島の中央辺りですね。到着する島からはいくつかの島を乗り継いでいかないといけません」

「目的地がはっきりとしているのはいいね。この船は大きな街に着くんだよね?
 そこで出来る限りの準備をしてさっそく魔王退治へと向かおう」

「パパとママはあと数日ですが、あまりはめを外しすぎないようにお願いしますね」

「「はーい」」

 ある程度年齢をいってからタガが外れたカップルは、時として暴走するのである。
 そんな二人の醜態に呆れたナユタから釘を差されてしまった。
 気をつけよう。

 その後もまぁ怒られることもあったけれども、無事に新大陸へと上陸することが出来た。
 新しい大陸で何が待っているのか、不安なんか気にならないほどのワクワクがオレの心を占めていた。






 

「子連れプログラマーVRRPG脱出計画」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く