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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第5話 ディヴェロップ

 村の人数は20名ほど。
 少し街から離れた新興地に移動してきて、0から村を作ろうと考えた、比較的若い人からなる開拓村だ。
 オレたちがコブリンを退治して村へと入るとすごく歓迎された。

「村から時折来るコブリンにはホトホト困っていたんだ。
 それこそ石などを投げて追い払うぐらいが手一杯で……子供も多いので……
 冒険者様、本当にありがとうございます!」

 幼子を抱いた奥様方も多い。
 戦える男は7・8名。5匹のゴブリンでも苦戦するのだろう。

「パパはこう見えて腕利きの冒険者なのです」

「ええ、ええ! 素晴らしい腕前で驚きました。
 体つきも……失礼ながら冒険者らしくはないのですが、極限まで鍛え抜かれた肉体なのですね!」

 ガリガリですみません。

「すみません冒険者様。お礼と言ってもこの村にはろくな蓄えもなくて……」

「ああ、気にしないでください。あと、私のことはリョウで良いですよ」

「リョウ様、重ね重ねありがとうございます……恥を忍んでお願いがあるのですが……」

 それからは、所謂お使いクエスト件チュートリアルが発生する。
 うん。いいね。こういうスタンダードなの大好物だよ俺は!

「パパはクエストとかあると全部終わらせないと先に進まないんだもんね」

「だって、気持ち悪いじゃん。武器とか防具もそこで手に入る最高のものにしたいじゃないか!」

 ゲームには各個人で好きなように愉しめばいいというスタイルだが、俺はこういうスタイルだ。

「壊れた木柵の修理のために森での木材確保と……」

 使い古された石斧を借りる。
 同時進行で出来そうなものはすべて行う。
 行く方向、内容を吟味して最も効率のいい……

「いや、ちょっとは楽しむか……」

 ついついいつものゲーム攻略方法になっていたことを反省する。
 このゲームをそんな楽しみ方をしたらもったいない気持ちになる。

「パパは殺人的なスケジュールの合間でゲームしてましたからねぇ」

 確かに同僚からはゲームをやってるのは驚かれないが、その量と内容を話すと皆口を揃えて狂ってやがる……って言われるんだよね……

「森での木材採取と食料採取を行きますかぁ」

 まだ日は高い。
 俺は斧と籠をアイテムボックスにしまいこんで出発する。
 村のまとめ役の奥さんから貰った果物をかじりながら森へと歩いていく。

「ナユタ、あの村の柵だけど治すだけじゃなくて強化とかは出来るのかな?」

「ゲーム内容は殆ど理解してないですが、それが出来るぐらいの自由度は在ると思いますよー」

「ふぅん。つまり。出来ることなら村の防備を固めたり、設備を改善したりも……」

「可能なんじゃないかなと、思います。パパ、そのにやけた顔は少し気持ちが悪いですよ」

 ぐふふ。
 夢が広がる。シミュレーション要素も絶対有るはずだ。
 アイツがそこら辺のミニゲームに凝らないはずはない。
 それだけで一生遊べるレベルで作り込むはずだ。

「そういえばこっちの時間で10年って言ったけど、内部で年を取るのか?」

「そこは大丈夫ですパパ。本来はキャラクタービルドから開始されますから、この世界で何年経ってもゲーム内年齢は変わりません。ただ、子供は成長しますよ」

「……子供……育成するとかも?」

「ええ、成人したらキャラクター変更も可能です」

「や、ヤバイな。これ神ゲーの予感……」

 いや、アイツがデザインしたゲームが面白くないわけがない。
 ドキドキワクワクが止まらない。

「意地でもクリアして、改めてじっくりとこのゲームを楽しまなければ……10年なんて短すぎる!!」

「……さらっととんでもないことをいうパパだなー……」

 こうして俺たちは森へと入っていく。
 数分歩くだけで雰囲気はガラリと変わって、木漏れ日から差し込む光、鼻孔をくすぐる森の香り、ペキペキと枝を折り、草花を踏みしめる感覚。
 現実と寸分たがわぬ世界に没入する。

「えーっと、木材はどれ斬ってもいいの?」

 俺は手軽な近くの木に斧を構える。

「それをするとMMORPG化した時に森があっという間に禿げてしまいますから、ポイントが有るはずです。
 基本的に採取、狩猟、採掘などはポイントで時間経過で無限湧きという仕様になっています」

「ほうほう。そこら辺は先を考えるとリアリティばかりを追い求めても仕方ないな。
 逆に考えれば時間さえかければいくらでも資材を産めるわけだし……」

 少し歩くと木材を取るポイントはすぐに見つかる。
 わざとらしく周囲の木々が無い空間に根本がキラキラしている太い木が生えている。

「よーし。やるかー」

 斧を構えて木に向かってフルスイングする。
 きちんとした木の斬り方なんて知らない。
 たぶんプログラムが適当にやってくれるだろ。

「おお、大量!」

「ステータスが多少影響するみたいですね。パパの桁外れなステータスだとこうなるんですね」

 目の前に急にすぐにでも使えそうな木材が積み上げられる。
 木の部分にあったキラキラは消えてしまっている。
 時間経過が必要なんだろう。
 アイテムボックスに木材をしまう。
 木材✕50がアイテム欄に表示される。
 必要な木材は5。十分過ぎる。

「うんうん、いいぞぉいいぞぉ。次は食材採取だ!」

「パパ、その前に敵襲だね」

 ナユタに言われて気がつく、ガサガサと自分たちが通ってきた獣道の脇の草むらが揺れる。
 ぴょんと飛び出したのは可愛らしいふわふわとした……豚鼻の動物。

「パパ、鑑定で敵の情報も見られます」

 鑑定と念じると敵の情報が現れる。

 ツチブタ Lv2

 名前だけか……
 木刀を振り下ろすとまるで岩山両斬波のようにぶしゅりと潰れて消えていった。

「パパ……」

 ナユタも引いているが俺のせいではない。

「し、仕方ない。それに俺が強いほうが目的達成の可能性が高くなるだろ」

「それはそうですね。パパは圧倒的な強さで敵を蹂躙するの好きですもんね」

「まぁな!」

 ドロップアイテムに革で包まれた肉が出たのは面白かった。
 ありがたく食材にさせてもらおう。
 それから木の実やらキノコやらの採取ポイント、さらには木材も追加で回収して、気がつけば必要量の何倍も集めてしまっていた。

「VRでの採取は中毒性が高いな。時間表示とかでカバーしないと社会問題になりそうだ……」

 来た道をマップを頼りに村へと帰還する。
 皆の喜ぶ姿が目に浮かぶぜ。


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