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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第6話 クレイジー

森を出る寸前に出たグリーンキャタピラーを倒したらレベルが上った。

 レベル 3→4 職業:無職
 HP 3400→4500 SP 2250→2580 MP 2250→2610
 ちから 1523→1541
 体力  1525→1538
 速さ  1524→1540
 器用さ 1522→1537
 知力  1527→1540
 運   15000

 うーん。これはまずい。
 いや、まずくはないんだけどね。
 このまま成長するととんでもないものになってしまうよ俺が。
 チートだめ絶対……
 生きて帰るためだ。仕方ない。
 あまりステータスは見ないようにしよう。臭いものには蓋の精神だ。
 自力で強くしたのはいいが、ちょっとデータいじってしまったのは俺の不手際だった。
 こんなことになるなんて当然わかるはずもなかったが、それでも、俺の心の平穏のためだ……

 アイテムボックスに山ほど材料を詰めて村へと帰ってくる。
 初めての村はやはり特別な気持ちになる。帰ってくると言う表現がしっくり来る。

「おお、リョウ様! おかえりなさいませ!」

 物見から知らせを聞いたのが入り口まで出迎えに来てくれた。
 日が少し傾いてきて、村の家々からは夜の炊事の準備の煙が上がっている。
 よく日焼けした肌に落ち着いた茶の髪、日焼けのせいで俺よりも年下34らしいが大人っぽく見えるこの村の代表者バーツさんだ。

「ただいまバーツさん。ここに出していいかな?」

 俺は取ってきた素材の山を村の中央の広場に取り出していく。
 アイテムボックスはNPC達も知っているのが、あまりにも大量に素材やら食材を出すせいで驚きのあまり固まっている。
 このあたりの反応は素晴らしいプログラミングだと感心する。

「パパ、それ以上出すと崩れだす可能性が出てくるよ」

「ああ、そうだね。これだけあれば十分ですかね?」

「……」

「あれ? バーツさーん?」

「はっ! こ、これは、こんな量……あの僅かな時間で?」

「ええ、ちょっと、こういうの得意みたいです」

「ちょっとって……」

 騒ぎを聞きつけてそれぞれの家から男衆が集まってくる。
 奥様たちは夜の支度なんだな。
 よく出来ている。

「バーツさん、せっかくだから今の木柵じゃなくて、もう少し頑丈なものにしたほうが良いんじゃない?」

「そ、そうですね。これだけの材料があれば……」

「やろうぜバーツ! リョウさんがこれだけ準備してくれてるんだ!」

「しょ、食材も凄いぞ! これで冬が越せる!」

 うんうん。喜んでもらえてよかった。
 一人一人の表情とか反応も感心するほど素晴らしい。
 NPCでは有るが、この世界に生きている住人としての役割をしっかりとこなしてくれている。
 なんだかんだ、沙羅も紛うこと無い天才だ。
 それに、那由多の性能はこんなものではない。
 これからもこの世界で俺のことを楽しませてくれるんだろう。

 俺はなんとなく隣りにいるナユタの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「うん? どうしたのパパ?」

「いや……お前は自慢の子供だと思ってな」

「えへへへへー」

 那由多開発のために寝食を惜しまずに缶詰になっていた頃、それでも新作ゲームは全て抑えていて変人としての立場を確立した時期でもあった。
 日本を挙げてのプロジェクトである那由多の開発には、日本中から天才と呼ばれていた人々が集まった。
 1を聞いて10も20も理解するような化物が集められてプロジェクトがうまくいくか不安もあったが、その中でのキーマンが沙羅だった。
 それぞれの折衷案を瞬間瞬間で導き出して、あっという間に不可能と言われたプロジェクトを起動に乗せてしまった。
 最年少所長の噂もあったが、アイツには致命的な欠点がある。
 小さな頃から俺の横でチョロチョロとやっていた影響で、その能力を発揮するためには俺の側でゴロゴロしていないと駄目というふざけているのか? って制約がついていた。
 俺がいないと、だるい、つらい、めんどくさいを連呼するポンコツになるのだ。

「だから余計に、俺は生きて元の世界に帰らないといけない……」

 他のメンバーの困り果てた顔がありありと浮かんでくる。

 持ち帰った木材などは村人の手によって加工されていく。
 俺も手伝うが、ステータス補正のお陰でまるで粘土細工のように次々と木材を加工して皆を驚かせる。
 ああ……こういう製造系スキルあるゲームは沼だから危険だなぁ……
 更には村の外部に堀を作り、これもまるで地面が綿みたいにサクサク掘れる。
 ステータスのせいかそういう仕様かは分からないが、言ってみれば画面をクリックして地面を凹ませている。そんな感じで村の構造を変化させられる。

「やばい、内政楽しい……」

 村の防御値が数値で出ていたらもっといいなぁ……
 ゲーム開発的な視点での改善案なんかも思いついてしまう。
 すでに日が傾いていたが、ついつい面白くて気がついたら真っ赤な夕日が俺を照らしていた。
 村の周囲には立派な木板による防壁、周囲を囲う掘に簡単な跳ね橋構造に木造の正門。
 見違えたと言っていいほど村は立派になった。
 一緒に村作りをしていた男たちも皆いい顔をしている。

「……信じられません! リョウ様!」

「はは、様はよしてください。それに、まだまだ終わりじゃありません。
 もっともっと大きな物を俺は目指してますよ!」


 ……こうして、俺の冒険は最初の村から躓いた。
 設備を拡張すると、新要素が加わり、村人が噂を聞きつけて増えていく、人が増えれば出来ることが増えるためにまた素材集めに奔走する。
 日々変化していく村の様子は麻薬のように俺を興奮させ、現状で開発できる限界に達するまで熱病のように俺を捉えて離さなかった。

 すっかり季節は冬。
 空から雪が振り始めた時、俺は貴重な3ヶ月の時間を浪費したことに気がついた。
 村の人口は255人。
 たぶん内政値とかが設定してあって、一定値を超えると新しい村人が現れて、その時に伸びていたステータスで来る人の職業が変わったり、新しい職業を持った人を使って新しいことが出来るようになって……
 食料量と住民の人数、生活に必要な衣類や燃料、水なども考えて配置していかないと発展しない。
 まさに沼系シミュレーションゲームだ。

 ふと気がつけば、周囲には石造りの立派な城壁と言っていい防護設備、警備隊には連弩と一揃えの武具が支給され、ついこないだは森に根付いていたゴブリンの村を焼き払った。
 これも戦略シミュレーションゲーム様の作りになっており、兵の成長、装備の充実など、やりこみ要素がたっぷり。おかげで一人の犠牲も生まずにゴブリン村制圧クエストに勝利することが出来た。
 けが人が出ればすぐに撤退して数度目の挑戦で勝利したときには得も言われぬ達成感を感じた。

「パパ、黙ってみていたけど。そろそろ先に進まない?」

 ナユタの言葉がなければ、俺はこの村を巨大都市にでもするまでここに嵌っていたかもしれない。
 そして、何より救えないことは、この発展をMMOタイプにした時にどう表現するかを真剣に悩んでしまっていたことだった……


 やりこみ要素はほどほどに……








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