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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第7話 ディパーチャー

「本当に村を出られるのですかリョウさん!?」

「ああ、俺にはやらなければいけないことが有るんだ……」

「隣町との交易路も出来て、これからは商業も力を入れていくところだったのに……」

「なんですと?」

「パパ!」

「うう……公益、貿易はひじょーに心残りだが、もう皆でこの村を発展させることが出来るだろう。
 資材などは倉庫に出来る限り残していく。
 俺の旅が終わったら、また遊びに来る。その時に今と変わっていないでがっかりさせないでくれよ」

「うううう……リョウさん……」

 泣き崩れる村のまとめ役達の肩を抱き、共に別れを惜しむ。
 貿易かぁ……特産品とか作れば……
 いや、この村は豊富な木材と農業が主体だ……
 他の街にもそれぞれ特産品とか生産品の傾向があるはずだよな。
 この村だけの何かがないと公益は難しそうだよなぁ……

 そんなことを考えていたらナユタにつねられた。
 ナユタには何を考えていたかバレバレらしい。

 こうしてオレたちは村の人々に別れを告げて、次の町へと旅立つ。
 真冬に旅立つなんて普通はありえないが、これ以上いると新要素が始まってしまう。
 一度見たらやりきれるところまでやりたくなるのが目に見えいてる。
 アイテムボックスがあれば冬の旅でも快適にこなすことが出来る。
 なんたって、家を持ち歩けばいいんだから。

「ココらへんはもう少し調整だなぁ、容量や重量でバランス取るべきだよな」

 自由度も度が過ぎると面白みがなくなる。
 規制とのバランス取りが重要だ。
 例えばあるクエストを終えると容量や重量を増やせるとかが現実的な手法だろう。

「うーん、基本的に箱庭部分はMOで表現が良いよなぁ……」

「パパ……結局そっちから考えが動いてないんだね。ほんとに仕事とゲームのことに関しては病的に執着心が強いんだから……」

「いやいや、これ凄い可能性を秘めたゲームになるぞ!
 ここで頑張らなくていつ頑張るんだ!」

「わかってるけど、なんかボクを放置されてるみたいでさぁ……」

「いや、ナユタも絶対に助ける!
 那由多を他国に渡すなんて絶対に許さない!」

「……パパ……」

「このゲームの完成には那由多の力が必要なんだ!!」

「……パパ……」

 声のトーンで、同じ言葉でも正反対の性質を持たすことが出来るということを、俺は学んだ。

 冬季の出発には村からも反対の声が大きかったが、俺はもうこれ以上ここで時間を失うわけには行かない。次の町には次の要素があるはずだ!
 それに、飽きてはいないけどちょっとパターン的なのを見つけてしまって消化試合になっていくだろうことも影響する。

「結局パパは自分のゲーム欲で動くんだね」

 何も言い返せない。
 ともかく、俺は準備をしっかりと行い村を出立する。

「さて、ナユタ。肩車してこれを被ってね」

 レインコートをナユタを肩車してもつけられるように改造した。
 あとはステータス任せで走れば、馬をも凌駕する速度での移動が可能だ。
 積雪もそこまで酷くはない。
 この村のあたりは四季がはっきりと分かれているが豪雪地帯というほどではないようだ。
 森を抜けた先にある山岳地帯などは人が埋まるほどの積雪になるそうだ。
 しかし、一面真っ白な雪景色の中を疾走するのも、まるで汽車の旅のような気持ちになれる。
 レインコートには村に来てくれた魔法技師が風よけと水除け、それに汚れ防止の付与をつけてくれている。
 雪によって道が確認できなくても俺とナユタにはシステムとしてのマップがあるのでフィールドならまようことはない。
 早朝に村を出て、すでにかなりの距離を稼いだはずだ。
 次の町は馬で一週間ほどの距離だから、たぶん3日ぐらいでつくだろうと思っている。
 美しい雪景色に当たる雲の向こうの太陽もすっかりと高くなっている。

「そろそろお昼にしようか」

「もう少し先に小川が有るよ」

「そこにしよう」

 ナユタのナビ通り、小さな小川が道沿いに流れている。
 キンキンに冷えた水で顔を洗うとしゃっきりする。
 ゲーム内でも洗顔は思考をクリアにしてくれる。
 この身体になってほとんど疲労を感じていない。
 多分ステータスが酷いからだろうが、村からここまで普通の人間なら信じられない速度、距離を走り続けていたが、息一つ切れることはない。

「常識的なステータスならスタミナ的な物が隠しステータスとして有りそうだよなぁ……」

「そのあたりは一応秘密にするけど、パパがいいなら喋るよ?」

「いや、いい。それは外に出たら沙羅と話すよ」

 沙羅の話を出すとナユタは妙に嬉しそうにする。
 この世界を作ったのは沙羅だから、ナユタにとっては母親的な位置づけらしい。

「敵を封じ込めたボス的なキャラの位置はわかっているのかい?」

 ナユタは俺の言葉にワールドマップを広げる。
 最初の村でももらえるこの世界を映した地図だ。
 東西南北に大きな大陸を有しており、中央が雲におおわれて見えない。
 よくあるパターンだと、この中央が最後の魔王の居城だな。
 今いるのが東にある大陸。
 大小4個の島と言うには巨大な大陸が領土、フラツケルン王国。
 その中でも一番小さな島の端にある村、サイト村に俺達は降り立った。
 次に目指している街は中央の最大の島へと渡る船が出ている町テロンの街だ。

「参考までに残り時間は9年と9ヶ月、117ヶ月ですね」

「わ、わかってるよ……」

 正直、移動した感じ、村での生活を考えると、この世界の規模は凄まじい。
 地球よりも大きいんじゃないかな……
 その各地にあれ程の密度のあるイベントが詰まっているとなると、10年は飛ぶように過ぎてしまう可能性が高い。
 5カ国のクラッキングプログラムと言う名の魔王を倒して、最深部に到達する。
 道のりは、想像以上に険しいのかもしれない……

「パパの料理も上達しましたね」

 『家を取り出して』昼ごはんを作っていたのだが、この3ヶ月で一般的な料理ならだいたい作れるようになった。全てを外食で済ましていた俺が、まさか小麦をねってパンを作る時が訪れるなんてな……
 料理は器用さ、幸運あたりが関連しているのか、我ながら自分で作るととんでもなく美味しい。
 料理自体もミニゲーム的に次の行程を指示してくれるので楽しみながら作ることが出来る。
 今では鼻歌交じりに焼きたてのパンにクリームシチュー、野草のサラダ、野ブタのソテーくらいは作れてしまう。
 料理にはステータスアップ効果もあるのでしっかりと食べておく。
 満腹感も有るが、現実世界では栄養は取れないのでここらへんは実際のゲームでは注意喚起をしないといけないだろう。
 本人のバイタルを正確にモニタリングできるシステムは必須だ。
 今の俺はとんでもなく圧縮された時間の中にいるので、そこら辺の心配はしなくてもいい。

 多少なりともこれから先の予定を考えながら、美味しい昼飯をナユタと楽しむ。
 こういう時間も楽しいものだ。

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