子連れプログラマーVRRPG脱出計画
第9話 タウン
朝日が差し込んでくる。
いつも研究室の硬いソファーに比べれば、いくぶんか柔らかいベッドの中で目を覚ます。
加速した時間の中でVR中睡眠というのはどういう位置づけになるのかは、那由多のほうがデータを取っていてくれるだろう。
ナユタはまだすやすやと眠っているので起こさないように朝食の準備にかかる。
もともと夜間の睡眠時間は平均して3時間位で生活していた俺だが、この世界に来て日が沈んだら眠り、日が昇ったら起きるというリズムになってきたし、きちんと3食食べている。
精神的な満足感をえることで超加速状態の脳への良い刺激になる。そうナユタには言われている。
なので出来る限り風呂にも入るし、ストレスない生活を心がけている。
「ごちそうさまでした」
今日はあっさりと目玉焼きとベーコンにパンだ。
手作りバターがあるだけでパンのグレードがいくつも上がる気がする。
料理のレシピや様々な生活の知恵はナユタが教えてくれる。
いくら機能の殆どを失っているとはいえ、データベースとしてのナユタの能力は凄まじい。
あとは、現状で再現可能かどうかというはなしになってくる。
道具の問題や人手、時間的な問題が関連してくる。
今のところ発酵等の処置を瞬時に終わらせてくれる気配はない。
アイテムボックス内は時間停止状態なのでパンの生地なんかは細かく分けて収納しておけば取り出せばすぐに焼ける。
焼いたのも用意してあるが、焼き立てで止まっていてもその場で焼いたものの方が不思議と美味しいものだ。
食事を取り準備をしたら今日もおのれの足で爆走する。
雪を舞い上げてまだ誰一人足跡をつけてない雪原をかき分けて進む。
リアルな世界でこんな経験がないからわからないけど、少なくともこのVR中の世界ではホワホワの綿の中を突き進んでいるようでかなり楽しい。
個人的には見える範囲の雪を全て剥がして進みたいが、そんなことをしたらどれだけの時間をかければ次の目的地へと着くかわかったもんじゃない。
「それでも舞い上がる雪に反射する太陽、一面の雪原……
いい感じに立ち並ぶ木々、この世界は美しいな……」
雪目対策はきちっと行っている。
あいにくスキーもスノーボードも嗜んだことはないが、この雪原を走り回る行為がこれだけ楽しいのだからきっと楽しいのだろう。
幸運なことに魔物の大軍に襲われたり、猛吹雪に見舞われたりすることもなく、次の目的地テロンへ無事に到着する。
雪原を雪を舞い上がらせながら接近してくる人影、街の衛兵はそれはもう怖かったのだろう。
俺の姿をみて人間だとわかったあとはハーーーーっと深い溜め息をついていた。
「何が来るのかと思ったよ……こんな季節に無謀なことを……」
「東の開拓村サイトから来たリョウってもんだ。街へ入れてほしい」
「おお、今話題のサイト村からか、ってことは特に身分を明らかにする物はないかな?」
「すまないが持ち合わせていない」
「そしたら町役場で登録するか、もしくは冒険者ギルドで登録してもらうことになる」
おお! 出た! 冒険者ギルド!!
「冒険者ギルドで登録するとしよう! これからまだ旅をするつもりだ」
「それなら冒険者ギルドのほうがいい、一人案内をつけさせよう。ところでそっちのお子さんは?」
「ああ、俺の子供のナユタだ。この子はどうしよう。一緒に旅をしているんだが……」
「その年令では冒険者にはなれないが、サポーター登録しておけば12歳になれば冒険者になれる。
男で一つで大変だったな……ああ、すまん。すぐに人を呼ぶから待っていてくれ」
あんまり大変じゃないし、この3ヶ月欲望のまま楽しみまくったとは言いにくい、いい人だった。
それから俺は見習い兵士の青年に案内され冒険者ギルドに到着する。
サイト村から比べるとテロンの街はかなり発達している。
人々が歩く道と馬車などが通る道がきちんと分けられて、石が敷かれているために歩きやすい。
建物もほぼ100%木造建築だった村に比べればしっかりとしたレンガ造りの家も見かける。
大通り沿いは人に溢れ、活気に満ち溢れている。
冒険者ギルドもしっかりとした木造の建物で年季を感じさせる。
「さぁここが冒険者ギルドです。中で説明を受ければすぐに冒険者の証がもらえるはずだ。
一応規則で確認しなくちゃいけないから、ここで待ってる」
「すまないね、すぐに終わらせてくる」
「はは、しっかりと説明を聞いたほうが良いよ」
感じの良い人懐っこい笑顔で青年は俺を中へと送り出してくれる。
両開きの扉を開けて中に入ると、複数の人物の視線が集まるのを感じる。
NPCとはいえ、鑑定は相手に察知されることもあり、無断の鑑定はマナー違反だそうだから余計ないざこざは起こさないように気をつける。
俺はそのまま正面のカウンターに向かう。
テンプレ通り、受付嬢は美人だ。
金髪をトップで結いている。いいね。色気のある少しタレ目がちな瞳に、扇情的な厚めの唇。
清潔感の在る白いシャツの向こう側には、素敵な光景が広がっていることは間違いないボディラインだ。
俺だって男だし、いい年だからそういうところに目が行ってしまうのは仕方無いことだ。
なんとなく心のなかでナユタに弁明してしまう俺は小さな男だ。
「冒険者としての登録をお願いしたい」
「はい、失礼ですがどちらのご出身ですか?」
「東のサイトの村からだ」
「ああ、最近噂の……分かりました。それではこちらの用紙にご記入ください」
渡された少しザラザラとした紙には名前や出身を書く欄と、下に大きな手形が書いてある。
「名前を書いてもらったらこちらの道具に乗せて……はい。手を乗せてください。
少しチクリとしますよ」
変わった機械の上に紙を載せるとその上に手を乗せるように促される。
手形に合わせて手を乗せると、チクッというかピリッと言うかそんな感覚がする。
ナユタも同じ物を書いて、同じ儀式を終えた。
「はい、これがお二人の冒険者としての証となります。
……ナユタさんはサポーター登録としてリョウさんと同行が可能です。
登録が完全に初めてなお二人に簡単に冒険者としての説明をさせていただきます。
まず、冒険者は冒険者ギルドの一員としてその立ち振舞には責任が生じます。
著しい迷惑な行為や、犯罪などに手を染めると冒険者の権利は剥奪される場合があります。
冒険者にはランクがあります。
ナユタさんはサポーターなのでランク外となりますが、同行している間の行動は冒険者となった時の評価に繋がりますので、リョウさんと共に頑張ってください。
お話を戻しますと、冒険者にはランクがあります。
下から銅鉄鋼銀金白金そして金剛鉄。さらに各階級はコモン、とレアに別れていますので14階級に分かれています。
依頼などをこなすのが一番地道な上の階級への道です。
その能力を示すような大会での活躍など、著しい名声なども審査対象になります。
基本的には鋼クラスに上がれれば大体の制約はなくなりますので、ぜひ鋼級を目指してください!
素材の買い取りなどもクエストとは別にポイントになりますし、お金にもなりますので積極的にご利用ください。
冒険者の皆様の活躍が、冒険者ギルドの発達に繋がります。
お二人の未来に加護あらんことを!」
スラスラとまるで歌謡劇のように話終わる受付のお姉さん。
ナユタはパチパチと手を叩いて賞賛する。
その可愛らしい姿に俺もお姉さんも思わず笑みが溢れる。
詳しい決まりごとは本の形で渡される。
周囲の簡単な地図に注意事項が書かれたガイドブックも兼ねているそうだ。
うん、冒険者って気分が盛り上がってくる。
すぐにでもクエストにかかりたいところだったが、まずは衛兵の青年に冒険者の証を見せないと。
「ナユタ、彼を待たせているから早く戻ろう」
「はい、パパ」
ばいばーいとお姉さんと手を振り合っている。やるなナユタ。
ベテラン冒険家に足を引っ掛けられることもなく外に出る。
冒険者証を何かの機械にかざすと街へ入る手続きは終わった。
ICカードみたいな作りのようだ。
これはなくさないようにアイテムボックスの大事な物入れにしまっておこう。
こうして俺は冒険者になった。
いつも研究室の硬いソファーに比べれば、いくぶんか柔らかいベッドの中で目を覚ます。
加速した時間の中でVR中睡眠というのはどういう位置づけになるのかは、那由多のほうがデータを取っていてくれるだろう。
ナユタはまだすやすやと眠っているので起こさないように朝食の準備にかかる。
もともと夜間の睡眠時間は平均して3時間位で生活していた俺だが、この世界に来て日が沈んだら眠り、日が昇ったら起きるというリズムになってきたし、きちんと3食食べている。
精神的な満足感をえることで超加速状態の脳への良い刺激になる。そうナユタには言われている。
なので出来る限り風呂にも入るし、ストレスない生活を心がけている。
「ごちそうさまでした」
今日はあっさりと目玉焼きとベーコンにパンだ。
手作りバターがあるだけでパンのグレードがいくつも上がる気がする。
料理のレシピや様々な生活の知恵はナユタが教えてくれる。
いくら機能の殆どを失っているとはいえ、データベースとしてのナユタの能力は凄まじい。
あとは、現状で再現可能かどうかというはなしになってくる。
道具の問題や人手、時間的な問題が関連してくる。
今のところ発酵等の処置を瞬時に終わらせてくれる気配はない。
アイテムボックス内は時間停止状態なのでパンの生地なんかは細かく分けて収納しておけば取り出せばすぐに焼ける。
焼いたのも用意してあるが、焼き立てで止まっていてもその場で焼いたものの方が不思議と美味しいものだ。
食事を取り準備をしたら今日もおのれの足で爆走する。
雪を舞い上げてまだ誰一人足跡をつけてない雪原をかき分けて進む。
リアルな世界でこんな経験がないからわからないけど、少なくともこのVR中の世界ではホワホワの綿の中を突き進んでいるようでかなり楽しい。
個人的には見える範囲の雪を全て剥がして進みたいが、そんなことをしたらどれだけの時間をかければ次の目的地へと着くかわかったもんじゃない。
「それでも舞い上がる雪に反射する太陽、一面の雪原……
いい感じに立ち並ぶ木々、この世界は美しいな……」
雪目対策はきちっと行っている。
あいにくスキーもスノーボードも嗜んだことはないが、この雪原を走り回る行為がこれだけ楽しいのだからきっと楽しいのだろう。
幸運なことに魔物の大軍に襲われたり、猛吹雪に見舞われたりすることもなく、次の目的地テロンへ無事に到着する。
雪原を雪を舞い上がらせながら接近してくる人影、街の衛兵はそれはもう怖かったのだろう。
俺の姿をみて人間だとわかったあとはハーーーーっと深い溜め息をついていた。
「何が来るのかと思ったよ……こんな季節に無謀なことを……」
「東の開拓村サイトから来たリョウってもんだ。街へ入れてほしい」
「おお、今話題のサイト村からか、ってことは特に身分を明らかにする物はないかな?」
「すまないが持ち合わせていない」
「そしたら町役場で登録するか、もしくは冒険者ギルドで登録してもらうことになる」
おお! 出た! 冒険者ギルド!!
「冒険者ギルドで登録するとしよう! これからまだ旅をするつもりだ」
「それなら冒険者ギルドのほうがいい、一人案内をつけさせよう。ところでそっちのお子さんは?」
「ああ、俺の子供のナユタだ。この子はどうしよう。一緒に旅をしているんだが……」
「その年令では冒険者にはなれないが、サポーター登録しておけば12歳になれば冒険者になれる。
男で一つで大変だったな……ああ、すまん。すぐに人を呼ぶから待っていてくれ」
あんまり大変じゃないし、この3ヶ月欲望のまま楽しみまくったとは言いにくい、いい人だった。
それから俺は見習い兵士の青年に案内され冒険者ギルドに到着する。
サイト村から比べるとテロンの街はかなり発達している。
人々が歩く道と馬車などが通る道がきちんと分けられて、石が敷かれているために歩きやすい。
建物もほぼ100%木造建築だった村に比べればしっかりとしたレンガ造りの家も見かける。
大通り沿いは人に溢れ、活気に満ち溢れている。
冒険者ギルドもしっかりとした木造の建物で年季を感じさせる。
「さぁここが冒険者ギルドです。中で説明を受ければすぐに冒険者の証がもらえるはずだ。
一応規則で確認しなくちゃいけないから、ここで待ってる」
「すまないね、すぐに終わらせてくる」
「はは、しっかりと説明を聞いたほうが良いよ」
感じの良い人懐っこい笑顔で青年は俺を中へと送り出してくれる。
両開きの扉を開けて中に入ると、複数の人物の視線が集まるのを感じる。
NPCとはいえ、鑑定は相手に察知されることもあり、無断の鑑定はマナー違反だそうだから余計ないざこざは起こさないように気をつける。
俺はそのまま正面のカウンターに向かう。
テンプレ通り、受付嬢は美人だ。
金髪をトップで結いている。いいね。色気のある少しタレ目がちな瞳に、扇情的な厚めの唇。
清潔感の在る白いシャツの向こう側には、素敵な光景が広がっていることは間違いないボディラインだ。
俺だって男だし、いい年だからそういうところに目が行ってしまうのは仕方無いことだ。
なんとなく心のなかでナユタに弁明してしまう俺は小さな男だ。
「冒険者としての登録をお願いしたい」
「はい、失礼ですがどちらのご出身ですか?」
「東のサイトの村からだ」
「ああ、最近噂の……分かりました。それではこちらの用紙にご記入ください」
渡された少しザラザラとした紙には名前や出身を書く欄と、下に大きな手形が書いてある。
「名前を書いてもらったらこちらの道具に乗せて……はい。手を乗せてください。
少しチクリとしますよ」
変わった機械の上に紙を載せるとその上に手を乗せるように促される。
手形に合わせて手を乗せると、チクッというかピリッと言うかそんな感覚がする。
ナユタも同じ物を書いて、同じ儀式を終えた。
「はい、これがお二人の冒険者としての証となります。
……ナユタさんはサポーター登録としてリョウさんと同行が可能です。
登録が完全に初めてなお二人に簡単に冒険者としての説明をさせていただきます。
まず、冒険者は冒険者ギルドの一員としてその立ち振舞には責任が生じます。
著しい迷惑な行為や、犯罪などに手を染めると冒険者の権利は剥奪される場合があります。
冒険者にはランクがあります。
ナユタさんはサポーターなのでランク外となりますが、同行している間の行動は冒険者となった時の評価に繋がりますので、リョウさんと共に頑張ってください。
お話を戻しますと、冒険者にはランクがあります。
下から銅鉄鋼銀金白金そして金剛鉄。さらに各階級はコモン、とレアに別れていますので14階級に分かれています。
依頼などをこなすのが一番地道な上の階級への道です。
その能力を示すような大会での活躍など、著しい名声なども審査対象になります。
基本的には鋼クラスに上がれれば大体の制約はなくなりますので、ぜひ鋼級を目指してください!
素材の買い取りなどもクエストとは別にポイントになりますし、お金にもなりますので積極的にご利用ください。
冒険者の皆様の活躍が、冒険者ギルドの発達に繋がります。
お二人の未来に加護あらんことを!」
スラスラとまるで歌謡劇のように話終わる受付のお姉さん。
ナユタはパチパチと手を叩いて賞賛する。
その可愛らしい姿に俺もお姉さんも思わず笑みが溢れる。
詳しい決まりごとは本の形で渡される。
周囲の簡単な地図に注意事項が書かれたガイドブックも兼ねているそうだ。
うん、冒険者って気分が盛り上がってくる。
すぐにでもクエストにかかりたいところだったが、まずは衛兵の青年に冒険者の証を見せないと。
「ナユタ、彼を待たせているから早く戻ろう」
「はい、パパ」
ばいばーいとお姉さんと手を振り合っている。やるなナユタ。
ベテラン冒険家に足を引っ掛けられることもなく外に出る。
冒険者証を何かの機械にかざすと街へ入る手続きは終わった。
ICカードみたいな作りのようだ。
これはなくさないようにアイテムボックスの大事な物入れにしまっておこう。
こうして俺は冒険者になった。
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