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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第14話 フラツケルン王国

 テロンの街から内海を船で渡りフラツケルン王国最大の島に上陸する。
 海上の風景も素晴らしく、船の再現度もリアルと大差がない。
 結果として、俺は船酔いをした。
 表で風にあたっていれば大丈夫だろうと高をくくって満腹で乗ったのが失敗だった。
 大型の船なので軽いものだったが、これは実際のゲーム化においても考慮しないといけないだろう。
 ゲームして船酔いになって体調不良なんて、欠陥品もいいところだ。

「船酔いは状態異常と言う判定じゃないみたいですね……回復魔法も無効みたいですごめんなさい」

「ナユタが謝ることじゃないだろ。なんでもやってみなくちゃわからないさ……」

 地上に上がってだいぶましになったしね。

「さすが王都がある本島の街はさらに規模が大きいね」

「ここはチルベの街といってこの王国の南の2つの島からの入口として利用されていますからね」

 なんとなくナユタを肩車しながら街を散策する。
 新しい街へ来たらまずは冒険者ギルドへと行くのが冒険者としての勤めのようだ。
 冒険者がどのギルドの周囲にいるのかをギルド側が把握するための処置だそうだ。
 テロンの街よりもさらに一回りは大きい立派な建物の冒険者ギルドの扉を開ける。
 子供を肩車して入った俺達を少し珍しそうに見る人もいたが、子連れの冒険者自体はいないこともないし、いろいろな事情がある場合もある。
 冒険者は必要以上にお互いの素性に踏み入らない、かっこいい関係を大事にしている。

「テロンの街から来ました。この後は王都へと向かう予定です」

「チルベの街へようこそ! レア鋼クラスでリョウ様ですね。
 登録させていただきました。もしよければ当ギルドでも幾つかクエストをこなしていただけると助かります! それでは、よい冒険を」

 控えめだが丁寧で好感を持てる受付嬢に進められたので、さっとクエストを覗いていく。
 この状況でそれを咎めるほどナユタは懐は狭くない。

 ……と、思う。

「ナユタ、いくつかクエストやったら王都へ向かおう。な?」

「わかりやすく擦り寄らなくてもいいですよ。ただ、王都にはたくさんの職業ギルドがありますよ?」

 ぬぐぐ、この子。完全に俺の手綱の操り方を学んできている……
 ざっと見た感じ、すぐにこなせそうなのは西の村への食料配達クエスト。
 俺にはアイテムボックスがあるからすぐに終わるだろう。

「ナユタ、丁度王都の方向だしこのクエストを移動がてら受けていこう」

「……珍しく合理的ですね。そのクエストならアイテムボックスある我々ならすぐですね」

 すこし子供の機嫌が戻った。お父さんは嬉しい。

「すみません。こちらのクエストを受けようと思うんだけど……」

「はい。ああ、丁度リョウ様が受けてくださってメンバーが揃います。
 早速ありがとうございます。詳しくはクエストカードに書かれているバインツ商会で伺ってください。
 このクエストは村まで付けば商会側が報告を入れるタイプなのでこのギルドへ戻らなくても大丈夫です」

 なんとなく選んだけど、ほんとにちょうどいいクエストだった。
 一方通行でそのまま王都へと向かえる。途中までの道を他の人たちと馬車などで移動できる。
 どうやら他の冒険者も護衛クエストを受けているそうだ。
 まずはその商会へと向かう。

 大通りの両側には露天も出している大きな店が多く並んでいる。
 たくさんの人々が行き交い、店の人達の威勢のいい声が響く。
 交易の中心ちの町らしい賑わいと言っていいだろう。
 思わず俺もナユタも美味しそうな匂いのする出店から棒状のパンのようなお菓子を買ってしまうくらいには浮ついた気分になっている。

「結構いけるな、これ」

「はい、食事に関しては所謂西洋レベルのボソボソのパンとかにすると辛いので食事全般現代レベルで楽しめるようになっています」

「時々ナユタは営業みたいになるな……」

「一応開発者サイドですから、アピールする点はアピールいたします!」

 うんうん、子供も機嫌が良くなっている。
 これはいい流れだ。

 そうこう歩いていると依頼主であるバインツ商会の建物にたどり着く。
 外から中を見る感じ生活雑貨を全般的に扱っている万家といった雰囲気だ。

「貴方が冒険者ギルドの方ですね。はじめましてバインツ商会チルバ店店長をしていますラークと申します」

「冒険者をしておりますリョウと言います。こちらは一緒に旅をしているナユタです」

「これは利発そうなお子さんだ。将来は冒険者として名を上げそうですな!」

 小太りな人懐っこい、商人らしい中年の男性がクエストの依頼主だそうだ。

「なんと! アイテムボックスをお持ちですと!
 それでしたら往復の過程が一度で済みます!! 
 これは有り難い! きちんと追加報酬は払わせていただきます!」

 アイテムボックスの話をしたらラークさんはとても喜んでくれた。
 そのまま倉庫でアイテムボックス内へ次の馬車へ積む予定だった荷物を取り込んでしまう。

「いやー、ほんとに有り難い。間もなくもう一組の冒険者も来ます。
 きっと彼らも喜びますよ!」

 ラークさんはとってもご機嫌だ。
 別に自分の能力ってわけでもないが、人に喜んでもらえるのは嬉しい。
 仕事ではあんまりここまで表現してくれる人は少ないからなぁ……あれ、なんか泣きたくなってきたぞ。

「ラークさんすみません。遅れました?」

「いやいや、約束の時間前ですよ。
 実は嬉しいお知らせがあって……」

 それから俺達の紹介と一緒に物資運搬が一度で終わることを告げると相手のパーティからも歓声が上がる。

「おお、あの行程を一度行くだけであの報酬。リョウさんって言ったっけ?
 今度一杯奢らせてくれ!」

 相手のパーティのリーダー、俺とは違って筋骨隆々。歴戦の戦士と言った感じだ。
 盗賊風の若い男、魔法使い風の女性、優しそうな僧侶の男性、それに弓を抱えた……エルフの女性だ!

 俺はバレないように興奮していた。



 

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