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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第23話 北へ

 宿はすぐに見つかった。
 と、言うよりは一箇所しか空いてなかった。

「これも実際のゲーム化では要調整だな……」

「で、でもリアリティ……」

「あのなぁ、実際には数万人、いや、もしかしたら数十万、数百万人プレイするかもしれないんだぞ」

「でもー……」

「いやー、このゲームは素晴らしい出来だからなー本当によく出来ている」

「えっ、そう? リョウにそんな褒められると照れるなー、えへへー」

 ちょろい。

「さて、ナユタ、どうしよっか?」

「すぐにでも北に攻めて、その後ゆっくり王都のイベントやってください
 こんなゴタゴタの中でわざわざいらぬ苦労してイベントをこなしたいのなら勝手にどうぞ」

「ぬぐっ……」

 議論をするつもりが答えを提示された。
 しかも反論の余地もない正論。
 くっそ、ギャフンと言わされてサラが隣で笑いを堪えてやがる。

「……ナユタ、北にこのまま攻め入って魔王とやらがいたとする。
 勝てるのか?」

「随分とメタい質問ですが、答えていいんですか?」

「ああ、俺は早いとここのゲームをデスゲームではなく楽しみたい!
 そのためにもさっさとクリアすることにした。
 よく考えたらクエストとかこのステータスでこなすと、新たにやる時の楽しみがなくなる」

 ちょっとさっきの切り返しが悔しかったので言い返してみた。

「さっきのがよっぽど悔しかったんですね。まぁ、結論から言えば勝てます。
 実はこないだのコンソールが思った以上に役立ちまして、敵の戦力はだいたい把握してます。
 安全マージンを十分に取った上で、敗北して私達が死ぬ可能性は低いです。
 ママの加入は非常に大きいですね」

「サラがいないとどんくらい?」

「五分五分ですね。やはり多数に弱いのは致命的です」

「サラだけだったら?」

「変なところで対抗心持たないでください……7割ってとこです」

「プーーーッ」

 とうとうサラが吹き出した。
 ここで殴ったらただの八つ当たり、ぐっと堪える。

「……というわけで、もう今晩行くからなサラ……」

「ふ、ファイ……プクク……いだい!!」

 こうして最初の魔王討伐はバタバタと決定する。
 警戒されている昼間は難しい、闇夜に紛れて王都を脱出して、魔王を、那由多にちょっかいをだした馬鹿野郎を退治する。

 そうと決まればこの街で整えられる準備は整える。
 さすがの王都には武器も防具も充実していた。
 店が混みすぎていたのが難点だが、夜までにはなんとか準備を終えることが出来た。

「はー、くったくた……」

「ああ、流石に疲れた……」

 食事もとてもどこも入れない、ウサギの尻尾との約束もまた後日店を押さえたら連絡するということで延期となった。
 しかたなく出店で買ったサンドイッチを胃に放り込む。

「ほんとに今晩行くのー?」

「出来ることはさっさとこなしていくタイプなの知ってるだろ、やると決めたからこそ道場の前とか素通りできたんだ、ホントだったらあの職とあのスキルと……」

「パパ、男の愚痴はみっともないですよ」

「最近可愛げがないなナユタ……」

「ある程度の時間になったら起こします。身体を休めてください」

「……わかりやすい飴と鞭だが、お言葉に甘えるとする。
 ほら、サラ、さっさと寝とけ、外の沙羅みたいに寝起き悪かったら蹴っ飛ばすからな」

「はーい……」


「パパ、いい頃合いです」

「ん、ありがとう。ナユタ……サラは……」

「起こすだけ無駄なので起こしてません。パパに任せますよ」

「だよな……はー……」

 沙羅、サラの寝起きはとんでもなく悪い。
 アイツを起こせるのは……俺ぐらいだ……長年の付き合いでやっと見つけた呪文がある。

 サラのベッドの前に立つと相変わらず寝相が悪い、布団は蹴っ飛ばして、その……衣服も……乱れて……豊かな……いかんいかん、あとで殺される。 
 ババッと胸元などを直して魔法の言葉を耳元で囁く。

「サラ……PCのハードディスクがカチカチ言ってるが止めなくて大丈夫か?」

「だいじょばない!!」

 ベッドの上に飛び上がって起きる。
 100発100中飛び起きる。

「……はれ?」

「おはようサラ、さぁ行くぞ魔王退治だ」

「あ、うん」

 一度目が覚めると結構シャンとする。それだけサラにとって衝撃的な一言なんだろう。

「サラ、魔法で姿を消せるよな」

「うん、出来るよ」

 サラが魔法を唱えるとまるで闇夜に身体が馴染むようにぼやけていく。
 そのまま街の影に紛れて城壁部分までたどり着く。

「パパ城壁を超えると魔法探知に引っかかっちゃうみたい」

「ほほう、さすがは王都ですな」

「このまま壁沿いに進むと詰め所があるからそこから外へと行けそうです」

「さすが俺の子供だ」

 ナユタの言う通りしばらくすると兵士たちの詰め所がある。
 流石に深夜の時間そこまでの人数はいないが、内部では多くの人の反応がある。

「静かに抜けさしてもらおう」

 スニーク状態でも接触などをしてしまうと感知される。
 詰め所の扉はちょうどよく開いているので周囲に気を配りながらそーっとお邪魔する。
 詰め所ではもうすぐ交代の兵士が眠そうに準備をしている。
 あまり広くないのであちらが大きく動くと触れ合ってしまいそうになるために、タイミングを見計らって素早く、それでも慌てず移動する。
 走ってしまえば当然スニーク状態は解除だ。

「今日は腹の調子がわりーなー、よいしょっと」

 腰を浮かせる兵士。だめだ、位置的に俺達に……

 ブヒッ!

「うわ、くっせ! ふざけんなよ」

「いやー悪い悪い!」

 無意識に背後から斬りつけたくなったがぐっと我慢した。
 詰め所を火の海に変えてしまいそうなサラも睨みつけて、なんとか外へと早足で近くの草村へと移動する。

「うおえーーーー」

 何を喰ったらあんな屁が出せるのか……

「リョウ、アイツ殺していい?」

「ダメだ、我慢しろ!」

「ママヤッチャエ」

「ナユタまで、ダメだ。ホラさっさと行くぞ!
 いつも通り、夜明け前に終わらせる」

 すさまじい匂いを我慢しながら、俺達は一路魔王の待つ北へと進路を取る。
 

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