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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第29話 帰還と混乱

 王都へ戻り兵士に帰還を伝えると何やら大騒ぎになった。
 すぐにギルドの職員がやってきて本人確認が行われた。

「間違いなく届け出のあった3人です……よかったぁ……」

 周囲の兵士たちにも安堵のため息が漏れる。
 どうやら自分たちが出発してからしばらくするとより多くの魔物が徘徊するようになり、心配されていたようだった。

「ようやく魔物の数が減ってきたからもしかしたら本当にと一縷の望みをかけていたが、いや、無事に帰ってきてくれてよかった」

「すみませんご心配をかけて、詳しい話はギルドでお話しますので」

「おお、そうだな。ただ今はゆっくりと体を休めるといい。
 ギルドへは明日で構わない」

「すみません」

 こういう心遣いができるNPCプログラムは素晴らしいと思う。
 一人ひとりにしっかりとした人間性を設定していることによる行動だ。
 沙羅の設定厨魂が遺憾なく発揮されている。
 そのお陰で街に一人ひとりの人間がいることが実現している。
 これはとんでもないことだ。

「沙羅は昔からコツコツ書き溜めていたからなぁ……」

「小学生低学年からコツコツと、途中からデジタルに媒体を移してその人数は数千人、数万人と膨れ上がっていった。来る日も来る日も時間があれば設定を考える日々を送った結果、今では自然とその人物の人生が浮かび上がってくるのであった……」

「もうゲームみたいな特殊能力になってますねママの場合」

 ギルド職員の方々の優しさに甘えて今日はゆっくりと宿で休むことにする。
 まだ夕方前だが、ゆっくりと風呂に入って食事や酒を楽しんでも罰は当たるまい。
 金は有るんだよ金は!
 いままではなんとなく後ろめたかったけど、ダンジョンも制覇して大量の財宝をゲットしたからね!

「なんかパパが悪代官みたいな顔になってます……」

「ほっときなさいナユタ、ああいう顔してるリョウはろくなこと考えていないんだから」

 散々な言われようだ。
 こいつらはホッておこうと心に誓って宿屋へ向かうと、宿屋の方々からも大層心配されており、温かな食事も用意してもらえたので、二人に対する恨みつらみもいつの間にか晴れていた。

「ふー、お腹いっぱ~い」

「いやー、うまかったな」

「二人共食べ過ぎですよー」

「いやー、ついつい出されると食べなきゃという気持ちに……」

「一つ大きな山を超えたし、お祝いということでここはひとつ」

「パパはそう言いながらワインを注がないでくださいよ。ママも私もじゃないですよ、全く大人たちは……明日のギルドの聴取に遅刻しないでくださいね。先に寝ます!」

「おやすみー」

「おやすみーナユタ」

 ブツブツ言いながらもこういうことを許してくれるのがナユタの優しいところだ。

「乾杯~」

「かんぱーい。なんかリョウとゆっくり飲むなんて久し振りだねー」

だとお互いに忙しいからな……」

「どうですかこの世界は?」

「正直、楽しいな。ワクワクしてるよ毎日」

「そっかぁ……ホントは二人で作りたかったなぁ……」

「そうだな。色んなとこがツメが甘いからな、戻ったら直すとこは山ほどあるぞ」

 オレは今の段階で訂正する箇所をザーッと表示して見せてやる、サラも超一流のプログラマーでもあるのでそれだけでその作業量が想像できてしまう。

「うっわ……今見るのは止めましょう。お酒の味がわからなくなる」

「ははは、たしかにな!」

「それにしても、リョウはゲームの中でも真面目なんだね」

「うーん、これはもう仕方ないよなぁ、今回も事故ではあるけど仕事の一環だと思ってやっとけば後で楽になるじゃないか」

「そっかぁ……そうだよねぇ……いつの日かリョウが仕事を忘れて夢中になれるゲームを作れるといいなぁー」

「その点から行けば、このゲームはかなりいい点に行ってると思うぞ!
 向こうに戻ったらあっちの沙羅と一緒にコレをいじるのが楽しみで仕方ないよ」

「……そうだね。私も楽しみ……さっ! せっかくこっちは何もない夜なんだ! 飲もう飲もう!」

「おーう!!」

「向こうだとこんなにゆっくりとリョウと飲むことなんてないよねー……」

「そもそも二人でってシチュエーションが皆無だな。
 まぁ、スタッフも酒は余り好きじゃないやつが多いから食事になって、そして仕事の話になっちゃうからなら職場でって成るやつな」

「あーあるあるだねぇ」

「こっちだと酔いの気持ちよさだけ残したりできるかなぁ……これって危ないんじゃない?」

「うーん、確かに、薬物の快感だけとか、電子ドラッグ的な使い方は考える人出るよね」

「あとは、あっち方面がねぇ……」

「あー……うーん……たしかにねぇ……そこら辺の規制はなんでも出来るけどね」

「ついでに今現在の規制は?」

「ど、どうなんだろうねぇ~?」

「な、なんだよ……」

「ためして……みる……?」

「な……!? ちょっ! おま!!」

「うっそだよースケベリョウ!!」

 ……そう、冗談のはずだったのだ……

 朝目を覚ますと、柔らかな感触に抱かれている。
 うっすらと昨日の記憶が、いや、嘘つきました。
 バッチリと昨日のめくるめく情事が思い出される。
 まさか、沙羅と、いや沙羅ではないんだがサラと、あれ? なんだこれ、この胸に湧く沙羅への罪悪感は何だ?
 いや、まて、今オレを抱きしめて離さないサラは、思考パターンとかは全て沙羅をトレースしているはずなんだから、現実世界でも行為ってことに成る可能性があって、その機会がなかっただけってことだよな。うん。そうだよ。何もおかしくない。

「そういうわけには、行かないんだよなぁ……」

 後悔したくない後悔を胸に、オレは身体を起こす。
 どうしたもんか……












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