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子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第30話 心の置き場

「うん……リョウ? おはよ」

 オレに抱きついたままサラが目を開ける。
 離れる気配がないどころか、その手を首に回してきてキスをせがんで来る。

「お、おはようサラ。と、とりあえず服を着ないかい?
 今日はギルドに行かなければならないし……」

「えー……じゃぁおはようのキスくらいはいいじゃん」

 豊かな双丘が身体に押し付けられ顔を引き寄せられる。
 この仕草に抵抗できる男がいるだろうか? いや、いない。

 予定と異なる濃厚なキスを交わして、あわよくばオレを押し倒そうとしていたサラを上手いこと躱して洗面台に向かう。

「な、何が起きたんだ……サラってあんな性格だったか?」

「……パパ、ママの罠にハマったんだね」

「ナユタ!? 何か知っているのか?」

「僕からは何も言えない。ただ、ママの行動は現実のママがしたかった行動なのは間違いないよ……」

「……キャラ変わってない?」

「本当は今のがママの求めている姿、現実ではいろいろあるから我慢してたんだよ。
 パパがにぶちんのにぶちんなのがいけないんだと思うよ……」

 いきなりそんなことをカミングアウトされても……
 女心は……謎すぎる……

 それからのサラは、まるでタガが取れたように二人の時はオレにベッタリになってしまった。
 第三者がいる時は体裁を整えてくれるから、オレも、ついついその変化を心地よく受け止めてしまっている。

「ギルドには色々と迷惑をかけてしまったようで申し訳ない。
 大量の魔物に驚いて慎重に慎重を重ねて行動した事が結果として我々の足跡を消してしまったのですね」

 息を吐くように嘘を言えなければ上司として国とのやり取りなんかは出来ないのさ。

「いやいや、それでしたら逆に見事な手並みだと感心します」

 今はギルド長に街を出てからの行動について話している。
 取り調べというわけではなくて、本当に善意からの情報収取という感じだ。

「そして、敵の数が減ったことに乗じて街へと戻ってこれた。と……
 ふむ、いったい何が原因で突然魔物が減ったのか……」

「見間違えかもしれませんが、一度不思議なものを見ました。
 そのダンジョンの入口付近に突然パーティが現れ、次の瞬間には消え失せたのです。
 もしかしたら姿を隠す道具でも使っていたのかもしれません」

「そうすると、野良パーティが問題を解決していった可能性もあるのか……
 もしくは別の国からの密使の可能性も……いや、貴重な情報だ。ありがとう」

 姿を見えにくくする魔道具は普通に存在するから、この話も信憑性を持つだろう。

 その後、あまりに何も成果なしだと逆に疑わしいので逃げながらも狩りをしたということで幾つかの素材を納品して無事にサラのギルドランクを上げることに成功した。

「なんにせよ、ここでやることは終わった。
 次の魔王の居場所を探さないとね」

「まだ情報不足ですから、普通に隣国へと渡りましょうか」

「その間にナユタの権限が回復すれば敵の居場所もわかるでしょ。リョウとの旅もこれからは楽しみだから~♪」

 距離が近い、悪い気はしないけど、心の何処かで現実の沙羅への負い目ががががが……
 まっ、やることやっといてそんなことにガタガタ言うのは男がすたるってもんだ。
 どうなったって構わないから、向こうに戻ったら土下座して全部話して、オレの想いを伝えよう。
 このフラグみたいな静かな決意が、オレをこの先何度も助けてくれることになる。

「フラッツケルンから行ける国としては、ベリンザー帝国かポセトニア諸国、どっちかですね」

「帝国はきっと沙羅の好きな政争と貴族と奴隷とってドロドロなんだろ?」

「せいかーい。さっすがリョウ!」

「王位継承権の低いイケメンが優しくて有能で上位のはガサツで乱暴で最終的には優秀な参謀がついていい国になりました」

「な、なんなの? 見たのね? ネタ帳読んだのね?」

「いや、ママの趣味全開じゃないですか……」

「というわけで。ポセトニア諸国へ行こう」

「と思いまして船の手配を頼んであります」

「ナユタもリョウも酷い……」

 ようやく最初の魔王、敵を倒した。
 次の敵を探して新しい大陸へと向かうことにする。
 残りは4体の魔王かなにか。

「ナユタ、権限回復は後どれくらい?」

「一ヶ月と27日を予定してます」

「船で移動でポセトニアまではどれくらい?」

「二週間だそうです」

「二週間か……移動してギルドに登録して足場ができる頃には権限の一部が回復するか……」

「一応リソースは索敵に回そうと思うので、この世界のどこに侵入者が固定されているかを探る予定です」

「それが一番だろうね」

「それじゃぁリョウ、ナユタ、ポセトニア諸国へ行く準備をしましょう」

「船の時間は本日16:00です。それまでに各種手続き、買い物を終えましょう」

 サラはオレと買い物したいとごねたが、ナユタを一人で活かせるわけにも行かないために各方面への手続きをお願いして、オレが買い出しを担当する事にした。

「……2週間の船旅って大概だよな……食事とかどうなってるんだ?」

「そこは魔導豪華客船で行くことになります。外界はかなりの規模の船じゃないと危険という設定になってます」

「ああ、なるほど。それは素晴らしい」

「陸路の場合は魔導列車を利用することになるので、移動のストレスは少なくて済みます。
 太古からのアーティファクトという位置づけになっております」

「移動も数週間じっとしてたらアレだからな、実際にはカットでいいし。
 四季のズレとかってどうなるんだ?」

「ワールドクロックとか適当な設定で駄目かなぁ、ゲームっぽさはあってもいいと思うんだ。
 現実から逃げたくてゲームしてるのにあまりにゲームが現実してても……」

「おっとサラ、その話はそこら辺にしておくんだ」

 こうして次の国への準備は着々と進んでいくのであった。




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