魂喰のカイト

こう・くろーど

23話 王都のダンジョン


 リディルにステーキについてみっちりと語った後日、俺は王都ダンジョンの前まで来ていた。

 ダンジョンの入口、洞窟となっているその場所の手前には多くの人が集まっている。
 その目的は、攻略のための簡易的なパーティを組むことにある。
 ダンジョンは魔物が多く出没して危険のため、大体3、4人で1つのパーティを作って活動するのだ。
 そうすることによって、魔物との戦闘も楽になるし、不意打ちにもあいづらくなる。
 生存率はもちろん、成果も底上げすることができるのだ。

 ここにはダンジョンに挑む人に向けた食料などを売り出す商人も集まっている。
 大多数の冒険者は2、3日ダンジョンにこもって狩りをするため、どうしても携帯食が必要になる。
 そのため、手軽に補給できるという点で需要が高いのだ。
 おそらく儲かっているのだろう。
 商人もホクホク顔のものが多い。

 さて、俺は1人で潜ることにするかな。
 俺の場合は日帰りだから、ダンジョンの中にこもって活動する人とは組むことができない。
 それに、防具はおろか剣すら持っていない俺と組む酔狂者はいないだろう。

 というか、そもそもこれからダンジョンに入る人間だとすら思われていないかもしれない。
 一般市民用の服に手ぶらなのだ。
 とても魔物と戦う人間には見えない。

 まあ、組む組まないはどっちでもいい。
 1人で潜ってみてもなんとかなるだろう。
 そこまで深い場所にはいかないつもりだし。

 そうして、1人でダンジョンに足を踏み入れる。
 洞窟だと言うのに相変わらず道は整えられており、ほぼ同じ間隔で設置されているランタンが辺りの光量を明るく保っていた。
 反面、整備されていない壁はゴツゴツしたままで、そのことが対比として、ここが人の手が入った洞窟だということを改めて認識させる。

 とりあえず前行った分岐のところまで行ってみるか。
 魔物も先に入った冒険者によって狩られたのかここらには全くいないしな。
 分かれ道の先なら冒険者の数も半々に分かれるし、少しくらいは残っているだろう。 

 そう思い、整えられた平たい道を進んで行く。
 今回はルティアがいないため、少し早歩きだ。
 そのためか、思ったより早く分岐まで来ることができた。

 その分かれ道は以前来たときと変わらず、大した違いもない道が2つあるだけだった。
 右か左。
 どちらに進むかを決めるために一度立ち止まる。

 前回は確かここの道を左に進んだんだっけ。
 じゃあ今回は右に進んでみようかな。
 どうせなら行ったことのない場所に行ってみたい。

 それに、今日は時間もあるし、急ぐわけでもない。
 行き止まりにあたっても引き返せばいいしな。
 よし、右に進もう。

 右の道を選び、歩く。
 しばらく進むとバサバサという何かが羽ばたく音が聞こえてきた。
 魔物が出たと判断し、目を凝らして前方を確認する。

 ――ガーゴイルか?
 全身は岩のような肌で覆われており、とても物理攻撃が効きそうな見た目じゃない。
 以前ルティアと潜るとき、冒険者から聞いていた情報とぴったりだ。

《魔物:ガーゴイル 岩の肌をもつ石像のような魔物。物理に強く、魔法に弱い》

 鑑定を発動してみた。
 どうやら正解だったようだな。

 さて、魂喰ソウルイーターで吸収してみようかな。
 ひとまず瀕死にさせないといけないんだったよな。
 殺してしまわないように注意しないと。

 暗黒魔法を行使し、小さな黒い球を発生させる。
 込めた魔力はオークを爆散させたものと比べると1/1000程度だ。
 これならちょうど良いくらいだろう。

 発射用の魔力を込める。
 これもあまり速度が出ないように細心の注意を払う。
 さすがに目に見えない速さを出すと嫌でも威力が出てしまうからな。

 よし、準備完了だ。
 距離は100メートル近く離れているが……まあ当てられると思う。
 ガーゴイルは俺の存在に気づいておらず、無防備な状態だ。
 それに俺の視力と暗黒魔法のスキルがあれば十分だろう。 

 そのまま右腕を前に突き出し、構築した魔法を前方に放つ。
 放たれた魔法はビュンという風切り音を鳴らし、まっすぐにガーゴイルへと向かった。
 そして、左腕に命中。
 ガーゴイルの左腕は吹き飛んでしまった。
 さらに、魔法を受けた反動で体勢を崩し、地に落ちてしまう。

 よし、ここで魂喰ソウルイーターだな。
 結構離れてるけど届くかな?
 ま、無理だったらガーゴイルのところまで走ればいいか。
 全速力で行けば逃げられることも無いだろう。

 魂喰ソウルイーターを起動させる。
 直後、俺が少しだけ身体が軽くなる感覚を覚えたと同時に、ガーゴイルはそのまま動かなくなってしまった。
 無事に成功したということだろう。

 魂喰ソウルイーターってこんなに遠くまで届くんだな。
 使い勝手まで良いようだ。

 あ、そうだ。
 ステータスはどうなったかな。
 確認してみるか。



名 前:イルム
種 族:半神人デミゴッド
称 号:神喰ゴッドイーター
スキル:【魂喰ソウルイーター
    【絶対悪アンラマンユ
      ∟【威圧】
      ∟【黒翼】
      ∟【黒霧】
      ∟【暗黒魔法】
        ∟【固有魔法:暗黒剣】
        ∟【固有魔法:暗黒結界】
     【神聖魔法】
     【爆炎魔法】
     【時空魔法】
     【鑑定】
     【叡智】
     【岩肌】NEW
     【武器創造LV1→3】UP
     【剣術LV9】
     【二刀流LV4】 
     【火魔法LV10】
     【水魔法LV7】
     【雷魔法LV7→8】UP
     【土魔法LV7→9】UP
     【氷魔法LV9】
     【光魔法LV10】
     【闇魔法LV10】


 おお、少しだけど上がったな。
 武器創造は多分これまでの作成で上がったんだろう。
 だからガーゴイルから手に入れたのは岩肌、雷魔法、土魔法だな。

 雷魔法と土魔法はレベル上昇による単純な強化だろう。
 だけど、岩肌は初めて見るな。
 鑑定してみるか。

《スキル:岩肌 物理攻撃に強くなる》

 うん、そのまんまガーゴイルの特性だな。
 防御が強化できたみたいだ。

 ガーゴイル1匹だけでも結構強化されるな。
 この調子ならどんどん強くなれそうだ。

 よし、もっと吸収してみるか。
 

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