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魂喰のカイト

こう・くろーど

9話 初めてのギフト

 
 ルティアの魔法と俺の武器創造クリエイトウェポンの確認が終わったので再び王都に戻ってきていた。
 空を見上げると既に日は沈みかけていて、真っ赤な夕焼けがうかがえる。

「そういえばイルムさんはどこに泊まるつもりなんですか?」

 ルティアのその言葉にハッとする。
 宿のことなんて全く考えてなかった。

「完全に忘れてた。俺、まだ宿をとってないな」
「あれ? そうだったんですか?」

 あー、失敗したな。

 もう夕方だ。
 宿に行って部屋が空いているかどうか――

 って、まてまて。
 そもそも宿代もってないじゃん、俺。
 部屋が空いてる空いてない以前の問題だったわ。

 どうしようか。
 さすがに野宿は嫌だぞ……?

 そこまで考えたとき、ひときわ強い風が吹いてきた。
 その風は、俺が手に持っている紐を揺らす。

 紐の先には先ほど作った2本の剣がぶら下げられていた。
 剣同士がぶつかり合い、金属の甲高い音が鳴る。
 音がうるさくならないように剣ごと手で押さえた。

 ――と、そこで閃く。

「剣売ればいいじゃん!」

 そうだ、剣を売って宿代にすればいい。
 この2本の剣は流石に売れないけど新しく作って売れば宿に泊まる分くらいは稼げるだろう。

「ルティア、3分待っててくれ。すぐに戻る」
「え? どうかしたんですか?」
「ちょっと野暮用を思い出してね」

 ルティアに一言告げて、裏路地に入る。

 薄暗くてジメジメとした場所だが人気はない。
 気兼ねなく武器創造クリエイトウェポンを使えるだろう。

 すぐに剣の姿を頭の中にイメージする。

 今後武器屋を開いて売ることを考えると少し見た目に特徴を出した方がいいだろう。 
 露店であまり見かけなかった片刃の剣にしてみよう。

 日本刀のように反らすと西洋風のこの世界では浮きそうだな。
 珍品としてコレクション品にでもされそうだ。

 あくまでも刀身を反らさず、長剣ロングソードにしよう。
 やっぱり武器は使ってもらいたいしな。

 王都への移動である程度回復していた魔力を1/10000ほど籠める。
 実に先ほどの1/100の数値だ。

 特殊級ユニーク100本分くらいで準伝説級エピック1本分くらいじゃないか?という当てずっぽうかつ安直な考えのもとの判断であるが武器創造クリエイトウェポンに慣れてないから仕方ないだろう。
 決して検証と調整が面倒くさいからなんてことはない。

 1本でもあれば1週間の宿代には十分な金銭が集まるだろう。
 そう思い剣1本分の魔力を流し込むと、例のごとく光が俺の想像通りの剣を形作る。

 段々と光が鋼に変わり、数秒したころには目の前に片刃の剣が完成していた。
 想像通りの西洋の世界観にあった片刃刀だ。
 日本刀のように浮くことはないだろう。

《武器:片刃の剣 作成者メーカー:イルム 等級ランク特殊級ユニーク 両刃ではなく、片刃の武器。切れ味は非常に鋭く、取り回しもいい》

 よし、どうやら特殊級ユニークにすることに成功したようだ。
 強すぎず弱すぎず。
 変に目立つことなく、特徴を持った武器を作れた。
 これならいい値段で売れるだろう。

 元々2本の剣をぶら下げていた紐に3本目の剣をくくりつける。
 少し重くなったが、持てないほどではない。

 紐ごと剣の束を持ち上げる。

 用も済んだので少し足早に路地裏を出た。
 ルティアが待っているからな。

「あ、イルムさんおかえりなさい。また武器が増えてますね」
「売って宿代にしようと思ってね。取ってきた」

 武器を一瞬で作れることは話してないので”取ってきた”ということにしておく。

 これなら元から鍛冶で作っておいた、ということにできる。
 まあどこから取ってきたかは謎となるが。

 こういうところに気づいても訳ありだからと触れないルティアには本当に助かる。

「それじゃあ武器屋に行くんですね」
「うん、買い取りもしている店舗に行こう」 

 街の中を歩く。

 すると、数分歩いたあたりで良さそうな店を見つけた。
 白いレンガで作られており、高級感が漂っているが、どこか庶民的にも見える。
 店の周りはきちんと掃除されているようで、なかなか綺麗だ。

 木製の扉を開けて武器屋に入る。

「らっしゃい!」

 店の奥から野太い声が聞こえてきた。

 その声の正体は店主だ。
 いかにも職人と言った風貌で、体中が筋肉で引き締まっている。
 いかつい顔の反面出ている表情は優し気であり、いい兄貴分といった感じにもとれる。

 ざっと店の中を見回してみると、あることに気づく。
 武器の値段が安いのだ。
 剣1本が露店で売ってあるものよりもよっぽど安い。

「店構えを見た感じ高級志向に見えたんですが、とっても良心的な値段ですね」

 店主に向かって話しかける。
 すると、豪快な笑い声をあげながら答えてくれた。

「がっはっは! うちは高級志向と言っても冒険者基準でな。大体Cランク以上を相手に売ってるんだ。貴族が求めるような装飾が必要ないから安く済むんだよ」
「なるほど、性能重視でなるべくコストを下げたというわけですね」

 周りの武器は確かにシンプルだ。
 それでいて切れ味も良さそうに見える。
 納得した。

 と、本来の目的を忘れちゃダメだな。
 この剣を買い取ってもらわないと。

 紐から片刃の剣を取り出して店主に差し出す。

「私が作った剣です。こちらは買い取りもできると看板にありましたが、いくらになるでしょうか」
「おう、確かに買取はできるな。どれどれ――って、おいおい、あんたいい腕してんな。これは相当な業物だぞ」

 店主が真剣な顔で俺の剣を見はじめた。
 時には表面を指でなぞったりしながら確認している。

 一通り見終わった後、もう一度俺に話しかけてきた。

「俺には武器鑑定のスキルがあるんだがよ、この武器は特殊級ユニークの頂点にたつレベルの武器だ。ぜひ買い取らせてもらおう。金貨2枚でどうだ?」

 ここにある通常級ノーマルの武器はほとんど大銀貨5~6枚だ。
 そして特殊級ユニークである俺の武器は金貨2枚。
 約4倍の価格だ。悪くはないだろう。

 日本円でいえば大体20万。
 技術のある職人が数日掛けて作るんだから妥当であると言える。

「はい、金貨2枚でお願いします」
「おう!」

 店主が金貨2枚を差し出してきたので剣を渡す。

 思ってもみない掘り出し物を手に入れた、と少しホクホク顔だ。
 喜んでもらえたようで、こちらも嬉しいな。

 会計も済んだのでルティアと踵を返そうとした――そのとき、店主が大声を上げた。

「兄ちゃん! なんだその剣は! よく見せてくれないか!?」
「え、ええ。いいですけど」

 恐らく食いついたのは魔人ノ剣デーモンブレード紅血ノ剣スカーレットだろう。
 さっき武器鑑定のスキルがあると言ってたし、それで剣の価値を測ったのかな。

 俺が2本の剣を渡すと、店主のおじさんは食い入るように見つめはじめた。
 先ほどと同じく、指の腹で剣をなぞったりしているが、表情が全く違っていた。
 真剣な表情というか、今は興奮した表情だ。

 しばらくするとその勢いのまま俺に話しかけてきた。

「兄ちゃん、これもあんたが打ったのか……?」
「ええ、私が打ちました。今のところ最高傑作の2本です」

 3本の内のだけどね。

「なるほど……実は俺は武器マニアでもあってな、こういう類のものを見ると興奮が抑えられないんだ。特にこの紅色の剣は魔剣クラスだ」

 店主はそう語る。
 そして、次に交渉を吹っ掛けてきた。

「この剣、白金貨5枚で買う、と言ったらどうする?」

 まじかよ!
 白金貨5枚って、5000万じゃないか!
 数十年遊んで暮らせるレベルかよ……

 でもなぁ、この剣をデザインしたのは俺だし結構愛着湧いてるんだよなぁ。
 それに俺の武器屋の象徴的存在にしたいし…… 

 申し訳ないけど断りを入れよう。

「すみません、やっぱりこの魔剣は愛着があるので……」
「ああ、そうだよな。すまない、勝手に買い取る方向に持っていって」

 そう言い、店主は少し残念そうに頭を掻く。

「兄ちゃんみたいな最高の鍛冶師に作ってもらえるなんてその剣も恵まれてるな。同じ鍛冶師として分かると思うが、ちゃんと大事にしろよ」
「ええ、もちろんです」

 そう一言交わして、店を出る。
 俺と店主のやり取りを黙って聞いていたルティアももちろんついてきた。

「では、宿に案内しましょうか」
「ああ、頼む」

 夕暮れで赤く照らされた道を行く。

 先ほどに比べると人は減ってきていた。
 露店もほとんどが閉められている。

 やっぱり宿に戻ったのだろうか。
 俺も早く泊まる場所見つけないとな。

「イルムさん、あれ、ミラさんじゃありませんか?」
「ん? おっ、そうだな」

 ルティアが指差した先には、ダンジョンでダークゴブリンファイターから新人を守っていた騎士風の女の子、ミラがいた。
 先程ダンジョンで会ったときはあんなに凛々しかったが、今は少し落ち込んでいるようにも見える。

 人の間をかいくぐってミラのもとに行く。

「どうしたんだ? なにか悩み事でもあるのか?」
「イルム様!」

 声をかけると、ミラは顔をパッと明るくした。
 そしてこちらに向けてくる尊敬の眼差し。
 照れるけど過大評価のされすぎで少し複雑だ。

 こんなに強い力を手に入れても小心者なのが俺なのである。

 ミラは表情明るくしたまま少し眉を下げて困った顔をすると、事情を話し始めた。

「イルム様も居合わせていたのでお分かりかと思いますが、剣が折れてしまって……これ以上生活費を削るわけにもいかないのでどうやって武器に割く費用を集めようか考えていました」

 確かにあの戦いで剣が折られていた。
 武器が無ければ冒険者として活動するのは難しいよな。

 もしあのとき俺がすぐに助太刀してたら剣は折れなかったのかもしれない。 
 そう考えると胸の奥から罪悪感が湧いてきた。
 なにかしてやれることはないだろうか。

 って、まあ1つしかないよな。
 この剣を渡そう。

 紐にくくりつけられた剣の束から魔人ノ剣デーモンブレードを取り出す。
 紫の刀身がギラリと光った。

「ミラ、これを使ってくれ」
「この剣は……?」
「俺が打った剣だ。そこら辺の武器よりよっぽど強い」

 その言葉にミラは驚いた表情をする。
 恐らく俺が鍛冶ができること、そしてそれが強いということにだろう。

「いえ、助けてもらったばかりか、このようなものまで頂くわけにはいきません」
「気にしないでくれ。元は俺がすぐに助けなかったのが悪いんだ。それにこっちにも利益はあるからな」
「利益……でしょうか?」

 ミラは考えだす。
 だけど、答えが出ることはなさそうなので俺から口を開く。

「宣伝、だな。俺、武器屋を開く予定なんだ。冒険者にあったときでも、この剣デーモンブレードについて尋ねられたときでもいい。”イルム”の名を広めておいてくれ。そうすれば集客になるだろ?」

 武器屋を始めると言って、ルティアが少し驚いた。

 俺が冒険者にでもなると思っていたのだろうか?
 確かにこんな力を手に入れたらそうするのが正解なのかもしれない。

 でも、どうせならスローライフを送りたいのだ。
 近隣の人と笑いあう、定住をしたうえでの裕福な生活。
 俺の憧れだ。

「なるほど、武器屋ですか。ならば良い手段でしょう。この剣デーモンブレードと釣り合わない気もしますが……イルム様の利益になるのならば受け取りましょう」

 ルティアと同じく少し驚いたミラも利益の意味を理解してくれたらしい。

「ああ、そうしてくれると助かる」

 そう一言言い、夕日を浴びて輝く紫の刀身をした剣を差し出す。

「鞘は自分で調達してくれ。こっちで用意できてなくてね」
「了解しました」

 ミラの手に魔人ノ剣デーモンブレードが渡った。

「助けてもらった上、さらにこんなに素晴らしい剣を授けてくださり、感謝してもしきれません。なにか事案が発生したときはお呼びください。すぐに駆けつけましょう」

 そう言うミラの瞳には忠誠のようなものまでやどっている。
 俺はその瞳から目を逸らさずに答える。

「ああ、期待している。困ったときは頼りにしてるよ」

 ――と、そう言い終えたとき。
 頭の中に言葉が流れた。
 鑑定のときと同じような感じでだ。

《条件を達成。人間族”ミラ”へ加護を授与します》

 瞬間、俺の体から力が抜けた。
 少し、ほんの少しふらついたが2人には気づかれなかったようだ。
 心配をかけなかったことにホッとする。

 加護ってなんだ?
 いきなり頭に流れてきたけど、何が何だか分からない。

 授与したってことは俺がミラに、ってことだよな。
 加護っていうんだからなにか特別な力のようなものか?
 だったらミラのステータスに書いているかもしれない。

 そう思いミラのステータスを開くと、そこにはしっかり加護という欄が追加されており、半神人デミゴッドイルムの加護というものがあった。

 鑑定をしてみる。

《概念:加護 神から人へ授ける力。信仰心、神からの贈物ギフトの受け取りにより発生。効果は様々であり、身体能力の向上からスキルの効果を引き上げるものまである》

《加護:半神人デミゴッドイルムの加護 身体能力及び魔力の上昇。スキルによる補正効果の上昇》

 加護を与えることができるって俺、一応神にカウントされてんだな。

 というか、ミラに勝手に力を与えてしまって大丈夫だろうか。
 なにか文句を言われないだろうか。
 あー、さっき贈物デーモンブレードを与えてしまった自分が憎い。

 そんなことを考えていると、ミラが不思議そうな顔をして、手を閉じて開く動作を繰り返した。

「なんだか身体が軽くなった気がします。イルム様に悩みを解決していただいたからでしょうか」

 どうやら加護については気づかれていないようだ。
 身体能力上昇については精神的なものだと勘違いしてくれているらしい。

 俺が半神人デミゴッドって知られたら面倒だからな。
 気づいてくれていないのは助かる。
 まあ見つかるのも時間の問題だろうが。

 ミラは腕を振ってみたり、小さく跳ねたりして、よくわからない新しい力に驚きつつも喜んでいるように見える。
 その姿をみてひとまずホッとした。

 勝手に力を与えやがって! なんて怒鳴られた日には泣き寝入りをする自信があるからな。

「じゃあ俺たちは宿に行くよ。ミラも元気でな。何かあったら連絡するよ」
「了解しました。イルム様もお体に気を付けて」
「ああ、もちろん」

 言葉を交わし、ミラと別れる。

 少し足早になってしまったのは気のせいではない。
 加護のことがバレたら何か言われるかも、といった小心者ソウルゆえだ。
 力に喜んでいるようには見えたが何があるか分からないからな。
 とりあえずこの場から去ろう。

「イルムさん、なんでそんなに早歩きなんです?」 
「いや、気にするな。早く歩きたい気分なだけだ」

 ミラと別れたあと、そんな会話をしながら数十分王都を歩いて宿に来た。

 木製の建物で、安っぽさはない。
 清潔にされているのが外見からでもわかる。

 中に入ると宿について説明を受けた。
 一泊銀貨3枚で、2食付き。
 ひとまず7泊とって、部屋のカギを受け取る。

 と、そこでルティアが話しかけてきた。

「イルムさん、私はそろそろ家に帰りますね」
「そうか、ルティアは宿じゃないよな」
「はい。家で家族が待っているので」
「じゃあ、ここでお別れだな。卒業試験、ちゃんと見に行くから頑張れよ」
「もちろんです! 私の勇姿を目に焼き付けてくださいね!」

 ルティアが元気にそう言う。
 もうお節介を焼かなくても大丈夫だろう。
 俺はそっと手を振った。

「イルムさん、時々遊びに行きますからね!」

 ルティアが手を振り返しながら言う。

「ははは、いつでも来てくれ」

 返事をしたあと、お互いに笑いあってその日は別れた。


 それからは食堂で飯を食ってすぐに部屋に戻った。
 飯は不味くはなかったけど、美味くはなかった。
 やはり現代の飯になれてしまっている俺には少し辛そうだ。

 部屋でゆっくりとしているうちに睡魔が襲ってくる。
 今日はいろいろあって疲れたのかもな。
 何気に転生初日なわけだし。

 外はすっかり暗くなっている。
 もう寝てもいいだろう。

 部屋にあったベッドに横になり、少し薄い毛布にくるまる。

 明日は店を開くために情報を集めないとな。
 なんだかワクワクしてきた。
 この異世界で絶対に裕福な暮らしをしてやろう。

 そんなことを考えながら眠りについた。

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