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度重契約により最強の聖剣技を

初歩心

第十六話 弱者無守②


「そんな怖い顔しないでくださいよぉ
こうして久しぶりの対面なのにぃ
君の気持ちはぁ痛いほど分かりますがぁ
······なんだか悲しくなっちゃいますぅ」

 そう投げ掛けてきた彼女は黒いドレスやその色とは不釣り合いな灰色の腰マントを身にまとっていた。
それ以外はあの日と何一つ変わっていなかった。
優しそうな笑み、癒しを与えるような甘ったるい声。
その一つ一つがよけいに俺を苛立たせる。
 そんな気も知れず彼女は笑みを崩すやさしい眼差しのまま一歩一歩こちらに近づいてくきた。

「··········お前がいるってことはここは現実じゃなさそうだな」

「はい、アルラインにぃ魔呪術を施して少し細工をさせてもらいましたぁ。
なんだか肩が力んでますよぉ
もう少し力を抜いてぇ楽にしましょう?
大丈夫です、私はぁあなたを殺したりしませんからぁ
私の気持ちはあの時のままでぇ、何も変わってぇいませんよ♪」

彼女は足を止め後ろ手に組み合わせ腰を少しおると、伏せた俺の顔をしたから覗きながらそう投げ掛けてきた。

「······そうか。それはごもっともだな
俺はあの日からお前を殺す為にただひたすらに生きてきた。
お前が俺をどう思うと関係ないし、それは今この時も変わらない」


俺の怒りは膨れ上がり、顔をあげると鋭い眼差しで彼女を見据える。

「相変わらず冷たいですねぇ君は」

「当たり前だろ。
お前は俺にとってもこの世界全てにおいても悪、その物だからな」

「そうですかぁ······そうですよねぇ。
でも······それでも私はぁ貴方がほしいんですぅ。
どんな手を使ってでも、どれ程残虐しようとも。
だからぁ魔域に来てくださいいつでも歓迎しますよぉ」

「断る!何度言われようと答は同じだ。
······どうして俺にそんなにも執着する?!
俺の聖剣さえ手に入ればいい。
そうすればお前は最強の力を手にいれこの世界の覇者になる。それでいいはずだろ!?
お前が俺を欲する意味が分からねぇ。
お前のせいでどれだけ犠牲が出たと思ってるんだ?!
教えろお前が俺を必要とする意味を!!」


「······いいですよぉ
恥ずかしいですがぁ打ち明けます
······一目惚れしたからなんですぅ」

「······はぁ?」

今まであんなにも苛立ていた怒りが妙な言動を聞いたとたんにプツリと途切れ思考回路が一瞬途切れる。


「だから私はぁ、君に初めて会った時から一目惚れだったんですぅ♪」

「それ本気で言ってんのか?」

冗談だろ。そんな気持ちが怒りよりも勝り
俺の口から漏れでたのは疑問だったのだ。
そんな言葉に彼女は頬を赤らめ恥ずかしいそうに笑みを浮かべる。

「はい、本気ですよぉ
私も君に会うたびにこの心臓の鼓動が早くなるのがぁ不思議でぇ·······。
まさか人間の君にこんな感情を抱いているなんて思いもしませんでしたぁ。
でも、今もこんなにも鼓動が高鳴ってもどかしくてぇ、苦しくてぇ······だから唯一貴方だけが私にはぁ必要なんですぅ」

胸に手を添え潤るんだ瞳をこちらに向けてきた。
そんな瞳をされても、慈悲など一切わかはずがない。

「······なるほどな」

「理解していただけましたぁ?」

「だれがするか。
お前のそれはただの傲慢でしかない!!
そんなもんにハイそうですかって快く返事をするやつがいるか?!
親父も母さんもそんなくだらない傲慢で殺されたっていうのか?!
ふざけるな!!ふざけるのも大概にしろ!!お前は俺の復讐対象だ。
それ以上でも以下でもない!!」


「怒らせちゃいましたかぁ?」

俺の気を逆立てるこいつの狂いは境地にたっしている。
 この空間から出る方法は恐らくただ1つ。
目の前にいるたった一人の敵を倒すことだ。
 しかし、怒りのまま今、武器のないこの無力な拳をかざしても攻撃はとうらずまったくもって意味をなさない。
 だからこそ、たとえ不可能だろうと聖剣の力が必要なのだ。
こんな空間にいつまでもいるわけにはいかない。
何としても抜け出さなければならないのだ。

「当たり前だ。今ここでけりをつけてやる
こい、ファイオラセル!!」

一息吐き、聖剣のイメージをしながら空中へと間を開けた右拳を作りまっすぐに構える。

「無駄ですよぉ
ここは私が思想で作り出した空間。
私がぁ承認しない限り、貴方がぁ思い描いている行動はおこせません
不可能ですよぉ」

そんな彼女の意見とは裏腹に白い光が右拳からうじそれはだんだんとファイオラセルの形を作り出す。
感触を確かめるように斜め右から左へ凪ぎ払うとしっかりとした重みと巻き起こる風が確かに実在すると証明した。

「·····誰が不可能だって?
今、ようやく実感できたよ。
俺の力の源はお前を殺すまでどんな困難だって乗り越えてやる復讐心だってな」

「うそ、そんなぁ······はずわ」

「さぁ、さっさとお前を倒して早いとこ
この空間から抜け出させてもらおうか」

俺は駆け、驚いた表情を浮かべたまま、あっけにとらわれている彼女の胸部めがけついた。
確かに心臓を突き刺した感触が伝わった。
だがそれは一瞬で終わり次の瞬間には彼女の真後ろに立っていた。

「······無駄ですよ♪」

先程の驚愕顔が嘘のように口を緩ませている。

「すり抜けたのか?」

俺は彼女から警戒し、距離を取った。

「はぁい。
今の君ではぁ私に触れることもできませんよぉ瞬くん♪」

「正直驚きましたよぉ♪
瞬くんがぁここまで成長してたなんてぇ。
でも、仕方ないですねぇ。
これ以上瞬くんを苦しませたくはなかったんですがぁ。
君がそこまで抵抗するならぁ
私にも考えがあるんですよぉ」


「たとえお前がどんな手を使おうと絶対にここから抜け出す」

「これを見てもぉそう言えますかぁ?」

彼女が指を弾くと何かを明かりが照らし出した。
目を凝らすとそれは拘束されたまま身動きがとれずにいる姉であった。
クビには鉄の首輪がはめられそこから左右それぞれに鎖が天井の方へと伸びている。
足にも同様に鎖がされそれは椅子につながっている。
目から鼻まで革製の眼帯でおおわれており呼吸は口からのみになっている。

「安心してください。
これはぁあくまで私の思念意識がぁ作り出したぁ物ですから」

そんな姉の姿を見て俺はいてもたってもいられず駆け寄ろとした。
だが、体が鉛のように動かない。
姉は数メートル先にいるのだ。
歯を食い縛り必死に足に力をいれるが、まるで神経がとおっていないかのように一ミリも動かない。
そんな俺をよそに、紫瞳と黄金瞳それぞれの目を怪しく輝かせ口に笑みを浮かべた魔王は俺を一瞥すると姉へと近づき足をとめる。

「これ、なんだかぁ分かりますかぁ?」

彼女が右手の平に出現させたのはまがまがし黒光を放つ、例えるならピンポン玉くらいの球体だった。

「これを奏の口からぁ中に入れて♪」

「やめろ!!」

「その慌てぷりはぁどうなるか分かってるんですねぇ?
でもいやです。やめませんよぉ!!
瞬くんがぁ私と来てくれるってぇ、約束してくれるまで。
どうしますぅ?
このままじゃ君の唯一の家族が醜い化け物魔神になっちゃいますよぉ♪」

 今のこの空間は現実ではない、しかしながらここは魔王の思念体で作り上げた世界だ。
現実にも多少は反映される。
······だが、唯一の家族を救いたいという思いとは裏腹に、例えそうなったとしてもこいつにだけは屈すものか。
そんな気持ちがどこからか沸き上がってくる。

だからこそ俺はーーーー


 姉を救うのをやめた










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