ダイナマイトをこの僕に

土佐 牛乳

6話

「薬が効いてきたようだな」
「はい彼の行動からしてそうでしょう」
 八九とメイナはまるで他人事のように、僕の様子を見てそんなことを言っていた。およそ誰もが体験できないような教具やいろいろな負の感情を現在進行形で味わっている人間からしたら、殺したくなるほどに、それはとても他人行儀な言葉たちであった。
「しっかりと話せるまでになるにはあとどれくらいなのだ?」
「レベル5だとあと三十秒もかからないでしょう」
 まるで薬を投与してからまったくと時間が経っていないという彼らの会話。僕からすると、薬を投与されてから、ここまでの時間は、まるで一日のように長くて辛いものであった。はやくこの地獄から抜け出したい僕は、とんでもない悲鳴を上げていたのだろう。喉の声帯の幕が壊れてしまっていた。これではたぶんは彼らとは、八九とメイナという人物たちとはふつうにしゃべることはできないだろうと、僕はあのときのことを思い出すと、そう考えてしまう。彼らの悪魔のような所業に、いくら植物のように無気力になってしまった人間と会話をするためにこのような劇薬をしようする鬼畜どもと、なんども心の中で汚らしいことばを、うらむようにして連呼していた。そのことばがひっくり返り、もとの言葉がどのようなものであったのかと、考えてしまうころには、違う罵倒の言葉を頭の中で壊れたレコーダーのように何度も何dのも何度も何度も何度も連呼、重複作業をしていた。
 いくら暗闇が多豚をつぶっているという上体でさえも、恐怖があった。それは、暗闇から得体のしれない怪物と、そのよこには無数の赤い目がこちらを見ていたからである。まるで森の中を真夜中に歩いているとちゅうで、化け物の目が無数の目がこちらを見ているようであった。赤い淡い光が、こちらを見ているのだ。それも数は数え切れないほどにまぶたの裏に多い尽くされていた。そして次に出てきたのは、すさまじいほどの、先行に似たビームであった。このビームを当たってしまった僕は完全にこの世から消えてしまうだろうと、思えるくらいの質量を持ったビームであった。こんなビームを食らってしまえば、それは間違いなくして僕という存在は、目に見えないような魂までもが、この世から消えてしまうと考え付いてしまうほどにまっしろのビーム、閃光であったのだ。目を潰して、僕の心を壊してしまうのか、いいや僕という悪魔の権化のような存在を、この日のあたる世界から抹消すべく、償還されたビームだと考えている。僕という存在がどれほどまでに悪なのかしっかりと、もし次の生があるのならばその生の記憶にしっかりと残ってしまうだろうと考えるくらいには、それは太陽よりもまぶしいビームであった。
「八九さん、いくらこの病室に音さえも防いでしまう、簡易式絶対領域を使っているとはいえ、さすがにコレは防ぎようもありません」
「あと10秒だ。君の体がこの声ごときに絶えられないというのならば、君はこの狂っている男を力づくで失神させるといい」
「はい、あなたの言い分はわかりました」
「ほらあともう少しで案地帯に入る。いくら体に異常が来たすとはいえ、ある程度の人権を保障するためにもしっかりと本人とは会話をしなければならないからな。案地帯をいきなり抜け出して暴れるかもしれん、念のためにベルトの準備をしておけ」
 八九が目の前で上半身だけで暴れている男を、けなすようにしてみている。
 メイナは、かばんの中をあさると、束になっていた幅の大きいベルトを取り出していた。まるで十度の精神疾患の患者に括り付けるようなベルトである。メイナがそれをもってベットに寝ている男の様子を確認した、次の瞬間、まるでコンセントが抜けたようにして男の暴れている奇行が終わっていた。
「よし、メイナ。ベルトを」
「はい」
 メイナは、いつもの業務返事をしたのち、ベットで重労働が終わってしまったようにしてぐったりしている男の体をベットの策とメイナが持っていたベルトを使って、何重にも織物を編むようにして、しかし規則性がないようにして巻いていた。まるでベットに寝ていた男はがんじがらめになってしまって、いままで暴れていた状態になっても、絶対に大丈夫であろうとメイナはそのようなことを思っていた。
「やあシオ君」
 八九はすぐに、ベットでさなぎのようになっている男に対して、普通に話しかけていた。彼がこのような状態になっていても話すことはできるだとうという、いままでの濃厚な石の経験による推測で話しかけていたのだ。
「なにを…… 僕になにをしたんですか?」
「ちょっと君と会話をするために、心配停止状態の患者に電気パッとを当てると同じような原理で、めずらしい薬を君に使ったのさ」
「くそったれが、絶対にあなたをゆるしませんよ」
 シオという男は、にらむようにして八九という男の顔面をにらみつけていた。まるで積年の恨みように、八九の頭を貫きそうなほどの眼光である。
「君とこうして話をするためだったんだ。まあどのみち君には散々嫌われるだろうけどね」
 と、八九という男は、動物を見るようにしてシオを見ていた。
「先生、用件を彼に」
 横に立っていた女性が、メイナと呼ばれる人が彼に突っかかるようにしていっていた。
 それに、はっと気づいたのか八九という男は頭をかきながら、用件を話し始めた。
「君も知っているとは思うが、世界の終わりが刻一刻と近づいている」
「突然とナに言ってんだお前、この僕に殺されたいのですか」
「うるさいよ、今の君に何ができるというんだ」
 いままでシオを下に見ていた目は、まるで無力の赤ん坊を見るような目に変わっていた。そのような態度にシオの堪忍袋の尾は、切れ掛かっていた。
 しかし、横に立っていた女性が、メイナという女性が八九の腹をチョップしていた、
 すさまじい手刀の速さに誰も目が追いつけないでいた。
「グハッ」
 八九はその場で手をつけるようにして、うずくまった。
「すいません手が滑ってしまいました」
「君は、ことあるごとに…… このポンコツ女がッ!!」
 負けじと、八九という男も言い返すが……
「ああああああ」
 これもまた、いきなりに八九という男からとんでもないような悲鳴が聞こえた。
「すいません、今度は足が滑ってしまいました」

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