劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです
14 新旧の王者
そしてしばらく時間は経過し放課後。
美月と合流した赤坂と渚は魔術科校舎にあるトレーニングブースを訪れていた。
ここでトレーニング用の仮想空間にログインするためのヘッドギアとサーバーを借りる事ができる。
「で、俺達のサーバーは?」
「えーっと、41番。ログインパスワードはこれね」
「あいよ」
美月からパスワードが書かれたメモを受けとる。
基本的にこの施設を借りられるのは魔術科の生徒のみだ。例外があるとすれば赤坂や渚のように魔戦に出場する生徒となる。
そして今回は利用予約を美月に取っておいてもらった訳だ。
「とりあえず魔術科の施設を使えて良かったですね」
「ああ。普通科の使おうと思ったら手続きめんどうだからなぁ」
一応普通科でも魔術の授業はあるので仮想空間そのものは魔術科とは別に用意してある。
ただあくまで授業用であり、大きな空間が一つ用意されているだけだ。他にも使用している生徒もいる以上、そこにルールはなくともそれでも、暗黙の了解で制限は生まれてしまう。
一応民間や市営の施設に自分達だけの仮想空間を借りられる施設もあるのだが、そちらは当然ながら利用料がかかってしまう。一回二回の使用ならともかく継続して使っていくとなると、それを使うために特訓時間を削ってアルバイトをしなければならなくなるという本末転倒な事態が発生してしまう。
だから本当に魔術科の施設を使えることはありがたいのだ。
……ありがたいのたが。
「……だけどこれどうにかなんねえかなぁ」
「これとはなんの事ですか、普通科のやべー奴さん」
「……まさにそれだよぶっとばすぞ」
げんなりしながら、どこか楽しそうに赤坂の事をそう呼ぶ渚にそう返す。
……魔術科と普通科が入り乱れていた学食ですらアレだったのだ。魔術科に足を踏み入れれば、普通科の制服を着た普通科の異端児を普通科のやべーやつと噂する生徒は圧倒的に増えてくる。
そしてそうやってげんなりする赤坂に美月は慰めるように言う。
「げ、元気出してよ孝弘。えーっと、ほら、確かにあんまり呼ばれて気持ちいい名前じゃないかもしれないけどさ……でも、語感は良いじゃん!」
「美月それフォローになっていませんよ。浸透しちゃった理由明確に捉えてるだけですよ。ね、あかさ……普通科のやべー奴さん」
「なんで言い直した!? なんで今言い直した!? お前むっちゃハマってるだろ! その呼び方完全にはまっちゃってるだろ!」
「正直凄いしっくり来て私は好きです!」
「正直だなこの野郎!」
「もう渚イイカゲンにしなよ。たぶん本気で嫌がってるから。普通科のやべ……孝弘のこと普通科のやべー奴って言うの止めようよ!」
「お前も今ナチュラルに間違えそうになってたよな!? なんか故意よりマジっぽくてキツい!」
……なんだか若干普通科にも広がりだした感があるので、なんというか、安息の地がない。
(……これはアレか。俺が慣れるしかないのか)
もしくは。
(もしくは上書き出来る程の大きなインパクトを残すか)
もっとも普通科のやべー奴を上書きできるとすれば、それは普通科のマジでやべー奴みたいな感じになりそうではあるが。
そう思った時だった。
「あ、そこにいるのはもしかして普通科のやべー奴じゃないか?」
そう背後から男子生徒に声を掛けられた。
そう、声を掛けられた。遠巻きで噂されているのではなく、明確に話しかけられた。
(……よし、相手が一年ならちょっと止めろって言おう。効果あんのか知らねえけど)
そう思って振りかえった赤坂は思わず言葉を失った。
話しかけてきた男子生徒は一年生だった。だがしかし、何か言う前に一瞬思考が停止してしまったのだ。
……それだけ衝撃的な人物がそこにいた。
そしてようやく動いた口で、その男子生徒の名を呼ぶ。
「お前は……暁隼人」
「ははは、普通科のやべー奴に名前を覚えてもらっているとは光栄だな」
笑ってはいるが妙に好戦的な視線を向ける暁。
そんな暁を……知らない筈がない。
赤坂は魔術師家系の事もあまり知らず、同世代の魔術師も同じ県の目立つ魔術師や、全国区でも特に有名な魔術師しか知らない。
……そして、暁隼人はその特に有名な魔術師に分類される相手だ。
……なにしろ去年の世界大会で第四位。日本の世界大会三連覇には届かなかったものの、それでも優勝したっておかしくなかった程、渚がいなくなった日本人の中学生の中で圧倒的な力を見せつけてきた優秀な魔術師。
そんな暁は視線を美月へと向けると打って変わって普通に柔らかい笑みを浮かべる。
「あ、篠宮もいたのか。魔戦の特訓?」
「う、うん。暁君も?」
二人の様子を見ているとおそらく二人はクラスメイトなのだろうと推測ができた。
そして暁は言葉を続ける。
「まあそんな所。個人戦ではそう簡単に負ける気はしないけど……団体戦の方はそう楽観的な考えじゃいられそうだからね」
そう言って暁が視線を向けたのは渚だ。
そして暁は渚の名前を呼ぶ。
「久しぶりだね……篠宮渚」
赤坂に向けたように、好戦的な視線を向けて。
美月と合流した赤坂と渚は魔術科校舎にあるトレーニングブースを訪れていた。
ここでトレーニング用の仮想空間にログインするためのヘッドギアとサーバーを借りる事ができる。
「で、俺達のサーバーは?」
「えーっと、41番。ログインパスワードはこれね」
「あいよ」
美月からパスワードが書かれたメモを受けとる。
基本的にこの施設を借りられるのは魔術科の生徒のみだ。例外があるとすれば赤坂や渚のように魔戦に出場する生徒となる。
そして今回は利用予約を美月に取っておいてもらった訳だ。
「とりあえず魔術科の施設を使えて良かったですね」
「ああ。普通科の使おうと思ったら手続きめんどうだからなぁ」
一応普通科でも魔術の授業はあるので仮想空間そのものは魔術科とは別に用意してある。
ただあくまで授業用であり、大きな空間が一つ用意されているだけだ。他にも使用している生徒もいる以上、そこにルールはなくともそれでも、暗黙の了解で制限は生まれてしまう。
一応民間や市営の施設に自分達だけの仮想空間を借りられる施設もあるのだが、そちらは当然ながら利用料がかかってしまう。一回二回の使用ならともかく継続して使っていくとなると、それを使うために特訓時間を削ってアルバイトをしなければならなくなるという本末転倒な事態が発生してしまう。
だから本当に魔術科の施設を使えることはありがたいのだ。
……ありがたいのたが。
「……だけどこれどうにかなんねえかなぁ」
「これとはなんの事ですか、普通科のやべー奴さん」
「……まさにそれだよぶっとばすぞ」
げんなりしながら、どこか楽しそうに赤坂の事をそう呼ぶ渚にそう返す。
……魔術科と普通科が入り乱れていた学食ですらアレだったのだ。魔術科に足を踏み入れれば、普通科の制服を着た普通科の異端児を普通科のやべーやつと噂する生徒は圧倒的に増えてくる。
そしてそうやってげんなりする赤坂に美月は慰めるように言う。
「げ、元気出してよ孝弘。えーっと、ほら、確かにあんまり呼ばれて気持ちいい名前じゃないかもしれないけどさ……でも、語感は良いじゃん!」
「美月それフォローになっていませんよ。浸透しちゃった理由明確に捉えてるだけですよ。ね、あかさ……普通科のやべー奴さん」
「なんで言い直した!? なんで今言い直した!? お前むっちゃハマってるだろ! その呼び方完全にはまっちゃってるだろ!」
「正直凄いしっくり来て私は好きです!」
「正直だなこの野郎!」
「もう渚イイカゲンにしなよ。たぶん本気で嫌がってるから。普通科のやべ……孝弘のこと普通科のやべー奴って言うの止めようよ!」
「お前も今ナチュラルに間違えそうになってたよな!? なんか故意よりマジっぽくてキツい!」
……なんだか若干普通科にも広がりだした感があるので、なんというか、安息の地がない。
(……これはアレか。俺が慣れるしかないのか)
もしくは。
(もしくは上書き出来る程の大きなインパクトを残すか)
もっとも普通科のやべー奴を上書きできるとすれば、それは普通科のマジでやべー奴みたいな感じになりそうではあるが。
そう思った時だった。
「あ、そこにいるのはもしかして普通科のやべー奴じゃないか?」
そう背後から男子生徒に声を掛けられた。
そう、声を掛けられた。遠巻きで噂されているのではなく、明確に話しかけられた。
(……よし、相手が一年ならちょっと止めろって言おう。効果あんのか知らねえけど)
そう思って振りかえった赤坂は思わず言葉を失った。
話しかけてきた男子生徒は一年生だった。だがしかし、何か言う前に一瞬思考が停止してしまったのだ。
……それだけ衝撃的な人物がそこにいた。
そしてようやく動いた口で、その男子生徒の名を呼ぶ。
「お前は……暁隼人」
「ははは、普通科のやべー奴に名前を覚えてもらっているとは光栄だな」
笑ってはいるが妙に好戦的な視線を向ける暁。
そんな暁を……知らない筈がない。
赤坂は魔術師家系の事もあまり知らず、同世代の魔術師も同じ県の目立つ魔術師や、全国区でも特に有名な魔術師しか知らない。
……そして、暁隼人はその特に有名な魔術師に分類される相手だ。
……なにしろ去年の世界大会で第四位。日本の世界大会三連覇には届かなかったものの、それでも優勝したっておかしくなかった程、渚がいなくなった日本人の中学生の中で圧倒的な力を見せつけてきた優秀な魔術師。
そんな暁は視線を美月へと向けると打って変わって普通に柔らかい笑みを浮かべる。
「あ、篠宮もいたのか。魔戦の特訓?」
「う、うん。暁君も?」
二人の様子を見ているとおそらく二人はクラスメイトなのだろうと推測ができた。
そして暁は言葉を続ける。
「まあそんな所。個人戦ではそう簡単に負ける気はしないけど……団体戦の方はそう楽観的な考えじゃいられそうだからね」
そう言って暁が視線を向けたのは渚だ。
そして暁は渚の名前を呼ぶ。
「久しぶりだね……篠宮渚」
赤坂に向けたように、好戦的な視線を向けて。
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