終焉に近づく世界で俺達は

山下 昇

第23話 彼女の考え

少しの間、休憩を取った俺達はすぐに話し合いを再開させた。

「なら、どうするんだ。当確とは言えないが、ある可能性はあるということだろ?言いたいことは。」
俺は話しの続きという風に、アンリに聞いた。
「そういうことになるんだけど。…やっぱり問題になるのはどうやって侵入するかということだと思うんだけど…」
とアンリは言った。

確かに、いくら俺達人間があっちからしてみれば脆弱だったとしても、人間の本拠地の近くに基地を置くのに流石にそんな簡単な守りにするわけにはいかないだろう。

だとすれば結構な守りの堅さとなっているか…確かにそうなるとこっちの方も対策を練らなければいけない。
のだが、俺達はこの基地の内装を知っている訳ではない。
そのため、対策をたてたくてもたてられないので、とりあえず、何かどんな場合になっても何とか出来そうにはしておくべきだなと思い、何か必要な物がないか話し合い、準備を済ませるのであった。

こうして、準備をあらかた終わらせ、出発出来るというところまで終えた。そして、思ったより時間が余ったので、各自出発まで自由時間とした。
…さっき時間がないとは言ったが、まぁ大丈夫だろう。と思いたい。

という訳で俺達は出発の時間まで自由になった。とりあえず部屋に籠もってるか。
そう思い、イスに座りながら、これからの予定を整理することにした。

というわけで、これからの事だが予定ではこうなる。
出発が夜の9時くらいを目処に出発して到着後、情報収集やらをし、基地の内装を少しずつ明らかにさせていき、そして、侵入。目的を達成させるという予定になった。
なので、出発は夜9時ぐらいになるので、対して今の時刻は、午後3時を過ぎたばかりなのでまだまだ時間はある。

ならもう出発してしまえよとも思うかも知れないが、一応というか、現在の中国領は人類側の領土ではなく、ホムンクルス側の領土となっている。
しかし、何とか隠れて過ごすことは出来るため、もう少人数ではあるらしいが、ひっそりと暮らしている人もいるらしい。

そんなわけで白昼堂々、中国に乗り込むと無駄に時間を食うハメになる。さらに、このことが日本の軍隊の方にも知らされ、また襲撃にあう確率が高くなる。流石にそんなリスクを負いたくはない。
ので、そんな乗り込み方ではなく、ラグナログによる隠密な中国上陸を果たし、情報を集めて、あとは目的を達成するのみという感じにするという感じだ。
でだ、ラグナログは隠密性が高いとはいえ、白昼堂々空から行くと気づかれる可能性もある。
さらに言うとラグナログは、黒色の機体ということもあるのかは知らないが、夜による隠密行動がむいている機体であったりする。

そう考えて、夜に移動した方がよいという訳だ。
ちなみにだが、ラグナログで乗ってきたとき、ここイギリスから日本までが約1時間で来れたため、ここから中国までは1時間も掛からないと予想される。
その事も考えて、やはり、夜に移動を開始したほうがよいのではないかということになった。

さて、そんな事を考えていると、部屋にノックが掛かった。
誰だ?と思ったが、とりあえず俺は立ち上がり、ノックに反応した。
すると、俺の目の前に立っていたのはアンリだった。
「急にごめんね?…もしかして寝てたかな?」
とアンリはそう言ってきた。
「いや、ちょっとこれからの事を考えていたんだ。…そこに居るのもなんだから中に入ったらどうだ?」
と俺は彼女にそう言って、中に招き入れた。

「んで、どうしたんだ?何か相談か?」
俺は彼女が何か考え事をしているのではないかと思い聞いてみた。
しかし、彼女は外れとでもいうような顔でこちらの顔を伺っていた。
なら、何だろうなと思いながら彼女の答えを待っていたのだが彼女は突然
「瑛翔、急に聞くのもなんだけど大丈夫?」
と何か言いたげな感じで聞いてきた。
「何がかは分からないけど大丈夫。」
とアンリが何を言っているのかよく分からない状態なので、適当にそう返しておいた。
「…そっか瑛翔はあまりそういうのは気にしないんだね。私は気にしちゃうから…」
とアンリはそう言った。続けて、
「今まさに敵をとるために行こうとしているんだけどごめんね?言わせて欲しいな。」
とこちらに誤るような感じで言ってきた。
とりあえず話を聞いてみないと分からないので話を聞かせて欲しいと思ったので、
「大丈夫だ。言いたいことがあったら言ってくれ。」
と俺は彼女に言った。
すると彼女は
「うん、ありがとう。…ねぇ瑛翔は復讐の意味があるのかって思ったことはない?」
と急にそんな事を聞いてきた。
俺は急な質問ではあるが、今現時点での回答をアンリに告げた。

「でも、俺は取るしかないと思って行動してきたし、敵をとるまでその考えをやめるつもりはない。」
と俺は思っていることを言った。
すると彼女は、
「うん、瑛翔ならそういうと思った。…でも、私はそういうのをいつも考えてた時期があるんだ。…勿論今の瑛翔と同じように思っているときに。」
と言ってきた。
俺は思うことはあったが、それを感情に出すことはなく、続けて話を聞くことにした。
「私はね、優柔不断なんだ。だから、決めたことでも、途中で思い返して途中でやめてしまうこともあるの。で、私も瑛翔と同じように復讐をしたいと思った時があったというのは話したことがあるよね?」
と聞いてきたので、俺はうなずいた。
そして彼女は続けて、
「私はその時に考えてしまったんだ。復讐を終えた後のことをね。…それでやっぱり考えたことだったんだけど、復讐するべき相手に愛を誓った人が居たら絶対私と同じことをするだろうなって。さらにそれが続いて、永遠に繰り返されるかも知れないんじゃないかなって思ったの。」
さらに続けて、
「その事を考えた後に更に考えたことだったんだけど、復讐を遂げた後に何が残るのかなって…私は思っちゃて。それ以降かな、復讐という方法じゃなくてお父さんの意志を継ぐって決めたのは。」
と彼女は言ってきた。
そして、最後にこう言ってきた。
「私は優柔不断だし、怖がりだからこんな答えにたどり着いた訳なんだけど。でも瑛翔は違うと思うんだ。…だから、瑛翔には自分が信じた道を進んで欲しいな。いざとなったら私はこの事に関しては先輩だからアドバイスくらいは出来ると思うから。」
と告げて、
「ごめんね?一人でこんなに話してしまって。」
と謝ってきた。
俺は「別に大丈夫だ。」と答えておいた。
…本当は大丈夫ではなかったくせに。

アンリはそれを聞いて、笑顔でこう続けた。
「じゃあ私はこれで帰るね?これ以上おじゃまするのもどうかと思うし。」
と言って、彼女は「バイバイ!」と俺に手を降って自分の部屋へと帰っていった。

俺はただ、それを茫然とそれを見送ることしか出来ずにいたのであった。

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