終焉に近づく世界で俺達は

山下 昇

第2話 歩み初めた英雄への道

窓から眩しくもその訪れを示唆してくれる太陽の日の光、そして、開いている窓から爽やかな風が吹いてきた。
今は春が始まろうとしている。そんな時期。そうして何時もの朝を迎えるはずだった。

「…言っていたのは本当の事なのか…?」
良くも悪くも忘れられない夜、色んな意味で刺激的過ぎた夜だった。
話された内容は想像を超え、いまだに話の大きさについて行けてない自分がいる。

やるべき事はまず内容の整理だ。そこからだろう。
そう思い話の内容を整理することにした。
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多分忘れる事が難しいだろう出逢いを終え俺達は本題に入った。

「まずなんだけどね?えっと君はこの戦争について知っている事ってなにかな?」
と少女が聞いてきた。
「実はほとんど知らないんだ…俺は両親の仇だけを求めているから…軍に入ったのも力をつける為と仇が見つけやすそうと思って入っただけだから」
「…そうなんだごめんなさいこんなこと聞いちゃって」
「いや、いいんだ…それでそれがどうしたんだ?」
「うん実は…」
その内容は驚くべきものだった。

まず今この世界で戦争が起きているのは周知の事実で人と人造人間ホムンクルスとの戦争というのも嫌というほど知っている。
しかし、その次に発した言葉は衝撃なものだった。

人造人間ホムンクルスは言葉のとおり人が作ったものなんだけどね。この戦争は20年前に私達ホムンクルス達が君たち人間の支配から逃れる為に起こしたものなの…でも人でその事を知っている人はどのくらいなんだろうね…」
「…それは本当なのか?」
「うん…本当だよ。でね見事独立する事が出来たんだけどね…そこで仲間同士のいざこざが起きて、人間の領土の方まで侵略して、今は知っての通りになっているの」
ということらしい。

今まで俺は凶悪なホムンクルス達が人を土地を無慈悲に侵略しているだけだと思っていた。
しかし実際はどうだろうか人間も同じことをしていたなんて。
それならこんなことになったのも頷ける…自分もそんな立場なのだから。
しかし気になることがあった。
「でも何で君は戦争を止めようとしているの?それなら君もこちらを侵略する側だと思うんだけど。」
「…うん本来ならそうだったかも知れないけど。実はお父さんが居たんだけど私が小さい頃に同族に殺されたの…」
「…そうなのか、俺と同じなんだな。」
「そう、だね。で、なんで殺されたのかというとね」
と話してくれた内容はこうだった。

仲間同士のいざこざは実は言うならば権力争いみたいなものだったという。
権力を示す為と同士を集める為に派閥があり、過激派と少女のお父さんがリーダーの穏便派があり、穏便派は独立したから後は平和に解決しようという派閥で、過激派は自分たちより下の人間達を滅ぼして我等だけの世界にするんだという派閥で意見の衝突等があり、毎日のように同族同士の殺し合いが絶えなかったらしい。
少女のお父さんは平和なホムンクルス達の国を作る為に自らリーダーになったらしい。
しかしその願いは叶わず、過激派に惨殺されてしまったらしい。

「そう、そんな事が…」
「うん…でも私は復讐をしようとなんて考えてないよ。だけどお父さんの理想を私は引き継いで実現したいの。…それが私の夢なの、…かっ、カッコいいお婿さんも探してこいって、お、お父さんにいわれちゃったし…うぅ…」
「そ、そうなんだ」
急にそういう可愛い仕草をするのはやめて欲しいなぁ…反応に困る…
「だからね私はその夢を実現させたいんだ。…でも私一人じゃ出来ることなんて限られてたんだ。…でも君とならもしかしたら出来るって思ったんだ。…だからもしよかったら一緒に世界を変えに行こう!」
と言われてしまった。
しかし、そんな事は出来ない。なぜなら俺が軍を抜けることは許されていないからだ。
「ごめん、出来そうにない。残念だけど俺は…」「両親を殺した仇が分かるかも知れないよ?」
「えっ?」
「私はこれでも軍の情報は大体分かってるの、だから年日、場所を教えてくれれば調べる事は出来るの。…これでもダメかな?」
俺は迷った。ここで了承してしまうと俺は軍に追われる立場になる。しかし俺は元々両親の仇を殺す為だけに軍に入隊した。
どうすればいいか分からずとりあえずこう答えた。
「まだ結論が出せないんだ。もう少し待ってくれないか?」
「…うん分かった。じゃあ明日のこの時間帯にまた来てね。そこで答えを聞くから」
「分かった」
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以上が昨夜あった出来事である。今になっても考えは纏まらない。
しかし仇の情報が手に入りやすいのは少女の方だ、さらに軍はどうやら本当に俺を離したくないらしく情報をあまり教えたがらない。
さらに彼女の事は気になる。…いうなら娘を心配するお父さんみたいなものだ他意はない。本当だからな。
おまけに目標を達成したらやることもない。なら彼女と共にするのも楽しそうでもある。

ならば。

俺は考えを固めた。あとは準備をしておいて、時を待とう。
お父さんお母さんもう少し待ってくれ絶対に仇はとるから。

少年はこの日から歩き始めた。辛く、悲しく、そして自分がどれだけ無力であると思い知らされる旅路へと。
その旅路の果てに相模瑛翔は英雄になる。

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