終焉に近づく世界で俺達は

山下 昇

第10話 さぁ腕試しと行こうか

懐かしい軍の施設を思い出させるこの部屋に招待された俺達は、とりあえず周囲を確認してみることにした。
どうやら、アンリもここに来たのは初めてらしく興味がありそうな目で辺りを見渡していた。

部屋の形状としては、部屋の中心に半径100メートルほどの円形で作られたまさに決闘場というような場所が設けられており、周りは壁で囲まれているという風な感じの部屋だった。
壁はどうやら防御魔法が掛けられているらしく、魔法耐性も十分そうだ。

「さて、そろそろ始めるとしましょうか。」
と未来さんがそう言ってきた。
なので俺は仕方なく決闘の準備をすることにした。
俺は、準備ができたので彼女に準備ができたおもむねを伝えた。
彼女は、こちらはもう準備は出来ていますよという様にこちらに促していた。
「では、始めましょうか。」
と彼女は言った。

ちなみに今回の俺としての行動制限は無しだ。
今回はさすがに手は抜けない。相手もそれなりの強さのため、手を抜くとすぐにやられる。
更に相手は、アンリと対等の強さを誇っている。なら、手を抜く余裕は無いだろう。
そう思いながら、俺は始まりの時を待った。

審判はアンリに頼むことにした。
「では、お互い怪我に気をつけて。勿論、殺傷は無しでね?…それでは、始め!」
始まった、まずは小手調べと行こう。
俺はまず、中距離戦闘に持ち込んだ。
魔法使用を行いながら、俺は武器生成で中距離戦闘に最適な槍を生成し、足を狙い攻撃した。
彼女も負けじと、武器生成で剣を生成しこちらの攻撃を上手く受け流していた。

どうやら、彼女は近接戦に持ち込みたいらしい。
俺も近接戦の方が得意だが、取り敢えずはこのまま中距離戦で様子見と行こう。と思っていたのだが
彼女もやはり流石というべきか、槍の頬先を剣で流し、上手くこちらの懐に突きを繰り出してきた。
それを俺は流す。
「さっきのは上手いな。」
ついそう思ってしまったが、下手をすれば死んでいた攻撃だ。
そう思いながらも、これは楽しくなってきた。
俺と彼女の得意な近接戦に持ち込んでみたいと思い、俺はその攻撃に乗った。

俺は彼女の剣の振りに合わせて槍を投げて、すぐに近距離に持ち込んだ。
「!?」
彼女は驚いた顔をしていたが、俺はそれに構わず近距離に持ち込む。
まずは拳で三段突きを繰り出し、さらに足払い、最後に溝に突きを繰り出した。この間約0.05秒

彼女もそれに負けじと攻撃を流そうとするが、最後に繰り出した突きは溝に入った。
「!」
しかし彼女は攻撃に対して最低限の反応しか見せず、すぐにカウンター攻撃を仕掛けてきた。
俺も負けずにカウンターを流し、すぐに突きを繰り出した。
だが、彼女は俺が突きを繰り出している間に
「身体強化」
と魔法を唱え、突きを流したばかりかその勢いと強化した身体能力を使い、こちらに早く鋭い肘打ちを繰り出してきた。

「ぅ!」
その威力に俺は声を上げながらも大事にはいたらなかった。
しかし、結構な威力なため少し体がよろめいた。

「終わりです。先輩」
といい、突きによる衝撃波で俺に攻撃を繰り出した。

ここで終わりかと普通は思うかもしれない。
しかし俺はまだだ、まだ問題ない

そして、突きを繰り出した先には俺の姿は無かった。
「「!?」」
どうやら二人ともこれで俺が終わりだと思っていたらしい。
まったく、舐められたもんだぜ。後でタネあかしはしてやんよ!

なら、何処にいるのか?
彼女の後ろだ。
俺はあの突きを受ける前に彼女の後ろに座標を魔法で設定し、突きにタイミングを合わせて転移した。
おまけにわざと攻撃を受けてちょっとした演技も含めてだ。
彼女はそれに気が付かず、俺に背後を許した。

なら後はわかるよな?
俺は転移した後にすぐに高速連続突きを繰り出した。

「「!?」」
二人とも俺に気づくこと無く、未来さんは飛ばされた。

「確認は死んでからだぞお二人さん。覚えておけ。」
と俺は二人にそう告げた。

「今の何よ…」
と未来さんは告げる。
アンリも
「…何が起こったの?」
と呆然としている。

俺は
「それは終わってからだ、…それともまだやるか?」
といった。

未来さんは
「ふふ、流石にまだまだですよ。」
と今の攻撃でやる気があがったらしい。

「じゃあ続けようか!」
と俺はいい、攻撃を始めた。
…まぁさっきの手は少し俺の戦略でも邪道と言わざるを得ないがそれはそれ、これはこれだ。

彼女もやる気を出して来て本気度が感じられる。
俺はもう大丈夫だろうと思い、軍では不可視と評された連続回転蹴りをおみまいした。
彼女はそれを受ける前に俺から距離を取った。
しかし、俺は彼女から距離をとることなく必ず一定の距離を保った。

なぜなら多分だが彼女は本当は近接より中距離、長距離による魔法援護の方が得意なのではないかと感じたからだ。

さっき、近接戦に乗ったのはそれを確認するためでもある。

どうやら合っていたらしく、彼女は高速詠唱魔法を次々と唱えてきた。
「フリーズランス!イグニション!スプレッド!」
それぞれ氷、炎、水属性の攻撃魔法を放ってくる。

しかし俺は
全反射オールカウンター
と唱え魔法を弾き、とある一点へと魔力を集めた。
今はその魔力を放置し、戦闘を続けた。

しかし、彼女は
「ふふ、やはり凄い人です先輩は。」
と笑いながらそう告げる。
「しかし、それももう終わりです。準備はしておくものですね!アシッドボム!散開!」
そう彼女が告げた瞬間彼女を中心に大爆発が起きた。
どうやら彼女は、さっきの身体強化のついでに高速詠唱でこれを仕掛けていたらしい。
「…」
俺は少し驚きながらも顔には見せずに迫りくる爆発を避け続けた。
このボムは波状攻撃のようにずっと攻撃が続くものらしく、数秒たっても収まらなかった。
更に彼女の姿が見えない。
どこに消えた。
そう思いながら辺りを見渡すがいない。

だが全方位から
「ここですよ?ふふ」
と声が聞こえてくる。
どうやら魔法で全方位に声を行き渡らせて混乱させようという魂胆らしい。

「くっ!」
取り敢えずアシッドボムに対応するため俺は全反射を常時展開型(バシップ型)に設定し、爆発を防いでいたが

「先輩!」
と一方方向から声が聞こえてきた。
その先を見てみると彼女がいてこう言った。
「先輩楽しかったです…ビックバン!」
と魔法を唱えた瞬間俺は全反射を破られて飛ばされた。

「先輩いないですね。どこに行ったんでしょうか?」
と声が聞こえてくる。
どうやらこちらを探しているようだ。
アンリは俺を心配そうに探しているが、俺は無事だ。
なぜなら転移で、魔力放置したところにペイントをしておいて転移したからだ。
しかし、魔力放置はそのためではない。
今見せてやりますよ!

俺は近づいてくる足音に気づかれない様にとある魔法を唱えた。
「我染まる者、今其の力を解き放ち全ての感知を不可にし我を染めし者とせよ!」
不感知インビジブル!」
「さ、行こうか!」
ちなみにこの魔法も俺にしか出来ないらしい。
初陣の時に使わなかったのは魔力の量に不安があったからだが全然大丈夫そうだ。

「ん?いないですね!また転移でもしたんですか!?」
と彼女は告げる。
それは合っていて合っていない。
それを教えてあげるさ。

さて、魔力放置した理由だがこの魔法には今氷、炎、水の三種類の属性が含まれている。それを使いたかったんだ。
俺は転移等の無属性とされている魔法は使えるが、それ以外全く唱えられない。何故なら適正がないからだ。魔法は適正持ちでないとその適正魔法属性が使えないのだが、俺には適正がない。
しかし、それはあくまでも適正が無いということだけであって扱えない、使えないわけではない。
だからこうする。

「魔力合成」
これで魔力の純度をきちんとした合成の仕方をしたおかげで良くし、次に
魔力操作でこの純度、大きさで出来そうな魔法を探した。
「あった。」
これなら行けるな。

いまから見せてやるよ。俺が産み出した魔法をな!
「永久の監獄」
そう唱えた瞬間彼女の周りに大きい監獄のようなものが発生した。

「!?一体なにがあったの!?」
さらにその監獄の中で、蒼く氷水が混じった炎が彼女を襲う。

「どういうこと!?きゃあー!!!」
その炎は彼女を襲う。
アンリが俺を止めようとするが俺は止める
「これは偽物だよ。」

これは本当にある魔法だが、わざと偽物をつくり彼女にそれを食らわせた。
しかし、どうやら彼女は気絶してしまったらしい。
まぁ効果は気絶だから仕方ないが。

そして、この時点で勝負ありだ。
俺の勝利が決定した。

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