終焉に近づく世界で俺達は

山下 昇

第12話 裏で動く計画

とある日私はとんでもない会話を聞いてしまった。
私はいつもの日課である訓練を終えた後、睡眠でも取ろうと思い自分の部屋へと向かっている最中だった。

「聞いたか?あの相模瑛翔が軍から逃げ出したらしい。」
「本当かそれ?結構マズいんじゃないか?」
「結構どころじゃないぞ。何だって俺たちの切り札、最終兵器だぞ!」
「で、軍はどうする方針なんだ?」
「どうやら居場所を発見次第、少数精鋭で確保に移るらしい。」
「じゃあまだ居場所は分かってないのか?」
「ああ…しかし、無茶をするな奴も。どうせ逃げても無駄だというのに」
「本当にな。…まあ俺たちはそんなの気にしないでいつも通り頑張るとしようか」
「ああ」

という内容だった。

「お兄ちゃんがホントに?」
信じられなかった。
私のお兄ちゃんがそんな事をするわけがない…のだが現実はそうでは無くて。

「西園寺遥香、大至急総監室にとのご命令だ。」
と私は上官に呼び出された。
やはり。と私は思った。
私は自分で言うのもなんだが、お兄ちゃんとは大の仲良しだ。
多分その事で私は呼ばれたのだろう。

「分かりました。上官!」
私は大急ぎで総監部へと走っていった。

コンコン

「失礼いたします。」
私は緊張した顔で総監室に入った。
其処にいたのは人類の最後の壁と言われている人類防衛軍の総司令官鳴尾大剛だった。

「総司令官殿何かお呼びでしょうか?」
司令は表情を変えずに
「君も知っていると思うが相模瑛翔が軍から逃亡し、行方不明となった。異変に気づいた五稜郭支部の総隊長、神風隼人隊長が100人率いて対象の確保に向かったが、これら全てが見るも無惨な姿で発見された。さらに対象は今現在、行方不明。となっている。このことで君が知っていることはないか?」
と呟いた。
「いえ、私もつい先程耳に致しましたので残念ながら。」
と返しておいた。
すると司令は
「ふむ、なるほど。流石の西園寺君でもダメみたいだな。」
と、少しこちらの顔を伺いながらそう告げた。
続けて
「まぁよい今は対象の姿を確認次第、至急確保部隊を送るつもりだ。
…そこでだ、一役買って貰いたいのだが宜しいかな?」
と告げた。

司令の命令は絶対だ。断ることは出来ない。

「わかりました。ちなみに内容はどのようなものでしょうか?」
と私は言った。
すると司令は満足そうな顔をして次にこう続けた。
「なに、簡単なことだ。君が隊長として、対象の監視、または確保を目的とした隊を率いて貰いたい。」
と言う。
「私なんかよりもっと適している方もいるかと思われますが?」
と私は告げる。

私は軍の中でもトップの方だと認められているし、自負もしているが、隊として兵を率いる事に関しては私よりももっと適している人も多い。それを司令に言葉を含ませながらそう告げたのだが

「いや、今回の作戦に関して言えば君以上に適している者は存在しないと言っても過言ではないだろう。」
と司令は言う。
「…何故そう言い切れるのでしょうか?」
と私はそう返す。
すると司令は
「対象は軍の、いや世界でも有数の実力者だが、君はこれまでの付き合いがあるはずだ。…他の誰よりも。」
と言う。
さらに
「あと、君は対象との相性がいい。何より君は………いやこれは何も言わないでおこう。」
と含みのある言葉を残した。
…少し気になったが、多分司令は教える気はないだろう。

「まぁ何はともあれだ。…是非引き受けてもらえるな?」
元より私に拒否権はない。なので答えは決まっていた。
「…わかりました。今回の任務、引き受けさせて貰います。」
と私は告げた、告げるしかなかった。
すると、司令は
「うむ、では対象が見つかり次第出発とする。それまでに隊の人数は私が調達しておこう…では作戦の成功を祈る。」
と言った。
私は
「イエス、総司令殿…ではこれで失礼させていただきます。」
と言い、そさくさとこの場を立ち去った。

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静かになった、総監室で一人の男がこう呟く。
「相模瑛翔、貴様は私の計画の為に必要な存在だ。絶対に逃す訳にはいかぬよ。」
と呟いた後にさらにこう続けた。
「さて、この戦争の終結も近づいてきたな。…まぁ私は私の目的の為に動くとするか。」
「私の目的の為に彼らには犠牲になって貰ったのだからな。」
「さぁ、実現させよう。我等ホムンクルスだけの時代を!この世に劣等種はいらん、今まで我等が受けてきたこの苦しみを貴様らにも理解させなければならないからな。まぁよい、もうすぐ悲願は達成される。我等は勝利の美酒に酔おうではないか!………ククク、グワッハハハハー!!!」
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迫りくる人類史の終焉、瑛翔らに残された時間はもう残り少ない。
彼らは如何にして、人類を救い、世界を導いていくのか。
それらはまさに神のみぞ知るだろう。

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